板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

8葉月・時事川柳

2012-08-27 11:09:36 | 川柳(時事)


8葉月・時事川柳


1.近いうち領土と同じもめ事に
    双方都合のよい解釈                                  

2.肩に来るメダルの重さ首に掛け
    銀座パレード

3.今さらの反増税にしがみつき
    一年生すがる思い

4.三度ある騒ぎ起こしてまた離脱
    小沢、泥船離脱の口実

5.ロンドンの兵(つわもの)どもが夢のあと
    4年後を

6.数だけの駆け込み寺に金二つ
    レスリング、ボクシング

7.先送り方(かた)がつかないことばかり
    行政、外交

8.玉音の耐えがたき耐え思いだし
    消費増税は非常時と

9.意地っぱり持参だめなら郵送で
    日韓とも

10.恐れない伸太郎節の心地良さ
    中韓ボロクソの石原節

エッセイ:「領土問題に関する雑感(23)」

2012-08-20 09:39:35 | エッセイ

エッセイ:「領土問題に関する雑感(23)」2012.08 


 毎年夏になると騒がしくなる。お隣の中国と韓国の沸点が上昇するのである。いじめの問題でも、いじめた方は直ぐ忘れるが、いじめられた方は一生忘れないという。いや加害者は、いじめたことさえ認識していないものらしい。人間とは元来そういうものであるという例えである。

 日本は40年ほど前に、侵略戦争や植民地支配で両国には多大なる迷惑をかけたことを心から謝罪、平和条約を調印し、また国交正常化の合意文書を交わしたはずである。しかし、相も変わらずことあるごとに両国は日本の歴史認識がどうのこうのと言ってくる。
 どこの国でも、自国流の歴史感・認識があり、日本が中国や韓国と同じ歴史認識を持つことはあり得ないのだ。彼らの言い分を聞いていると、稚拙なナショナリズム高揚のために反日感情を民衆に焚きつけ、政府に対する不満をそらすためのガス抜きに利用している節がある。また、抗日派という触れ込みで騒ぎ立てナショナリズムを掻き立てる民衆の扇動家がいるようだ。

 歴代の韓国大統領が日韓関係を損なう竹島(独島)上陸を避けて来たのに、李明博(イミョンパク)大統領がついに実行してしまった。未来志向(過去を問わない)の関係構築をうたい親日派大統領と評価されてきたのに解せない。報道によると、日本側が従軍慰安婦問題の対処について理解を示さないことに焦りと、憤り覚え、大統領は切れてしまったのだそうだ。

 1965年の日韓基本協定では、日本の韓国に対する莫大な経済協力と韓国の日本に対する一切の請求権が解決されている。協定では竹島問題は紛争処理事項として棚上げされた。その後、日本は正式外交で韓国国民に一度ならずとも謝罪しているのだ。日本の援助金の中から慰安婦当事者に慰謝料(?)が給付されていなければ、事実を知らされていない韓国国民の矛先は日本に向けられるであろう。 しかし、日本の援助金の使途について韓国に干渉するわけにはいかず、あくまで韓国の内政問題であるというのが日本側の見解である。
 大統領は従軍慰安婦問題については、お金の問題ではなく人道的配慮から対応して欲しかったのだと言っている。それでは日本の過去の謝罪は一体何だったのかということになる。こんな甘えを許すと、ことあるたびに従軍慰安婦問題を引き合いにされる可能性が出てくる。

 挙句の果て「日本の天皇が韓国を訪問したければ、過去の植民地支配を心から謝罪することが条件だ」などと、まるでケンカ腰で悪態をつき、日本国民を侮辱するとは驚いた限りである。韓国人は感情の高ぶりを辺りかまわず表現するが、公人である大統領が竹島上陸で自分の憂さを晴らしたと取られるような振る舞いをしたのである。

 日本の隣人はこの程度の次元の低い国であり、これから日本人も一層心してお付き合いしたいものである。
 日本のおばさん連中が韓流とかで、空を舞い天真爛漫に好きなことを謳歌するのは良いことである。だが、日本人としての心を求められる時には少しは毅然としたところを見せてほしいものである。仮に韓国人に「日本では、いい歳のおばさん達が、若い韓国人俳優の追っかけをしている。お陰で興行収入は笑いが止まらない」と揶揄されたとしても、ノーテンキのおばさん達が意に介せずいられると日本人として情けなくなる。

 ついに日本政府は韓国への対抗策を次々に打ち出してきた。この40年間、韓国はことあるごとに日本を非難し続けて来た。ただの一回も日本に感謝の弁を言ったこともない。日本はただただじっと耐えに耐えて来たのである。
 しかし大統領が「禁じ手」だった竹島上陸と天皇訪韓の条件を求めたことでさすがの日本人も堪忍袋の緒が切れた。正にトラならぬ、ネコの尻尾を踏みつけたのである。ネコでも尻尾を踏みつけられれば、ギャーと泣くか、噛みついたりはするであろう。

 外務省は国際司法裁判所(ICJ)に竹島の問題を提訴することを韓国に発表した。65年の合意文書で紛争を調停で解決すると明記していることを根拠にしている。さらに玄場外相は「竹島の領有権を主張するなら、堂々と(裁判に)応じるべきだ」と語り、韓国を挑発している。

 一方、財務省は日韓の金融協力の象徴である「日韓通貨スワップ」の延長を打ちきることを示唆した。韓国の通貨ウォン安を防ぐための協力を白紙に戻すことで強い抗議の意思を示す狙いだ。ウォン安が再燃すれば、韓国の輸出関連への打撃は計り知れないものがあろう。韓国が最も恐れていた事態に日本が動き出したということである。

 私は今回の竹島上陸に端を発した韓国との対立や中国人の尖閣諸島への不法上陸問題を無責任に喜んでいるわけではない。このままでは日・中韓は際限のない悪い関係を構築することになりかねないと心配している。しかしながら、今回の件はいずれも過去の日本の外交とは明らかに異なる対応を行っていることに注目しているのである。
 
 両国とも同じアジア人であっても、日本人とは全く異なる価値観を持つ民族であることを認識する必要がある。個人より国家優先であることはもとより、強い自己主張で国益を守る国である。脅しや居直り外交はお手の物、声の大きい方が勝ちと日本を罵倒してくる。
 
 これから先の展開は不透明だが、日本のICJへの提訴という事実に韓国は対応できず、この問題は韓国側が矛を収めるのではないか。さらに、今回のように日本の強い姿勢を見せつけられては、韓国はこれまでのように日本を虚仮(こけ)にする言動を慎まざるを得なくなるであろう。

 一方、尖閣諸島不法上陸問題でも、日本は国会決議によって中国に強い姿勢で抗議をした。南シナ海の南沙諸島等でフィリッピン、ベトナム等と領有権を巡って争いの絶えない中国である。相手の国に難癖をつけながら、軍事力と人海戦術で実効支配をつづけながら恫喝外交を実践している中国である。

 尖閣諸島でもことは同じである。2010年の中国漁船衝突事件にあたっては弱腰外交の最たるもので日本の対応は完全に失敗した。しかし、海保庁の乗組員一色正春氏が現場のVTRをインターネットで公開したことがけがの功名であった。強気の発言で日本を恫喝していた中国は、このインターネットが世界を駆け巡り、実態を知らされたためにグーの根も出なくなったのである。

 中国は、日本は恫喝すればどうにでもなると多寡をくくっていた。しかし事実に反した内容により国際社会の信用を失墜し、大恥をかいたのである。このことが今回の尖閣諸島上陸に日中両国の対応の在り方に大きく影響していると言えよう。
仮に、日本が竹島領有権争いの韓国と同じように尖閣諸島領有権を国際裁判所で争う姿勢を打ちだしたら、中国は大恥をかくことになるので嫌がるであろう。そうかと言って、中国は高まった民衆のナショナリズムをそこそこ堅持するためには現状の姿勢を続けざるを得ないのだろう。

 数日前、某TV局のワイドショーに一色氏が出演していた。昨今、職を賭しても自分の主張を貫き通すほど骨のある公務員などそうざらにはいない。腰の引けた日本政府の対中国外交に活を入れた功績は大きく、国民栄誉賞クラスと言いたいところである。



エッセイ:「玉音放送(22)

2012-08-13 14:58:50 | エッセイ

エッセイ:「玉音放送(22)」2012.08
 
 現在80歳ぐらいの方はかなり鮮明に終戦当日を記憶し、また玉音放送を耳にされていると思う。
 天皇によるラジオ放送は玉音盤と呼ばれるレコード再生によるものであった。劣悪なラジオの放送品質のため音質が極めて悪く、天皇の朗読に独特の節回しがあり、また詔書の中に難解な漢語が相当数含まれていた為に、「論旨はよく解らなかった」という人々の証言が多い
 多くの日本国民においては「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ」という部分が戦時中の困苦と今後への不安を喚起させ、特に印象づけられて有名である。

 
私は、今回のエッセイ:「玉音放送」を書くにあたり調べてみて、改めて知ることばかりであった。
 玉音放送について、それほど関心を持ってこられなかった方、また終戦記念日を機に改めて読んでみたいという方のために末尾に “終戦の詔勅(しょうちょく)―玉音放送―(1945.8.15正午)口語訳” を記載したのでご参照いただきたい。

 時の総理大臣の鈴木貫太郎は、1945年(昭和20年)8月9日夜、ポツダム宣言受諾の是非を決する御前会議を上奏し、急遽宮城の地下防空壕で開催した。議論は軍とで紛糾し平行線をたどったため、鈴木総理は自らの考えを述べないで、翌10日午前2時、“天皇の思(おぼ)しをもって本会議の決定としたい”と天皇の「聖断」に委ねたのである。
 この「聖断」があと1週間早く下されていれば、広島、長崎に原爆が投下されることはなかったと思うと返す返すも残念だ。日本人のことにあたっての優柔不断、結論の先送りの姿勢は今も変わっていないのだ。

 鈴木貫太郎(1867年堺市生)は、日ロの日本海海戦での勝利に貢献した。その後侍従長になり、若き天皇に仕えた。二・二六事件(昭和11年)では暗殺の標的になり、銃撃を受け4発が命中したが、奇跡的に一命を取り止めた。
 太平洋戦争勃発後、緒戦は優位であったものの、日本軍は劣勢に立たされて開戦内閣である東条内閣が辞任に追い込まれる(昭和19年7月)。続く小磯国昭内閣も劣勢の戦局は挽回ならず、また和平交渉にも失敗して退陣(昭和20年4月)する。

 戦争終結内閣を率いるにふさわしい総理として推挙されたのが鈴木貫太郎だった。天皇と重臣たちの説得によって、77歳の老総理が誕生する。一刻も早く講和のテーブルにつきたかったが、抗戦論者たちに悟られないように表向きは戦争継続を表明しながら、その機会をうかがっていた。そして、機を見て天皇の「聖断」を仰ぎ、陸軍などの反対派を抑え、日本を終戦へと導いたのである。

 玉音放送が流される8月15日の朝、鈴木の私邸は国民風神隊の襲撃を受けたが、鈴木と家族は間一髪で難を逃れることが出来た。大役を終えた鈴木内閣は、その日、総辞職した。
警察の指示で鈴木と家族は転居を繰り返すことになった。そして3か月後にようやく故郷の関宿町(現在の野田市)に落ち着いたのである。(享年80歳)

 8月15日、午後7時総理官邸から、臨時のラジオニュース放送が流された。マイクに向かっていたのは、内閣を組織したばかりの総理大臣・東久邇稔彦であった。
 国民の動揺を鎮めるには、皇族としての権威の発動が必要だと考えられたからである。軍の一部に降伏を承知しない動きもあり、東久邇は秩序の維持こそが最優先と考えてラジオで国民に呼びかけたのである。試みは好意をもって迎えられ、国民も軍関係者たちも予想以上にスムーズに敗戦という現実を受け入れていく。東久邇の在任期間は54日と歴代総理の中で最短ではあったが日本を新しい体制に導くという一定の成果を上げることが出来た。(享年102歳)

 以上のバックグランドの下で、下記の玉音放送を読み返していただきたい。 

     “ 何百万人もの戦争の犠牲者のご冥福を祈りたい ”

  終戦の詔勅(しょうちょく)―玉音放送―(1945.8.15正午)口語訳
 私は、深く世界の大勢と日本国の現状とを振返り、非常の措置をもって時局を収拾しようと思い、ここに忠実かつ善良なあなたがた国民に申し伝える。
私は、日本国政府から米、英、中、ソの四国に対して、それらの共同宣言(ポツダム宣言)を受諾することを通告するよう下命した。

 そもそも日本国民の平穏無事を図って世界繁栄の喜びを共有することは、代々天皇が伝えてきた理念であり、私が常々大切にしてきたことである。先に米英二国に対して宣戦した理由も、本来日本の自立と東アジア諸国の安定とを望み願う思いから出たものであり、他国の主権を排除して領土を侵すようなことは、もとから私の望むところではない。

 ところが交戦はもう四年を経て、我が陸海将兵の勇敢な戦いも、我が多くの公職者の奮励努力も、我が一億国民の無私の尽力も、それぞれ最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は必ずしも好転していないし、世界の大勢もまた我国に有利をもたらしていない。それどころか、敵は新たに残虐な爆弾(原爆)を使用して、しきりに無実の人々までをも殺傷しており、惨澹たる被害がどこまで及ぶのか全く予測できないまでに至った。

 なのにまだ戦争を継続するならば、ついには我が民族の滅亡を招くだけでなく、ひいては人類の文明をも破滅しかねないであろう。このようなことでは、私は一体どうやって多くの愛すべき国民を守り、代々の天皇の御霊に謝罪したら良いというのか。これこそが、私が日本国政府に対し共同宣言を受諾(無条件降伏)するよう下命するに至った理由なのである。

 私は、日本と共に終始東アジア諸国の解放に協力してくれた同盟諸国に対しては遺憾の意を表せざるを得ない。日本国民であって前線で戦死した者、公務にて殉職した者、戦災に倒れた者、さらにはその遺族の気持ちに想いを寄せると、我が身を引き裂かれる思いである。また戦傷を負ったり、災禍を被って家財職業を失った人々の再起については、私が深く心を痛めているところである。

 ぜひとも国を挙げて一家の子孫にまで語り伝え、誇るべき自国の不滅を確信し、責任は重くかつ復興への道のりは遠いことを覚悟し、総力を将来の建設に傾け、正しい道を常に忘れずその心を堅持し、誓って国のあるべき姿の真髄を発揚し、世界の流れに遅れを取らぬよう決意しなければならない。
 
  あなたがた国民は、これら私の意をよく理解して行動せよ。

                  
                     了


参考:池上彰;日本の総理(小学館)


エッセイ:「私に」何ができる?(21)」

2012-08-10 20:07:05 | エッセイ


エッセイ:「私に何が出来る?(21)」2012.08


 政治家のリーダシップとは何か、これほど難しい問いもないだろう。昨今の総理大臣は、リーダシップを問うこと自体が論外と言える人物ばかりである。と言うのも自民党小泉総理以降に6人が約1年ごとに代わっているのである。
 町内会の会長でも、一端選出されたら任期中に交代を求める住民などいないはずだ。政権与党は自ら選んだ総理の首をいとも簡単にすえ代える節操のない集団である。そもそもが、あまりリーダシップを発揮されても善し悪しと言う無責任さで人選が行われているような気がする。

 そいう中にあって、石原都知事の言動に正面切って反論できる政治家やマスコミ人はほとんどいない。うわべだけの評論家ではまともに彼とは太刀打ちさえもできない。なんでこんなに彼の強気が通用するのか。私見だが、信念と度胸だろうか? 彼は日本人が失いつつある“日本人の誇り、愛国心など”を叫び続けている。これが彼の強さであり魅力でもあるが、同時に警戒される部分でもある。

 今年、石原知事が尖閣諸島を地主から東京都が買い取る交渉をしていると突然発表したのである。島は国有地だと思っていたら、所有者は個人で国は借地人であると。東京からおよそかけ離れた東シナ海にある島を都が買い上げるというものである。
 これには都民や都議会から猛反発が出るだろうと危惧したのだが、意外や意外にも大きな反対も起きなかったのである。それどころか、島を買い取る寄付金が予想以上に集まったことで大方の国民は安堵し、喝采したのではないかだろうか。
 しかし、反石原や口やかましい評論家は、「いつものスタンドプレーで、都知事の職責を超えており、本来国が扱う事案である」と異議を唱えたはずだ。

 知事の行動に一番戸惑ったのは政府であろう。歴代の自民党政府は、中国から反発を恐れて事なかれ主義を通すばかりである。民主党政権も同様で、「領土問題は存在しない」としてきたのだから、借地などせずにさっさと買い取りをすべきだったであろう。
 石原知事に一本取られて、政府は慌てて動き出したのは無様(ぶざま)であった。何百人も国会議員がいるのだから、与野党関係なくこのくらいの知恵を出せばよいと思う。しかしそれも出来ないのだから“税金泥棒の木偶(でく)の棒”と揶揄されてもやむを得ない。

 本土から約1700キロ南にある沖ノ鳥島の日本の排他経済水域EEZで、2001年頃から中国海洋調査船が軍事目的の海図作成と思われる調査を行ってきた。日本が抗議をすると中国側は満潮時にごく一部の岩しか水面に残らず単なる岩礁であり、EEZとは認められないと主張したのである。その後国連に対して中国と韓国は岩礁にあたると抗弁をしてきたが、2012年4月、国連大陸棚限界委員会により正式に日本の主張通りEEZであることが認定されたのである。

 国民の多くは、政治家はこんな岩礁もどきの島などに首を突っ込むよりも、日本の経済や国民の生活を心配して欲しいと言うのが本音であろう。
 しかし、沖ノ鳥島が風化などで満潮時に海面の下に隠れてしまうと、日本の国土面積を上回る排他的経済水域EEZが失われてしまうのだ。石原知事は、島を人工構築物で保護するとともに、経済活動を促進すべく、実験的発電所建設、漁業活動計画、気象・海象観測などの対応策打ち出している。
 中国が虎視眈々と狙って実効支配をおこしかねない東シナ海や南太平洋の日本のEEZを死守することは、平和ボケした政府、政治家や役人などでは本当に心もとない。

 2010年、尖閣諸島沖で海保庁の巡視船への違法操業の中国漁船衝突事件に伴い、中国政府は日本に対して矢継ぎ早に報復措置を打ち出してきた。中でも、日本が最も恐れたレアアース(メタル)の輸出差し止めという深刻な事態が起こった。それ以降の世界中を巻き込んだ“レアアース・ショック”である。

 レアアース(以下REという)は、それなしではほとんどの工業製品が出来ないハイテク産業のビタミン剤と呼ばれるものである。REを使ってハイテク産業を成長させることが出来た国が、次世代の、未来の産業を牛耳ることが出来ると言っても過言ではない。

 中国には世界の埋蔵量の5割を占めるRE資源が存在している。1980年以降、なりふり構わぬ安値攻勢に踏み切ったため、米国をはじめ中国以外の鉱山はほとんど閉山に追い込まれた。その結果、中国は世界のRE資源の90%以上を生産・供給する現在の状況を作り上げたのである。

 中国はREの価格を吊り上げると同時に、日本をはじめ外国企業の国内誘致を強く推し進めている。狙いは、世界経済の覇権を握るために必要な日本をはじめ先進諸国のハイテク技術の搾取と集積である。資源とハイテク技術の両方を握られたら日本の将来は完全に断たれてしまう。
 これを打開するためには、日本がRE資源を中国以外から調達する必要がある。理想を言えば、REの一部を自国で調達することが望ましいのである。

 2011年7月、加藤泰浩氏(東大院工学系研究科・資源フロンティアセンター教授)は英国の科学誌『ネイチャー・ジオサイエンス』にて“太平洋の海底にRE(希土類)を含む泥の大鉱床がある”ことを発表した。

 公表の大きな目的の一つは、RE資源を独占する中国を強くけん制することである。また日本と中国だけが対峙するのではなく、出来るだけ多くの国を巻き込むことが意図であるという。この目的を達するためには、南太平洋の公海上とフランス、米国のEEZにあるREの情報を公表するだけで十分だと。
 日本が権利を有するEEZ(自国の沿岸から350キロの経済的な主権が及ぶ水域)の面積は世界6位になる。日本の最東端(本州から1800キロ)にある南鳥島(一辺が2キロの正三角形、最高標高9メートル)のEEZの海底に「マンガン団塊」を発見、その下(10~20メートル)には「レアアース(RE)泥」が眠っているのだ。

 しかし資源が眠っていることが分かっても、実際にそれを開発できなければ「宝の持ち腐れ」ということになる。

 加藤氏によると、水深5000メートル以上の海底から、レアアースFPSO船でRE泥を吸い上げる。島に建設した工場でREを抽出し、元素ごとに分離・精製する。残土は、中和処理して南鳥島の埋め立てに利用すれば一朝二石になる。これが稼働すれば、日本のRE需要の10%を供給出来るようになると。
 これに対して、石原知事は「南鳥島は国防上の非常に重要な戦略拠点になので、直ぐにでも整備すべきだ」と言っており、加藤氏のRE開発プロジェクトと合致すると。

 今後REの需要はますます増え、価格は間違いなく上昇していく。日本がわずかでも自給することが出来れば安定確保する道が開けてくる。中国だけに頼り切っている状況では、いつ供給が止まってもおかしくない。日本のREプロジェクトをつぶすために、中国は間違いなく安値攻勢を仕掛けてくる。
 しかし日本のRE需要の10%をまかなっているだけなので残りの90%のREを安く買うことが出来、日本経済全体から見たら得になる。日本がREの価格をコントロールする調整弁を握ることが出来るのだと。これこそが「日本の取るべき攻めの資源戦略」であり中国を翻弄するものだ。

 「目標は5年で最初のレアアースを生産したい」停滞しかけている日本のハイテク産業を再び活気づかせ、さらに新規のハイテク産業を創出する起爆剤になるかもしれない。

 加藤氏曰く、最近無性に日本の行く末が心配になります。私たち大人が、はたして日本の子供達のために、明るく輝く未来をちゃんと残せているのだろうか?そんなことを日々自問しています。「わたしにいったい何が出来るのか?」
 私は何としても、この「南鳥島レアアース泥プロジェクト」を成功させて、子供達に明るい未来があることを見せてあげたいと心から願っている。

 今回、一研究者が日本国の未来を見据えて大きなプロジェクトを立ち上げ、推進しているのを知って驚愕した。しかもその理念には、ただただ敬服するのみである。

                    了

参考:加藤泰浩著;太平洋のレアアース泥が日本を救う(PHP新書)



文月・謎かけクイズ(8)

2012-08-05 20:07:19 | 謎かけクイズ
          文月・謎かけクイズ(8)


1.土用のウナギ      とかけて:  いじめの撲滅を目指す熱血教師    ととく             
              その心は:  どちらも(*) 暑(熱)さが勝負           

2.お盆          とかけて:  高級官僚       ととく             
              その心は: (*) 送り迎え(迎え火送り火)が習いである                    

3.五輪選手インタビュー  とかけて:  シャチハタ    ととく             
              その心は: (*) スタンプのように皆が感謝と言い


4.平泳ぎ北島康介     とかけて:  タイムセールスの顧客   ととく
              
              その心は:  (*) 水(品物)をかき分ける力である


5.五輪ジュリー(陪審員) とかけて   自信過剰の医者   ととく                     
              その心は:  (*) 誤審(誤診)が目に余る