板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

エッセイ:「日本の若者たち(10)」 2017.05

2017-05-14 10:28:16 | エッセイ
エッセイ:「日本の若者たち(10)」 2017.05


 今話題の人といえば、中学生のプロ天才棋士藤井聡太四段(14歳)だ。プロデビューから公式戦で、6タイトルの永世・名誉称号をもつ羽生9段をも破る破竹の17連勝(5月12日)を成し遂げている。連勝はどこまで続くのだろう。 
 
 同時に中学生でプロ棋士になった神武以来(じんむ このかた)の天才で現役最年長の加藤一二三九段(77)が持っていたプロ棋士デビュー最年少記録を62年ぶりに更新。

 藤井(名古屋市)が天才といわれ始めたのは 小学2年生(8歳)の時。「詰将棋解答選手権」に出場、プロ棋士でも解けないような難問をものすごい速さでスラスラと全問正解して将棋界に衝撃が走ったという。
 将棋界は才能を持った人間の集まりで“天才”の基準は厳しい。そんな中でも藤井は規格外の存在、まさに天才である。
 将棋界では大器晩成がほぼ実現しない。早熟なことは才能の証明という世界でもある。
 
 加藤一二三九段がプロになった1954年に初代ゴジラが登場した。62年ぶりにその記録を更新した藤井四段は将棋界に現れたシン・ゴジラなのかもしれない。


卓球: 世界の卓球界は中国の独壇場である。中国の卓球界の層は厚く、オリンピックや世界選手権の代表になれない。そのため他国に帰化してチャンスを狙う選手がいるくらいだ。

 かっては日本のお家芸であった卓球は、中国「一強」の前に長く低迷期が続いた。ようやく女子は福原愛の成長とそれに続く平野、石川らが、男子は水谷隼、丹羽考希、村松雄斗らが打倒中国を射程内に捉えはじめたのだ。 
 ところが女子U-18では、世界ランキングは平野美宇、伊藤美誠と加藤美優が独占。これら選手の集まりを「黄金世代」とも呼ぶのだそうだ。
 
 2017年4月、アジア卓球選手権では、女子シングル平野美宇(11位)は準々決勝であの丁寧(世界1位)、準決勝で朱雨玲(同7位)、決勝で陣夢(同5位)を破り優勝した。 

 平野は期待を超えた大仕事をやってくれた。当人や若手選手にとっては打倒中国燃えているだろう。同時に東京オリンピックの代表の座が彼女らにられる戦国時代の幕開けでもある。

 昨年12月、南アフリカで行われた世界ジュニア選手権で、日本は男女ともに団体戦で金メダルを獲得。男子個人戦でも張本智和が金メダル、張本と龍崎東寅のダブルスで銀メダル。女子も加藤美優と平野美宇のダブルスで銀メダル。さらにミックスダブルスで松山裕季と早田ひなが銀メダルにかがやいた。

 しかも世界ランキングでは、女子U-15で長崎美柚(1位)、木原美悠(2位)、浅井一恵(4位)である。男子U-18で張本智和(1位)、U-15で張本智和(1位)、宇田幸矢(4位)である。
 
 「JOCエリートアカデミー」「関西アカデミー」「石田卓球クラブ」「ファイナルウイン」等での選手発掘体制がようやく日の目を見つつあるのだ。
 根気があって、我慢強く、最後までやり遂げることを是とする日本人は、まさに「卓球に剥いている人種」日本人の国民性にぴったりの競技だそうな。


 フィギュアースケート: 第一人者であった浅田真央選手がついに引退。華のある美しい演技と真央スマイルは世界中のファンをとりこにした。 ”真央ちゃん”の演技を見ることが国民的喜びであり、癒されたと言っても過言ではない。
 気の早い人からは「国民栄誉賞」という声もある。私もその一人だが、チョッと若すぎるか、ナ。

 最近はロシアの若手の成長が凄い。浅田真央引あと継ぐのは誰だろう。まずは練習量が豊富でまじめな宮原智子(余談であるが両親とも医師)というところか。
 しかし卓球界と同様に優秀な若手選手が目白押だ。世界ジュニアで活躍する本田真凛、坂本花織、樋口新葉らである。
 なかでも本田真凛はそのかわいい美貌に加えてしなやかな身体の使い方が真央二世とも言われる。ジュニア大会でも自己ベストを出し、平昌オリンピックへの代表も狙える成長株らしい。

 野辺山合宿というのがある。毎年夏に行われる「ノービス選手(※6月30日の時点で8歳から12歳)」を対象にした「全国有望新人発掘合宿」のことだ。

 群雄割拠のノービス・ジュニア世代と言われる昨年の全日本ノービス選手権大会では、ノービスAクラスにおいて、樋口新葉と島田高志郎が優勝した。
 全日本ジュニア選手権で優勝した本郷理華と田中刑事を含めた数名の推薦選手が出場。新人賞には、推薦選手として出場した木原万莉子選手と山本草太選手が選ばれました。
 
 一方、宇野昌磨(19)は2017年世界選手権では300点を超える僅差で羽生に次ぐ2位となった。インタビューで羽生をして国内での試合(宇野との)はやりたくないと冗談を言わしめた。
 宇野はISU公認大会において史上初の4回転フリップを成功させたとして、国際スケート連盟に認定されたほどジャンプが安定している。


 競泳: 日本にとって五輪のメダルを多く狙える種目であり、世代交代が着々と行われている。もちろん池江璃花子(自由形、バタフライ)、長谷川(バタフライ)、今井(平泳ぎ、個人メドレー)、持田ら高校生ロス五輪代表である。
 また、最年少で20年ぶりの中学生での五輪代表に選ばれた酒井夏海選手など若手有望株が成長している。

 何といっても圧巻は、中学生で自由形、バタフライで日本記録を出した池江だ。2000年7月4日、自宅の風呂場で水中出産により誕生。生後2ヶ月頃から幼児教室に通い超早期教育を受ける。
 幼児教室の講師を務める母親が、脳の発達によいとされる雲梯(梯子を横にしたぶら下り器)に取り組む。生後6か月で母親の親指を握ってぶら下がり、1歳6か月の時には鉄棒の逆上がりをこなしたという。
5歳の時には、自由形、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの4泳法すべてで50mを泳げるようになったというから凄まじい。

スケートボード: 東京五輪から採用される新しい種目である。世界での人口は5000万人とそこそこいるが日本ではまだなじみが少ない種目である。
 私のかすかな記憶であるが、1960年ごろ有名になったウエスト・サイド物語の中でジョージ・チャッキリスと不良仲間が、NYの高速道路の下の一角で珍しいスケートボードに興じていたのを思い出す。
 
 スケートボードの有望選手は、世界選手権で優勝した堀込雄斗(16)、まさに今、日本が世界に誇るトッププロスケーター瀬尻稜(18歳)。2015年AJSAプロツアー最終戦で優勝を果たした、池(14歳)辺りが有力だそうだ。

 瀬尻 稜11歳にして「日本スケートボード協会」AJSAでグランドチャンピオンを3年連続で獲得する驚異のスケートボーダーだ。また初優勝は史上最年少での獲得でもある。
 また池田 は、2020年東京五輪に最も近いと囁かれてる一人。国内外で活躍する池田選手は2015年のマレーシアで行われた「FISE WORLD MALAYSIA」で見事優勝、2016年「AJSA PRO AJIAN」でも優勝、と好成績を納めている。


  ボルタリング: これも東京オリンピックで採用される新種目になるボルタリング(スポーツクライミングの一種で岩や石を登るスポーツ)は、マイナー種目で日本にメダルのチャンスありと多いに期待が掛かる。
 ボルタリングは体重コントロールが大きな要素でもあり日本人向きであると言われている。
 
 2017年W杯で楢崎智亜(昨年世界選手権優勝,W杯総合優勝)は2位。今期世界ランク1位の渡部桂太は3位。女子の野口啓代は2位、野中生崩(19)3位で、国別ランクで日本は1位なのだ。


 常日頃、国旗や国歌にニヒルな態度をとる日本人ですら、日本人選手のメダル獲得後に日の丸がポールに上がり君が代が流れると何とも言えない高揚感を感じるという人は少なくないはずだ。

 近代オリンピック発祥の原点は、オリンピックを通じて世界平和を実現しようと訴えたものである。
 しかしながら、オリンピックには世界の大国が国威発揚の場としても力を入れるのは当然である。東京オリンピックを主催するからには日本もそれなりの覚悟を持って望むであろう。成功の正否は、きれいごとではなくてメダル数が重要だと言っても過言ではない(私見)。

 よく言われているクーベルタン男爵明言の背景である。第四回ロンドン大会の陸上競技では、英・米の対立激化で両国民感情のもつれは収拾できないほど悪化していた。その時に行われた教会のミサで、IOC会長のクーベルタンが「このオリンピックで重要なことは、勝利することより、むしろ参加することであろう」というメッセージが語られたのである。