つれづれなるまま映画を観て過ごす「ベッチーの映画三昧日記」

映画検定1級のベッチーのベッチーによるベッチーのための映画館鑑賞記録gooブログ。
コンテンツ:ベッチーの映画三昧日記

「偶然と想像」

2022-01-20 19:54:38 | goo映画レビュー
●ベッチー的映画三昧日記
 フランス映画を感じさせるおしゃれな会話劇「偶然と想像」


「偶然と想像」は 「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督が同作の前に撮った作品で、 第71回ベルリン国際映画祭にて銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した。

 本作の特徴は今まで3時間を超す長編映画が多かった濱口監督が初めて試みた短編集の映画ということだ。
 タイトルどおり「偶然」をテーマに親友同士、大学教授と生徒、20年ぶりに再会?した高校の同窓生の対話の3つの物語が織りなされる。
 
 濱口監督は自身で脚本を書くオリジナル作品が多いが、本作はその極み。1篇がほぼ40分の3つの物語はテーマは同じだが全く関連はしていない。しかし、とにかくシナリオが秀逸で観終わった後、全体としての印象が、まるで1冊の文学小説を読み終えたような感覚を得た。

 また、極端な長廻しショット、対の会話の応酬、一見棒読みのようなセリフ回しは時にフランス映画を観ているような錯覚を起こさせた。濱口監督の作品は文学作品のように言葉の遊びに溢れている。その言葉が発せられる役者の演技と妙にマッチしているのは、彼の頭の中で細部にわたって計算し尽くされているからだろうと感じた。

 聞くところでは濱口監督は「ドライブ・マイ・カー」で描かれていたように、役者との本読みにかなりの時間を費やすとか。本作も、自然っぽく、畳かけるように繰り出される会話の応酬に出演者と監督が時間をかけ、十分の本の共有をしてきたことが推察できる。
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「クライ・マッチョ」

2022-01-20 19:47:33 | goo映画レビュー
 ●ベッチー的映画三昧日記 
 今なお、イーストウッドが老いた自分を全てスクリーンにさらけ出している姿を観るだけで感動「クライ・マッチョ」


 本作「クライ・マッチョ」を観る数日前にクリント・イーストウッド監督デビュー作「恐怖のメロディ」をWOWOWで鑑賞した。そこには50年前の脂の乗り切ったイーストウッドがいた。

 それから50年、彼の監督50周年記念作が「クライ・マッチョ」である。主人公は実生活のイーストウッドを彷彿させるテキサスで孤独に生きるロデオ界スターだったカウボーイのマイク。彼が元雇い主から「別れた妻からメキシコ人妻から息子ラフォを取り戻してほしい」と頼まれる。マイクはメキシコシティへ行き、闘鶏をしながら路上生活を送るラフォを見つけ、母親の差し向けた追手や警察から逃れながら、共に米国を目指すというもの。

 「マッチョ」というタイトルはラフォが飼っている闘鶏の名だが、実は「男の強さ」とは何ぞやというのが本作のテーマだ。
 まだ子どもで辛い生い立ちのラファは強さにあこがれを持ち、強くなることを欲している。一方マイクはラファとの道行で強さを誇ってきた自分の生き方を顧みることになる。マイクがたびたび口にする「強さ」の真の意味は人生の変遷の果てに見せるマイクの行動全てだ。
 そして、二人はそれぞれ新しい生き方に強く踏み出していく。

 イーストウッドの映画人生をほぼ同時代で観てきた世代の私としては本作の評価などどうでもよい。映画の中のマイクとイーストウッドが時折重なるような不思議な感覚になってしまう。今なお、イーストウッドが老いを含めて自分を全てスクリーンにさらけ出している姿を観るだけで感動してしまう。
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