つれづれなるまま映画を観て過ごす「ベッチーの映画三昧日記」

映画検定1級のベッチーのベッチーによるベッチーのための映画館鑑賞記録gooブログ。
コンテンツ:ベッチーの映画三昧日記

『ヒア アフター』 75点

2011-02-25 18:41:51 | goo映画レビュー

ヒア アフター

2010年/アメリカ

ネタバレ

「ヒアアフター」、三者三様に生きることへの喜びを見出したという解釈で良いのでしょうかイーストウッド様?

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★☆☆70点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆80点

●ベッチー的映画三昧日記
「ヒアアフター」

 80歳を超えた巨匠クリント・イーストウッドの創作意欲はとどまるところを知らないようだ。昨年の「インビクタス」に続いてこんなに早く新作を観ることが出来るとは思っていなかったが、本作「ヒアアフター」は「硫黄島からの手紙」以来のコンビとなるスティーヴン・スピルバーグ製作総指揮で贈るスピリチュアル・ヒューマン・ドラマだ。

  死後の世界をテーマに、それぞれの形で死と向き合った3人の人生が運命に誘われるがごとく一本の糸のように絡み合っていくさまを描いている。ともすれば、オカルトやホラー扱いになりそうなお話も巨匠の成せる技か、イーストウッドの手にかかると何となく格調高く、それなりの作品に仕上がってしまう。本作も映画職人として彼の手腕はさすがで、ストーリーの運び方、品の良い画づくり、心地よい音楽と最後まで安心して観ることが出来る。
 しかし、イーストウッド監督作品だと過剰に期待し過ぎた分、近年の彼の作品群の中では特に唸らされるものが感じられなかったというのが、私の正直な感想だ。それは、監督がメッセージを強くアピールすることなく、観る方に委ねているエンディングのせいかもしれない。

 主演は「インビクタス 負けざる者たち」に続いてイーストウッド監督作連続出演となったマット・デイモン。共演に「シスタースマイル ドミニクの歌」のセシル・ドゥ・フランス、それから懐かしい顔、マルテ・ケラーが出ている。

 パリのTVキャスター、マリー(セシル・ドゥ・フランス)は、恋人と東南アジアでのバカンスを楽しんでいた。そこで、大津波に襲われ臨死状態から蘇生し、九死に一生を得る。それ以来、死の淵を彷徨っていた時に見た不思議な光景が忘れられず、結果として恋人もポストも失うことになる。やがて、マリーは、自分の体験したものは何たるかを独自に調査し始める。
サンフランシスコに住むジョージ(マット・デイモン)はかつて霊能者として活躍していたが、今では自らその能力と距離を置き、工場で働いていた。普通の人として暮らしたいジョージは、ある女性と恋仲になるが、彼の霊能力を知った彼女の頼みで仕方なく行った霊視が彼女の隠していた過去を知る形になってしまい、二人は離ればなれになる。
 ロンドンに暮らす双子の少年ジェイソンとマーカスは母親が薬物中毒だったため、兄弟だけがお互いに信頼できる存在だった。ところが、突然の交通事故で兄ジェイソンがこの世を去ってしまう。もう一度兄と話したいと願うマーカスは霊能者を訪ね歩き、やがてジョージの古いウェブサイトに行き着く。
  そんな3人が、ひき寄せあうようにロンドンで交錯していくことになる…。
 
 まず、スマトラ地震津波を彷彿させる冒頭の迫力ある津波シーンが凄い。まるでドキュメンタリーのようで、何も知らずに観たら、ディザスター・ムービーと見間違うくらい。しかし、その後のマリーの苦悩を描くには必要な映像だったのだと先に行くほど納得させられる。
 また、アメリカ人のジョージが好きな作家が「二都物語」のチャールズ・ディケンズで、全く違う3つの話が交錯していって最後に3人が出会うのがロンドンというのも粋な設定だ。
 精神的に一番生きることに悲惨な状況にあるのはマーカス少年かなと感じたが、最後にジョージの能力で兄と話せた結果、再び生きる道を歩みだす。この時ジョージが少年に語った言葉が全て少年の兄の言葉だったのか?ジョージ自身の生きることへの確認のメッセージのような気がする。そして、少年からジョージとマリーの出会いの場が誘われて、ラストシーンとなる。

 これで、終わり?というエンディングで、私なりに考えたが、三者三様に生きることへの喜びを見出したということで良いのでしょうかイーストウッド様?

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『白夜行』 70点

2011-02-21 23:07:36 | goo映画レビュー

白夜行

2011年/日本

銀残しの画面が昭和と言う時代を妙にうまく映し出し、映画的な作品に仕上がっていただけに最後が悔やまれる「白夜行」。

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆65点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★☆☆65点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★☆☆65点

●べッチー的映画三昧日記
「白夜行」

WOWOWさんは、よほど東野圭吾がお好きらしい。今までも同局のWドラマ枠で東野氏原作物をドラマ化してきたが、今回は東野圭吾の代表作の本命「白夜行」の映画化とその続編と言われている「幻夜」のTVドラマ化に取り組んだ。WOWOWはペイ・チャンネルだからこそ出来る自由度を活かし、民放ではなかなか制限があって取り組めないテーマなどに果敢に挑み骨太のドラマを作ってきた。その製作者の意気込みが2つの長編原作を映画とTVドラマシリーズの連作で見せるというユニークな本企画につながったような気がする。

東野圭吾の原作「白夜行」は、ある殺人事件を軸に、容疑者の娘・雪穂と被害者の息子・亮司が歩む19年間に及ぶ壮絶な人生を描いた大河ミステリーだ。
小説では二人に関わる多くの登場人物がいるが、映画化にあたり、膨大なエピソードを大胆に、しかし二人の歩む軌跡を損なうことなく絞り込んでいる。大ベストセラーの映画化は既読者がそれぞれ思い思いの読み込みをしているので、どのように絞り込んだ脚本を作っても賛否が分かれるのは必定である。

本作の場合、その意味では主人公二人の描き方は、原作に忠実な方だと思う。最も特徴的なのは、事件以後の雪穂と亮司の2人が、一緒の画面に登場しないことである。つまり2人は顔を合わせることがなく、どのような心理状態なのか説明的描写も控えめである。しかし、雪穂と亮司は、互いに唯一無二の存在で、暗い秘密を共有することで堅固な絆で結ばれている。
行間から想像する小説と違い、映画は役者が演じている以上、彼らの表情やしぐさで、観客は彼らの心情を計り知ることができる。そこが映画版の見どころとも言える。

そこで、ポイントになるのがキャスティングだ。並外れた美貌と冷血な心を持つ雪穂を今の若手で誰が演じられるのか?と思っていた。正直、堀北真希では少しイメージが違うのではと思っていたが、抑揚を押し殺した言い回しや、彼女の端正な顔立ちが、かえって悪女役を際立たせた感じだ。最近どの映画にも顔を出す高良健吾が亮司役だがあまりにセリフが少なく驚いた。二人を追い続ける刑事役の船越英一郎、始めは抑えの利いた演技でよかったが、最後の15分になって、突如として2時間ドラマ調に変わってしまったのはいただけない。それまでの観客の観方に委ねるトーンが、悪しき日本映画によくある、非常に説明的になってしまったのが残念だ。あそこまで詳細に事件の顛末を描く必要はないように思うのだが。

時代考証にこだわり、ブルーっぽい銀残しの画面が昭和と言う時代を妙にうまく映し出し、映画的な作品に仕上がっていただけに最後は悔やまれる。

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『ゲゲゲの女房』 75点

2011-02-07 21:10:42 | goo映画レビュー

ゲゲゲの女房

2010年/日本

映画版「ゲゲゲの女房」は昭和30年代、高度成長期に向かう貧しかった庶民の生活をリアリズムに描いている。そこには簡単に笑いにしてしまうような軽さはない

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★☆☆70点

●ベッチー的映画三昧日記
「ゲゲゲの女房」

 映画版「ゲゲゲの女房」はNHK朝のテレビ小説として昨年4月から9月まで放映されたドラマ版と全く異なるテーストを持った作品となっていてびっくりした。実際には映画版の企画が先行で進み、TV放映前の2010年春にクランクアップしていたという。

 松下奈緒と向井理コンビのNHKドラマ版が国民的人気を呼んだので、それにつられて映画を見に行った人たちは、映画版にかなり困惑したのではないだろうか。
TV版は貧乏暮しをテーマに置きつつも、あくまで明るく笑い飛ばし、アットホームのドラマ仕立てにしたのに比べて、映画版は高度成長期時代に向かう昭和30年代、貧しかった庶民の生活をリアリズムに描いている。そこには簡単に笑いにしてしまうような軽さはない。必死になって時代を生きていく市井の人々の日々を淡々と映し出していく。全体のトーンは、水木しげるのアシスタントだったつげ義春の描く世界のようだ。

 個人的には、映画版夫婦役の吹石一恵と宮藤官九朗の方が、実際の水木夫妻に似ているように思えた。官九朗は外面的雰囲気が水木しげるに良く似ているし、吹石も現代劇に出ている時と違い、押し凝らした演技が当時の女性らしさを醸し出し、面長な顔立ちが実際の武良布枝さんに似ており、ベストな配役だったと思う。
 
 本作が2作目となる鈴木卓爾監督については、斬新な映像作りにその非凡さを感じた。家の中は細部のディテールまで昭和30年代トいう時代にこだわっている一方、外の風景については反対に、現在の風景の中で30年代を演じている。田んぼの遠景にモダンなマンションが映っていたり、駅前の背景に高層ビル群があったり、かつての天井桟敷、寺山修二の作品を彷彿させる実験的映像となっている。また、随所に心象なのかどうかわからないが、色々な妖怪が画面に出ていたり、いるはずのない茂の母親が出て来て布枝に茂のことを語ったりするシーンが挿入される。
 これらを作家の個性と観れば面白いということになるのだが、やや一般鑑賞者には面食らう作りかもしれない。私は、昔の松竹風映画の匂いを残しながら、今の空気を感じさせる本作を気持ちよく観ることが出来た一人である。

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『クロッシング』 70点

2011-02-05 13:42:05 | goo映画レビュー

クロッシング

2008年/アメリカ

ブルックリンの3人の警官が抱える悩みと結末が交錯しかかって、交錯しないままで、終わってしまったという感じの「クロッシング」。

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆65点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★☆☆65点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★☆☆65点

●べッチー的映画三昧日記
「クロッシング」

 デンゼル・ワシントンがアカデミー賞主演男優賞を受賞した「トレーニングデイ」の監督アントン・フークアが、その時デンゼルの相方を務めたイーサン・ホークと再び組み、警察を舞台に作った犯罪アクションドラマが「クロッシング」だ。

 原題の「BROOKLYN‘S FINEST」は、直訳すれば、「ブルックリンの警官たち」。
 映画はニューヨークのブルックリン犯罪多発地区で働く警官たちの姿を描くが、特にリチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードルの3人にスポットをあて、警官の仕事と自身が抱える心の問題に深く迫っていく。退職を目前にしたリチャード・ギア演じるベテラン警官エディは、長い警官生活の果て、腐敗しきった世の中に絶望して自らの人生に空虚感を抱いている。信仰深く、家族想いの麻薬捜査官役の刑事・サル役のイーサン・ホークは、優秀な刑事だが、家族のために大金を用立てなければならず道を踏み外す。そして潜入捜査官として、自らの人生を犠牲に捜査を続ける刑事・タンゴ役のドン・チードルは、二つの顔に混迷しだす。全く異なった任務に就いている3人の動きを「24」のように同時間進行形で描いていくので、これが最後にどう交錯(クロッシング)し、どんな結末になるのかな、と大いに期待していたら肩透かしをくらった。3人の抱える悩みと結末が交錯しかかって、交錯しないままで、終わってしまったという感じだ。

 「クロッシング」という邦題は、やはりドン・チードルがL.A.の警官を演じ、2005年アカデミー作品賞に輝いたポール・ハギス監督の「クラッシュ」をもじったものか。1つの交通事故を起点にいくつもの事件がクロスしてそれらが最後に見事に集約されて、多民族国家アメリカが抱える苦悩、問題を提示した「クラッシュ」は斬新な企画で傑作だった。「クロッシング」も要素として、警察、多民族、人種差別、貧富は似ているものの、登場する3人のアメリカ人の心の内面ドラマに終始してしまったので、大きく膨らんだテーマが、着地点が見えずにやや消化不良の結末になった感がする。
 個人的には、ダークな画面づくりで好きな映画のタイプだが、その点が残念。 

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