つれづれなるまま映画を観て過ごす「ベッチーの映画三昧日記」

映画検定1級のベッチーのベッチーによるベッチーのための映画館鑑賞記録gooブログ。
コンテンツ:ベッチーの映画三昧日記

『グラン・トリノ』 90点

2009-04-30 20:09:33 | goo映画レビュー

グラン・トリノ

2008年/アメリカ

洋画第1位 「グラン・トリノ」このヴィンテージ・カーはイーストウッド自身を投影した姿だ

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆90点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★★95点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆85点

2009年04月30日
●ベッチー的映画三昧日記
「グラン・トリノ」

 ハリウッドの大御所クリント・イーストウッドの「チェンジリング」に次ぐ新作、4年ぶりに自ら主演しているが、公開前に俳優としての引退宣言が流布したため、いっそう話題をあおる形となった。
 「グラン・トリノ」は大作ではなく、扱うテーマも隣人との関係から派生する問題(実際はこれがとても深くて重い)で、イーストウッドの作品の中では規模的には小粒の部類に入る。
 しかし、本作は間違いなく、イーストウッドの映画人生の集大成とも言える心に残る作品となった。
 舞台設定は一匹狼の老ガンマンが悪党にいじめられている村人を助けるといった西部劇。悪党に対峙するときはダーティ-・ハリー。そして、「ミスティック…」「ミリオン…」など近年の作品に見られる生死観等々。

 イーストウッド演じるウォルト・コワルスキーは退役軍人で、その後の人生をアメリカ経済の象徴フォード自動車の組立工として生きてきた典型的アメリカ人。頑固一徹の性格はフロンティア時代の遺物のようで、日本車トヨタに勤務する息子を寄せ付けず、家族とも孤立。自分もポーランド移民なのに、自分以外は大嫌い。やたら構わず人種差別発言はするは、自分の庭に入った者には、すぐ銃を向ける、という設定。簡単に言えば、「ダーティ-・ハリー」がそのまま年をとった感じ。特にチンピラに向って、空手形の銃で撃つ仕草はまさに、ハリー・キャラハンなのだ。
 人生の終末にかかったこの男の生き方が、隣人のモン族(ビルマ)の姉弟との出会いにより変わっていく。少年が近所のチンピラに脅かされ、男が大切にしているフォードの名車「グラン・トリノ」を盗もうとする。未遂に終わるが、そのお詫びとして少年は男の奉仕活動を手伝うことになる。男は少年を一人前の男に成長させようと思うが、チンピラたちはひつこく少年に付きまとう。男の正義心からの行動がかえって仇になり、ある惨劇が起こる。

 復讐心に燃える男と少年。しかし、男が最後に選んだ方法は…。

 私など、単純な男だから、最後は必殺仕事人になって落着かな、と思ってしまったが、御見それしました、イーストウッドさま。
 用心棒、ハリーが40年の歳月を経て、行き着いた境地に、イーストウッドの人生を重ねる思いがした。
 あくまでにも、イーストウッドにアメリカの生き方を体現するダーティ・ハリーの姿を欲する人たちにはこのエンディングは納得できないのかも。それが本作がアカデミー賞から見向きもされなかった理由かもしれない。


『レッドクリフ PartII -未来への最終決戦-』 65点

2009-04-28 23:34:00 | goo映画レビュー

レッドクリフ PartII -未来への最終決戦-

2009年/アメリカ=中国=日本=台湾=韓国

迫力あるバトルシー-ンは堪能したが後に残るは?「レッドクリフPart2」

総合★★★☆☆ 65

ストーリー ★★★☆☆60点

キャスト ★★★☆☆70点

演出 ★★★☆☆65点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★☆☆65点

2009年04月28日
●ベッチー的映画三昧日記
「レッドクリフPart2-未来への最終決戦」

 Part1から半年待っての公開。
 公開直後にTVでPart1の放映もあり、復習はばっちり。
 
 本作については、2部構成に分け公開したのが吉に出たケースかもしれない。
 それぞれのキャラクター説明はPart1で済んでいるので、2作目は最初から赤壁の戦いに集約されているし、違和感なく話しに入っていける。したがって、かつてのハリウッド史劇の如くダイナミックなスペクタクル・バトルシー-ンの連続を堪能出来るのである。
 これらの合戦シーンをあれだけの人海戦術で撮れるのは、今や人民解放軍が協力してくれる中国と有り余る人の坩堝インドなどアジアでなければ出来ない芸当かもしれない。

 画面の迫力に圧倒させられるが、良く考えて見ると都合良く話しが進んで突っ込みどころがないわけでもない。
 曹操軍80万人と連合軍5万人の戦いの中で、どう見ても女とか見えない孫権の妹が簡単にスパイとして相手方に潜入し、生還出来たり、主人公周喩の妻小僑(りン・チーリン)は一人で敵軍に赴き、曹操の気を引き、曹操はそのため戦を遅らせるなど、映画的演出とは言え、?と思う所が多い。あそこまでの戦いをして、最後に曹操のとどめを刺さないのもそれまでの熾烈な戦いを見ていると合点がいかない。

 まあ、戦いの様式美を見せる映画だからと言ってはそれまでだが、ファンタジーであるロード・オブ・ザ・リングと違って、一応歴史劇なんだから、あれだけの屍を経て、また会おう、でエンドはちょっとないのではと思ってしまった。


『フロスト×ニクソン』 75点

2009-04-26 09:10:18 | goo映画レビュー

フロスト×ニクソン

2008年/アメリカ

事実だからよけいに最後の30分間は興奮もの「フロスト×ニクソン」

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★☆☆70点

2009年04月26日
●ベッチー的映画三昧日記
「フロスト×ニクソン」

  ・1977年、伝説となった実際のTVインタビュー番組の映画化。
   おぼろげながらであるが、当時TVニュースの画面で泣きそうなニクソンを見た記憶がある。
  ・今年のアカデミー候補作品で、ヒュー・ジャックマンが授賞式で主演のフランク・ランジェラの膝に乗ったり、非常に持ち上げていた感じ。
以上の理由で、公開初日に行きました。
 
  まず、もともとフロストとニクソン、二人の会話中心の舞台劇ですから、 アクション的派手な見せ場はありません。しかし、これだけの話で緊張感あふれサスペンスも感じさせるような2時間の作品にまで、仕上げてしまったことに拍手を贈ります。

 理由はまず、主演の二人、フロスト(マイケル・シーン)とニクソン(フランク・アンジェラ)の熱演。とくにアンジェラの鬼気迫る熱弁は凄い。アカデミーあげてもいいくらいの演技だった。また、後手に回っていたフロストがあるきっかけで、最後のインタビューで反駁に転じるまでの演技もよかった。
 次に、ロン・ハワード監督の職人的手腕。彼は18歳の青春時にこの事件を眼にしたというから思いも強かったのかも知れない。見せ場は最後のトークバトルになることは決まっている。そこまでをどう緊迫感をつないでいくかを、二人と取り巻きの人物の証言を混ぜながら、まるで、セミドキュメンタリーのように見せていく。本当に早く役者を止め、監督ひとつに絞って成功。今やアメリカ人監督の中では名匠の部類に入るのではないか。

 この映画は、アメリカ人からする全然違った意味、見方の映画になるんだろう。憲政史上の最大の汚点となる真実だし、実際に体験した人が多いのだから。
 日本で言えば、ロッキード事件で辞職した田中角栄にバラエティ司会者のみのもんたが事件の真相を挑んだようなもの。
 とにかく、真実は、描き方ひとつ極上のドラマになることを示す一本となった。


『スラムドッグ$ミリオネア』 80点

2009-04-25 22:04:56 | goo映画レビュー

スラムドッグ$ミリオネア

2008年/イギリス

洋画第5位 インドをスタイリッシュに撮り上げたダニー・ボイルの力量が大「スラムドッグ$ミリオネア」

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆90点

2009年04月25
●ベッチー的映画三昧日記
「スラムドッグ$ミリオネア」

 ご存知、今年のアカデミー8部門受賞作品。

 確かに、実際のクイズ番組「ミリオネア」を題材にインドが抱える社会問題(というか発展途上国が抱える問題)と普遍的なラブ・ストーリーをうまく融合させ、話の構成は巧く見事だ。

 キャストは全員インド人だから、インド映画のようにも思えるが、インド映画とは全然違う。ダニー・ボイル監督の手により、ボンバイがよりエネルギッシュに、映像もスタイリッシュになった感がある。何しろ3時間を超える映画が普通のインド映画ならこの話を2時間にまとめ上げることなんては絶対に出来なかったはず。
 まあ、エンディングのダンス・ミュージカルシーンはボイルがインド映画へのリスペクトでいれたのかな。
 とにかく、ボイル作品では久しぶりに「トレイス・ポッティング」と同じような躍動感があり、楽しめる1作となった。
 しいて本作の突っ込みどころを云えば、最後の問題。史上最高金額の問題で「三銃士の名前」では、それはちょっと簡単すぎませんかね?

 また、本作がアカデミー8部門も取ったのは正直出来過ぎでは。
 まあ、アカデミー会員の皆さんにとっては、今までない世界との出会いに一票を投じてしまったのかも知れないが。


『その土曜日、7時58分』 80点

2009-04-22 18:09:41 | goo映画レビュー

その土曜日、7時58分

2007年/アメリカ

洋画第5位:巨匠ルメット健在!「その土曜日、7時58分」

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★★☆90点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★☆☆70点

2008年12月23日
●ベッチー的映画三昧日記
 「その土曜日、7時58分」
  BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU'RE DEAD

 アメリカの映画賞でベスト・アンサンブル・キャスト賞を受賞したのも大納得。ベテラン、シドニー・ルメットがフィリップ・シーモア、イーサン・ホーク、アルバート・フィ二ーら芸達者を使い作り上げた一種のフィルム・ノワール的作品だが、その実、兄弟、夫婦、親子各々の間に存在する闇的な部分をクローズアップさせ、人間の本質を描いている。

 ストーリーは金に困った弟に両親経営する宝石店を襲う話を持ちかけた兄。会計士として成功したかに見えた彼も実は不正を犯し金に困っていた。保険金で保障されるから実害はないという兄の言葉に乗り、弟は土曜日の7時58分に店を襲うが、10分で終わるはずの計画が一つの手違いから破滅への物語へと展開していく。

 それにしても、半世紀前の「十二人の怒れる男」のルメットがまだ現役でこれだけの水準の作品を作っていることに驚いた。絵(画面)がしっかりしているから、落ち着いた気分で観れる。最近とみに貧相な容貌になったイーサン・ホークは兄の言うままに流されてしまう気弱な弟役を好演、兄役のフィリップ・シーモア・ホフマンは容貌的には好きな部類ではないが、演技は文句なくうまい。「ブギーナイツ」の頃はここまで主役を張れる役者になると思っていなかったけれど、素直に訂正する。父役のアルバート・フィニーは出番こそ少ないが、そこはやっぱり名優、最後はこの方が見せ場をさらってしまう。

 血を分けた親子と言えども…人間の本質のところは闇…結局、個に帰するんだということをあらためて解らせてくれた一作となった。