つれづれなるまま映画を観て過ごす「ベッチーの映画三昧日記」

映画検定1級のベッチーのベッチーによるベッチーのための映画館鑑賞記録gooブログ。
コンテンツ:ベッチーの映画三昧日記

『黄金を抱いて翔べ』 70点

2012-11-29 22:46:58 | goo映画レビュー

黄金を抱いて翔べ

2012年/日本

ハードな男たちのクライムミステリーのはずがなぜか「ガキ帝国」が垣間見えてしまった

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★☆☆65点

音楽 ★★★☆☆65点

●ベッチー的映画三昧日記
「黄金を抱いて翔べ」

 過激派や犯罪者相手に調達屋をしてきた幸田(妻夫木聡)は、大学時代からの友人・北川(浅野忠信)から大阪の大手銀行地下にある240億円の金塊強奪計画を持ちかけられる。幸田と北川は、銀行のシステムエンジニア・野田(桐谷健太)、元北朝鮮のスパイ・モモ(チャンミン・東方神起)、北川の弟・春樹(溝端淳平)、元エレベーター技師の爺ちゃん(西田敏行)を仲間に加え、大胆不敵な作戦を決行する。

 社会派ミステリーの女王高村薫が20年以上前に発表したデビュー作を「パッチギ!」「ヒーローショー」の井筒和幸監督が映画化したもの。監督は「特段大阪を意識したわけではない」と述べているが、大阪のこてこてさはどうしても画面に出てしまっていて、私にはそれが本作にはマイナスに働いてしまった感じを受けた。

 金塊強奪計画を企てた6人の男たちの生き様を、ミステリーとアクションを交えて描き出す。日本映画には珍しく、金塊強奪という計画に向かって一途に動いていく男たちをハードボイルドに描いていった。ところが、井筒監督お得意の半端モノとのちょっとした争いがエスカレートして大きな暴力と化していくエピソードが入ってきていつもどおりの展開に。これにより主人公たちの緻密とは言えないものの当初の計画は微妙に崩れていく結果となる。この北川の弟とチンピラたちとの諍いが、舞台が大阪のためか、私にはどうしても、元やんちゃなガキども「ガキ帝国」、「岸和田愚連隊」、「パッチギ」の延長版に見えてしまった。

 出演の妻夫木聡、浅野忠信の二人の既成の社会の枠に組しないキャラクターが際立っているだけに、「ガキ帝国」のケンカみたいなものを入れて、ハードボイルドに徹しきれなかったのが惜しい。

 それに,金塊強奪という大事の前にあんな抗争を繰り広げていたら、警察から目をつけられ、準備、実行があんなにスムーズに進むはずはないよね。


『プンサンケ』 70点

2012-11-24 12:29:03 | goo映画レビュー

プンサンケ

2011年/韓国

ネタバレ

言葉なき男のキャラ設定が良かっただけに、終盤の失速がおしい

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★☆☆70点

演出 ★★★☆☆65点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★☆☆65点

 問題作を次々に送り出す韓国のキム・ギドク監督が製作と脚本を務め、自分の作品で助監督をしていたチョン・ジェホンに監督させた南北問題を題材にした愛憎&サスペンスアクション映画だ。

 南北に分断された38度軍事境界線。両国の厳しい監視の下、死と隣り合わせの危険を冒し、休戦ラインを行き来し、北と南に生き別れした人々のビデオメッセージや遺品を運ぶ男の物語。

 まず、凄いと思ったのがこの主人公のキャラクターの設定だ。2時間の映画の中で発した音声は一度だけ、「アーアー」という慟哭の声だけで、一切の言葉を発しない。この男の素性も過去も全く語られることはない。しかし、若さの割に北と南の諜報員を相手にしてもその格闘術の強さと冷静な判断力は飛び抜けており、彼の生きてきた時間が凄まじかったことが容易に想像できる。仕事を受ける方法も、こなす仕事のレベルも、まるで「ゴルご13」のデューク東郷のような完璧さだったが、ある依頼が機械のような彼の歯車を少しずつ狂わせていき、北と南の双方を敵に回す事件に巻き込まれていく…。

 実際に有りそうな超人キャラの設定で、映画として、なかなか面白かったが、腑に落ちない個所もいくつかある。
 まず、機械のように感情を表さなかった主人公の男が北から脱出させた女性との間に初めて感情を表しある行動をとるが、映画終盤に入ったところで、彼女が命を落としてしまう。そこからの残り30分余りは、男の北と南に対する復讐劇になる。

 ところが、それが映画の前半とうって変わり、ハードボイルドというより、コメディとも思えるトーンに変貌してしまうのだ。一つの部屋に入れられた南北両諜報員たちがお互いを信じ合えずに結局全員殺し合う。このあたりはまるで「レザ・ボア・ドッグス」の再現。愚かにふるまう諜報員たちを南北両国家のお偉いさんに引っ掛けたのだと思うが、確信的にトーンを変えたとしか思えない。でも、それまでの展開~すると違和感はぬぐい去れない。

 また、映画のラストも違和感を感じる。いつもと同じように休戦ラインを越える主人公の悲劇的末路がエンディングとなる。しかし、今まで危険を回避するため、夜にしか軍事線を越えなかった主人公が、なぜ真昼間に越えたのか?完璧なプロフェッショナルの男の行動としては全く理解しにくい。
 その行為は自殺行為だったということなのか?
 だとしたら、ここまで徹底して作り上げた言葉なき男の最後としては安直な描き方だと思う。

 


『のぼうの城』 75点

2012-11-14 21:20:08 | goo映画レビュー

のぼうの城

2011年/日本

「城」の攻防戦に的を絞り、スぺクタルなシーンが次々と展開される豪華な新時代劇

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★☆☆70点

●ベッチー的映画三昧日記
「のぼうの城」

 恥ずかしながらベストセラーとなった和田竜氏の小説「のぼうの城」が、もともとは映画シナリオだったというのを知らなかった。しかも新人脚本家の登竜門の「城戸賞」受賞作とのこと。最初から映像化を前提としていたと知り、事実でありながら歴史上はあまり知られていない武将に光をあてた見せ場を心得た爽快で壮大なストーリー運びの理由も納得した。
 そのシナリオを、近年手堅い映画作りが目立つ犬童一心と特技撮影の第一人者「日本沈没」の樋口真嗣のダブル監督で映画化したというから、期待は膨らんだ。

 天下統一を目指す豊臣秀吉は北条氏を倒すために小田原城攻めに向かう。関東の北条氏傘下の城を次々と落としていくが、秀吉は知将であるが武勲がなく、人望の薄い石田三成に手柄をたてさせようと2万の大軍を預け、武蔵国忍城(現在の埼玉県行田市)の攻め落としを命じる。実は裏では忍城城主成田氏長(西村雅彦)から内通の申し出があり、戦わずして城は明け渡される約束となっていた。ところが、石田側の使者として出向いた長束正家(平岳大)の傲慢な態度に業を煮やした城代の成田長親(野村萬斎)が、思わず「篭城決戦」と応えてしまった。家臣たちが止めるのも聞かず、ここに2万の軍勢に500人が立ち向かうという忍城の大攻防戦が始まる…。

 私は原作未読者だが、題名通のぼう様が守る忍「城」の攻防戦に的を絞った脚本が素晴しい。といって人物が描かれていないかというと、そうではない。主人公成田長親がなぜ“のぼう様”と呼ばれるようになったのか、また腹心の各武将たち正木丹波守利英(佐藤浩市)、柴田和泉守(山口智充)、酒巻靱負(成宮寛貴)らが、どういう人物かがしっかりと説明されている。戦場の主役は大将ではなく武将であり、その意味で彼ら三人は、まるで“三国志”に出てくるような剛腕、知略の持ち主で、物語としての娯楽的要素を引き出す役割を果たしている。

 そして、相対する豊臣側の石田三成(上地裕輔)、大谷吉継(山田孝之)、長束正家らの人物像もしっかりと描いている点が本作の優れているところだ。合戦がメインである以上、誰と誰が戦っているのか、そこに感情移入できなければ、面白く観れるわけがない。そのあたりをしっかりと押さえた上で、後半は次々とスぺクタルなシーンが展開されていく。うまいストーリー運びで、近年出色の豪華な時代劇となった。リアルな水攻めのシーンは、まさに東北3.11.を思い出され、1年半あまり公開が延期されたのもうなずける。

 敢えて突っ込むとすれば、のぼうと甲斐姫(榮倉奈々)の関係が駆け足で描かれているので、いまひとつわかりにくかった点だ。なぜ甲斐姫が“のぼう”を好いているのか?また甲斐姫をめぐる豊臣側の城明け渡しの条件も、最初の時は断固として固辞したのに、最後はあっさり認めてしまうあたりが腑に落ちない。(その時の“「のぼう”のアップの表情が意味するところがわからなかった)。甲斐姫が本作の中で占める位置が良く見えないので、その辺だけが、気になった感じ。


『北のカナリアたち』 80点

2012-11-12 23:14:01 | goo映画レビュー

北のカナリアたち

2012年/日本

吉永小百合×(6人の若手俳優+6人の子役)=極上のハーモニー 

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

●ベッチー的映画三昧日記
「北のカナリアたち」

東映60周年記念映画で主演が吉永小百合、監督が阪本順治監督というところが、現在の邦画界を物語っている。スタジオシステムの崩壊後、銀幕スター不在の時代であるという象徴か、かつての東映らしさは感じない。

まあ、それはさておいて、本作「北のカナリアたち」自体は今年の邦画の中ではかなりの力作で、必ず映画賞レースに名を連ねることになるだろう。

 北海道の離島で教師をやっていた川島はる(吉永小百合)は、ある分校で6人の生徒(森山未來、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平)を受け持つ。彼らの歌のうまさに気づいたはるは、合唱を指導し、大会に出ることで子どもたちに笑顔を取り戻していった。ところが、ある事件により追われるように島を去ることになる。 
それから20年後、当時の教え子のひとりが殺人事件の重要参考人となっているという刑事の訪問を受け、かつての生徒たちに会うために旅に出る。再会を果たした生徒たちから出てくる話がそれぞれつながっていき、20年前の事件の謎が明らかになってくる…。

「あなたへ」の場合、スター高倉健を前にした俳優たちがいつもと違った演技を見せたように、本作では吉永小百合を前にして、子役6人、若手6人の俳優たちをはじめとして、脇を固める柴田恭平、仲村トオル、里見浩太朗ら男優陣も熱演を見せて盛り上げている。

吉永の教え子となる6人の顔ぶれが前述したように豪華だ。それぞれがタイトルロールをはれるような主役級がぞろり。本作では吉永小百合が、6人を訪ねて歩くのがお話の主なので、それぞれが一人ずつ出てくる。これだけの顔ぶれ、全員が交錯するシーンは無いのかなと思いきや、最後の最後に6人全員が勢揃いしてカナリアを歌うとは、やられました。そこで、それまでなぜ、吉永小百合が酷寒の北海道を彼らを一人ずつ訪ね行脚したのかが、わかるという仕掛けになっており見事な構成だ。彼らを前提にしてオーデションで選んだという子役6人たちも容易に成長後の顔が浮かぶほど彼らに似ている。

 原作が湊かなえの小説だから仕方がないが、本作でも一つの事件について登場人物がそれぞれの立場から語る手法がとられている。語ることは、過去の出来事ではなく各々の現在にも関係していて、彼らが過去を語ることで現在の自分たちをも解放していくことになる。そして、最初はつながっていない事が次第に複雑に絡み合ってつながっていき、最後は見事に新たな真実にたどり着くというもの。それぞれが語る内容が少しずつ異なり、何が事件の真実であるのかが少しずつ明らかになってくる。

映画全体を通して、非常にセリフが多くて、登場人物たちがそれぞれの場面を語っていくので、説明的過ぎると感じる人がいるかもしれない。しかし、一人称的に登場人物に物語を語らせるのが湊かなえのお得意とする手法であるから、彼女の原作を活かすとすれば、坂本監督はこうせざるを得なかっただろう。私は本作の場合はこの選択は良かったと思うが、想像する部分が少なく、多くの事がセリフとして語られてしまう、この点は、ミステリー、サスペンス映画としては評価が分かれる所かも知れない。


『エクスペンダブルズ2』 70点

2012-11-06 19:40:29 | goo映画レビュー

エクスペンダブルズ2

2012年/アメリカ

そのまんま映画自体が歴代アクション映画のパロディか。

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆65点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★☆☆65点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★☆☆65点

●ベッチー的映画三昧日記
「エクスペンダブルズ2」

 1作目が予想以上に受け入れられたとみたのか、プロデューサーのシルヴェスター・スタローン大いに気を良くして続編を作った感じが随所に見られる。2作目も一世を風靡したアクションスターが大集結している。

 活躍の中心がスタローンとジェイソン・スティサムなのは1作目と同じだが、あまり大御所たちが多いと各々の見せ場を作るのが大変とばかりジェット・リーは冒頭のエピソードだけであとは御役ごめんで出ていない。ランディ・クートゥアやドルフ・ラングレンら1作目のメンバーは、どちらかというと後方支援といった役回りの出演だ。 代わりに1作目はカメオ的出演だったブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーの出番が増え、3人がそろい踏みしてバトルシーンを展開したりする。さすがに彼らは肉体を駆使したアクションというより、機関銃を手に武器によるアクションに終始、時の流れは感じるものの、スターロンを入れたスリーショットは涙ものなのは間違いない。
 今回はそれに孤高の戦士チャック・ノリス(この人まだご健在だったとは)、そしてこのメンバーの相手をする敵役に不死身のユニバーサル・ソルジャーのジャン=クロード・ヴァン・ダムという最高の布陣で臨んだのだから往年のファンには面白くて当然だ。

 遊び心いっぱいなのが今回の脚本、出演スターたちのやり取りの中で自虐ネタのセリフが頻繁に飛び交い大いに笑わせてくれる。セリフを良く聞いていると、至る所にヒット映画の会話が出てくる。「俺は群れない」とノリスが言えば、スタローンが「ランボーをやるのか」と言い、シュワルツェネッガーは「アイル・ビー・バック!」と叫ぶといった具合だ。紅一点でCIAのエージェント・マギーを演じるユー・ナンがマギーQのような美人でないのが、さすが女優選びの苦手な(というより女優に関心がない)スタローンらしいといえばらしい。

 まぁ、ひとつ気になるのが、これも1作目同様適役とはいえ、あまりに多くの人を殺し過ぎること。近年のスタローン映画に良く見受けられる大量の血糊が飛び交い、殺戮シーンがリアル過ぎで、しかも、適役は純潔白人種でないことが突っ込みたくなるところ。
 でも、ここまで派手にバッタ、バッタと殺すと、この銃撃戦自体がある意味彼らのやってきたアクション映画のパロディみたいなものと考えるしかないのかも。

 早くも3作目の製作が決まったようなので、ぜひ次回は東洋の最強傭兵としてソニー千葉(千葉真一)を出してほしいと願うばかりだ。