■心情を書面公表
米原市伊吹の汚水槽から小川典子さん(当時28)=長浜市今川町=の遺体が見つかった事件から1年を迎える6月12日を前に、典子さんの母親が家族の心情を記した書面を公表した。殺人罪で起訴された米原市坂口の会社員森田繁成被告(41)は一貫して起訴内容を全面否認。早ければ年内にも始まる裁判員裁判で、市民から選ばれた裁判員が「犯人か否か」を判断する。(堀川勝元)
■被告は全面否認 検察、状況証拠立証へ
小川さんの母親は、被害者支援担当の警察官を通じて書面を公表。「娘を亡くしてから1年がたちましたが、家族や親族は当時と変わらない深い悲しみにくれております」と心情を明かした。
捜査関係者によると、目撃者や被告本人の自白といった被告と事件を直接結びつける証拠は一つもなく、検察側は状況証拠を積み重ねて立証する方針だ。
「犯人性を争っており、間接事実で立証しなければならない極めて難しい事件だ」。大津地検の吉浦正明検事正は1月、県警の年頭署長会議で裁判に臨む決意を述べた。「裁判員裁判の試金石といわれる事件であり、最高検をはじめとして全国の注目が集まる裁判だ」
直接証拠のない裁判の難しさについて、元裁判官で法政大法科大学院の木谷明教授は「断片的な事実を総合しても被告のすべての行動がわかるわけではない。犯行をしたと疑うことはできても、本当にやったのかという判断はどんな人にとっても容易なことではない」と言う。
今年4月の大阪市平野区の母子殺害事件の最高裁判決は無期懲役の一審判決、死刑の二審判決を破棄し、審理を地裁に差し戻した。被告は犯行を一貫して否認。直接的な証拠もなく、検察側は被告の唾液(だ・えき)がついたたばこの吸い殻が犯行現場にあったことなど間接証拠を積み重ねたが、最高裁は「被告は現場に行ったとは認められない」とした。
ギリギリの判断を迫られるケースを想定して、裁判員裁判のスタート前、多くの裁判所で一つのシナリオをもとに模擬裁判が開かれた。
通称「里見事件」。里見という架空の被告が一緒に酒を飲んでいた男性が酩酊(めい・てい)して路上で寝込んだことに腹を立て、暴行を加えて死亡させた。被告は起訴内容を全面否認。目撃証言もなく、検察側は間接証拠の積み重ねで立証を目指した。
市民が加わった模擬裁判は全国で42回実施し、判断は大きく割れた。有罪は24回、無罪は18回だった。
〈キーワード/米原事件〉
2009年6月12日朝、米原市伊吹の汚水槽から長浜市今川町の会社員小川典子さん(当時28)の遺体が見つかった。大津地検は交際相手の森田繁成被告(41)が小川さんの頭を鈍器のようなもので殴るなどして重傷を負わせ、汚水槽に落として窒息死させたとして殺人罪で起訴した。森田被告は「全く身に覚えがない」と一貫して起訴内容を否認。裁判員裁判に向けて昨年10月から始まった公判前整理手続きは9月まで予定され、早ければ年内にも初公判が開かれる。
【関連ニュース番号:0910/97、09年10月13日;0907/88、09年7月12日;0907/67,09年7月9日など】
(6月12日付け朝日新聞・電子版:同日付け毎日・京都の電子版、13日付け中日・電子版なども報道)
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001006120003
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20100612ddlk25040650000c.html
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100612000021&genre=D1&area=S00
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20100613/CK2010061302000011.html
米原市伊吹の汚水槽から小川典子さん(当時28)=長浜市今川町=の遺体が見つかった事件から1年を迎える6月12日を前に、典子さんの母親が家族の心情を記した書面を公表した。殺人罪で起訴された米原市坂口の会社員森田繁成被告(41)は一貫して起訴内容を全面否認。早ければ年内にも始まる裁判員裁判で、市民から選ばれた裁判員が「犯人か否か」を判断する。(堀川勝元)
■被告は全面否認 検察、状況証拠立証へ
小川さんの母親は、被害者支援担当の警察官を通じて書面を公表。「娘を亡くしてから1年がたちましたが、家族や親族は当時と変わらない深い悲しみにくれております」と心情を明かした。
捜査関係者によると、目撃者や被告本人の自白といった被告と事件を直接結びつける証拠は一つもなく、検察側は状況証拠を積み重ねて立証する方針だ。
「犯人性を争っており、間接事実で立証しなければならない極めて難しい事件だ」。大津地検の吉浦正明検事正は1月、県警の年頭署長会議で裁判に臨む決意を述べた。「裁判員裁判の試金石といわれる事件であり、最高検をはじめとして全国の注目が集まる裁判だ」
直接証拠のない裁判の難しさについて、元裁判官で法政大法科大学院の木谷明教授は「断片的な事実を総合しても被告のすべての行動がわかるわけではない。犯行をしたと疑うことはできても、本当にやったのかという判断はどんな人にとっても容易なことではない」と言う。
今年4月の大阪市平野区の母子殺害事件の最高裁判決は無期懲役の一審判決、死刑の二審判決を破棄し、審理を地裁に差し戻した。被告は犯行を一貫して否認。直接的な証拠もなく、検察側は被告の唾液(だ・えき)がついたたばこの吸い殻が犯行現場にあったことなど間接証拠を積み重ねたが、最高裁は「被告は現場に行ったとは認められない」とした。
ギリギリの判断を迫られるケースを想定して、裁判員裁判のスタート前、多くの裁判所で一つのシナリオをもとに模擬裁判が開かれた。
通称「里見事件」。里見という架空の被告が一緒に酒を飲んでいた男性が酩酊(めい・てい)して路上で寝込んだことに腹を立て、暴行を加えて死亡させた。被告は起訴内容を全面否認。目撃証言もなく、検察側は間接証拠の積み重ねで立証を目指した。
市民が加わった模擬裁判は全国で42回実施し、判断は大きく割れた。有罪は24回、無罪は18回だった。
〈キーワード/米原事件〉
2009年6月12日朝、米原市伊吹の汚水槽から長浜市今川町の会社員小川典子さん(当時28)の遺体が見つかった。大津地検は交際相手の森田繁成被告(41)が小川さんの頭を鈍器のようなもので殴るなどして重傷を負わせ、汚水槽に落として窒息死させたとして殺人罪で起訴した。森田被告は「全く身に覚えがない」と一貫して起訴内容を否認。裁判員裁判に向けて昨年10月から始まった公判前整理手続きは9月まで予定され、早ければ年内にも初公判が開かれる。
【関連ニュース番号:0910/97、09年10月13日;0907/88、09年7月12日;0907/67,09年7月9日など】
(6月12日付け朝日新聞・電子版:同日付け毎日・京都の電子版、13日付け中日・電子版なども報道)
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001006120003
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20100612ddlk25040650000c.html
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100612000021&genre=D1&area=S00
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20100613/CK2010061302000011.html