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【1005/54:米原・物流センター】シルク計画 前途多難 / 誘致停滞、用地代遅滞

2010-05-11 00:40:05 | Weblog
【写真:シルク構想に向けて造成された用地(手前)=米原市提供】

 米原市に官民連携で計画された滋賀統合物流センター(SILC=シルク)構想が暗礁に乗り上げている。西日本最大規模のふれこみで市が約27億円をかけてJR米原駅近くに造成地を用意したが、民間資本の運営会社のもとで企業誘致が停滞。運営会社と県が責任を押しつけ合う事態に発展した。9日、米原市を訪れた嘉田由紀子知事は「市と協力して企業誘致を進める」などと発言したが、前途は多難だ。(高久潤、堀川敬部、飯竹恒一)

 シルク計画は、センターに進出した企業が部品の調達から組み立てまで現地で一体的に行えるのが特徴。国道や県道からの進入路を整備し、JR米原駅近くに建設予定の貨物ターミナルと連携することで物流コスト、温室効果ガスの削減を見込む。

 旧米原町が物流拠点づくりを模索していた2003年ごろ、当時の県東京事務所参事、古川久巳被告(56)=農協のシステム納入をめぐり収賄罪で起訴、公判中=から紹介されたコンサルタント会社の構想をもとに始動。計画用地は、05年には県が進出企業に固定資産税の減免や助成金などの優遇措置を設ける経済振興特区に認定された。

 県によると、計画では運営会社に決まった「シルク」(大阪市、和泉玲子社長)が、市が用意した敷地内に2階建てのセンター(延べ約9万9千平方メートル)を建設するなど約160億円かけて整備し、事業展開するはずだった。昨年6月には敷地を市から約27億円で買い取る契約を結んだ。

■責任をだれも認めず

 ところが、シルク社は期限までに手付金2億7千万円を支払わず、今年2月には用地代全額の支払期限を当初の今年3月末から6月末まで3カ月延期することになり、現在に至っている。

 事態を重くみた県議会は3~4月、厚生・産業常任委員会で参考人としてシルク構想にかかわった関係者を呼んだ。明らかになったのは、シルク社の経営実態と、計画が停滞した責任をだれも認めないことだった。

 たばこを取り扱う商社の社長である和泉社長は、県の企業誘致を担当していた古川被告らに頼まれシルク社の社長に就任したと説明。用地代の支払いの遅滞については「古川被告に『資金調達は県が行う』と言われた。社長印すら自由に使えなかった」と語った。同社の担当者は事業について和泉社長らとは定期的に協議していたとしつつ、「実態はペーパーカンパニー」とも述べた。

 一方、県側は「県の支援内容に資金調達は含まれていない」と反論。計画は民間主導であり、県は側面支援をしたに過ぎないという立場だ。米原市の担当者は「県の支援もあるので信用していた」と述べた。議論は各自の立場を主張し合うことに終始した。

■不透明な進行に疑問

 3月末で期限切れとなった特区の優遇措置はなくなったが、市と県は4月、それぞれ対策チームを立ち上げ、これまで接触のあった企業を洗い直すなどの作業を共同で進めている。シルク社を加えた3者協議も今月半ばに開く。嘉田知事は5月9日、7月の知事選に向けて米原市であった県民との集い「茶話会」でシルク計画について「物流基地として大事」と語り、アクセス道路整備についても国への要望を強める考えを示した。

 しかし、シルク社は資金調達は県の責任という立場を崩さず、6月末に期限が迫る支払いの見通しは立っていない。現状のままでは用地整備を起債でまかなった市に毎日5万円の金利負担がのしかかる。

 「全国的にモデルになる事業」(米原市)は、なぜこんな事態に陥ったのか。

 計画の進み具合が不透明なまま事業が進められてきたことに疑問の声が上がる。経済振興特区の評価を年1回行う特区認定審査・評価委員会(堺屋太一委員長)は昨年8月、「具体的なビジネスモデル」を至急に明らかにするよう意見した。企業誘致を進める県は交渉の状況を明かさず、用地問題が解決しても事業が順調に進むかどうかは不透明だ。

 シルク社の元監査役で、県議会の参考人として呼ばれた元滋賀銀行常務の伊藤庄蔵氏は「あくまで私見だが」と断ったうえで、「いったん立ち止まり、事業規模を縮小させることが必要ではないか」と発言した。

【関連ニュース番号:1005/40、5月9日;1004/106、4月14日;1003/235、3月30日など】

(5月10日付け朝日新聞・電子版)

http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000141005100001


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