因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

Pal's Sharer公演『許しつづける女たち』

2006-10-25 | 舞台
*関根信一作・演出 阿佐ヶ谷アルシェ 公式サイトはこちら。公演は22日で終了 
 劇団フライングステージ主宰の関根信一がはじめて劇団以外に書き下ろした作品で、ゲイが登場しないという点でもはじめてだそう。
 
 恵比寿ガーデンパレスに近い、あるゲストハウスのリビングが舞台である。通常のマンションではなく、仕事の都合などで数ヶ月間借りることもできるし、一部屋を誰かとシェアもできるシステム。中心人物は商社のキャリアウーマン(死語か?)高島春菜(白井美香)と派遣OL澤村美咲(佐藤里真)の二人である。ふたりは偶然同い年で30歳目前だが仕事もプライベートも性格も正反対だ。春菜は上司の嫌がらせに悩みながらもバリバリと働き、美咲は複数の男性とどっちつかずの付き合いを続けている。二人を取り巻く男性陣が入れ替わり立ち替わりゲストハウスを訪れ、住人と来訪者が巻き起こす騒動が二人の女性の生き方を少しずつ変えていく。彼らはとにかくひっきりなしにしゃべる。ひとつの出会いに新しい関わりが次々と増えていく様子、人物が自分の考えをその人なりにきちんと話すところは、ちょっと山田太一のドラマ風でもある。

 男女合わせて12人(うち1人は声の出演)も出てくる。主だった役は前述の二人だが、捨て役、脇役がなく、どの人物にもきちんとした人格と主張と背景が書き込まれている。ひとりひとり考え方も違うし、職場のつきあい、男女の恋愛それぞれの場面で衝突があり、どうしても相容れないことも起こり、それは血のつながった肉親とのあいだでも同じなのである。 
 当日パンフレットに「言葉を信じ、人を信じて話しつづける人を描くことをこれからも続けていく」ということが記されていて、劇作家関根信一の、自分とは違う生き方をする人への豊かな想像力、相手に歩み寄り、理解しようとする優しさ、信念を感じる。

 贅沢を言えば、皆いい人ばかりの大団円になったことが物足りなくもあり、演技も若干オーバーアクション風。この次はもう少し暗いお話をじっくりみたいと思うのだった。
 

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