来年も咲くよ。手入れする花が答えてくれた

2013-05-24 10:02:30 | 日記
84歳の老婆からまなぶ、時の過ごし方

 所用があって近所のお宅を訪問した。近所とは言え、町内が同じと言うことだけである。
 夕方の4時頃である。初夏を思わせる陽気で庭仕事には絶好の時間帯である。案の定、その家の老婆が花の手入れをしていた。約20坪はあるだろうか、色とりどりの花が庭いっぱいに咲いている。
 「大変ですね」と声をかけたら、「いいえ、楽しんでやっていますよ」との答えが返ってきた。そして「私の年になりますと何もやることがありません。花いじり位ですよ。それに、鳥が運んできてくれるのか、植えたこともない花が咲いているので楽しみです」と。
しばらくの間、雑談の時を過ごした。

 お年を聞いたら84歳とのこと。私らが幼かった頃の老人と言えば60歳前後で腰は曲がり、杖をつき、いわゆる「ご老体」という姿を思い浮かべるが、今は違う。彼の老婆も粋な上着をはおり、土をいじる姿は、最近立ち上がるときに「よっこらしょ」と声が出てしまう私などよりは若い。そのことを述べると「花や草から『気』を頂いているのかも」と笑っていた。

 80歳を超えているのであるから、あの戦争を経験している。もしかして、父や兄が戦地で命を落としているかもしれない。そして敗戦後の「食えない時代」を生きてきた。働き、そして子を育て、今がある。家族状況に立ち入るつもりはなく、もっぱら花談義に費やしたが、『気』を頂いているという言葉に、私は、老婆の至福の時間を見た。「また来年も花を見ることができますね」との私の言葉に、「そうなんです。この花も、来年も咲くからねと答えているような気がします」と。
 ますます嬉しくなった。

 ブログをはじめたのは4月、この開設にあたって、ネットの先輩が「ともかく投稿を続けることです。訪問者は自ずと増えていくはずです」と勧めてくれた。以来可能な限りの投稿を続けている。この老婆との出会いを、「そうだ、これを紹介しよう」と思ったのもそのためである。

 ラジオが報じていたのだが、猫も長寿となり、耳が聞こえなくなると鳴き声も大きくなるとのことである。人間も段々声が大きくなり、テレビの音も大きくなっている。何時ぞやは、子どもが来て「テレビの音が外まで聞こえるよ」と言っていた。とすれば、我が家の、年寄り二人の口喧嘩も近所に聞こえているかも知れないと思うと、少しはガマンをしなくては思う。

 足腰が弱り、耳や目が劣ろえても、彼の老婆のように「至福の時」を過ごせる、目や耳を持ちたいものだと痛感した日であった。

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