消す・答えない・はぐらかす「現代『新三猿』」の政治を正す
時の政権にとって不都合な情報は打ち消し、または書き換えてきたことを歴史は証明をしている。その直近の例が米国のトランプ政権である。通商代表部のホームページにアップされている「環太平洋連携協定(TPP)」に関する資料の開示を停止し、あるいはトランプ大統領が消極的とされる地球温暖化対策、性的少数者の権利保護に関する記載などがホワイトハウスや環境保護局のホームページから消されたとも報じられている。このことは1月23日の拙文でも触れたことであるが、それではわが国日本はどうかとなる。
今国会で大きく取り上げられたものに、南スーダンをめぐる防衛省のPKO(国連平和維持活動)陸上自衛隊部隊の「状況日報」の廃棄問題がある。また文科省における天下り人事、そして「共謀罪」をめぐる論議では政府(法相)は答弁を二転三転させつつ曖昧なまま強行成立を計ろうとする姿勢。さらに大阪豊中市の国有地払い下げ問題がある。これらすべてが国民の前に明らかにされなければならないにもかかわらず、安倍政権は説明責任を果たしていない。それどころか資料の公開に対しては「資料は無い・あったが管理規則によって破棄した」などと答えている。しかしマスコミの果敢な調査活動や国会議員の調査の中で「無い」とされていたものが実は存在していたことか国民の前に明らかにされた。それでも対応は曖昧のまま逃げ切ろうとしている。まさにすべてが「隠蔽」の世界である。そのようなことが政治の場であって良いのだろうか。
そのようなことがあってか「今月27日から原則として、庁舎内の全執務室の施錠を開始し外部からの立ち入りを遮断する」という方針が経済産業省から発表された。そして今後取材の場所や対応する職員を限定するなどの新ルールを策定して情報管理の徹底を図ると報じられている。さすが元電通広報部担当課長世耕大臣は手早い。壺を心得ているというもの云うものだ。
期を同じくして明らかになったのが太平洋の先のトランプ政権のマスコミ対策である。報道によれば、定例記者会見を非公式な形に変更しCNNやニューヨーク・タイムズ紙など少なくとも10報道機関の参加を認めなかったとある。この日は元々スパイサー氏の定例記者会見が開かれる予定だったが、報道官室で撮影なしで質問を受ける形態に変更し参加メディアを選別した。これに対しAP通信とタイム誌は参加を認められたが会見をボイコットしている。またホワイトハウス記者会は抗議の声明を発表。CNNは「気に入らない記事への報復だ」と猛反発をしている。ニューヨーク・タイムズ紙は「さまざまな党の政権を取材してきた我々の長い歴史で、このようなことは起こったことがない」として抗議の報道を発している。
私たちは二度と「大本営発表」なるものは繰り返してはならないと反省し、決意をしたはずである。議会は「お喋りの場ではなく『監視』の場であり、国民が自ら選んだ議員を通して「知る権利」を求める場である」と宣言をした。にもかかわらず「隠す・逃げる・答えない」「答えてもはぐらかしの答弁に終始する」あるいは稲田防衛大臣に見られる「恣意的な言葉のはぐらかし」に至っては、国のあり様を論議する国会の場を何と心得ているのかとの怒りを覚える。
そこに社会的公器としてのマスコミの役割があると私たちは受け止めてきた。しかしその取材を拒否し、制限をするという政治機構の方針には納得ができない。マスコミの社会的役割は国民の知る権利の代行である。
よく政府の答弁で使われる言葉に「手の内を(敵に)見せることはできない」というものがある。それでは国民に手の内を見せられないと言うのか。「国民を敵と見立てるのか」そんなことも言いたくなる今日の政府の姿勢である。