お姉さん社労士のこれが私の生きる道

中小企業の労務管理に奮闘する社労士が、知っておくと得する労務の最新情報や法改正などを、独自の視点を交えて解説しています。

タイムカードの打刻時間はすべてが労働時間とみなされるのでしょうか 

2013-09-26 10:18:00 | Weblog
東京は一気に涼しくなってきました。
来週から10月ですものね。
もう、そろそろ衣替えしてもだいじょうぶでしょうか。

一番下に人事労務のセミナー案内も載せていますので、ご興味あればそちらもご覧ください。


さて、タイムカードの打刻時間はすべてが労働時間でしょうか。

労働時間の把握の方法とは?

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」から
見てみましょう。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/070614-2.pdf
原則 1.使用者が自ら現認することにより確認し、記録すること

    これはつまり、使用者自ら、あるいは労働時間管理を行う者が、
    直接始業時刻や終業時刻を確認することです。

   2.タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、
    記録すること

タイムカードの打刻時刻がそのまま労働時間の記録と把握されるのは
次のような措置を講じていない場合です。

   必要に応じて、例えば使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、
   使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを突き
   合わせることにより確認し、記録すること。

と、されています。
よって、タイムカードの打刻=労働時間、というわけではありません。


労働時間の把握の方法の例外として 自己申告制があります。

  自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置として
  次の3点を講じなければなりません。

   1.従業員に対する導入前の十分な説明
   
   2.自己申告と実際の労働時間とが合致しているか否かについて、
    必要に応じて実態調査を実施

   3.時間外労働時間数の上限を設定するすることの禁止


では、どうしてタイムカードの打刻時間が労働時間ではないのか、と思ってしまって
いるのでしょうか

タイムカードの打刻時間=労働時間とした裁判例で必ず取り上げられるものが次にあげるものです。

 日本コンベンションサービス事件(大阪地判平8.12.25)

 タイムカードが、原告らの労働実態に合致し、時間外労働時間を算定する
 基礎となる以上、タイムカードの記載と実際の労働時間とが異なることに
 つき特段の立証がない限り、タイムカードの記載に従って、原告らの労働
 時間を認定すべきである。
 と、しています。

タイムカードの位置づけを明確にせず、残業する、しないの判断を従業員に
実質任せて管理を放棄しているのであれば、タイムカードの打刻=労働時間と
言われても反証は難しいということになります。

では、会社としてどうすればよいのでしょうか。

 皆さんの会社では、タイムカードは出社、退社時間を明らかにするものとして、
 これを基に残業時間を算出、残業手当を支払うためにお使いですか?

 あるいは
 
 遅刻、欠勤、早退をチェックするためのものであり、
 残業手当の支払いには別の時間管理方法を用いていますか?

 上記のいずれかによって、タイムカードの打刻時間の意味合いは変わってきます。

 この定義が明確にされていないので、労働基準監督署の調査が入ると、
 タイムカード、ICカードなどが、いわゆる客観的な証拠として重要視されて
 しまいます。

 1.タイムカードで労働時間を管理する場合
  タイムカードの打刻時間を業務開始時、終業時に徹底させましょう。
 
 2.タイムカード以外の方法で労働時間を管理する場合
  タイムカードの打刻時間と実際の労働時間管理の方法による始業、終業時刻
  との間隔が開きすぎすぎないようにしましょう。

  ※一般的には、開きは30分以内と言われています。
  タイムカードと実際の始業、終業時刻の間が開きすぎた場合は、その理由を
  記録しておくことも重要です。

 タイムカードやICカードなど、本メールの「労働時間の把握の方法」の
 ところで述べたように、客観的な方法を用いることを原則としています。
 じゃぁ、タイムカードを廃止、レコーダーを撤去する。というのは
 ちょっと待ってください。

 タイムカードだけの管理をやめて、残業の事前申請など自己申告制の導入を検討する。
 と言うのが現実的な対応です。
 客観的なデータはやはり残しておくことは必要です。

 なお、労働基準監督署の調査では、いかに社員の方が自分の意思で
 仕事ではなく自己研さんのために終業時間後残っていたと証言しても、
 タイムカードのみの管理で、その打刻時刻が終業時刻と大きくかい離して
 いれば、それは残業時間と認定されてしまう可能性が大きいのです。
 
 労働時間の管理が適切でなく(あいまいな場合)、
 労働基準監督署の調査などにより、何らかの方法で
 労働時間を算出しなければならない場合、
 会社側としては意図しない(納得できない)方法で算定されることもあります。
 だからこそ、うちは大丈夫ではなく、
 すべての会社が制度として整えておくべき必要があります。

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中小企業の生産性向上

2013-09-05 11:39:32 | Weblog
ここにきて、大雨や竜巻などによる被害が相次いでいます。
都会で暮らす私などは、小さかったころは、台風が来ると天気予報で知ると
家族で身構えて待って、ただただ過ぎるのを待つ、という対処でしたが、
この頃の大雨や竜巻を見ていると、台風が直撃したからというわけでもなく、
突然に襲いかかってくるという印象です。
こんなにすごいことになるとは、というのが過ぎ去ったあとの感想でしょうか。

今年の暑さのせいで、気温が35度でも驚かなくなりました。
夏の過ごし方の常識もずいぶん様変わりです。
節電と適宜なクーラーの使用、判断するのが難しいところです。
気候が大きく変わったと理解して、日常の対処、備えの仕方も根本的に
見直しが迫られているということでしょうか。

いずれも頭を切り替えないと対処できませんね。
もっとも、自然を相手にして、出来ることがそれほど進歩したとも思えませんが。


厚生労働省が8月30日に25年度版労働経済白書を発表しました。

発表によりますと、一家の所得が年300万円を下回るような低所得世帯で、
非正規労働者の世帯主が22年時点で約150万人に上るとこを明らかにし、
キャリアアップ支援など通して、雇用安定や処遇改善を図ることが重要と指摘しました。
また職務や勤務地、労働時間が限られた「限定正社員」を普及進める様に提言し、
働き方の多様化は「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)実現につながる」としました。


9月3日に発表された厚生労働省の毎月勤労統計調査(速報)を見ると

7月の現金給与総額が2か月連続プラスと発表しました。
決まって支給する給与が(前年同月比0.3%減)であるのに対して
 ボーナスの増加(前年同月比2.1%増)
 残業代などの所定外給与の増加(同1.9%増)であることを考えると、
給与総額がプラスの要因はボーナス、時間外給与などの変動性のある賃金によるものです。

現金給与総額の内訳をみると、
まだまだワークとライフをバランスよくとはいかないようです。

正規の雇用を増やす取り組みとしての限定正社員の普及推進可と思いますが、
そもそも中小、零細企業は、事業所がひとつというほうが多く、
現状でも正社員は勤務地限定でもあります。

では、まったく、国が推し進めようとする方向は
中小、零細企業には相容れないもの、できない、と
言ってしまってよいのでしょうか。

長時間労働については、社員のメンタルヘルスとの相関性も考えると、
企業規模に関わらず、取り組むべき問題です。
メンタルヘルスは、ひとたび問題が顕在化すれば、経営をゆるがす大きな問題になります。

ワーク・ライフ・バランスは、実はほどほどに働くということとは違います。

生産性を高めて、10時間でやっていた仕事を8時間で行おうというものです。
長時間労働の割に生産性が低いと言われる日本において、
従業員の定着率を高めて人材力を上げることは、
ギリギリの人員で仕事をこなす中小、零細企業には重要課題でもあります。
生産性の向上、即ち長時間労働の減少は従業員の定着率向上にもよい影響を及ぼします。
10時間かかっていた仕事を8時間で行うためには、集中力とともに、従業員の成長も
必要です。人材の成長を促すためにはただ長時間働くだけでは身につくものは少なく
むしろ効率のよい仕事の方法を会得して、集中して取り組むことのほうが成長につながります。

経営者の強い意志と、従業員の意識改革で働き方の見直しをすることが必要です。

私の事務所では、評価制度作成支援を行っています。
評価シート作成時に、業績向上に最優先な業務(仕事)を選択してそれを評価項目としていますが、

なにが業績に直結している仕事で
何がそれを行うための付随業務なのかを分ける(=業務分析)は、
生産性を向上させる第一歩になります。

実は、業績に直結している業務にかける時間は3割程度で、
それ以外は付随業務、その他業務だったりすることがわかります。

ここに気付くことも意識改革のひとつですね。
製造業などで昔から取り入れているIE手法などが有名です。


評価制度と賃金制度というセットではなく、評価制度と生産性向上という切り口で
上記のような内容も盛り込み、
11月には弊事務所で「社員が辞めない会社を作る(仮)」というセミナーを
東京で予定しています。
詳細が決定したらまたご案内させていただきます。


鈴木社会保険労務士事務所