お姉さん社労士のこれが私の生きる道

中小企業の労務管理に奮闘する社労士が、知っておくと得する労務の最新情報や法改正などを、独自の視点を交えて解説しています。

有期労働契約の上限5年 労働政策審議会が建議

2011-12-28 10:26:25 | 明日の人事労務
今日で仕事納めという方も多いかと思います。
一方、来週の今日は、すでに仕事始めという方も多いと考えると、ちょっと不思議な気分です。
良い時も悪い時も、私達は暦の1日で、年末、年始と区切りをつけて、気持ちを切り替えてきたわけですが、
切り替えるというのは忘れていい、ということではないんだなぁと、今年はいまさらながら強く感じています。

12月20日のブログの最下段で

 「12月14日の労働政策審議会で厚生労働省が有期雇用で働ける通算期間に
 上限を定める仕組みを提案しました。
 上限を超えた場合は、労働者が申し出れば、契約満了の時期を決めない「無期雇用」に
 転換し、安定した雇用を増やす狙いです。
 有期雇用の期間に上限を設けると、企業がその前に契約を終える「雇い止め」が増える と思われ、
 上限設定は慎重に決定することが望まれます。」
と触れました。

これについて、12月26日の労働政策審議会で
「有期労働契約の在り方について」次のように建議されました。ポイントは以下の通りです。

 1 有期労働契約の長期にわたる反復・継続への対応
  有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合には、労働者の申出により
  期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みを導入することが適当。

 2 「雇止め法理」の法定化
  「雇止め法理」の内容を制定法化し、明確化を図ることが適当。

 3 期間の定めを理由とする不合理な処遇の解消
  有期労働契約の内容である労働条件については、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、
  期間の定めを理由とする不合理なものと認められるものであってはならないこととすることが適当。

1については、同一の労働者と使用者との間で、
一定期間をおいて有期労働契約が再度締結された場合、反復更新された有期労働契約の期間の算定において、
従前の有期労働契約と通算されないこととなる期間(以下、「クーリング期間」とい う。)を定めることとし、
クーリング期間は、6月(通算の対象となる有期労働契約の期間(複数ある場合にあっては、その合計)が
1年未満の場合にあっては、その2分の1に相当する期間)とすることが適当である。
としています。

2の法定化というのは、
有期労働契約があたかも無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、
又は労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、
客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない雇止めについては、
当該契約が更新されたものとして扱うものとした判例法理(いわゆる「雇止め法理」)について、
これを、より認識可能性の高いルールとすることにより、紛争を防止するため、
その内容を制定法化し、明確化を図ることが適当である。
というものです。

3の有期雇用者の労働条件については、単に有期、無期ということだけで
不合理な処遇は認められるものであってはならないとしています。

詳細はこちらからhttp://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z0zl-att/2r9852000001z112.pdf

この報告を受けて、来年厚生労働省が、有期労働契約の適正な利用のためのルールを、
どうまとめて、明確化したものを出してくるのか、
労使ともに注意深く見守らなければなりません。

来年はもうすぐそこまで来ています。

鈴木社会保険労務士事務所













平成24年度の保険料率の改定予定

2011-12-20 18:00:00 | Weblog
もうすぐクリスマス。
今年もコマーシャルに起用した会社は変わっても
山下達郎のクリスマス・イブがしっかりテレビから流れてきました。
もう30年近く前の曲なのに、色あせないのはなぜでしょうか。まさに頭にすりこまれた定番の強みですね。
これから年末年始にかけて、いよいよ定番行事、定番の街の風景、定番の番組が続きます。
定番はマンネリとも言われますが
今年はこの定番を迎えられることが、しみじみありがたいと感じます。

先週、「65歳まで再雇用を義務化」というニュースが駆け巡ったのですが
日経新聞の朝刊のその記事の下に
「雇用保険料率来年度から0.2ポイント下がって1.0%(※)に」という記事がありました。
まだ、雇用保険財政の収支に余裕があるからとのことなのですが
不景気によって失業手当の支給額も増えているでしょうに
本当にだいじょうぶなのでしょうか。ちょっと心配になってしまいます。
※失業等給付にかかる雇用保険料率部分
 平成23年12月5日労働政策審議会「雇用保険部会報告」より
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001xf76-att/2r9852000001xfat.pdf

一方、労災保険料率については、すでに11月の労働政策審議会で諮問されて
3年に1度見直しの時期にあたる平成24年度は、業種によって料率が異なるのですが
全体的に下がる業種が多いとしています。
 平成23年12月5日労働政策審議会に諮問した内容のポイント
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001x055-att/2r9852000001x09m.pdf

では、健康保険料はどうでしょうか。

前々から財政が苦しいと言われ続けている「協会けんぽ」は
来年平成24年度は、このままだと保険料率が10.04%(機械的に試算した結果)になると
運営委員会の中でのべています。
東京は平成23年9月分からは、9.48%なのですが、いよいよ10%台に乗るのでしょうか。
 「第35回全国健康保険協会運営委員会」資料より
 http://www.kyoukaikenpo.or.jp/resources/content/87733/20111122-143609.pdf

12月14日の労働政策審議会では上記で述べた、定年後再雇用の義務化だけでなく
注視すべきことが審議されています。
厚生労働省が有期雇用で働ける通算期間に上限を定める仕組みを提案したことです。

上限を超えた場合は、労働者が申し出れば、
契約満了の時期を決めない「無期雇用」に転換し、安定した雇用を増やす狙いです。
有期雇用の期間に上限を設けると、企業がその前に契約を終える「雇い止め」が増えると思われ
上限設定は慎重に決定することが望まれます。
また、定年後再雇用導入の時と同様に
正社員でなくても雇用期間の定めなしであればよいという内容のものであり
処遇には言及していません。
それでは、不安定な雇用の解消のための提案であるはずが、片手落ちのような気もします。
いかがでしょうか。
上限の年数については、3~5年とする案を軸に検討していくようですが、
何年に落ち着くのか、注目していきたいところです。


家庭では、そろそろ年末年始のゴミ収集日の予定が掲示されました。
定番と言えば大掃除。
クリスマスを祝いながらこちらもやらねば!

鈴木社会保険労務士事務所



定年後再雇用拒否はできるのか

2011-12-16 17:18:58 | 人事労務は経営問題です
あっと言う間に今年もあと2週間
普段、デパートはあまり行かないし
そういえばビジネス街しか歩いてないなぁ
メールで取引先から年末年始休業のお知らせが届くのを見て、今年もいよいよおしつまってきたことを実感している有様です。

毎年、この時期になると、やたらと保険料のUPとか、社会保険の適用範囲の拡大などという話が出てくるように思いますが、
今年最後に大きく報じられたのが「65歳までの再雇用義務化」というものです。

日本経済新聞2011.12.15より----------------------------------------------------
厚生労働省は14日の労働政策審議会の部会で、企業に従業員の65歳までの再雇用を義務付けている制度の運用を厳格化する方針を示した。
労使合意を前提に企業が再雇用の条件を設けることができる例外規定を撤廃、2013年度から希望者全員の再雇用を求める考え。
企業負担の軽減措置では、再雇用先の対象を拡大し、関連会社なども認める方向だ。
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記事にもありますが、2013年度から実施する(年金支給開始年齢の段階的に引上げが始まる時期)ということは、
まさに厚生年金を65歳まで受け取れなくなる人への対応です。
当然ながら経団連を始めとして導入には反発が多いので、実際にいつからどういう形で導入されるのかは不明です。

このニュースに振り回されるよりも、国がその方向にむかっていこうとしていることは感じつつ、
とはいえ、まずは
現実に、多くの定年間近の従業員を抱えている会社で、
再雇用に基準を設けている会社は、その基準に基づいて再雇用を拒否する場合には、
十分気をつけなければならない、ということが先決です。

次の点はだいじょうぶですか。
 選考基準は労使協定を締結していますか
 基準内容が適法性のあるものになっているか
 再雇用拒否が権利の濫用にあたらないか(例えば、これまでひとりも再雇用拒否されていなかった等)

なお、65歳定年が現実味を帯びてくると、気になるのが「高年齢雇用継続給付」です。
もともとは、平成19年1月9日の雇用保険部会報告で、
「原則として平成24年までの措置」とすべき、とされていたのですが、
12月14日に行われた「第82回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会」資料1によると
現在の高齢者雇用の状況を踏まえ、雇用と年金の接続に資する観点も考慮し、
高年齢者雇用継続給付は当面の間存置することとし、今後の高齢者雇用の動向に注視しつつ、
そのあり方について改めて再検証すべきとされました。
こちらは、当面は存続の見通しですね。

新聞紙上にはのぼっても、実際の審議は見送られたり(年金の支給開始年齢の引上げ)
実施時期は未定(パートの社会保険の適用範囲の拡大)であったり
企業も対応が混乱してしまいそうですが、
状況をにらみながらも、目の前のリスクを軽減するための対応をしておくことが肝心です。

定年後再雇用契約を個別の条件で契約することは構いませんが
総額人件費を考えて、その増加を防ぐために、どういう賃金設計をするのか
どういう雇用形態をとるのかは、事前に検討して決定しておくことも必要です。


鈴木社会保険労務士事務所