闇が片隅にある
ざらついた金箔の輝きに照らされている
たぶんそれは暖かいのだろう
なぜなのかはわからない
ただそう感じるだけだ
やはり闇の中を歩いている
存在の起源を捜しているのかもしれない
意味と呼べる確かなもの
記憶と呼べる過去
涙を流す感情
孤独というのにぼくは慣れている
その意味を問う必要のないほど自明なもの
自分だけは知っている
そしてだれでもそこに還っていくことも
だから自分以外の者は悲しむ
そしてそのように見られる自分が悲しい
まだある自分なのに
なくなってしまうのだから
なくなったとき、なくなるのだから
なくなった自分は悲しくはない
それでもなくなることは孤独になることだから
知っている私とあなたは悲しい
悲しいという感情
それ自体に意味はない
それ自体に過去はない
今ここに自分がいて
その存在自体が悲しい
なぜなら終わるのだとしたら
この記憶とは何?
この存在の意味とは何?
この時間はなぜ始まったの?
初めからなにもなければ
それでもよかったはずなのに
初めからなにもなければ
永遠になにもない
そしてそれが唯一の真理になる
ところが限られた区切られた生を生きるものには
初めもあるし終わりもある
この私という一人称が終る時
私の体験した過去も
私と他者との関係も
私が経験した記憶も
私が見出した意味も
この時間も
私の完成も
すべてなくなる