幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 バッファロー・ランド

2004-11-27 01:14:15 | Weblog

  来いよ!
  今すぐ!
  この世界に!

  幸せがどんなものかわかるよ
  でも、もちろん
  ときどき 落ち込むこともあるさ

  深い湖の底
  グリーンの光が見れるよ

  りんご と ぶどう
  赤と紫の音楽を聴いたら

  きみは飛べるんだ!
  鳥のように
  空高く
  心の中を

  何もすることがない
  ただずっと待っているだけ
  インディアンの土地で

  バッファローが来たら
  きみも一緒に来てくれるかい?



  もし本当にきみが望むなら
  革命なんて簡単にできるよ

  武力も暴力もいらない
  ぼくたちは核より強いんだ

  本当は 僕は誰だかわからないんだ
  でも、こんなふうには 歌えるよ

  愛が本物なら
  きみは自由になれる

  なにも隠すことはない
  ただ 笑って遊ぶだけ
  この まるい まるい
  ボールの上で

  もし裸になったら
  きみは僕と
  愛し合ってくれるかい?


 メリーゴーランド

2004-11-27 01:04:50 | Weblog

  メリーゴーランド
  ラウンド
  ラウンド
  ラウンド

  僕は きみを愛している
  こんなに
  ひどく
  ひどく

  僕は いろいろな 風景を見てきた
  でも やっと きみを みつけた
  僕がきみを見たとき
  きみは 毛皮のコートを着ていた
  僕は 寒くて震えていた


  きみは パリの
  億万長者の家で暮らしていた
  お父さんは 金持ち
  銀行の頭取

  僕は お母さんさえ 知らない
  お父さんは いなくなった
  だから 世界中を旅してた
  この頭と足だけを連れて

 
  きみは 僕に
  銀色のコインを投げたね
  僕は きみを見上げた きみの目を
  きみの目は
  青、青、青 だった

  僕は 犬や猫じゃないよ
  だから お金なんて いらないよ
  僕は ただ 欲しかったんだ
  少しでもいいから
  きみの愛を
  きみの心の中に持っている愛を

  なぜなら
  地球は まるい まるい まるい から

  なぜなら
  月は まるい まるい まるい から
 
  なぜなら
  太陽は まるい まるい まるい から

  なぜなら
  星たちは まるい まるい まるい から


 きみは

2004-11-27 01:02:21 | Weblog

  みんなは笑うが
  きみは笑わない

  ぼくがストレートにしゃべるのを

  みんなは無視するが
  きみは無視しない

  ぼくが黙っているのを

  きみは たったひとり
  ぼくに話しかけてくれた

  でも
  ぼくはきみの言葉を聞かない

  きみを見ている


 Rain

2004-11-25 19:52:41 | Weblog

  涙 か 雨 か
  涙 か 雨 か
  僕には わからない

  涙 か 雨 か
  涙 か 雨 か
  僕には
  見分けがつかない

  雨 は 雨
  涙 も 雨
  僕には同じこと

  だって 彼女は
  行ってしまったから
  僕は今 東の国の
  森の中の
  小さい寺にいる

  1日中 瞑想して
  心は落ち着き
  空っぽになる
  はずだった

  でも 雨が降ると
  自分でもわからない
  涙が

  目からあふれだす
  雨 のように
  滝 のように


  笑ったのか 嘲笑したのか
  嘲笑したのか 笑ったのか
  僕には わからなかった

  嘲笑したのか 笑ったのか
  笑ったのか 嘲笑したのか
  僕には言えない
  君がしたことだから

  僕が君を見たとき
  君は僕を見た
  ふたりの運命

  丘に駆け上がり
  君を待った
  でも 来なかった
  ついに

  真っ暗な夜になって
  ミルヴァレーの庭で
  君が
  服を脱いでいた
  なぜだかわからない
  全裸になって

  僕はスネークの家の
  外のバスタブに
  ひとりで浸かっていた
  全裸になって

  僕はもぐり
  君はしゃがんだ

  ひざまずき
  うつむいて
  ふりかえり

  キスをした
  ペニス・と・ヴァギナ・で



  彼女はその後、朝鮮でペーパーマリッジをすると言っていなくなった。
  何故だかわからない。
  きっと金のためだろう。
  だまされて、北に行ったのかもしれない。
  パナマ生まれのスハジョ。
  君を救い出そうとして、できなかった。


 バナナパフェ

2004-11-24 23:37:20 | Weblog

  長い月が影を引いている バナナの皮を剥いた裏路地で
  光っている
  見つめている
  ビール色の雨

  誰も見ていないから
  唄を歌った
 「天上の食事をとる者は
  地上の食物をとることはない」

  下着を脱ぎ
  冷たい手で
  持ち上げてみた
  
  凍える手で
  月にかざした

  コートのポケットに手を突っ込み
  中央通りを駆けながら
  消し忘れたブティックの灯りに
  ションベンをかけて回った

  深夜喫茶
  便所の近くの
  薄暗い
  すえた匂いのする椅子に座り
  バナナパフェを注文した

  ウエイトレスが笑った

  無垢で無邪気で可愛いが
  運んで来たら
  思い切り
  頬ばらせてやる

  生クリームのついた
  柔らかい果肉のバナナに
  歯を立てれば
  甘くてニッコリするだろう

  しかし君は
  口の中でドロドロになるまで噛み砕き
  ゆっくりと白く濁ったパフェを
  咽喉の奥に流し込むのだろう

  しかし君は
  甘さも咽喉をすぎれば顔をしかめ
  舌に残った渋い筋を
  苦々しく
  吐き出すだろう

  丸い銀のお盆に載せられて
  彼女は案の定
  ガラスに盛られたバナナパフェを運んできた

  僕は水を一杯注文した
  もう一度
  君は僕に仕える
 
  無造作に置かれた
  もう一つのガラスコップ

  冷たい氷をガリガリ噛んで
  震えながら駅まで走り
  始発の地下鉄の中で凍えた

  口も付けずに置いてきた
  君のためのバナナパフェ

  汗をかいた器は
  持ち上げると 露ですべるだろう
  生ぬるく
  溶けているだろう

  車輪の軋む音に歯軋りしながら
  黒い窓ガラスに
  冷たくなったペニスを押し当てて
  蛍光灯の駅を通過した

  コンクリートの階段を上がると
  爪の先のような月は
  乳白色の光に消えていた

  街はたじろぎもせず
  腹を空かせたことにも気づかず
  ポリバケツの転がった
  カラスがついばむ肉片に
  空は白くなり
  背広を着た兵隊達が
  サイロ状のオフィスに監禁されるために
  革靴で生ごみを蹴散らし

  僕は熱くなった肉片をコートに隠し
  犯罪者のように
  犬の目を恐れながら

  海に出るまで歩いた

  塩の雨が降ってきて
  髪の先が塗れた

  雲を透かした白々しい光が
  夜を
  全て嘘にしてしまい
 
  僕がヒゲを剃らないのを
  軽蔑するように

  健全な日常だけを
  退屈に照らし始めていた


 Just Come Hear Now !

2004-11-17 18:02:49 | Weblog

  僕は    No、 No、 no、 no、 no
  君は    破けた ストッキング ハイヒールブーツ
  踏みたい? 白黒ホットドッグ   マスタードクリーム
  下りろ!  この汽車 トンネル  Go、 go、 go

  行ってたって?  異国 放浪 世界中?
  砂漠  カラカラ ベドウィンに
  脱いだ Tシャツ 投げ付けて
  焼けた はだいろ イエローグリーン
  言葉  わからず No、 no、 no!

  言えよ!  Yes、 Yes、 yeah、yeah、yeah
  いつも   Hear、hear、Now、 now、 Now!
  ここは   Come、Come、right、right、Right?
  僕は    Oh、 Yes、 no、 no、 no !


 バロック

2004-11-14 04:44:02 | Weblog

  太陽フレアーにより
  余の脳細胞の
  アデニン・グアニン・シトシン・チミンは焼尽くされ
  核分裂した頭蓋骨の残骸に響く
  にがいトランペットの嬌声

  終末のダンスを踊りながら
  ゆっくりと大地は斜めに傾き
  スローモーションのように
  余は重力に身をゆだねた

  じゃりじゃりの砂粒が
  ベトベトした肌に張り付き
  汗をかいた塩がくい込んで
  ひりひりと悲鳴を上げているのに
  潮風に吹かれる髪だけが
  死臭のように
  自由に動き回っている

  風景は崩れ墜ち
  蜂の巣状の座標が
  全空間を埋め尽くし
  窒息したまま明滅している

  僕はこんなに壊れている

  僕はこんなに壊れているのに
  静かな海だけは
  伝説のように
  キラキラと
  リズミカルに
  光っている

  青い伝説のように


 ぼくのなかに

2004-11-14 04:35:17 | Weblog

  ぼくのなかにいきている。

  まっしろいぱーるのはだを
  にじいろにかがやかせ
  すきとおった
  おれんじいろのけしょうして

  なにをきいていたんだろう?

  ひきしまったきんにくをくゆらせ
  ぜんらですいちゅうにただよいながら
  まもるものなどなにもなく
  むぼうびな

  こもれびのゆらめき

  ことばのないせかいで
  なにをまっていたんだろう?

  ことばのないせかいで
  あまりにもゆたかな

  なにもないせかいで

  あまりにもうつくしい

  みずのおとをきいていたんだろう
  ひかりのきらめきをみていたんだろう

  ことばのない
  みずのなかで


 原罪を超える新しい逆説的倫理学の誕生

2004-11-14 04:11:23 | Weblog

  自己言及永久ループが終焉し
  倫理的公理が露呈する

 「わたし」を愛する彼女は
  カゴの中の鳥のように自由に
 「いいえ、わたしはこれ以上あなたに明らかにできない」
  と言う

  明日の来ない夜

  カミの上の言葉が
  彼女の夢を醒ます

  クローンであるシスターの
  彼女の望むものは彼女の目には見えない

  純粋な観察が核心に触れるまで
  脅迫的要素還元主義に対する官能的抵抗はつづく

 「霊感の泉に息を吹きかけないで!」

  肉感的視覚還元主義の勝利

  神も照覧あれ!

  禁欲的享楽主義
  芸術的自己矛盾の快楽!

 「私は、自然がそうであるように全裸だと思う」

  証明不可能な明証性が明示されたとき
  発露する 隠された天性の潔白

  エデン追放の忘却記憶

  神話の創生



 頭蓋骨

2004-11-14 04:08:44 | Weblog

  自分の頭蓋骨を手に持って この目でしげしげながめてみたい

  わき上がる灰色の雲に 視界をさえぎられ
  眼球の奥に 閉じ込められてしまった 誰もいない部屋

  空っぽの コップのような ぼくの頭蓋骨
  あなたにプレゼントしたら 喜ぶだろうか?
  あなたは何に使うだろうか?

  蝋燭を中に灯し 涼しい秋に 行灯にしたり
  頭頂を輪切りにし 杯にして 水を飲んだり

  ぼくだったら
  オブジェがわりに ひもで天井からぶら下げる
  木魚がわりに 棒でたたいてみる

  地球儀がわりに くるくる回して
  あなたなら どこに行くのだろうか?
  目の穴から鼻の穴を通り抜けるもよし
  ひび割れた球の中に じっと閉じこもるもよし

  それでも
  そのとき
  ぼくは 
  そこに いない

  頭のない自分が 自分の頭蓋骨を手に持って
  ぼろぼろにくずれた眼球 不在の目で
  それを
  見て
  いる /いない? /できない!

  あなたも
  もう この世に いないから
  火で焼かれて 灰になり
  あふれるほど 無になったから



 わからないくらい

2004-11-12 16:10:47 | Weblog

  ねえ
  僕と
  遊ぼうよ

  君が
  人格の完成した
  大人だってことは
  知っているけど

  君は
  僕が 孤独を愛してることを
  知らないだろ?

  だから
  教えてあげるよ

   完成した
  君の
   知らない
  君の
   まだ
   したことのない
  君の
   まだ
   感じたことのない君の
  まだ
   愛したことのない君の
  僕が見つけた
  君 を
  君 が
  君 を
  好きで たまらなくなるような
  やり方 で
  僕
  は
  君 に
  教えて
  あげる
  どれだけ
  君 の こと が
  知りたいのか
  僕 に は
  わからない くらい
  君のこと が
  好き に
  なりそうだから


 ギザギザの獣

2004-11-12 14:43:03 | Weblog

  ギザギザの獣が出て来た
  それは
  僕の愛する
  人たちだった
  でも その中に
  僕を 棘のように
  憎んでいる人たちが
  いて
  僕になつくどころか
  キバをむいて
  威嚇してきた

  いや
  その逆だった
  かもしれない

  僕を 密かに愛する 人たちに
  ギザギザの棘 を 向けた
  僕 の 姿
  だった
  の かも
  しれない


 ふみん

2004-11-10 22:45:48 | Weblog

  左脳で 太陽さえも
  イライラゆれて
  見えるとき
  羽根を散らかした鳩の死骸が
  ビルの屋上で監禁される

  退屈した言語で窒息した汚物が
  一面の白タイルに錆び付き
  車椅子に乗った脳味噌が
  生きたまま
  無意味に迂回させられて
  指紋認証室に運ばれて行く

  冷気で拷問され
  ピンクの粘液 を
  絞り 取られるために

  僕は公園のベンチに座り
  ずいぶん色っぽい
  綺麗な 白髪の老婆が
  桃色の頬で
  おにぎりを食べるのを見ている

  コンビニのビニールを
  ひざの上で上品に畳み
  背骨に這いつくばるアリどもに
  じっと耐えながら
  あのときを 想い出しているのか?

  太陽を背にすれば
  暖かくふくらんだ肌が
  もう はみ出すことがないから?

  たとえ それが
  スリットを通過した光であっても
  まだ他に
  抜け出す 穴は
  あるのに

  入ってきたばかりの
  なつかしい匂いのする入り口あたり
  あの
  もう 忘れていたはずの
  路を
  また
  ずいぶん
  久しぶりに
  彷徨っているのか?

  ピンクの粘液の肌を
  脳の皺を
  幾度も歩いた 迷路を
  もう一度
  一本一本 指でなぞれば
  それも また
  無垢な感じ
  が
  する
  から?