メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

グランド・ブダペスト・ホテル

2015-03-16 20:26:19 | 映画
グランド・ブダペスト・ホテル(THE GRAND BUDAPEST HOTEL、2013英・独、100分)
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
レイフ・ファインズ、F・マーレイ・エイブラハム/トニー・レヴォロリ(若き日)、エドワード・ノートン、マチュー・アマルリック、シアーシャ・ローナン、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、トム・ウィルキンソン/ジュード・ロウ(若き日)、ハーヴェイ・カイテル、ビル・マーレイ
 

今年のアカデミー賞の諸部門にノミネートされた中で、最も見たかった作品である。1930年ころ、オーストリアあたりを想定した架空の国の名門リゾートホテルを舞台に、そこの達人コンシェルジュが常連だった貴婦人不審死、その遺産争いに、コンシェルジュ見習いの少年とともに巻き込まれていく。この時代の政治、戦争などのうねりの中で、快調なテンポでペーソスを織り込んだコメディが仕立てられている。
 

場面が激しく動いていくし、男性有名俳優は多く出ているが髭が多いなどで、はてこの人だれだっけということもあり、ついていくのは大変である。舞台の書き割りみたいな背景も平気で出てくるし、長回しなどないし、今の映画とは随分ちがう画面で、回想シーンがメインの話だからか途中からほとんどビスタサイズになる。
 

でも、こういうものは映画、つまり編集が命の映画ならではともいえるのではないだろうか。
独裁主義体制の追求に追われるシーンでは、おとぎ話というか、インディー・ジョーンズのふざけたパロディみたいな感もあるし、有名ホテルのコンシェルジュ・ネットワークをうまく使ったのも見ていて気持ちいい。
 

監督のウェス・アンダーソンについて調べてみたら、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(2001)があった。この群像劇と似ているところもあるし、共通する俳優もいる。
 

ところで、クレジットにシュテファン・ツヴァイク(1881-1942)とその著作にインスパイアされたとあった。特にツヴァイクの遺作である自伝「昨日の世界」に負っているところが多いと言われているようだ。実はこの数年、身辺断捨離の一環で蔵書の9割は処分したのだが、何冊かあったツヴァイク全集(みすず書房)は40年を経て生き残っていた。「昨日の世界」もその中にあるから、そのうち再読してみよう。映画も何度か見ないと見落としているかもしれないから、それも含めて楽しみにしたい。

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