メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

映画と原作

2006-05-05 11:53:40 | 映画

今日2006年5月5日(金)からブログを始めることにした。書く内容はいろいろで文字どおりメドレーであるが、おそらく音楽、映画、美術、スポーツ(サッカー、水泳)などになるだろう。

映画「理想の女(ひと)」(A Good Woman 2004年英他)をDVDで先月見た。原作はオスカー・ワイルド(1854-1900)の「ウィンダミア卿夫人の扇」(1991)。監督マイク・バーカー、演じるのはヘレン・ハント、スカーレット・ヨハンソン、トム・ウイルキンソンなど。

若妻が夫と中年の魅力的な婦人との付き合いを見ているうち、次第に疑いを抱き、ドラマは急速に展開していくのだが、そのサスペンス劇にコミカルな会話と人情劇がからまり、また初老の男3人の人生についての箴言がちりばめられていて、最後まで目が離せないものとなっている。

中年婦人ヘレン・ハント、初老の紳士トム・ウイルキンソンはいずれも予想通り達者であるが、あらためて感心したのはスカーレット・ヨハンソン。本人も自分の色気に気がつかない風で夫とじゃれているときはかなり大胆、それでいてとても真っ直ぐな心情を失わないという役柄を見事にしかも自然に演じている。ただのセクシー・アイドルではなかった。最後の方で胸のロケットを握り締める場面ではつい涙がでてくる。

しかし細かいところを見逃すとわからない面がかなりあり、1回目の字幕に続き吹き替えで2回目を見てようやく全体が理解出来たといえる。これはDVDならではの効用である。

さてその後この原作を読んでみた(新潮文庫 西村孝次訳)。結論からいくと、映画はよくできている。この話は一晩をはさんだ設定、登場人物にはかなりの背景があって、それをもとにした展開をうまく見せるために原作はせりふに随分工夫をこらしているようであるが、それがしつこくなっているともいえる。もっともこういう複雑な背景のどの部分がどこに顔をのぞかせるか、それがサスペンス劇としての面白さで、これを発見した原作者の腕は評価すべきだろう。

映画の方のよさは、初老の金持ちタンピーの役柄を広げたこと、そして導入部で扇やドレスを丁寧にあつかっていることなど。後者は原作には特に書かれていないところを想像で作ったシーンだが、若妻の描き方も含めて、物語にふくらみと潤いを与えている。最後の写真、ロケットについては、原作と違った風によくもこんな見事なシーンを創造したものである。

随所にちりばめられた箴言は、この原作で再度楽しむことができた。


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