おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

ぺたりと前後開脚

2016-10-12 | Weblog
ベターッと開脚なる本がベストセラーになっているという。新聞に写真付きで本の広告が載っていた。見ていて気持ちいいほどに見事な前屈開脚の女性の姿が目に入る。正面から捉えた写真が印象に残る広告である。両手を前方に突き出し、広げた左右の足が鳥の翼のようで、空中を飛行しているようにも見える。こんな風に体が柔軟になれるといいなあと読者に思わせたところがベストセラーの要因だったのではないだろうか。

柔軟な体はすべての運動の基本だし、健康と若若しさの象徴にして証明でもある。何より前屈開脚の姿態には美しさがあり、そもそも人は誰でも肉体を柔軟にすることで美しい形を自ら創り出すことができる。それは最も身近な自己実現でもある。

かく言うわたしも前屈開脚をベターッとできるのである。桃栗3年、柿8年ではないが、カチカチ気味の体から仕上がるまでに3年を要した。春夏秋冬、毎日0.1ミリずつ足の可動域を拡げていった。いや0・01ミリだったかもしれない。風呂上がりで体が柔らかくなった時や就寝前のベッドで継続してきた。ある日、骨盤が立つようになる。また、ある日、胸が床に付くようになる。さらに、ある日、お腹が床に付くようになる。これを短期間で仕上げようとすると、腰や膝、筋肉、靱帯などを痛めることになるだろう。山登りのように、ゆっくり1歩ずつ進むぐらいの気持ちで臨んだ方がいいみたいだ。まさにウサギとカメの競争ではないが、カメさん方式の方が力まず、怪我の機会を最少限にできる。

前屈開脚ができると、次に挑みたくなるのが前後開脚である。バレリーナの柔軟さの世界に至る道が開ける。前屈開脚の完成から2年。ついに前後開脚ができるようになった。100%の出来ではないが、95%ほどの達成度である。残り5%は伸びしろとして取っておく。ここまで来ると、朝と夜の日課となり、前後開脚するのが愉しくなってくる。これをやらないと1日が始まらないし、終わらなくなってくる。

インターネットの動画でバレリーナ級の達人たちがコツを指南してくれているのが大いに参考になった。後は1日に0・01ミリずつ筋肉を伸ばし柔軟にしていく日々を重ねるだけでいい。大会に出場して競い合ったり、表舞台に登場して軟体人間であることを披露する訳ではないので、気が楽である。松下幸之助の言にあるように、成功する秘訣は成功するまでやり続けることである。

前屈開脚から前後開脚へと体の柔軟さを積み上げた今、次はどんな段階に進むのだろうか。やわやわな体を見ぜびらかすつもりはないので、これはわたし自身の肉体の秘密にしておくとして、目指すべき世界は柔軟な思考となる。智恵と感性を日々0・01ミリつず広げていくことで、自己と世界に対する省察を習慣化する。この世は未知と新しいものでいっぱいだ。そんなことが改めてじっくりと分かってくる。

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