はせがわクリニック奮闘記

糖質制限、湿潤療法で奮闘中です。
パーキンソン病にはグルタチオン点滴を
癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

高インスリン療法が合併症を作る

2017年08月19日 | 医学


私が糖質制限を始めて6年以上が経過しました。
その間、様々な本やサイトで知識を増やしてきました。

しかし、この本の著者である新井圭輔先生は新しい説を唱えておられます。
それは、高インスリンが糖尿病の合併症の原因であるということです。
これまでは、高血糖状態の持続が合併症の原因とされていたのです。

まだ仮説に過ぎないのかも知れませんが、この考え方で説明できることもあるのです。

一例としては眼科医の深作秀治先生の話があります。
”眼科で糖尿病が発見させることはめずらしくないのですが、そうした患者さんたちを糖尿病専門医に紹介すると
2週間後には網膜症が悪化してしまう。そこで私は急激に血糖値を下げないようにお願いしている。”

深作先生はインスリン治療によって血糖値の乱高下ひどくなり網膜症が増悪すると考えておられます。
私たちが受けてきた教育では高血糖が持続することが毛細血管を障害するというものでした。
発見されるまでは糖尿病患者の平均血糖値(ヘモグロビンA1C)は高かったのでしょうが、
いわゆる高止まりで血糖値の乱高下は少なく、それなりに安定していたのかも知れません。

ところが新井先生はさらに踏み込んで
インスリンは人体にとって毒であり、それが老化の促進、ひいては合併症につながる臓器障害にも結び付いている
と述べておられます。

現在の糖尿病治療を私たちは、”毒を食べさせて解毒剤を与えるような治療だ ”と非難してきました。
しかし、新井先生の仮説が事実だとすれば、”毒を食べさせた患者さんに、さらに毒を盛るような治療 ”だったのかも知れません。

うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった

2017年08月17日 | 医学


日本人では閉経前の女性のほとんどが鉄不足に陥っているのだそうです。

鉄が欠乏すると真っ先に連想されるのは貧血ですが、それだけではなかったのです。
鉄は幸せホルモンであるセロトニンや満足ホルモンドーパミンが産生されるときの補因子です。
鉄不足はセロトニンやドーパミンの減少を招き精神疾患のリスクを高めます。
さらには根本的なエネルギー不足を惹起します。
ちょっと難しいけど、エネルギー産生についてざっとアップしてみます。

私たちは食事によって活動するエネルギーを得ています。
このエネルギーの元がATP(アデノシン3リン酸)でエネルギーの通貨とも呼ばれます。
ATPからリン酸が1個ずつ切り離されてアデノシン2リン酸やアデノシン1リン酸に変化するときにエネルギーが発生するのです。

では、エネルギー通貨であるATPを私たちはどうやって作っているのでしょうか?

まずはブドウ糖を原料とした場合を考えてみます。2段階にわたってATPが産生されます。

① 嫌気性解糖
   ブドウ糖がピルビン酸に変化します。この時にATP2個が産生されます。
   
② 好気性代謝
   ピルビン酸はビタミンB群やパントテン酸、αリポ酸によってアセチルCoAとなってミトコンドリアに入ります。
   アセチルCoAは鉄やビタミンB群、Mgの補因子によってクエン酸回路を回ります。
   その後、鉄とO2が介在して電子伝達系に入りATP36個が産生されます。

次に脂肪酸を原料としてみます
   脂肪酸はビタミンB群やパントテン酸、αリポ酸によってアセチルCoAとなってミトコンドリアに入ります。
   その後は好気性代謝と同じですが産生されるATPの数は脂肪酸の長さによって変わります。
   たとえば炭素数が16のパルミチン酸の場合はATP129個が産生されます。

つまり、鉄やMgやビタミンが不足するとクエン酸回路に入れなくなってしまいエネルギー不足になります。
そうなると、鉄もビタミンも必要としない嫌気性解糖に頼るしかなくなります。
代謝産物のピルビン酸はミトコンドリアで燃やされずに乳酸に変化していきます。
この乳酸の蓄積が様々な症状を発現します。

以上のような理由で起こる鉄不足の症状を列記すれば
イライラ、集中力低下、神経過敏、立ちくらみ、めまい、耳鳴り、偏頭痛、節々の痛み、腰痛、喉が詰まる
冷え性、易疲労、朝起きれない、皮下出血、コラーゲン劣化、ニキビ肌荒れ、不妊、睡眠障害、うつ、パニック
むずむず足症候群、氷を食べたがる、などです。

さて、鉄はフェリチンの形で肝臓を中心とした体内で貯金されます。
正常値は測定方法によっても違いますが、日本人女性では10から120くらいとされています。
これは外国と比べると異常です。
欧米ではフェリチンが40未満の女性は妊娠しないように指導されるそうです。
この本の著者はフェリチンは100以上を目指すべきだと主張します。

ところで、外国では鉄不足は珍しいのだそうです。
欧米では小麦に鉄を混ぜています。
フィリピンでは米に、中国では醤油に、東南アジアではナンプラーに鉄を混ぜているそうです。
日本政府は何もしません。
さらにアメリカから輸入される小麦には鉄は入っていません。

日本では女のお子さんは初潮が始まるまでは大丈夫ですが、始まると2年くらいでフェリチンが低値になります。
このことが思春期の立ちくらみや不登校、いじめや自殺の原因になっているかもしれません。

特に悲惨なのは出産後の女性です。
子供にフェリチンを50くらい持って行かれます。
鉄不足は母乳にも反映されますので、子供の鉄不足も心配されます。

この本の最後のほうで作者は次のように述べています。

医師は「病気」を勉強しているのであって「健康」について勉強しているのではない。
医師は「どうすれば健康でいられるか」ということを指導するための教育は受けていない。

消耗 by 悲しみ

2017年08月16日 | 


8月12日に愛犬サラが車にはねられて死亡しました。
それまで車道に飛び出したことは一度も無かったのですが
私のしつけが甘かったようです。

その日から不幸な毎日が始まりました。
毎朝目を覚ますと、真っ先にサラの不在が私の胸を重苦しくさせます。
生き残ったランを抱きしめると、二匹でじゃれ合っていた頃の光景がトゲのように胸に突き刺さります。
部屋の中、車の中、公園、駐車場、どの場所も二匹がじゃれ合う姿を思い出させます。
明るく平和で楽しい記憶が私を苦しめるのです。

もともと独りぼっち恐怖症だったランは哀れです。
診察などで部屋に置き去りにしようとすると悲痛な鳴き声で自己主張をします。
最近ではあきらめたようですが、当初はサラを探し回っていました。
風呂場や倉庫を、そして公園に連れて行くと、そこでもサラを探しているようでした。
その姿が哀れで、わたしの胸をさらに塞ぐのです。

ラン一匹を公園に連れて行っても、もう全力疾走をすることはありません。
犬同士の追いかけっこが、全力疾走の唯一の絶対条件だったのです。

私はこの4ヶ月間、ほとんど毎夕二匹をを散歩に連れ出しました。
そして私は公園を20分間全力で歩くのです。
犬たちは私に付いてきながらも、バトルと追いかけっこを繰り返します。
生後2ヶ月から始めた毎日の英才教育ですから、ランとサラの脚力は同級生の中ではズバ抜けていたと思います。
公園から帰宅すると、毎日二匹をシャワーで洗いました。
もちろんぬるま湯をかけるだけのシャンプーレスです。
バトルで転げ回っていますので、全身が草まみれの泥まみれなのです。
一匹ずつタオルで拭き上げてドライヤーをかけます。
犬たちも幼い頃からのルーティンですのでほとんど抵抗することもなく身を任せていました。
毎日これらをこなすのには2時間近くを要しました。
それから、やっと缶酎ハイ(最近ではWILKINSONのHARDがマイブームです。)にありつくのです。

毎日大変だなと思ったこともありましたが、習慣が身に付くと、それほど苦になりません。
それどころか、今思えば夢のように楽しい毎日だったのですね。
愛犬の全力疾走を見物できることは、確実に人生での幸せの一つだと思います。

さて、さっき気づいたのですが今日で5日目なのに悲しさに変化はありません。
それどころか、この5日間の不幸なコンディションは私の精神と肉体を消耗させているように思えます。

なんとか気を紛らそうと、この前の芥川賞作品を読もうとしたのですが無理でした。
冒頭の
勢いよく夏草の茂る川沿いの小道。一歩踏み出すごとに尖った葉先がはね返してくる。
を読んだ瞬間に、ランとサラを、そのような川沿いの夏草の中で走らせていた記憶が蘇ってしまったのです。

読書もできないような重症の鬱病患者になったようです。
そこで、思い出したのですが、以前にも人生で一回だけ、このような状態になったことがありました。
信頼していた先輩から、とんでもない裏切り行為を受けた時です。
今よりも重症で食べ物も喉を通らず、不眠と早朝覚醒に悩まされていました。

不幸な状態から逃れるために人間は様々な努力をします。
宗教に走ったり、いろんな人にアドヴァイスを求めたり、酒に逃げたりなど.....
私は宗教は20歳の時に絶縁しました。
人生で他人に相談したことなど一度もありません。
酒には強すぎて、頭の中がシーンとしてくるだけで、なかなか酔いつぶれず、早朝覚醒からも逃れられません。

私がその時に見つけた解決策は、先輩に手紙を書くことでした。
これまでの経過や、裏切りに対する非難、今後の身の振り方などを書いて、最後に楽しかった頃のお礼をしたためて決別の手紙としました。
その手紙を先輩に手渡す時には鬱はすでに寛解していました。

その経験を踏まえて、この記事をアップしています。
効果ですか?
なんだか胸のつかえが少し減ったような気もします。