① 韓国、「朴敗北」若者失業率急増が命取り「経済改革」は停滞
2016-04-23
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
4月13日の韓国総選挙は、土壇場でひっくり返った。
朴槿恵(パク・クネ)政権は選挙前、野党の分裂に助けられて、有利に選挙戦を戦っていると思われた。
もっとも、与党も「反朴派」を公認候補から外して無所属に追いやる内紛状態で、不安の種を抱えていた。その不安が的中した。
国会議席数は次の通りである。括弧内は前議席。
共に民主党 123(102)野党
セヌリ党 122(146)与党
国民の党 38( 20)野党
その他 6( 7)
無所属 11( 17)
先進国の総選挙では、高い失業率では与党に不利に働くというジンクスがある。
選挙前、韓国ではこの点がまったく議論にもならず、ひたすら与野党の内紛が話題に上がっていた。
ところが、予想外の結果をもたらしたのは「経済問題」であった。
昨年の経済成長率は2.6%。2月の若者の失業率は、1999年に集計を開始して以来最悪の12.5%と最悪である。
大学卒業と同時に失業を余儀なくされる状況では、与党敗北は必然であった。
韓国総選挙も先進国並みになったのか。
今後、2年間の任期を残す朴槿恵大統領にとっては最悪事態を迎えている。
与党は第二党に転落しており、第一党は最大野党の「共に民主党」である。
「共に民主党」の選挙戦を指揮したのは、元・朴大統領の政策顧問であった金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員会代表である。
朴槿恵氏は、「経済民主化」を大統領選の公約に掲げながら、当選後はこれを反故にした経緯がある。
これに不満を持った金氏は野党へ転じて、大いに朴批判をしたに違いない。
今回の選挙戦敗北の真因は、経済問題であったという推測ができるのだ。
『中央日報』(4月15日付)は、コラム「朴槿恵政治と国民選挙革命」を掲載した。筆者は、パク・ミョンリム延世大教授(政治学)である。
この記事では、かなり「野党」寄り論調という点はあるが、朴政権の政策の不手際が浮かび上がっている。
朴大統領が、野党を説得する努力をせずに、一方的な野党批判を重ねるという「原則主義」にこだわって「妥協」しなかった。
これが、政策的な行き詰まりを招いたものであろう。
朴氏が「政治家」になりきらなかったという側面は否定しがたい。ただ、韓国社会全体が好きか嫌いか。
そういう二者択一の「原理主義」で対処していることも事実だ。
ここでは、およそ「妥協」が成立しない、韓国政治の欠陥も垣間見せているのだ。
この政治的な混乱は、すべて韓国国民に降りかかってくるもので、野党には「勝利感」に酔えない厳しい経済的な現実が横たわっている。
①「第20代総選挙は韓国で執権保守党が初めて2つの点を同時に達成したという点で革命的だ。
過半議席の崩壊と第1党地位の喪失だ。
民主化以降、韓国で圧倒的な地域利点を持つ保守派政党でなく、改革派政党が正常な選挙で第1党になったのは史上初めてとなる。
2004年の総選挙で改革派政党が第1党になったのは大統領弾劾訴追という非正常的な事態のためだったら、今回は正常な選挙だったという点で大統領と政府に対する事実上の政治的弾劾に近かった」。
今回の選挙では、「圧倒的な地域利点を持つ保守派政党でなく、改革派政党が正常な選挙で第1党になった」という特色がある。
首都圏では、与党が大敗しており厳しい選挙民の批判を浴びることになった。
京幾道とソウル市では定員122名中、与党はわずか35人の当選に止まった。
議席数は29%である。若者の失業率の高さから見て不満を浴びたのは当然であろう。
②「どうしてこのような選挙結果になったのだろうか。要諦は朴槿恵大統領政権の業績と政治方式にある。
1つ目は無能だ。
2016年の我々の生活の主要指標は統計調査以降、『歴代』最悪・最低だ。
2015年の家計負債は歴代最も多い。
国内総生産(GDP)比でも歴代最高だ。
家計負債増加率も歴代最も高い。
今年1月の結婚件数は歴代最少だ。
出産件数も同じだ。
2月の青年失業率も歴代最も高い」。
朴政権が忌避されたのは、第一が経済問題である。
このブログで常時、取り上げてきたように、韓国経済は明らかに停滞局面に入っている。
潜在成長率以下の成長率の2%台で苦吟している。
合計特殊出生率は、日本(1.42)よりもはるかに低い1.21で世界最低クラスである。
将来の韓国経済が一段と暗い予測根拠として上げられている。
③「2つ目は一貫した責任転嫁だ。
すなわち、責任倫理の不在だ。
大統領は国政の最高責任者として憲法が与えた最終責任を回避してきた。
初期の国家情報院の大統領選挙介入問題から深刻な家計経済および国家経済にいたるまで、大統領の中心処理方式は責任回避と国会、野党への責任転嫁だった。
一方、国民は国家現実が大統領、政府・与党のためだと報復投票をした」。
韓国では大統領が元首である。
最終責任はすべて大統領に降りかかることは致し方ない。
その意味で、朴氏が「汗」をかいて停滞する国会審議促進の工作をしたという話しは聞かなかった。
ことあるごとに、野党を非難するという「原則主義」であった。
ただ、野党が国会審議を放り出して、外での街宣活動に勢力を使うという、逸脱した行動も目立ったのだ。
「主権在民」という原則を忘れた行動が多く、政治権力を党利党略に使っていた点では与野党同罪と言える。
④「3つ目は過度な議会介入だ。