平成太平記

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① 韓国、「朴敗北」若者失業率急増が命取り「経済改革」は停滞

2016年04月23日 16時22分33秒 | Weblog

① 韓国、「朴敗北」若者失業率急増が命取り「経済改革」は停滞

 

2016-04-23

 

勝又壽良の経済時評

        

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良   

 

4月13日の韓国総選挙は、土壇場でひっくり返った。

 

朴槿恵(パク・クネ)政権は選挙前、野党の分裂に助けられて、有利に選挙戦を戦っていると思われた。

 

もっとも、与党も「反朴派」を公認候補から外して無所属に追いやる内紛状態で、不安の種を抱えていた。その不安が的中した。

 

国会議席数は次の通りである。括弧内は前議席。

 

共に民主党   123(102)野党

セヌリ党      122(146)与党

国民の党       38( 20)野党

その他           6(  7)

無所属         11( 17)

 

先進国の総選挙では、高い失業率では与党に不利に働くというジンクスがある。

 

選挙前、韓国ではこの点がまったく議論にもならず、ひたすら与野党の内紛が話題に上がっていた。

 

ところが、予想外の結果をもたらしたのは「経済問題」であった。

 

昨年の経済成長率は2.6%。2月の若者の失業率は、1999年に集計を開始して以来最悪の12.5%と最悪である。

 

大学卒業と同時に失業を余儀なくされる状況では、与党敗北は必然であった。

 

韓国総選挙も先進国並みになったのか。

 

今後、2年間の任期を残す朴槿恵大統領にとっては最悪事態を迎えている。

 

与党は第二党に転落しており、第一党は最大野党の「共に民主党」である。

 

「共に民主党」の選挙戦を指揮したのは、元・朴大統領の政策顧問であった金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員会代表である。

 

朴槿恵氏は、「経済民主化」を大統領選の公約に掲げながら、当選後はこれを反故にした経緯がある。

 

これに不満を持った金氏は野党へ転じて、大いに朴批判をしたに違いない。

 

今回の選挙戦敗北の真因は、経済問題であったという推測ができるのだ。

 

『中央日報』(4月15日付)は、コラム「朴槿恵政治と国民選挙革命」を掲載した。筆者は、パク・ミョンリム延世大教授(政治学)である。

 

この記事では、かなり「野党」寄り論調という点はあるが、朴政権の政策の不手際が浮かび上がっている。

 

朴大統領が、野党を説得する努力をせずに、一方的な野党批判を重ねるという「原則主義」にこだわって「妥協」しなかった。

 

これが、政策的な行き詰まりを招いたものであろう。

 

朴氏が「政治家」になりきらなかったという側面は否定しがたい。ただ、韓国社会全体が好きか嫌いか。

 

そういう二者択一の「原理主義」で対処していることも事実だ。

 

ここでは、およそ「妥協」が成立しない、韓国政治の欠陥も垣間見せているのだ。

 

この政治的な混乱は、すべて韓国国民に降りかかってくるもので、野党には「勝利感」に酔えない厳しい経済的な現実が横たわっている。

 

①「第20代総選挙は韓国で執権保守党が初めて2つの点を同時に達成したという点で革命的だ。

 

過半議席の崩壊と第1党地位の喪失だ。

 

民主化以降、韓国で圧倒的な地域利点を持つ保守派政党でなく、改革派政党が正常な選挙で第1党になったのは史上初めてとなる。

 

2004年の総選挙で改革派政党が第1党になったのは大統領弾劾訴追という非正常的な事態のためだったら、今回は正常な選挙だったという点で大統領と政府に対する事実上の政治的弾劾に近かった」。

 

今回の選挙では、「圧倒的な地域利点を持つ保守派政党でなく、改革派政党が正常な選挙で第1党になった」という特色がある。

 

首都圏では、与党が大敗しており厳しい選挙民の批判を浴びることになった。

 

京幾道とソウル市では定員122名中、与党はわずか35人の当選に止まった。

 

議席数は29%である。若者の失業率の高さから見て不満を浴びたのは当然であろう。

 

②「どうしてこのような選挙結果になったのだろうか。要諦は朴槿恵大統領政権の業績と政治方式にある。

 

1つ目は無能だ。

 

2016年の我々の生活の主要指標は統計調査以降、『歴代』最悪・最低だ。

 

2015年の家計負債は歴代最も多い。

 

国内総生産(GDP)比でも歴代最高だ。

 

家計負債増加率も歴代最も高い。

 

今年1月の結婚件数は歴代最少だ。

 

出産件数も同じだ。

 

2月の青年失業率も歴代最も高い」。

 

朴政権が忌避されたのは、第一が経済問題である。

 

このブログで常時、取り上げてきたように、韓国経済は明らかに停滞局面に入っている。

 

潜在成長率以下の成長率の2%台で苦吟している。

 

合計特殊出生率は、日本(1.42)よりもはるかに低い1.21で世界最低クラスである。

 

将来の韓国経済が一段と暗い予測根拠として上げられている。

 

③「2つ目は一貫した責任転嫁だ。

 

すなわち、責任倫理の不在だ。

 

大統領は国政の最高責任者として憲法が与えた最終責任を回避してきた。

 

初期の国家情報院の大統領選挙介入問題から深刻な家計経済および国家経済にいたるまで、大統領の中心処理方式は責任回避と国会、野党への責任転嫁だった。

 

一方、国民は国家現実が大統領、政府・与党のためだと報復投票をした」。

 

韓国では大統領が元首である。

 

最終責任はすべて大統領に降りかかることは致し方ない。

 

その意味で、朴氏が「汗」をかいて停滞する国会審議促進の工作をしたという話しは聞かなかった。

 

ことあるごとに、野党を非難するという「原則主義」であった。

 

ただ、野党が国会審議を放り出して、外での街宣活動に勢力を使うという、逸脱した行動も目立ったのだ。

 

「主権在民」という原則を忘れた行動が多く、政治権力を党利党略に使っていた点では与野党同罪と言える。

 

④「3つ目は過度な議会介入だ。

 


②韓国、「朴敗北」若者失業率急増が命取り「経済改革」は停滞

2016年04月23日 16時14分23秒 | Weblog

②韓国、「朴敗北」若者失業率急増が命取り「経済改革」は停滞

 

2016-04-23

 

勝又壽良の経済時評

        

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良   

 

青瓦台(チョンワデ、大統領府)の国会に対する過度な介入は事実上、三権分立の破壊であり、憲法違反行為だった。

 

さらに議員総会で選出された院内代表が強制的に追い出される独裁時代の現象も民主化以降に初めて見られた。

 

このため議会はまひ、立法膠着、政争を繰り返すことになった。

 

国会の政争が深刻になった理由は憲法が保障する自律性の不在のためだった」。

 

朴大統領には二つの「幻影」が付きまとっていると思われる。

 

それは、父・朴正熙(パク・チョンヒ)大統領からの連想である。

 

一つは経済復興。もう一つは軍事独裁政権である。

 

実績として見れば、経済政策の能力がなかった。

 

独裁的な振る舞いは多かった。

 

選挙戦では、この二つが共にマイナスに働いたから、与党は大敗を喫したと思われる。

 

野党から言えば、戦いやすい総選挙であったはずだ。

 

問題は、野党もこれ済まない責任が課されているのだ。

 

⑤「現行の憲法は任期後半の大統領を植物大統領にする。

 

任期前半の帝王的大統領時期にも残せなかった業績を植物大統領の時期に、特に巨大野党を相手に達成するというのは難しいだろう。

 

したがって大統領の危機は野党には機会だ。

 

しかし巨大野党が保守派政党とは違う改革能力を見せることができなければ、2004年の総選挙と2007年の大統領選挙のねじれで見られたように、国民は彼らに与えた機会をさらに残忍に剥奪するかもしれない」。

 

野党は、議会と政権のねじれ現象を利用して、朴政権を追い詰めることだけに勢力を使い果たせば、国民から逆襲されるはずだ。

 

となると、野党の対応は極めて難しくなる。

 

これまでのように、街宣活動をやっているのでは済まなくなるのだ。

 

自ら、政権に協力するという度量が求められる。

 

その間合いが微妙となろう。

 

接近しすぎてもダメ。反対一辺倒でもダメなのだ。

 

『ダイヤモンド・オンライン』(4月15日付)は、「韓国総選挙、朴槿恵の与党惨敗で反日攻勢はさらに強まる」を掲載した。

 

筆者は、前駐韓国日本大使の武藤正敏氏である。

 

⑥「韓国の国会では近年、与野党が凄まじい激突を繰り返してきた。

 

議場での暴力行為、国会を出ての場外乱闘など、与野党の対決構図はメディアから『恥さらし』と呼ばれるに至っていた。

 

こうした反省から、2012年5月、与党の強行採決を抑制し、円満な国会審議を進めることを目的に『国会先進法』が成立した。

 

これによって、与野党間で意見の食い違う法案は、本会議で在籍議員の5分の3以上が賛成しなければ成立しないことになった。

 

そのため、今度は肝心の法案処理がままならなくなった。

 

韓国経済が非常事態に陥っている現在、国会が緊急経済対策や予算審議を妨げている事態を、韓国の大手新聞は『大韓民国経済の沈没――この政治ではそうなるしかない』と嘆いている」。

 

韓国国会は、「国会先進法」という理想的な法案を作ったため、法案審議が進まないという矛盾を抱えている。

 

これは、与野党が紳士的に審議するという前提で成立した法律だろうが、野党がこれを盾にとって審議に応じない。

 

いかにも韓国人がやりそうなことである。

 

「我田引水」は韓国社会の通弊である。

 

感情のままに動き、理性が働かないのだ。

 

本来ならば、多数決主義である。

 

この大原則を見直したことが経済改革を止めてしまったのだ。

 

⑦「2012年に朴氏は大統領選に出馬する際、『経済民主化を通じて経済的弱者の夢が再び湧き出すようにする』ことを公約した。

 

その背景には李明博大統領の時代に溜まった国民の不満がある。

 

李大統領はリーマンショック後にOECD諸国の中で韓国を最初に経済回復させたが、その過程で財閥系輸出企業依存が深まり、国内の格差が広がった。

 

そのため、朴大統領は財閥依存からの脱却、経済体制の抜本的な構造改革を目指したが、2013年11月の施政方針演説を最後にいつの間にか『経済民主化』という標語は消えてしまった」。

 

朴大統領側にも批判されるべき点がある。

 

「経済民主化」をいつの間にか棚上げしてしまい、大統領選挙時の公約を消してしまったのだ。

 

財閥側の働きかけの結果であろう。

 

韓国経済にとって「経済民主化」は不可欠である。

 

「共に民主党」の金非常対策委員会代表は、朴候補者の下で、自らが政策を立案した本人だから、法制化するには好都合なポジションにある。

 

金氏は、政治生命を賭けても実行すべきだろう。

 

⑧「韓国ではいま、『七放世代』と呼ばれる若者たちが急増している。

 

『恋愛、結婚、出産、マイホーム、人間関係、夢、就職という人生に大切な七つを放棄した世代』という意味である。

 

いまや韓国では大学進学率は7割を超えているが、出世街道から脱落した人々は、それこそまともに結婚もできない現状。社会への幻滅、人生の諦観。

 

これに朴政権が答えてこなかったことが今回の選挙結果に反映されているのであろう」。

 

韓国では、成人しても親元で生活する人々は増えている。

 

これを是正するには年功序列賃金体系を変えることだ。

 

「共に民主党」は、それに向けて努力すべきだろう。

 

朴大統領に協力すれば野党の立場が不利になるということでなく、国民に広く政権担当能力のあるところをアッピールすべきだろう。

 

そうすれば、「七放世代」という韓国社会の「宿痾」が解決に向かう足がかりを得られるのだ。

 

国会は対決でなく妥協である。

 

対日外交も同じである。

 

今回の選挙結果を受けて、慰安婦問題の再交渉を持ち出すことは、「最終的、非可逆的」な合意に反する。

 

韓国政治が「大人」になった証明として、スムースに受け継ぐことが求められる。

 

仮に、再交渉を要求してきた場合、日本は応じないし、世界の笑い物になろう。

 

(2016年4月23日)