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政治家を原発推進政党(民主党)の議員を含めて「人物本位」で候補者を擁立しようという呼びかけは正当か?

2012-01-07 14:39:26 | 社会
CMLから 東本高志@大分さん
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ドイツの脱原発事情を日本に精力的に紹介しているジャーナリスト(環境ジャーナリスト)のおひとりの川崎陽子さん
が「昨年の夏、佐賀市、宮崎市、大分市での講演を主催、聴講、取材」した人たちに対して年頭の挨拶に寄せて2つ
のお願いをするメッセージを発信しています。ひとつ目は「拙記事ご高覧のお願い」というものでそれはそれとして問
題にすべきことではないのですが、ふたつ目の「お願い」である「次回国政・地方選挙に向けて、脱原発を公約する
立候補者擁立準備のお願い」にはきわめて重要な負の問題があります。

その点について、川崎さんのメッセージを転載された方を相手に反論の返信を認めたのが以下です。

川崎さんのプロフィールについては下記をご参照ください。
http://webronza.asahi.com/global/2012010400001.html

なお、くだんの川崎さんのメッセージは私の反論文の下に転写させていただこうと思いますが、川崎さんに直接の
転載許可をいただいているわけではありません。が、川崎さんのメッセージは広範な人たちに呼びかける体裁の
もので、その意味で公開を前提にしたものと判断できます。また、川崎さんは、環境ジャーナリストという立場から
広範な人たちに呼びかけをしていますので、そのジャーナリストの責務としても彼女の言辞は広く公開されるべき
性質のものだろうと私は判断します。

【私の論】

××さん

あなたの「大分1区と2区の民主・社民の「棲み分け」はそろそろやめてほしいものです」というご認識。また、「政権
与党は、税と社会保障の一体改革を今度の選挙争点にするのでしょうが、国民の生命や健康、国と国民の財産で
ある自然環境の放射能汚染という問題に優先する政治争点などあってはいけないはず」というご認識はそのとおり
だと思いますが、ご紹介されているドイツ在住の環境ジャーナリストの川崎陽子さんのお願いの(2)にある民主党
の菅前首相をはじめとする何人かの民主党議員を脱原発の雄とみなすがごとき政治認識はいただけません。とい
うよりも真の脱原発政治の実現、脱原発社会の構築のためには川崎さんの主観的な善意は疑いませんが、その
善意の意図に反して有害な論になっているように私は思います。

××さんの紹介されるメールで川崎さんは菅前首相を脱原発の政治家として高く評価していますが、この川
崎さんの政治認識は誤っていると思います。

たしかに菅前首相は2011年7月13日の記者会見であの超有名になった「脱原発依存」宣言なるものをしました。
が、これは話題にされることは少ないのですが、その同じ記者会見で菅前首相は「原発の再稼働は『大丈夫となれ
ば稼働を認めることは十分あり得る』」(中日新聞 2011年7月14日)とも述べています。これは「原発継続」宣言とも
いえるものです(下記の記者の最後の質問への答弁を参照)。菅前首相を脱原発の政治家と見るのは誤りです。
http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201107/13kaiken.html

また、「脱原発方針を表明した日の翌日に、トルコの首相あての祝電の中で、引き続き、原発の売り込みに意欲を
示」しもしました(FNNニュース 2011年7月15日)。脱原発の政治家がこういうことをするでしょうか?
http://www.youtube.com/watch?v=aLdvB0Qzll8

さらに菅前首相は同首相の「脱原発依存」宣言について閣内を含む民主党内や党外からの批判が高まるやすぐ
に国会において「(脱原発宣言は)私個人の考え」にすぎないなどとする「後退」宣言をしました。菅前首相の脱原
発の姿勢には一貫性がありません。

この菅前首相の姿勢について法政大学教授の五十嵐仁さんは次のように言っています。

「冗談じゃありません。首相としての発言は、「個人」ではなく「公人」としてのものに決まっているじゃありませんか。
首相としての責任をきちんとわきまえてもらいたいものです。」(五十嵐仁の転成仁語 2011年7月17日)
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2011-07-17

これが菅前首相の評価に関してのふつうの見方というべきものでしょう。

菅前首相の電力会社の発電部門と送電部門の分離案に関する発言についてもひとこと述べておきます。

この点について菅前首相は「自然エネルギーを大きく受け入れるとき。必要な体制について、今後のエネルギー
基本計画を考える中で当然議論が及ぶだろうし、そうすべきだ」(東京新聞 2011年5月19日)と述べたことがあり、
この言及をあたかも「脱原発」主張のようにもてはやす風潮が当時(いまも)一部の脱原発論者の中に生まれた
ことがありましたが、そのとき同時に同前首相は原子力発電について「より安全な活用の仕方がきちっと見いだ
せるなら、原子力をさらに活用していく」とも述べ、原発推進の立場を明確にしてもいます。このことは「発電送電
自由化実現」の主張と「脱原発」の主張はが直接リンクするわけではないことを示しています。このことをもって
菅前首相を脱原発の政治家とみなすのは誤認以外のなにものでもありません。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2011051902100006.html

この点について、わが国の第一級の知識人のひとりであるといってよい文芸評論家の柄谷行人は「反原発デモ
が日本を変える」という『週刊読書人』のロングインタビュー(2011年6月17日付)の中で次のように言っています。
http://www.kojinkaratani.com/jp/essay/post-64.html

「編集者:脱原発の動きについては、そのひとつの試みとして、ソフトバンクの孫正義さんが提案している案(大
規模な太陽光発電所の建設など)も、最近注目を集めています。

柄谷:ぼくは信用しない。自然エネルギーの活用というような人たちは、新たな金儲けを考えているだけですね。
エコ・ビジネスの一環です。(略)日本では、太陽光発電そのものが環境破壊となる。そんなものは、いらない。
現在のところ、天然ガスで十分です。それなら日本の沿岸にも無尽蔵にある。要するに、先ず原発を止める。
それからゆっくり考えればいいんです。」
注1:柄谷氏のいう太陽光発電が環境破壊につながるひとつの例証は下記にあります。
http://ank-therapy.net/archives/1519927.html
注2:天然ガスが日本の沿岸にも無尽蔵にあるひとつの例証(東京都の例)は下記にあります。
http://www.inosenaoki.com/blog/2011/09/post.html

現在の政権政党である民主党が自民党とともにまぎれもない原発推進政党でしかないことについてもひとこと
述べておきます。

民主党が原発推進政党でしかないことは、民主党・菅内閣が2010年6月18日に閣議決定した「エネルギー
基本計画」に「原子力発電を積極的に推進する」「核燃料サイクルは、(略)確固たる国家戦略として、引き続き、
着実に推進する」と明確に記されていること(この閣議決定は民主党・菅内閣の公式見解としていまも生き続け
ているのに対し、菅首相の「脱原発宣言」は同首相個人の「私の考え」にすぎません)。また、2010年参議院
選挙時の民主党のマニフェスト・政策集においても「政府のリーダーシップの下で官民一体となって、高速鉄道、
原発、上下水道の敷設・運営・海水淡水化などの水インフラシステムを国際的に展開」すると記されていること。
さらに少なくとも6人の議員が東京電力の原発推進を図る労働組合である電力総連から合計8740万円もの
献金を受けているという事実があること(AERA 2011年4月25日号)。さらにまたその電力総連は2人の労組出
身者(小林正夫、藤原正司)を参議院に送り込み、2010年の参院選では蓮舫(現内閣府行政刷新担当大臣)、
北澤俊美(現防衛大臣)、江田五月(現法務大臣)、輿石東(現民主党参議院議員会長)をはじめとする48人
の民主党議員に推薦を出している(女性セブン 2011年4月28日号)という事実があることなどなどからも議論の
余地のないところといわなければなりません。
http://www.denryokusoren.or.jp/kikanshi/tsubasa/159.pdf

民主党は自民党とともにまぎれもない原発推進政党でしかありません。

その政党の議員を含めて「政党名に捉われず、人物」中心で擁立しようなどという呼びかけは、「人物本位」と
いう体のよい言葉によって(この「人物本位」という言葉は、本来「政策本位」で争われるべき(有権者に政党な
り個人なりがそれぞれが信とするところの政策プログラムを提示してその審判を問う)民主的選挙制度の本質
的アイデンティティともいうべき側面を隠蔽し、「人物本位」、すなわち「人物」のつながりを重視する結果として、
これまで自民党型の利益誘導型政治に道を開くべく機能することが多かったように思います)ある「政党」がこ
れまで果たしてきたそのマイナス度の激しい負の政策的側面をチャラにし、原発推進政党の議員であっても
「人物本位」で投票しようという呼びかけになるほかなく、結果として原発推進勢力を躍進(または現状維持)さ
せることにしかならないでしょう。

また、川崎さんは、「民主党の菅さんや鉢呂さん、原口一博さん、山崎誠さんなど」と彼らが脱原発政治家であ
るかのように論じていますが、菅氏については上記にみたとおり真正の脱原発政治家ではないことは明らかで
す。鉢呂氏、山崎氏については私は彼らを評価するべき情報を持ちませんのでここではその評価を保留して
おきますが、原口氏は「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」に所属する明白な改憲論者です。
http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-August/001116.html

彼の脱原発の主張は私は詳らかではありませんが、彼も「原子力発電を積極的に推進する」ことを明記した上
記の「エネルギー基本計画」を閣議決定した際の閣僚のひとり(総務大臣)ですからその決定に責任を負って
いることは明らかです。原口氏を脱原発政治家とみなすことはできません。この点については同「エネルギー基
本計画」を継承する野田内閣の閣僚であった鉢呂氏についても同様のことがいえます。

このような真正な脱原発政治家とはいえない政治家・議員によって「半世紀にわたって築かれてきた強固な原
子力ムラを解体させ」ることはできないでしょう。同主張、同呼びかけとは真逆の結果にならざるをえないことは
目に見えているといわなければなりません。

有権者にとって今度の選挙で重要になる視点は、原発推進政党としての民主党や自民党には決して投票しな
い、投票させない、という断固たる決意をともなう視点というべきだろうと私は思います。そうしなければ川崎さ
んのおっしゃる「原子力ムラを解体させること」などとても適わないでしょう。

川崎さんの呼びかけは誤まった呼びかけだと私は思います。


注:川崎さんの呼びかけ文の原文は下記弊ブログ記事の下段にある「参考:【川崎さんのメッセージ(2012年1月
6日付)】をご参照ください。
http://mizukith.blog91.fc2.com/


東本高志@大分
higashimoto.takashi@khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/
 
**************

参考:【川崎さんのメッセージ(2012年1月6日付)】
皆さま

このEメイルは、環境ジャーナリストの川崎陽子から、昨年の夏、佐賀市、宮崎市、大分市での講演を主催、聴講、取材してくださった皆さま 並びに講演の録画をお送りさせていただいた皆さま(MLでは一方的に流させていただきました)の中でEメイルアドレスをいただいた方にお送りしています。重複・失礼があればお許しください。

講演に長時間おつきあいくださったことに、あらためて心から御礼を申し上げます。
今年もどうかよろしくお願いいたします。

さて、年頭のご挨拶に寄せて、皆さまに二つのお願いがございます。

その1)拙記事ご高覧のお願い

講演では、日本の縦割り官僚主導の弊害を廃棄物やダイオキシン問題、都市計画などを例に、政治主導のドイツと比較紹介しました。

現在その弊害が、3.11原発震災の対応においても、人災として被害を拡大し続けています。

その一例として、杜撰な労働者の被曝管理について、朝日のWEBRONZAに「ドイツの合理的な放射線防護に学ぼう」を執筆しましたので、ご高覧いただけましたら幸いです。
http://webronza.asahi.com/global/2012010400001.html

この記事の内容は、原子力・放射線防護政策が抱える問題の氷山の一角にすぎません。

講演でも述べましたように、私たち有権者が選挙で議員を入れ替えるしか、改革する手立てはないのです。

そこで、次のお願いです。

その2)次回国政・地方選挙に向けて、脱原発を公約する立候補者擁立準備のお願い

電力会社との癒着はなかったと思われる菅前首相も鉢呂前経産相も、従来の経産省主導の原発主体エネルギー政策を改革しようとした途端、御用メディアによって失脚させられました。特に、薬害エイズ事件で大臣として官僚を負かした前科のある菅さんは(それが本来あるべき大臣の姿ですが、日本では稀有なため)、経産省をエネルギー政策から切り離そうとしたので、凄まじい抵抗にあったのだと思います。

彼らは、政権政党内であまりに孤立しあまりに無力でした。
今の野田内閣には原発推進派もしくは立場不明な閣僚が多く、
菅内閣よりも脱原発から大きく後退したといわざるをえません。
もっとも、菅内閣の脱原発といっても、内実は菅首相が孤軍奮闘していただけでしょうが。

今となっては為す術はありませんが、せめて野田さんと菅さんの官邸ブログを比較してみてください。野田総理に替えて本当に良かったと思われますか?

野田内閣や霞ヶ関にいくら署名や要望書を提出しても、おそらく何も変わりません。

民主党の菅さんや鉢呂さん、原口一博さん、山崎誠さんなど、
また自民党の河野太郎さん、社民党、共産党の皆さんなど、
脱原発を主張する議員が国会で圧倒的多数を占めなければ、
霞ヶ関も原子力委員会や原子力安全委員会も、半世紀にわたって築かれてきた強固な原子力ムラを解体することはできません。

日本の大きな政党は、欧州の政党のような政策ごとに結成されたわけではないので、
自民党から民主党への、同じような玉石混交政党による無意味な政権交代という失敗を繰り返さないために、政党名に捉われず、人物の背景をしっかり調べて本物の政治家だけを選ぶしかありません。

今のままの政党で選んでいては、内輪揉めばかりでマニフェストなど無視し、毎年首相や大臣が入れ替わって、それこそ官僚の思う壺です。こんな負の連鎖には、もういい加減に終止符を打ちましょう。そして、欧米のように4年間は1つの内閣で、公約した政策にじっくりと取り組んでもらいましょう。

長くなりますが、政治家かつジャーナリストとして尊敬する石橋湛山・元首相が遺した1967年「政治家にのぞむ」という言辞を引用します。

私 が、今の政治家諸君を見て一番痛感するのは、『自分』が欠けているという点である。『自分』とはみずからの信念だ。自分の信ずるところに従って行動すると いう大事な点を忘れ、まるで他人の道具になりさがってしまっている人が多い。政治の堕落といわれるものの大部分はこれに起因すると思う。

政治家にはいろいろなタイプの人がいるが、最もつまらないタイプは 自分の考えを持たない政治家だ。金を集めるのが上手で、また大勢の子分をかかえているというだけで、有力な政治家となっている人が多いが、これは本当の政治家とは言えない。

政治家にだいじなことは、まず自分に忠実であること、自分をいつわらないことである。・・・政治家になったからには、自分の利益とか、選挙区の世話よりも、まず、国家・国民の利益を念頭において考え、行動してほしい。国民も、言論機関も、このような政治家を育て上げることに、もっと強い関心をよせてほしい。

特に原発推進派議員の選挙区で、強力な対立候補の擁立が必要です。
(ブログ「脱原発派でない国会議員を仕分けよう!」 http://t.co/0hsc32II にリンクのあるExelリストをご参照ください。)

つきましては、皆さんが築かれてきたネットワークを最大限に生かして、今度こそ脱原発と原子力ムラを解体できる政権に交代できるよう、今から立候補者擁立の綿密な準備をお願いいたします。

また 報道関係の皆さまは、講演会で配布させていただいた日独メディアの比較記事にも書きましたように、ドイツのように国家の第4の権力として、有権者のために政治を監視する報道を徹底してくださいますようお願いいたします。私ももちろん、あまりに微力ではありますが、そのような情報発信に努めてまいります。

最後に、内閣審議官・下村健一さんの嘆きのTweetです。
2011年06月12日
@ken1shimomura: 「菅さんのエネルギー政策は支持したいが、○○(←人により色々)政策はどうなの?」という質問を近頃よく受ける。政策AもBもCも全て合致する人としか組めな い、というこの潔癖さが、日本の市民運動の広がりをどれだけ阻害してきたことか。「今はAの一点でまとまろう」という力が本当に弱い社会!

これは日本で市民活動をしていた時に、私も思い知らされたことです。

未だ収束の見通しがない原発震災から、エネルギー政策が、どれほど国の環境・社会・経済全体の現在と未来に想像を絶する影響をもたらすか、そして外交問題にも大きく関わるかが、明らかになりました。すなわち、まずエネルギー政策で一致する人がまとまれば、その他の政策で大きな差異はでないはずです。あくまでも、利権絡みでないことが前提ですが。

10年以上前に脱原発政権を誕生させたドイツで、その原動力となったのは、100以上の環境保護団体が擁する数百万人の賛助会員たちが横につながり、社民党や緑の党を支えて政権交代させた結果でもあります。

どうか皆さま、大同小異で建設的に妥協し、広く横につながっていきましょう!

以上、たいへん勝手な長いお願いを、最後までお読みくださりありがとうございました。

2012年1月
環境ジャーナリスト 
川崎 陽子 拝


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