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【問われる開国-TPPの衝撃】(上)生き残れるか、食料争奪戦 日本企業に求められる「戦える素地」

2010-11-04 08:21:36 | 社会
なかなか力の入った記事で、記事中には農業情報研究所の北林寿信さんやODAについても出てきます。

 前原外務大臣はテレビで「日本のGDPの中で農業の占める比率を知っていますか?わずか1.5%ですよ。この1.5%のために残りの98.5%が犠牲になっていいんですか」と新自由主義者の本領を発揮していましたが、11月13日から横浜で始まるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会合での最大の問題はこのTPPに関する議論になりそうです。

 日本の「経済成長」のためのODAで支援したベトナムへの原発輸出など「経済成長」のあり方そのものを根本から問い直すことが本質的に問われていますが、農地争奪(「責任ある農業投資」)やTPPによる日本農業壊滅の危機など貿易・投資の自由化と食糧危機の問題(すでに食糧価格が08年の食糧危機以来の高水準に上昇しつつある)も日本の社会運動にとって直面する重大な問題として浮上しつつあります。

世界の食料価格:さらに上昇か-穀物など農産物に続き食用油も高騰へ (ブルームバーグ)
「国連によると、食料価格は9月に、2008年の食糧危機以来の高水準に達した。この年にはハイチやエジプトで暴動が発生した」
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920011&sid=aAY8c_l5SGVQ

歯止めなき円高による産業空洞化の危機、米中間選挙惨敗によるオバマ政権の市場開放圧力増大、米中のアジア太平洋市場をめぐる角逐など、この横浜民衆フォーラムでの議論がますます重要になってきました。関西からも上京団が駆けつける予定です。

「いらない!APEC」横浜民衆フォーラム
http://susquehanna.edoblog.net/

内富一
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【問われる開国-TPPの衝撃】(上)生き残れるか、食料争奪戦 日本企業に求められる「戦える素地」/産経
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101104/fnc1011040114000-n1.htm
 東アフリカのインド洋に浮かぶマダガスカル。童話「星の王子さま」に登場するバオバブの木で知られる島国で昨年3月、政変が起きた。きっかけはラヴァルマナナ大統領(当時)が韓国の財閥企業、大宇グループと結んだ契約だ。

 北海道の耕作面積にほぼ匹敵する130万ヘクタールの農地を「99年間リースする」というもので、60億ドル(約5千億円)のインフラ整備の“見返り”という内容に国民の怒りが爆発した。大統領退陣を求める暴動に発展し、鎮圧する軍との衝突で130人以上が死亡した。

 フィリピン政府も3年前、中国企業と124万ヘクタールの土地のリース契約を決めた後、撤回を余儀なくされた。土地を追われる農民の不満が噴出したからだ。

 マダガスカルやフィリピンにとって海外からの投資は農業近代化につながる一方、韓国や中国の狙いはランドラッシュ(農地争奪)にほかならない。国土の狭い韓国、約13億人の人口を抱える中国にとって国外に農地を確保し、独占的に食糧輸入を行おうとの戦略は共通シナリオだ。

 「責任ある農業投資を行う」。10月中旬、新潟市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)食料安全保障担当相会合で合意したものの、会合に先立ってローマで開かれた国連食糧農業機関(FAO)の委員会で中国や韓国は反旗を翻した。水産資源でも中国は今年、1千トン超の最新鋭の巻き網漁船を10隻以上投入し、太平洋中西部で乱獲を繰り広げている。

 「農業が壊滅する」

 13日から横浜で始まるAPEC首脳会議を前に菅直人首相が参加検討を表明した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP=トランス・パシフィック・パートナーシップ)に対し、全国農業協同組合中央会(JA)の茂木守会長はかみついた。

 農産物、工業品などすべての物品について原則、関税を撤廃するTPPが具体化すれば、高関税で保護される国内の農業や漁業の廃業が増えるからだ。40%の日本の食料自給率がより下がる可能性も否めない。ただ、TPPに加盟し、他国から安い農産物などが入れば消費者メリットも見込める。

 TPPへの参加を前提に政府は2日、「農業改革本部」を立ち上げる方針を決めたが、昨年4月に設置された民間企業の海外農業投資を支援する官民研究会は“休眠状態”のままだ。

 千葉県の農業法人の関係者によると、ラオスで水田を持つ韓国企業がコメ保管用に使う倉庫に日本の政府開発援助(ODA)で建てられたものがあるという。「韓国を助けるために日本は税金を使うのか」。関係者は不満をぶちまけた。

 「(食糧確保に向けた)中国や韓国のやり方はまずいが、現実は厳しい」。民間調査機関、農業情報研究の北林寿信(としのぶ)所長は日本の甘さを指摘する。

     ■

 千葉市美浜区新港。接岸した大型ばら積み船から、住友商事傘下の「千葉共同サイロ」の荷揚げ機が大量の小麦をはしけに積み上げていく。小麦は全国の製粉業者に配送されて小麦粉となり、さらにパンや菓子に姿を変え、消費者に届けられる。

 16万1千トンという日本有数の収容設備を備える同社の小麦取扱量は年間約70万トン。国内の小麦消費量の約12%を担う。「来年5月には内航船が船積みできる10億円の設備も完成する」。内藤常男社長は事業拡大に意気込みをみせた。

 小麦の国内消費量の約9割を輸入に頼る日本。多くは粒で輸入され、製粉業者に売り渡される。小麦粒の関税は1キロ当たり55円。小麦粉は粒の2倍近い関税率だ。輸入小麦粉は、日本からほぼ完全にシャットアウトされてきた。

 しかし、日本が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP=トランス・パシフィック・パートナーシップ)に参加し、海外の小麦粉が入ってくれば「国内で製粉する意味が消える」(農林水産省幹部)。日清製粉グループ本社の深田晶也取締役は「製粉業界への影響は計り知れない」と戸惑うばかりだ。

 「コメや牛肉の価格が下がればプラスに働く」

 牛めし用牛肉の7割を米国産、3割を豪州産に頼る松屋フーズの緑川源治社長は、TPPを歓迎する一人だ。現在、外国産牛肉への関税は38・5%。撤廃されれば牛丼チェーン各社の牛丼並盛りが200円以下になることもあり得るためだ。

 国産の約75%を占める肉質3等級以下の牛肉について農水省には「すべて外国産に置き換わる」と指摘する向きもある。

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 「日本で製造を続けるメーカーが海外と対等に戦える素地を作ってほしい」

 富士重工業の森郁夫社長は2日、平成22年9月中間連結決算を発表した記者会見で訴えた。

 同社の4~9月の北米での販売台数は米国で高いブランド力を誇る主力車「レガシィ」が牽(けん)引(いん)し、前年同期比33・4%増の14万4千台と伸びた。このうち約5万7千台は国内の矢島工場(群馬県太田市)で生産し、輸出用に振り向けている。TPPへの参加が具体化すれば米国への輸出競争力が増すだけに、森社長の期待は強い。

 すでに韓国は米国、欧州連合(EU)など主要国との自由貿易交渉で日本より先行し、自国製品の価格競争力の強化に乗り出しているだけに、大手自動車メーカー幹部は「サムスンに席巻された電機メーカーの二の舞いを避けなければいけない」と強調する。手をこまねいていては、日本のお家芸である「自動車」「電機・電子」「機械」産業の3分野の世界シェアを奪われかねないからだ。

 「ビジネスチャンスを拡大できる」とみるのは、石油元売り最大手のJX日鉱日石エネルギーも変わらない。同社が10月、大阪製油所を中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)グループとの合弁会社に衣替えしたのは、アジア・太平洋地域への輸出拠点とする狙いのためだ。国内の石油需要の減少で製油所の役割が変わってきたという。

 4千超の町工場を抱える東京都大田区の産業振興協会の関係者は「技術力を生かし、海外から製品受注を得る機会だ」と意欲を見せる。

 中堅・中小企業にまでTPPへの参加機運が高まる一方、「厳しい国際間競争への突入」(経済同友会の桜井正光代表幹
事)をどこまで受け止められるか。「世界同一基準」の競争条件下で、日本企業の底力が試される。

     ◇

 地域や2国間で自由貿易の流れが加速する中、TPPの枠組み作りが動き出した。利益や損失の程度は流動的だが、日本だけが「開国」を拒み続けることは難しい。国際競争をどう生き抜くべきかを探った。


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