「被害『核』と同じ」 劣化ウラン弾 残留放射能 イラク医師ら広島で訴え/東京新聞

2006-08-06 13:09:46 | 世界
「私たちの被害はヒロシマ、ナガサキと同じ」。イラク環境省職員でバスラ州の環境放射線を測定しているカジャック・バルタニアン氏(44)とバスラ教育病院の医師ジャワード・アル・アリ氏(62)が広島市で開催中の「劣化ウラン兵器禁止を訴える国際大会」に参加。バスラ州周辺の劣化ウラン弾被害を訴えた。都内で両氏の実態を聞いた。

東京新聞 2006.8.6(日) 朝刊 11版S 24面 【特報】

    「被害『核』と同じ」 劣化ウラン弾 残留放射能
         イラク医師ら広島で訴え
         被爆国日本と共に廃絶を

                                        (橋本誠)
 ──汚染の現状は。
 バルタニアン氏  1991年の湾岸戦争で米英軍は、バスラ州の国境地帯などで約300トンの劣化ウラン弾を使ったといわれている。2003年のイラク戦争では1000トン以上が使われた。劣化ウラン弾で穴が開いたバスラ近郊の戦車や装甲車の残骸からは、今年5月の調査でも最高で1時間当たり20-30マィシ‐クロベルトの放射線が検出された。普通の環境の約千倍だ。
 ──放射能は現在も弱まっていないのですか。
 バルタニアン氏  バスラで調査を始めた2000年当時も今も変わらない。劣化ウラン弾に含まれるウラン238の(放射能が半分になる)半減期は40億年以上もあるからだ。1000年たっても、100万年たっても変わらない。
  ──劣化ウラン弾は環境にどのように影響を与えるのですか。

 バルタニアン氏  (戦車などを)貫通した弾丸はちりとなって飛び散る。人間や動植物の中に入って放射線を出し、細胞を壊していく。地表に降りたちりは雨に流され、土を汚染する。
  ──人体にはどのような影響が出ているのですか。
 アル・アリ氏    湾岸戦争から3,4年たったころから多くの患者が出始め、医師たちは驚いたが、何が起こったのか分からなかった。96年に治安当局から初めて、放射能の問題があると聞いた。政府は回収した銃やミサイルを買い取っていたので、みんな喜んで砂漠に集めに行った。それが問題を大きくした。今でも、人々が戦車の鉄くずを集めたりして、同じ問題が起きている。
 調査の結果、同じ家族で何人もががんにかかっている不思議な状況が分かった。同じ人に何カ所も、がんが複合して起きた例もある。

     がん、白血病患者数は激増

  ──がん患者の数は湾岸戦争の前と比べてどのくらい増えたのですか。
  アル・アリ氏    バスラ教育病院では、今も毎月約80人の患者が見つかる。約300人が入院し、800-1000人が外来で通っている。バスラ州を対象をした調査では、がんや白血病にかかる人が1990年の488人から、2005年は1822人に増えた。人口10万人あたりの患者数も44.7人から84.4人に増えている。
  ──イラク戦争後は?
  アル・アリ氏    バスラ教育病院ではがん患者が昨年より20%増えている。現在は白血病が多いが、もうしばらくたったら、骨肉腫のような別の種類のがんも出てくるのではないか。
  ──今、イラクで一番必要な事は何ですか。
  アル・アリ氏    汚染の除去を国際的に支援してほしい。バスラだけでなく、イラクの331カ所が危険と指摘されている。調査には資金がいる。もちろん薬も足りず、検査機器や治療機器は修理や交換が必要だ。非政府組織(NGO)の支援で日本はずばぬけているが、全体の問題から比べると、資金は少ない。
  ──日本で訴えたい事は。
  アル・アリ氏    私たちは広島、長崎で被爆した日本の人々と同じ犠牲者だ。日本の皆さんにも政府にも共感してほしい。
がん専門病院を作る話を聞いたが、実現すればありがたい。
  バルタニアン氏  日本とイラクが一緒になって、劣化ウラン弾を廃絶していきたい。


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