パキスタンを爆撃して石器時代に戻す話/アラビアニュース

2006-10-04 21:53:49 | 世界

米国の各テレビのコメンテ-ターで防衛問題の専門家エリック・マーゴリスが10月2日に発表。
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彼が権力についた1999年の軍事クーデーターの後でペルベス・ムシャラフパキスタン大統領にインタビューしながら、彼の率直な誠実さと、このややエキセントリックな軍司令官出身の政治家が、果たして持つのだろうかという疑念に私は強い印象を受けていた。騒然として不安定なパキスタンの舵取りは、世界中で最も困難で最も危険な職務の一つだ。

二人とも私が良く知っており、尊敬していた、彼の前任、ジアウル-ハクやベナジール・ブットに、ムシャラフは、到底格が及ばないように当時は感じたものだ。

しかし、七年間、二度の暗殺未遂を生き延び、ムシャラフは依然としてパキスタンを支配し、依然として一兵卒のような口のききかたをしている。

先週のアメリカにおける新刊書販売促進用マスコミ攻勢の間に、アメリカの国務副長官リチャード・アーミテージが9/11直後、パキスタンが、アフガニスタンの盟友、タリバンを即座に裏切り、アメリカにアフガニスタン侵略の為のパキスタン内軍事基地の使用を認めなければ、「アメリカがパキスタンを爆撃して石器時代に戻してやる」とパキスタンの諜報機関ISI長官マフムード・アフメド中将を恫喝したとムシャラフは主張した。

ムシャラフの主張はアメリカとパキスタンで騒動を巻き起こし、彼の狙いは、一体、人気のあるトーク番組オプラ・ウィンフリー・ショーに出演することなのか、それともパキスタンの政策を、混乱したアリカ人に説明することにあるのか、どちらなのかと首をかしげざるを得ない。

アーミテージはパキスタンに戦争をしかけると脅したことを否定している。だが読者のジョン・ヤードリー教授が、2002年に出した私の本「War at the Top of the World(==世界の最
高地における戦争」で、アメリカがパキスタンを爆撃すると脅したことを暴露していたことを指摘してくれた。

私は9/11前にマフムード将軍と会った。彼とモハメッド・アジス中将は、ムシャラフを権力の地位につけたパキスタン最高位の軍将官だった。9/11後、二人は「あまりにイスラム教主義的だ」というアメリカの圧力で失脚させられた。

9/11後、実際アーミテージが、パキスタンが速やかにアメリカの要求に屈しなければ戦争をしかけるぞという最後通牒を発したことを、私は間接的にマフムード将軍から聞いている。

ロシアが支援するアフガニスタン共産党を食い止め、アフガニスタンに対するインドとイランの影響を阻止し、アフガニスタンの秩序を維持する為にタリバンを支持しているのだということをブッシュ政権に理解させるというパキスタンの努力に、アメリカは耳を貸そうとはしなかった。

タリバンは9/11攻撃については全く知らなかったし、アメリカ合衆国には何の悪意も持っていないというISIの主張もそうだった。それどころか、そもそも多くのタリバンのコマンダー達は1980年代にCIAから武器装備をもらい、資金支援と訓練を受けていたのだ。しかし激怒したアメリカ人は9/11に対する報復を要求していた。アメリカは、論理的説明ではなく、標的を求めていたのだ。

アーミテージが何と言ったか、私は幾通りか聞いている。彼が何と言ったにせよ、それでパキスタン軍指導部に、恐怖心を吹き込んだことを知っている。

ブッシュ政権が、裏切ることのなかった古い盟友のパキスタンを爆撃し、石油供給を絶ち、銀行システムを崩壊させ、融資を取り立てると脅したのだとISIの情報筋はいう。さらに恐ろしいことに、ワシントンは、紛争中のカシミールでパキスタンが支配している部分をインドが征服することを認めるか、おそらくはアメリカも支援して、デリーに対しパキスタン全土に侵攻する青信号を出すかして、インドをパキスタンに「けしかけるぞ」とまで脅したのだ。

ダウニング街10番地の首相官邸から漏洩した内閣資料には、2003年イラク侵略の三ヶ月前に、イラクを片づけたら、次にパキスタンとサウジアラビアを攻める計画だ、とブッシュ大統領がイギリス首相トニー・ブレアに語っていたことが書かれている。パキスタンはアメリカの照準にさらされていたのだ。

ムシャラフ将軍は、こうして最悪の選択をする羽目になった。1980年代に強力なソ連を屈服させたアフガニスタンにおけるパキスタンの国益を放棄する。根っからのパキスタンの敵、アフガニスタンの共産主義者、イランとインドが支配する敵対的な政権が樹立されるのを認める。インド支配下のカシミールを解放するという50年間にわたるパキスタンの最も大切な国家大義を放棄するのか。

それとも、反共の盟友タリバンを裏切り、アメリカに軍事基地を与え、カシミールでの戦いを放棄し、ワシントンの命令に屈服し、ムシャラフはアメリカに寝返ったというパキスタン国民の抗議憤怒に直面するかだ。もちろん、こちらが実際に起きたことで、ムシャラフはますます孤立し、不人気になった。

タリバンの部族戦士は、アメリカのB-52による二週間の絨毯爆撃に抵抗したと、パキスタンのマスコミは苦々しげに書いた。パキスタンは脅しの電話一本で降参したのだ。

ムシャラフはアメリカによる攻撃の「机上演習」を行って、パキスタンは負けると判断したのだと主張した。パキスタンはアメリカ一国の攻撃になら屈しないが、米印合同攻撃ではまずそうは行かない。したがって彼にはほとんど選択の余地はなかったのだ。

だが多くのパキスタン人は、ムシャラフがワシントンの絶対的命令に従い、パキスタンの古い友人や盟友と敵対するのに熱心過ぎると考えている。40億ドルというアメリカの援助金とパキスタンの支配層エリートにばらまかれた秘密のCIA給付が協力を引き出したのだ。

パキスタンはワシントンともめるたびに、突然「アル・カイダの最高司令官の一人」を発見して、アメリカに引き渡してきた。これまでに、およそ700人が送られ、ムシャラフが無分別にも自慢しているがいずれの場合も何百万ドルの報酬を得ている。

ムシャラフが出くわした最大の問題は、依然として曖昧なアブドル・カデール・カーン博士問題だ。パキスタン最高の核科学者、パキスタン核兵器の父が遠心分離器や他の核技術を、北朝鮮、イランとリビアに売却するところを現行犯で捕まった。

パキスタン空軍のC-130が装置を北朝鮮に搬送するのをアメリカの軍事衛星がとらえているのに、ムシャラフは自分も、政府内の誰も、この大規模な闇取引作戦には関与していないと主張している。全ての核事業と資材が厳格な軍支配の元にあることを考えれば、そのような主張は到底信じがたい。ムシャラフは、カーンを引き渡せというアメリカの要求を拒否した。この科学者はパキスタンの国民的英雄なのだ。

先週水曜、ジョージ・ブッシュ大統領は、お互いののしりあっているカルザイとムシャラフの為の、緊張に満ちた晩餐を主催した。アフガニスタン戦争で西欧列強がますます不利になるにつれ、カルザイは、ムシャラフがタリバンにパキスタン国内での活動と、国境越えのアフガニスタン攻撃実行を許していると非難し続けている。ムシャラフは、カルザイは飾り物で、自分の国家を支配できていないとやり返している。二人の主張は事実だ。

彼らの紛争の根にあるのは部族政治だ。3千万人のパシュトゥーン族 (別名パサン族)は、世界最大の部族社会だが、「分割して統治せよ」を旨とするイギリスの帝国主義者が引いたデュアランド線という人為的な国境で、アフガニスタンとパキスタンに分けられている。

パシュトゥーン族はアフガニスタン人口3千万人の50から60%をしめる。タリバンはパシュトゥーン人の本質的な一部分だ。西欧列強とそのお飾りの支配者、カルザイ大統領はタリバン・テロリストだけを相手に戦っているのではなく、パシュトゥーン族と他の民族主義運動同盟と戦っているのだ。要するに、大半のパシュトゥーン人と。

パシュトゥーン族の残りの半分は、デュアランド線の向こう側パキスタンにいて、パキスタン人口の15-20%を占めている。パシュトゥーン族は、パキスタン軍と諜報機関幹部職の多くを占めている。パシュトゥーン族は、反西欧レジスタンス戦士を含め、自分たち部族の祖国を二つに分けている人為的な国境を決して認めておらず、単に無視している。

パキスタンの親タリバン的なパシュトゥーン族に断固たる処置をとれ、とワシントンはムシャラフに要求し続けている。しかしワシントンは、こうした激烈な戦士達に余り圧力をかけすぎると、パキスタの国家としての統合に対する大きな歴史的脅威を燃え立たせてしまう可能性があることを理解しそこねている。アフガニスタンとパキスタンのパシュトゥーン族を統合して、新国家パシュトゥーニスタンを作るというパシュトゥーン族独立運動だ。

タリバンに対する支持が高い、パキスタンの戦略的地域であるバルチスタンにおいて部族的な動揺が激化し、脆弱な国家の不安定化を更に脅かしている。

これまでのところ、ムシャラフ大統領は、懸命にワシントンの不評な要求に応じようとしていて、国民をひどく怒らせた為、国民は彼のことを一層西欧の手先と呼ぶようになっている。カルザイも多くのアフガン人に同じように見られている。だがアメリカ(そして今はカナダ)の政策は、波乱に富んではいるが、益々孤立化しつつある二人の存続に依存しているのだ。

Copyright Eric S. Margolis 2006    http://www.ericmargolis.com/

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米国の為なら改憲でも派兵でも、何でもするカルザイ並「手先」首相が、決して孤立化せず、高い支持率を誇るこの国は「美しい国」というよりも「不思議な属国」。彼らと対決するポーズを見せている民主党幹部もことごとくアメリカの「飾り物」。どちらも、強烈な圧力をアーミテージから受けたに違いない。ムシャラフと違って口に出さないだけだろう。
手先が手先でないふりをするため、アメリカ参勤交代前に中韓訪問というフェイント。亀田ボクシングどころではない国家規模の大茶番ばかりが、電気ゴミ箱と紙屑(マスゴミ)によって報じられる「不思議な属国」。ビル・トッテン氏の以下のコラムも参考に。

http://www.ashisuto.co.jp/corporate/totten/column/1182965_629.html
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goose さんの労訳とコメントです。

【アラビア・ニュース】  齊藤力二朗  再転載は見出しと序文、URLのみに限定
http://groups.yahoo.co.jp/group/arabianews/



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1 コメント

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不思議の国の蝙蝠 (世の東西)
2006-10-05 16:27:11
イソップ童話では裏切り者の代名詞「コウモリ」だが、伝統的に漢字文化圏では「蝙蝠」は幸福の象徴で、浮世絵にも若い女性と組み合わせた図がある。

いずれ、米国はソ連軍と同様に追い出されるが、そのチャンスと同時に在日米軍基地も「追い討ちを掛ける」よう、我々も努力すべきだ。

力技でないと、大国は動かないんだよ。

北方領土も、ソ連崩壊から、あと7~80年待たないと動くまいに?それとも棚上げか、だ。
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