感情的放送は視聴者の不利益=光市殺害事件裁判報道でBPOが意見/時事通信

2008-04-16 06:33:07 | ジャーナリズム
山口県光市で起きた母子殺害事件の裁判を報道したテレビ番組について検討していた放送界の自主チェック機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会(委員長・川端和治弁護士)は15日、「一方的で感情的な放送は視聴者の不利益になる」とする意見をまとめ、NHKと在京民放5局に手渡すとともに、自主的な検証と報告を求めた。
 同委は、広島高裁の差し戻し控訴審を取り上げた昨年5~9月の計33本の報道、情報番組を検証した。その結果、「被告・弁護団と被害者遺族を対立的に描く手法」が共通しており、「視聴者に誤解を与える致命的な欠陥があった」と指摘。被害者遺族の感情に合わせて弁護団などを非難する一方、裁判の詳細や被告の内面を分析するなどの冷静な報道がない点を挙げ、「公正性・正確性・公平性の原則を十分に満たさない」と断じた。
 さらに、「集団的過熱取材」に似た「集団的過剰同調番組」とも呼ぶべき横並びで過熱化する番組作りへの憂慮を表明するとともに、裁判員制度への悪影響の可能性にも言及した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008041500930
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光市事件報道 BPO「感情的に制作」
2008年04月16日朝日

 NHKと民放でつくる第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会(委員長・川端和治弁護士)は15日、山口県光市で起きた母子殺害事件の差し戻し控訴審をめぐる一連のテレビ報道・番組について「感情的に制作され、公正性・正確性・公平性の原則を逸脱している」などとする意見を発表した。同日、NHKと在京民放5局に通知した。川端委員長は「各局で議論した上で、その結果が報告されることを期待する」と話した。

 同委員会は番組に放送倫理上の問題が疑われる場合、独自の判断で審議する組織。07年5~9月に差し戻し控訴審の内容を伝えたNHKと民放の8放送局、延べ33番組を調べた。今回は、個別番組ごとの問題ではなく、多くの番組に共通した傾向を全般的に取り上げた。

 意見書では、ある番組で被告側の主張を「命ごいのシナリオ」と呼ぶなど、被告弁護団や検察官、刑事裁判の仕組みや役割を十分認識していない▽被告人がどういう人間かが伝わらず、その発言を表面的に批判・反発している▽被害者家族の会見映像が多く流され、同情・共感を強く訴える内容になっている――ことなどを指摘。「一方的で感情的な放送は、広範な視聴者の知る権利にこたえられず、視聴者の不利益になる」とし、来年から実施される裁判員制度への影響にも触れている。

 意見書を受けたある民放局広報部は「今後の報道に生かしていきたい。現場でも読ませていただき、意見交換した上で、何らかの形でBPOに回答したい」としている。

 この問題では昨年11月、有志の「『光市事件』報道を検証する会」が委員会に調査と審理を要請していた。

http://www.asahi.com/national/update/0416/TKY200804150356.html

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各局に裁判報道の改善要求
「感情的に制作」と意見
 山口県光市の母子殺害事件の裁判を扱ったテレビ各局の番組について、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会は15日、「番組の多くが極めて感情的に制作され、偏った内容になっていた」などと指摘、各局に裁判報道の改善を求める意見を通知した。

 裁判員制度のスタートを来年5月に控え、放送における裁判報道の在り方が問われそうだ。

 対象は民放キー局や中国放送(広島市)、NHKなどが、昨年5月から9月に放送した20番組計33本で、いずれも事件の差し戻し控訴審を取り上げたニュースや情報系番組。橋下徹大阪府知事が就任前の昨年5月、被告弁護人への懲戒請求を呼び掛けたバラエティー番組「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ、大阪市)も含まれる。(共同通信)
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『裁判員』控え重い課題 光市母子殺害報道でBPO意見
2008年4月16日 東京新聞朝刊

 山口県光市の母子殺害事件裁判を扱った番組について、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が十五日、公表した意見は、現状の裁判報道が抱える問題点を提起した。裁判員制度のスタートを来年五月に控え、各局は重い課題を突きつけられた。 (近藤晶)

 「裁判員制度では、一般市民が量刑まで決める。テレビが不当な影響を与え、誤った裁判が行われることになれば、非常に重大な問題になる」。裁判員制度開始を見据え、同委員会の川端和治委員長は会見でこう危惧(きぐ)した。

 民放連は今年一月、裁判員制度下における事件報道についての基準=別表=をまとめているが、「基準は今回の放送の後に出されたものだが、この基準が実現されているとはいえない」(川端委員長)と厳しい見方を示した。

 同委員会は、関西テレビの捏造(ねつぞう)問題をきっかけに、昨年五月、BPO内に設立。評論家の立花隆氏ら識者十人で構成され、虚偽の内容によって視聴者に著しい誤解を与えた番組があった場合、放送局に勧告や見解を出し、再発防止策の実行などを求める。従来、個別の番組に関する放送倫理上の問題を検証するが、今回、放送全般に対して意見を述べることにしたのは、一連の裁判報道全体に共通した問題があるのではないかとの懸念があったためだ。

     ◇

 委員会が審議したのは、二十番組三十三本計七時間半に上る。小委員会を設け、各局へのアンケートと番組制作者への聞き取り調査も実施。(1)番組制作者は刑事裁判の仕組みをどの程度理解していたか(2)適切な取材・演出・表現をしたか-を念頭に検証を進めた。

 意見によると、一連の放送の基本的な構成はこうだ。被告の荒唐無稽(むけい)で奇異な供述の部分を、イラストやナレーションで断片的に再現。次に被害者遺族に会見やインタビューで、その供述や弁護団に対する怒りや無念の気持ちを語らせる。さらにスタジオの司会者やコメンテーターが、被告・弁護団を強く非難し、被害者遺族に同情や共感を示す。

 意見ではまず、裁判所や弁護人の役割、刑事裁判の「当事者主義」について、番組制作者の知識不足に言及。「初歩的な知識を欠いた放送は、感情的に行われるほど視聴者に裁判制度に関するゆがんだ認識を与えかねない」と危惧した。

 被告に関する報道では「一つとして、被告人の心理や内面の分析・解明を試みた番組はなく、このこと自体が異様」と問題視。演出や表現についても「安易な対比的手法は、事件の理解にも犯罪防止にも役立たないことはあきらかであり、深刻に再考されるべきである」と見直しを求めた。

 光市事件の差し戻し控訴審の判決は、今月二十二日に予定されている。同委員会は、意見について「どういう裁判報道や事件報道が望ましいのか真剣に検討してほしい。その材料を提供した」としている。意見で指摘された問題点を踏まえ、各局が、今後、裁判報道にどう生かしていくかが課題になる。

 NHKと、民放各局でつくる日本民間放送連盟は今回の意見について、いずれも十五日の時点では「コメントはない」としている。

 読売テレビ(大阪市)は、「放送倫理検証委員会の審議の結果として出された、一つのご意見として承ります」としている。

裁判員制度下における事件報道について 
  (関係項目)

・事件報道にあたっては、被疑者・被告人の主張に耳を傾ける。

・一方的に社会的制裁を加えるような報道は避ける。

・事件の本質や背景を理解するうえで欠かせないと判断される情報を報じる際は、当事者の名誉・プライバシーを尊重する。

・多様な意見を考慮し、多角的な報道を心掛ける。

・予断を排し、その時々の事実をありのままに伝え、情報源秘匿の原則に反しない範囲で、情報の発信元を明らかにする。また、未確認の情報はその旨を明示する。

・国民が刑事裁判への理解を深めるために、刑事手続きの原則について報道することに努める。

  (民放連 2008年1月17日)

 <山口県光市母子殺害事件> 1999年4月、山口県光市で会社員・本村洋さんの妻=当時(23)=と長女=同11カ月=が自宅で殺され、県警は近くに住む元少年=同(18)=を逮捕した。検察側の死刑求刑に対し、一審の山口地裁(2000年3月)、二審の広島高裁(02年3月)ともに無期懲役の判決。だが、最高裁は06年6月、二審判決を破棄、広島高裁に差し戻した。一、二審とも殺人、強姦致死などの事実認定では争いがなかったが、現弁護団は殺意や強姦の意思を否定している。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2008041602003959.html
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放送倫理検証委員会・光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見
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関連
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/887ce8ccd9a7d63699d9cb69ef80e8f2


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1 コメント

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エライ事になっちまって。 (又しても報道洪水。)
2008-04-22 17:42:44
未成年者(犯行当時)死刑判決マンセーな高裁の判断に、懲りずに報道洪水してる。
んで、コチラとかご覧に?
http://blog.goo.ne.jp/kaetzchen/e/26b18f80f2ca4a3544153b4acf94ecf6
「広島高裁は日本会議の圧力で『死刑』判決をした!」とドクトルKaetzchenが。
最早「心ある側」的には、「パンとサーカス」ならぬ「公開処刑」バージョンで、「厳罰化と裁判見世物化と裁判員制度」が「3種の神器」だか「三位一体の改革」だか、進んで行ってるのは明らかだねー!て認識が一般的に。
まあ、北朝鮮で見られる公開処刑もある意味、日本の「磔獄門」って江戸時代の刑法とか、中国の封建時代の公開処刑とか、同根でねぇ。
60数年以上前の、全体主義下で容易にバタバタ人が死んで行ったのを理想とする勢力には、ソレはソレは懐かしいわな。
一つ気に掛かるのはね、本村夫人は逆手で前から首を圧迫されて窒息している。
ソレは、後ろに壁があれば、立ったままで可能なのか?それ程、被告少年は怪力か?後ろに回りこんで自分の体で支えるなら、逆手にはならない。
しかも親指の位置から、夫人の体からは斜め左上から腕が伸びている。
ハリウッド映画の犯罪モノとかで、屈強な背の高い白人やら何やらが、片腕で女性を持上げる程(筋肉増強剤とかで)腕力があり、そうなるんなら判るんだけど。
日本のヒョロヒョロしたアンちゃんが、そんなん有り?検察のストーリー通りなら、馬乗りになって尚逆手だったそうだけど、ソレは一寸、腕の筋が辛いと思うけど。
それなら、夫人が完全に意識を失って、しかも気付く心配も決して無く、夫人の体に対しては犯人は無防備に頭の方か、ドチラかと言えば体の左側ら絞めた方が、人体のつくりとして納得が行く。
無理な格好で絞めても、そもそも力入らないよ?そしたら気絶で済むか知れないよ?だったら、そも殺人事件でなく、死刑も何も有り得ないよ?
私が感じるのは、犯人は余程の怪力か、或いは馬乗りにならなくとも偶然息苦しさに正気付いた本村夫人が体全体で抵抗してこないと確信があったのか、さもなければ夫人が叫び出して自身が捕まるなどのどういう結果に終わろうと構わないほど自暴自棄もしくは心身喪失だったか、その内のどれかっぽい!って事だけど。
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