参考・左翼の惨敗と参院選での選挙協力に関連して/紅林進さんから

2013-01-04 13:09:20 | 社会
レイバーネットML
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村岡さんの投稿「左翼の惨敗と参院選での選挙協力」を拝見しました。

今回の総選挙における左翼の惨敗を直視する必要があるというのは、
その通りだと思います。それについても述べたいことがありますが、
それは稿を改めるとして、ここでは、村岡さんのこの投稿の後半部分
の、選挙協力の問題に絞って述べたいと思います。

村岡さんが提案されている〈選挙時協力党〉方式ですが、実際に今回
の総選挙に向けても、一部で(私の周囲でも)この試みは取り組まれま
した。私も関わっています「eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を
実現する会)」(注)というネットワークで、「選挙プロジェクト」チームを
中心的にやっていた竹村英明氏や「エネシフジャパン」の小島敏郎氏、
マエキタミヤコ氏らが盛んに呼びかけていた「緑の木」ないし「オリーブ
の木」構想です。

注:私が「eシフト」として、特定の政党を支持したり、それにコミットする
ことには強く反対したこともあってか、竹村氏も「eシフト」としてではなく、
それとはまったく別に、このプロジェクトを進めたようです。

彼らは、いろいろ政治家にも働きかけてきたようです。何度かそのため
の院内集会も議員会館で開催していました。(私も何回かは出席、疑問も
提起。)まさに選挙のためだけの新政党を結成して統一候補、統一名簿で
選挙に臨み、選挙が終わったら、解散して(統一会派として残すのかどうか
はわからないが)、元の各政党に戻るということを構想していました。

まさに選挙のための統一会派(政党)であるが、それを「脱原発」を軸に、
実現しようとしていたのです。その名も政党名、あるいは略称(投票の際
の)として「脱原発」を政党名にしようとしていたようです。

なお「オリーブの木」構想とは、イタリアの中道左派が1996年の総選挙で、
中道左派の政党連合を作って、選挙戦を闘い、政権を取った「オリーブの木」
から取っている名称です。

そして、竹村氏、小島敏郎氏、マエキタミヤコ氏らがめざしたのは、単なる
選挙協力、政党連合から一歩進んで、「脱原発」掲げる、「脱原発」をめざす
政党が、統一会派、公職選挙法上の一つの新「政党」を結成して、統一候補、
統一リストで、選挙に臨み、選挙が終わったら、それぞれ元の政党に戻る
(統一会派を維持してもよいわけですが)という構想です。

「脱原発」を掲げる、社民党、共産党や、国民の生活が第一(当時)、
みんなの党、日本維新の会(当時)、民主党内の脱原発派などまでを対象
としていたようです。もっとも竹村氏は、共産党は独自候補を降ろすことは
しないであろうので、事実上、合流することはしないであろうし、民主党内
の脱原発派も、民主党を脱党しなければ、この「緑の木」に合流することは
無理だろうとも語っていました。

それが竹村氏らが考えていたものとは、かなり違う形にはなったようですが、
「日本未来の党」という形になって実現しました。(たぶん、飯田哲也氏、
嘉田由紀子氏というラインで)竹村氏らは、本来は、社民党なども党全体
として合流させたいと考えていたようですが、阿部知子衆議院議員(エネ
シフジャパンの中心メンバーでもある)のみの社民党を離党しての参加と
いう結果になりました。

そしてこの「日本未来の党」の選挙結果と結末は惨憺たるものとなりました。
小沢一郎の「小沢隠し」に利用され、それを選挙民に見抜かれての結果でしょう。
選挙後、党名も「生活の党」に変えられ、「政党交付金」などの政治資金も全て
小沢一派に持って行かれました。「分党」と称するものの、嘉田氏は用済みと
ばかりに、実質追い出されてしまいました。

私も、政党連合(法律上は新「政党」の設立という形をとるのでも構わないが)
を作って、統一候補(小選挙区)、統一リスト(比例区)で、選挙戦を闘うという
アイデアは良いと思うし、選挙戦術としても、非常に有効だと思います。そして
このような形で、「脱原発派」が統一会派を組むことができ、それによって、
まさに「脱原発」を選挙の中心争点に据えて、選挙戦を闘うことが展開でき
れば、非常に良かったとは思います。

しかし今回の結果は失敗でした。それにはいろいろな要因があり、分析が
必要ですが、私は真の意味での「脱原発」派の統一にはなっておらず、
統一の願望とは裏腹に、「脱原発」派の投票先の分散先を一つ増やした
側面もあったのではないかと思います。

もとより選挙は、原発問題だけが争点ではないし、事実、今回の選挙では、
自民党などが、原発問題を争点からぼかす、外す戦略をとり、その成功を
許してしまいました。そういう中にあって、多くの人々にとっては、景気や
雇用が大きな不安となり、安倍自民党のデフレ脱却、景気浮揚を訴える、
甘言に乗せられてしまいました。

また私に言わせれば「脱原発」の中身も問題であり、「脱原発」という言葉
が極めて曖昧なこともあり、原発をなくす、その時期もさることながら、
そもそも本気で、原発をなくそうとしているのかどうか自体も疑わしい者まで
「脱原発」や「脱原発依存」「卒原発」を言って、争点をぼかすことにもつな
がってしまいました。

日本維新の会は橋下徹氏が大飯原発の再稼働を容認し、原発推進の石原
慎太郎氏の政党と野合し、「脱原発」をあっさり下ろしたように信用できないし、
みんなの党は、バリバリの新自由主義政党であり、「脱原発」の点では、協力
することがあっても、それ以外の面ではとても組める相手ではないと思います。

従って「脱原発」だけに限らない、ある一定の共通土台の上に、政党連合
や選挙協力を考えるべきだと、私は思います。

便宜的に法律上は新「政党」の設立という形をとるのでも構わないが、但し
私自身は、法律上はともかく、選挙のためだけに新しい「政党」を作って、
選挙が終わったら、元の党名に戻るというのでは、理解を得られない、
有権者に対する詐欺行為とも取られかねない、少なくとも「選挙互助会」と
見られてしまうと思います。

従って法律上は「政党」でもよいのですが、統一会派や連合体だという
ことが分かる名称にすべきだと思います。そのような形であれば、
歴史と独自性を誇る日本共産党なども、政党連合や統一会派に
参加することもしやすくなるでしょう。

なおイタリアの「オリーブの木」は、1996年の総選挙時に結成された、
「左翼民主党」(当時、旧「イタリア共産党」、現「民主党」)などを中心
とする、中道左派の政党連合ですが、「左翼民主党」はその前の1994
年の総選挙時には、「左翼連合」の統一候補、統一名簿で選挙戦に
望み、「右翼連合」のベルルスコーニに敗れた反省から、中道派を
取り込もうと「中道左派連合」としての「オリーブの木」を結成したもの
です。

イタリアでは長いこと実質「比例代表制」でしたが、1993年の国民投票
を経た選挙制度改革によって、小選挙区制中心(75%)の制度にシフト
させましたが、それを主導したのは「左翼民主党」でした。一方ベルル
スコーニら右派は、下院で得票率が首位となった政党(政党連合)に
議席定数の約54%を与えるという、とんでもない「プレミアム議席」付
の比例代表制(現行)を導入してきたというねじれた関係にあり、
「オリーブの木」の政権戦略を日本に紹介した後房雄氏は、小選挙区
制を持ち上げ、日本におけるその導入にも加担するなど、とんでもない
論陣を張ってきました。

「オリーブの木」(政党連合)方式の場合、小選挙区では、統一候補、
比例区では、統一名簿で選挙戦を闘うことになりますが、日本の場合、
衆議院議員総選挙の比例区の場合は、拘束名簿方式であり、その
名簿順位をどうするかで、各党間の調整が難しく、争いの元ともなり
兼ねませんが、参議院議員選挙の比例区の場合は、幸い非拘束
名簿式ですので、村岡さんも書かれているように、各党から出ている
候補者の個人名で、より多く得票した者から当選させてゆくことがで
きます。

なおイタリアの1994年の総選挙では、この「オリーブの木」を主導した
「左翼民主党」は、小選挙区で、自党が強い地盤の地域では、あえて
自党の候補擁立に固執せず、中道派や「共産主義再建党」(イタリア
共産党解党時に、「共産主義」を捨てずに、「再建党」を作ったグループ、
「オリーブの木」には加わらず、しかし選挙協力は行う)に優先的に候補
を譲ることもしたとのことです。また党外の有名人などを候補にしたとの
ことです。


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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-01-06 22:41:14
もう、日本じゃ左翼は政権取れませーん

国を破壊するだけの癌だから
返信する
やはり自民党 (max)
2013-01-07 18:19:18
敗戦後米国と話し合いスターリンは、関東軍70万をシベリヤ鉄道建設に強制労働させ、半分以上餓死させ餓死しなかった者へは共産主義を洗脳し、帰国後日教組又は日本放送局を作り共産思想を国民に教育し始めた。満州に取り残された日本婦女子は、一年以上ロシア人にレイプされ続け多くの人は帰国を直前に混血の子を産む事を恥じ舞鶴で身投げをしました。今日の民主党までどれ程日本国民を苦しめたか計り知れません。しかし、共産圏において終焉を迎えた今国内においても時間の問題でしょう。中国も無神論者の最後の足掻きが始まっています。
返信する
Unknown (max)
2013-01-07 18:22:09
裸足で歩いていた国民が今や豊かな生活が出来ている。感謝しかないでしょう。もし出来ないのなら、反省すべきです。
返信する
精神科医                                          精神科医                (宮地達夫)
2013-01-10 19:21:07
左翼の惨敗と言われるが、議会政党で「左翼」があっただろうか
戦後左翼の運動史を振り返れば、その殆どは議会外での、労働者、農民、更に
社会党や共産党から一歩おいたインディペンダント左翼の運動だった
反基地闘争では1952年の内灘の闘争が「金は一年、土地は万年」スローガンで戦われ、次いで、砂川、沖縄と連綿とひきつがれている
農民運動は、戦前ほど盛んでないが最近は九州地方の農民運動の発掘差作業が進んでいる。労働運動では、60年の三井・三池闘争が「総労働対総資本」の戦いとして戦われ、それに平行するかのように60年・70年安保闘争がインディペンダント左翼、労働者、市民の広範な参加によって戦われた。70年安保のあと、大衆的抵抗運動は停滞したが、3/11を契機に反原発、反基地、沖縄などの大衆運動が復活して現在にいたっている。3.11以降の大衆デモは、いわゆる新左翼の70年安保とは、スタイルも、目的も、参加者も全く違い、「お子様向け」反原連などもある。しかしながら、貧者と富者の戦いとくくれば、こうした議会外闘争こそが、やがては歴史を規定していく最重要の運動ではないだろうか。戦後史に学んでほしい
返信する
精神科医                                          精神科医                (宮地達夫)
2013-01-10 19:22:04
ファイナンシアル・タイムスに、「日本の刺激策は成長プランとしては失敗である」という論評がのった。
リーマンショックの際、時の麻生首相は、経済再生のため「三段階ロケット」という 15兆円の補正支出政策をとった。しかし続く4人の首相と4年間の間,日本は不況のままであり、政府の債務は、GDPの220%に上がり、又も新しい阿倍首相は再び経済の「ロケットスタート」として、10兆円の政府支出を計画している。阿倍プランはビジネスセンスを持ち上げ、株市場を持ち上げた。しかし、政府は、補正予算で、60兆円の資金を景気刺激のために増加している。前の民主党は
自民党時代の2兆円の計画をキャンセルしている。政府ビルのためにTVを買う、高速道路にレーンを追加、ビジネス補助金などがキャンセルされた。BNP Paribas のHiroshi Shiraishiは「日本に必要なのは、潜在的成長率を上げる事である」という。しかし他の経済学者は最近の刺激策は、以前の計画よりもよくないという
第一に、主要な刺激が公共投資に向けられている事である
10兆円の補正支出のうち、5兆円は既に支出されており、実際の追加は5兆円で、これは債券発行で補われ、公共投資に向けられる。民主党が公共投資を抑制したので「これは経済を成長させるための政策である」とされる。しかしインフラ整備に伴う問題は、それが一時的であり、工事が済めばインパクトがなくなる。第二に、この支出は費用対効果の面からしてコストが高すぎる。公共投資への集中は長期的で持続的成長に必要な構造的改革を遅らせるリスクがある。Mr Shiraishi は「公共工事を刺激する事で、労働が医療分野などで労働不足に陥っている分野にシフトするよりも、より生産性の低いセクターにロックされる」という。阿倍の刺激政策は経済実体を反映したものではなく、出来るだけ速やかに参院選の前に成果を出したいからである。Fujitsu Research InstituteのMartin Schulzは「阿倍は春までに成果を出したいようだ。それが彼の焦点をインフラ整備に向けさせて、雇用を創出させる事である。阿倍が企業減税などで企業のインセンティブを高めようとしていることは理解できるが、このような企業減税が企業のインセンティブを十分に引き出せるかどうかは疑問である,何故ならマーケットが収縮しているからだ。家屋や年金受給者への投資もできない
 こうした刺激が膨大なインパクトをもたらすとは思えない。彼のパッケージは多くの、日本経済を支えてきて今ローンにあえいでいる利潤の少ない競争力のない中小企業を無視している
こうした過去20年の政府経済政策の大部分は失敗している
大部分の国で、利潤の上がらない企業は破産しているが、日本では、企業の70%は利潤があがらないので税金を払っていない。これは成長戦略としては、効果がない。必要なのは、新しい投資アイデアと、医療分野とか再生エネルギーのような成長マーケットに投資するチャンスを与えることだが、不幸な事に自民党にそういうアイデアはない」
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/4c4e4376-5a3b-11e2-a02e-00144feab49a.html##axzz2HYMflO3k
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