「核持ち込ませず」見直しを提言 新安保懇(首相の私的諮問機関)の報告書案/朝日新聞 ほか

2010-07-27 19:57:21 | 社会
菅直人首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=佐藤茂雄・京阪電鉄最高経営責任者)が首相に提出する報告書案の全容が26日、明らかになった。日米同盟の深化のため、日本の役割強化を強調。非核三原則の見直しにも踏み込んだ。必要最小限の防衛力を持つとする「基盤的防衛力」構想を否定し、離島付近への重点配備を強調した。

 報告書は8月上旬にも首相に提出され、今年末に民主党政権として初めて策定する新しい「防衛計画の大綱」のたたき台となる。自公政権時代の主要な論点をおおむね引き継いだ上に、長く「国是」とされてきた非核三原則に疑問を投げかけた内容が議論を呼ぶことは必至で、菅政権がどこまで大綱に取り入れるかが焦点になる。

 報告書案は、米国による日本への「核の傘」について、「地域全体の安定を維持するためにも重要」「究極的な目標である核廃絶の理念と必ずしも矛盾しない」と評価。非核三原則について「一方的に米国の手を縛ることだけを事前に原則として決めておくことは、必ずしも賢明ではない」と指摘し、事実上、三原則のうちの「持ち込ませず」を見直すよう求めている。

 日本周辺の安全保障環境について、中国の海洋進出や北朝鮮の核・弾道ミサイル開発などに触れ、「米国の力の優越は絶対なものではない」と位置づけた。そのうえで「日本を含めた地域諸国が、地域の安定を維持する意思と能力を持つかが、これまで以上に重要」とした。

 こうした認識を背景に、報告書案は、米国に向かうミサイルを日本が撃ち落とすといった形での集団的自衛権行使に言及した。

 武器禁輸政策で国内防衛産業が「国際的な技術革新の流れから取り残される」とも指摘。先端技術に接触できることや開発経費削減などのため、米国以外の国々との間でも装備品の共同開発・生産をできるようにするため、武器輸出三原則を見直すよう求めた。

 冷戦時代に採用された「基盤的防衛力」という考え方について、「もはや有効ではない」と明言。この考え方に基づく自衛隊の全国への均衡配備を見直し、中国海軍が頻繁に行き来する南西諸島周辺を念頭に置いた部隊の配備や日米共同運用の強化などの必要性に言及。潜水艦の増強も「合理的な選択」とした。ミサイル防衛に関して「打撃力による抑止をさらに向上させるための機能の検討が必要」として、「敵基地攻撃能力」の必要性にも言及した。
http://www.asahi.com/politics/update/0727/TKY201007260561.html

<安保懇報告原案>南西諸島に自衛隊配備…武器三原則緩和も/毎日
菅直人首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=佐藤茂雄・京阪電鉄最高経営責任者)が8月上旬に首相に提出する報告書原案の全容が27日、明らかになった。中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念を背景に、鹿児島から沖縄にかけて点在する南西諸島を念頭においた「離島地域への自衛隊の部隊配備」を検討するよう提言。また、集団的自衛権の行使を禁じる政府の憲法解釈の見直しや、武器輸出三原則の緩和などを求めている。

 報告書は、民主党政権下で初となる年末の「防衛計画の大綱」(防衛大綱)改定のたたき台となる。菅内閣として報告書をどの程度、大綱に反映させるかが、今後の議論の焦点となる。

 報告書原案では、東シナ海や日本近海で海洋進出を活発化させている中国、弾道ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮などによる日本周辺の安全保障環境の悪化に言及。「離島地域の多くは日本の防衛力の配置が手薄で、領土や海洋利用の自由が脅かされかねない」として、南西諸島周辺を念頭に離島への自衛隊部隊の重点配備の必要性などを指摘した。冷戦時代に採用された、自らが力の空白とならないよう必要最小限の基盤的な防衛力を保有する「基盤的防衛力」の概念については、「もはや有効でない」として見直しを求めている。

 集団的自衛権の行使については、日米同盟を重視し、米国に向かうミサイルを迎撃することが可能となるよう、柔軟に解釈や制度を変える必要があると指摘。武器輸出三原則は、米国以外の国とも共同開発が可能となるよう、早期に緩和するよう提言している。【仙石恭】

 ◇南西諸島◇

 鹿児島沖から沖縄と台湾までの間を南西方向へ連なる島々の総称で、最西端は与那国島。約1200キロにわたり、鹿児島県側が薩南諸島、沖縄県側は琉球諸島と呼ばれる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100727-00000103-mai-pol



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▽「武器輸出三原則」「非核三原則」見直しの米からの圧力と日本政府筋の忖度

 日本政府は05年、ミサイル防衛(MD)をめぐって、米国に対して、関連技術の
供与を武器輸出三原則の適用除外とすることを決めたが、2018年から欧州に迎撃
ミサイルを配備する計画を進める計画をもつ米国は、武器輸出を事実上禁止している
日本の武器輸出三原則の見直しを迫っている。

 25日、日米両国が共同開発中の次世代型迎撃ミサイル(SM3ブロック2A)に
ついて、日本政府は武器輸出三原則の対象とせず、第三国への供与を例外的に認める
方向で調整していることが分かった。

 また、26日、明らかになった菅直人首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障
と防衛力に関する懇談会」(座長=佐藤茂雄・京阪電鉄最高経営責任者)の報告書案
は、「非核三原則の見直し」に踏み込む内容で、日米同盟の深化のため、日本の役割
強化を強調、必要最小限の防衛力を持つとする「基盤的防衛力」構想を否定し、離島
付近への重点配備を強調するものとなっている(→朝日新聞等参照)。

 報告書案は非核三原則について、「一方的に米国の手を縛ることだけを事前に原則
として決めておくことは、必ずしも賢明ではない」と指摘し、事実上、三原則のうち
の「持ち込ませず」を見直すよう求める。米国に向かうミサイルを日本が撃ち落とす
形での「集団的自衛権行使」にも言及、潜水艦の増強も「合理的な選択」とし、さら
にミサイル防衛については、「打撃力による抑止をさらに向上させるための機能の検
討が必要」として、「敵基地攻撃能力」の必要性にも言及するものとなっていると報
じられている。

第三国への供与容認=迎撃ミサイル、「三原則」の例外に-政府検討(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date3&k=2010072500146
「核持ち込ませず」見直しを提言 新安保懇の報告書案(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0727/TKY201007260561.html?ref=goo

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先島諸島への陸自配備に反対する。/海鳴りの島から
7月20日付琉球新報1面に〈宮古、石垣に陸自配備/「国境警備」数百人/防衛省検討 与那国は沿岸監視100人〉という見出しの記事が載っている。

〈沖縄県の先島諸島周辺での中国海軍の活発な活動などを踏まえ、防衛省が宮古島や石垣島に陸上自衛隊の国境警備部隊(数百人)を、与那国島に沿岸監視部隊(約100人)を、5~8年後をめどに段階的に配備する方向で検討していることが、19日、複数の同省幹部の話で分かった〉

 中国が海軍力を強化しているのは事実だ。しかし、それに対応して先島諸島の三島に陸自部隊を配備するというのは飛躍がありすぎる。いったい今時、宮古島、石垣島、与那国島、あるいは尖閣諸島に中国が〈武装ゲリラ侵攻〉する可能性がどれだけあるというのか。そういうことをすれば日本と中国の全面戦争になるわけだが、それによって中国が失うものは、得るものよりはるかに大きい。「中国の脅威」を過大に煽り、あり得ない想定のもとに先島地域に陸自の配備を図ろうとするのは、軍事的合理性とは別の思惑があるとしか思えない。
 田岡俊次著『北朝鮮・中国はどれだけ怖いか』(朝日新書)に次の一節がある。

〈防衛省は、「中台紛争の際、中国軍が琉球諸島の島を占領する」ことを想定して、「中期防衛力整備計画」(05~09年度)でも、「島嶼部に対する侵略防止」をうたい、そのため佐世保の相浦に西部方面総監部直轄の普通科(歩兵)連隊を設け、米海兵隊との共同訓練も行っており、C130輸送機にヘリコプターへの空中給油装置を付けるなど、装備も導入する計画だ。だが、これは滑稽な想定だ〉(238ページ)

〈防衛省でも島嶼防衛に対しては、「あれは陸上自衛隊が、北海道にソ連軍が侵攻するという想定が消えたため、存在価値を示すために無理矢理考えたこと。護衛艦1隻を哨戒させればすむ話ですよ」などと、笑い話の種になる〉(239ページ)

 田岡氏は〈滑稽な想定〉の理由として〈中台間の戦争が起きる公算がそもそも小さい〉〈もし日本の島を占領すれば、日本はもちろん日米安保条約により米軍も参戦せざるをえなくなる〉〈制空権、制海権のない海域の離島に上陸することは、補給、増援、救出の可能性がないから自滅が必至〉であることなどを挙げている。
 田岡氏の本が出たのは2007年3月で、大江・岩波沖縄戦裁判を傍聴するため大阪に行ったとき、電車の中で読んだのを憶えている。同裁判の背景に、沖縄における自衛隊強化の問題があると考えていたので、参考にするため手にした一冊だった。
 あれから3年余が経ち、自公政権から民主党を中心とした政権に替わったが、沖縄における自衛隊強化は一貫して進められている。国民新党の下地幹郎議員が進めてきた先島地域への自衛隊誘致運動に加えて、与那国島で自衛隊誘致の動きが活発化していること、宮古島市、石垣市の首長が保守に替わったことなど、防衛省や自衛隊内部では先島地域への陸自配備の条件が整ってきたと読んでいるのだろう。そこには当然、下地島空港の軍事利用も絡んでくる。
 絶えず危機や脅威を作り出し、存在意義を示さなければ、軍隊は部隊や予算を維持、拡大できないだけでなく、逆に縮小されてしまう。特に陸上自衛隊にとっては、「ソ連の侵攻」という危機が消えたあと、新たに陸上侵攻の危機、可能性を作り出さなければ、国の財政状況が深刻化しているなか、大幅な人員削減案が出かねない。中国の脅威をあおって先島地域に陸自部隊を配備しようとするのも、第一の目的は陸自の生き残り=組織維持であろう。
 そこに部隊配備と基地建設に伴う工事や装備品調達などの利権が絡み、政治屋と建設業、防衛産業、防衛官僚などが、自らの利益追求のために暗躍する。その結果、宮古、石垣、与那国などの島々に自衛隊が配備されていけば、自衛隊の存在は5年、10年と経つうちに島の政治、経済だけでなく生活全般に影響を及ぼしていく。そうやって先島地域の住民の意識を「国防」を担うものへと変えていくのも大きな狙いだろう。
 中国の軍事強化に反対するのは当然のことだが、その脅威を過大に描き出し、あたかも〈武装ゲリラ侵攻〉があり得るかのような「想定」を強調して、先島地域に陸自を配備しようという動きには強く反対する。先島地域の住民と連帯した反対運動を沖縄島でも作りだしていく必要がある。
http://blog.goo.ne.jp/awamori777/e/2f9bbc09f9d42679961425b93ea53b8f

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新安保防衛懇談会の報告書案要旨

 【複合事態】特殊部隊による国内の重要施設を狙った攻撃や国外からのサイバー攻撃が同時に生起するような事例、周辺事態が発生し米軍への後方地域支援をしているさなかに日本への武力攻撃事態に発展し、ミサイル攻撃や離島を巻き込んだ戦闘に対処しなければならない事例を「複合事態」と呼ぶなら、効果的に対応できる防衛力の設計、運用が必要だ。

 【防衛力整備】冷戦下で米国の核抑止力に依存しつつ日本への限定的な侵略を拒否する役割に特化した「基盤的防衛力」概念はもはや有効でなく、見直しが必要。多様な事態が同時・複合的に生起する場合に対応しうる防衛力整備が必要。高い運用能力を兼ね備えた動的抑止力の構築を目指すべきだ。

 【非核三原則】米国の日本に対する拡大抑止、特に核戦力による拡大抑止は、日本の安全のみならず地域全体の安定を維持するためにも重要。それは究極的な目標である核廃絶の理念と必ずしも矛盾しない。非核三原則に関して、最も大切なことは核保有国に核兵器を「使わせないこと」であり、一方的に米国の手を縛ることだけを事前に原則として決めておくことは、必ずしも賢明ではない。

 【武器輸出三原則】三原則に基づく事実上の武器禁輸政策によって、国内防衛産業は、最先端技術にアクセスできず、国際的な技術革新の流れから取り残されるリスクにさらされている。日本の安全保障における防衛生産・技術基盤の重要性にかんがみれば、三原則の下での武器禁輸政策については、見直すことが必要だ。

 【集団的自衛権】日本は現在、米艦艇の防護や米国向け弾道ミサイルの撃墜を、国益に照らして実施するかどうかを考える選択肢さえない。国の防衛や同盟の維持の必要性から出発して柔軟に解釈や制度を変え、日米同盟にとって深刻な打撃となるような事態が発生しないようにする必要がある。

 【敵地攻撃】ミサイル攻撃の状況によっては敵基地への攻撃も必要となる場合もある。日本として適切な装備体系、運用方法、費用対効果を検討する必要がある。


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