経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

購買の動機付け

2008-09-28 | 新聞・雑誌記事を読む
 日経ビジネスの前号に、映像処理チップで急成長している米・エヌビディアに関する記事が掲載されています。その中で、CEOのファン氏が語っていること。

我々は、自分達をパソコン向け半導体の企業とは考えていない。
「ビジュアルコンピューティング」の技術を提供する会社だ。
半導体の設計はもちろん、・・・開発ツールに至るまで、すべてをビジネスとして捉えている
その観点において、半導体だけにフォーカスしている他の企業とは明らかに違う。
消費者は半導体を買いたいわけではない。
「楽しみたい」というのが、購買の動機付けになる。
ビジュアルコンピューティングにおいて、映像を描画する機能はあくまで要素の1つにすぎない。・・・


ユーザに支持され、伸びている企業は、こういう捉え方をしていることが多いように思います。提供する商品そのものの機能のみにフォーカスするのではなく、その商品が全体の中でどのように作用するものであり、ユーザはその商品を使って何を求めようとしているのか
結局のところ知財サービスも同じで、クライアントは出願代理やら特許調査やらを買いたいわけではない。自社に有利な事業環境を作り出して収益力を強化したい、というのが知財サービスを受けようとする動機付けであり、より有利な事業環境を作り出すためのサービスを提供する、そういう捉え方をしておくことが必要なのだと思います。

視点・2つ

2008-09-19 | 企業経営と知的財産
 本日は某外資系投資銀行のランチセミナーで‘企業評価における知的財産の視点’について話させていただきました。企業評価というのは複雑系であり、いろんな視点からの見方があるものですから、知財もその「視点」の一つということで、‘企業評価’と‘知的財産’の位置関係を定義するのに、このタイトルは結構うまく表現できてるんじゃないか、って自己満足しています。

 さて、あるプロジェクトの関係で今考えているのが、中小・ベンチャー企業において知財をみる‘経営者の視点’というのはどういうものかということ。‘経営者の視座’のエントリで書いたような話ですが、それはこんなふうに整理していけばよいのではないかと思っています。
経営者はどのような戦略で事業を展開し、
その中でなぜ知財業務への取り組みが必要になり、
どのような方法で知財業務への取り組みを進め、
経営上どのような成果に結び付いたか。

好調な会社の事例をここに当てはめて見ていけば、経営の中での知財業務の位置付けが見えてくるのではないでしょうか。
「業績が好調なこういう会社があります。こういう特許をとっています。」
で止めてしまっては、そこが見えてこなくて、経営のリアリティが感じられないのです。たぶん。

祝200本

2008-09-18 | プロフェッショナル
 今年の200本目はちょっとシケたヒットでしたが、イチローが最後の部分で、「うわっ、それ、言うか」って感じのコメントをしています。

「できるだけ早くクラブハウスから出ることを心がけた。マイナスの空気は皮膚から入る。それで、悪い方に流れることだけはしないという信念を持っている」

今日は某所で前向き&頭が整理されるいい議論ができたのですが、逆に、プラスの空気だって皮膚から入る。誰が得している誰が損してるといった足の引っ張り合いとか、当事者意識のない形ばかりの議論とか、皮膚から入ってしまわないように要注意、って改めて思い直します。 -->

スーパージェネラル知財人

2008-09-14 | 知財一般
 一昨日に受信した田坂広志氏の「風の便り」最新便に掲載されていた話です。
 米サンタフェ研究所初代所長のコーワン博士に、田坂氏が優れたスペシャリスト集団をマネジメントできる資質について尋ねた際に、博士はそれを「スーパージェネラリスト」と答えたそうです。そのスーパージェネラリストとは、単に、様々な分野の知識を幅広く理解している人材という意味ではなく、

 一つの専門分野を深く掘り下げた経験を持ち、
 その結果、すべての分野に通じる
 深い哲学を獲得した人材

を指していたそうです。イチローの語りなんか、まさに「すべての分野に通じる深い哲学」にあたるんだと思います。
 知財人のあり方についても考えさせられる話だと思います。単に異分野の知識を学べば活動の幅が広がるというものではなく、逆に、本業をしっかり深く掘り下げることが、懐の深い「スーパージェネラル知財人」への道なのかもしれない。但し、単に掘り下げるだけではなく、「すべての分野に通じる深い哲学」を獲得することが条件になるわけですが。

景気が悪いのになぜ低価格品が売れなくなったのか?

2008-09-12 | 新聞・雑誌記事を読む
 日経ビジネス最新号に、面白い記事が出ています。北米の薄型テレビ市場を超低価格で席巻したビジオが最近になってシェアを落としており、サムソン、ソニーが巻き返しているとのこと。今の景気の状況を考えると逆じゃないの、ってちょっと意外感がありますが、これは技術・ブランド(≒知財)の勝利!ってことなのでしょうか。
 が、記事によると背景にはいろいろあるようで、サムソン・ソニーも徹底したコスト削減を進めたので価格差が縮まったということに加えて、流通側の問題、その背景には金融情勢の変化があるそうです。つまり、ビジオの低価格は大量供給を前提にしているため、量販店は大量仕入をしなければならない。ところが、昨今の金融情勢下では資金が簡単に調達できなくなってしまったので、大量仕入れができなくなり、結果的にビジオのシェアが低下した、という側面があるそうです。
 技術・ブランド(≒知財)磨いて優れた商品を提供するのが戦う前提条件にはなりますが、市場での勝負にはいろんなパラメータが働いて複雑である。金融ってものの影響を考える一例になるんではないかと思います。

なんか変な議論

2008-09-10 | 知財業界
 今日あるセミナーの打合せをしていて改めて思ったのですが、よく、
「これからの弁理士は・・・」「弁理士の将来は・・・」「弁理士が新しい業務として・・・」「弁理士のブランドが・・・」
みたいな議論を耳にすることがあります。で、弁理士というのはその人の属性の一つであって、主体になるわけではないと思うんですが、この種の議論ではなぜか弁理士が主体として何をする、どうあるべき、って話になってしまっています。
 これっておかしな話だと思うんですが、主体として活動するのはあくまで○○さん個人か、△△特許事務所、□□株式会社であって、「弁理士」という人や組織が活動するわけではない。こういうテーマは、○○さん、△△特許事務所、□□株式会社といった主体について考えるべき問題だと思うのです。○○さん個人についてであれば、
「これからの弁理士は・・・。だから、私(○○)も・・・だ。・・・しよう。」
ではなくて、
「ビジネスパーソンとしての○○がこれから力を発揮していくのに、弁理士のスキル・ポジションをどうやって活かせるか。」
っていう話になるのではないかと思うんですが。まぁ個人の考え方の問題なので、どっちでもいい話なのかもしれません。
 こうやって書いてみると、知財の捉え方にも何か共通する部分があるような気がします。「知的財産は大切だ!だから知的財産権をバンバンとっていきましょう。」と考えるか、「□□株式会社が成長していくために、知的財産権という道具をどうやって活かせるか」と考えるか。活動主体は会社であって、知的財産ではないという意味で。

ランチセミナー

2008-09-06 | その他
 某外資系投資銀行主催の機関投資家向けセミナーで、‘企業評価における知的財産の視点’と題して話をさせていただくことになりました。コテコテの知財業界からはかなり距離感のある世界なので、果たしてどのような反応をいただくことになるのやら・・・
 ところでそのセミナーの時間帯がちょっと意外で、11:30~12:30とお昼時の早めの時間に設定されていて、大手町の某ビル最上階のレストランで軽食を食べながら行われるそうです。株式市場は前場が11:00まで、後場が12:30からですので、昼休みにランチがてらちょこっと外出して聞きにこられる時間ということらしい。お勉強っていうより、ネタやヒントを探しに行ってみるというノリなのでしょう。わりとベタッと研修や勉強会をやる知財業界にはないノリですが、こういうところにも業界の性質って出るのかもしれません。そういえばITバブルの頃ですが、シリコンバレーのカフェでは、投資を受けたいベンチャー企業とベンチャーキャピタリストがブレックファーストミーティングをよくやっているという話を聞きましたが、いかにもエネルギッシュなベンチャー業界っぽい話です。
 ちょっと思ったんですが、知財業界(主に事務所弁理士)にもっとビジネスセンスを、ってことであれば、夜にベッタリと経営学のお勉強の機会を設けたりするよりも、虎ノ門あたりの高層ビルのレストランで、昼休みにちょっと外出して最新の経済ネタを聞けるランチセミナーでもやったほうがいいかもしれません。夜型人間が多そうだからダメか。