JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

また夢になるといけねぇ

2007年02月27日 | a-c

ここ何日間か寒い日が続きましたので、今日の暖かさはなんとも心地よいものでありました。

そうそう、円楽師匠が引退を表明されましたね。
私も「元禄花見踊り」の出囃子にのり、高座に登場する『星の王子様』こと円楽師匠の噺を、幾度となく拝聴したものであります。
「どうも円楽の人情噺はねちっこさがあって好きじゃない」
なんて、わかったようなことを言ったこともありますが、私ごときにとやかく言われるほど薄っぺらな芸のわけもなく、まさに大芸能人引退といったところでしょう。

今朝の朝日新聞『天声人語』にも、室町時代の猿楽師、世阿弥の『風姿花伝』の引用とともに、
「円楽さん特有の花が、枯れることなく、後進に伝えられるようにと念じたい。」
と書いてありましたけど、まさにその通りだと思います。

ところで『円楽のプレイボーイ講座12章』というレコードを御存じでしょうか?

「いやぁ、松岡きっこが若い」って、そうじゃなくて
このレコード、ジャズ演奏をバックに、円楽師匠が『プレーボーイとはかくあらん』を語るというじつにオチャラケなレコードなのですが、あーた、演奏がなかなかのものなのですよ。
前田憲男とプレイボーイズと名付けられたそのメンバーは、前田憲男(p) 沢田駿吾(g) 村岡健(ts) 伏見哲郎(tp) 原田政長(b) 日野元彦(ds)というそうそうたる面々。
収録曲も、「SUNNY」「TABU」「SUMMER WINE」「EN BLUE JEANS ET BLOUSON DE CUIR」「THE ON CROWD」「YESTERDAY」「SOUND OF SILENCE」「GIRL FROM IPANEMA」「MUSTANG SALLY」「MORE」「LAND OF 1000 DANCES」「YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC」ほらね、ちょっと面白いでしょ。
日本ジャズの名盤とは言いがたいものの、当時の世相やジャズを取り巻く環境みたいなものを感じるには一聴の価値有りかもしれません。

湯飲みに注いだ酒を「ほんとうに飲んでもいいのかい?」と女房に確かめて
「ありがてえ、ありがてえ」と口元まで持っていく
「あっ!よそう・・・・また夢になるといけねえ」

円楽師匠最後の大噺『芝浜』の落ちであります。
ぐうたら飲んべえ魚屋が、二十日ぶりに渋々河岸に出かけます。女房が一時刻(とき)早く起こしたものだから、河岸にはまだ誰もいない、一服しながら浜を覗くと革の財布がおちています。中をみれば大金が
「おっかぁ、仕事なんざぁしてられねぇ。こんだけあれば毎日飲み放題だ!」と酒を飲んで寝てしまいます。
翌朝、起こされた魚屋は、女房にそれは夢だと諭され、金がない上仕事もしない、だからそんな夢も見るのだと酒を断ち仕事に没頭することに。
数年たつと、もともと腕のある魚屋だったので、若い衆を雇えるほどの店まで持てるように、そんな大晦日に女房は「あれは夢じゃなかったんだよ、あたしが嘘をついたんだ」と打ち明け、「殴るでも、蹴るでもしておくれ」。
ところが、殴るどころか感謝して「おっかぁ、おれぁおめいに礼を言う」
「今日はお酒も燗してあるんだよ、飲どくれ」と女房。
そして、落ちになるという、師匠得意の人情噺。

はたして、高座を降りた三遊亭円楽は、湯飲みに口をつけるのでありましょうかねぇ?

さて、今日の一枚は「なにをいまさら」と言われそうですが、クリフォード・ブラウン、マックス・ローチ双頭バンドのアルバムの中でも、名盤中の名盤といわれるこれです。
この一枚を選んだのには珍しく理由があるんですよ。
円楽師匠が六代目三遊亭圓生のもとへ弟子入りしたのは、昭和30年(1955年)2月のことでありました。まさにこのアルバムが録音されたその月なのであります。
三遊亭全生としてスタートした円楽師匠、修業時代は「なにくそ」の精神で頑張ったそうであります。

このアルバムに関しては、細かい説明は不要かと思います。ブラウン、ローチはもちろん、リッチー・パウエルの編曲が素晴らしい。まさにブラウン~ローチ・クインテット珠玉の一枚でありましょう。「CHEROKEE」「TAKE THE A TRAIN」なんて、ブラウンに打ちのめされそうです。

STUDY IN BROWN / CLIFFORD BROWN AND MAX ROACH
1955年2月23~25日録音
CLIFFORD BROWN(tp) MAX ROACH(ds) HAROLD LAND(ts) RICHIE POWELL(p) GEORGE MORROW(b)
1.CHEROKEE
2.JACQUI
3.SWINGIN'
4.LANDS END
5.GEORGE'S DILEMMA
6.SANDU
7.GERKIN FOR PERKIN
8.IF I LOVE AGAIN
9.TAKE THE A TRAIN

おまけ、
今日のアルバム写真をじっくり見ていただけますか?
右側に白い縁が見えますよね。このアルバムのジャケットに縁があることは大きな問題ではないのですけど、よ~く見るとそこにカット・マーク(ここで切断しなさいというやつ)がついてるんですよ。しかも左側は写真が少し切れているようにも見えるし・・・・・
国内盤ではないのでそのあたりはアバウトなのかもしれませんが・・・・・・・・
いやまて、これってすごいレアーな代物だったりして・・・いえいえ、しっかりマーキュリー再版盤ですからそんなことはありません。

それで頭に来てというわけではないのですが、後日、友人からブルーのジャケットのレコードをいただいたのですよ。
それでもってそれでもって、ずいぶん後になってまた違う友人に
「俺さぁ、茶色のジャッケットとブルーのジャケット両方もってんだよね」と言うと
「えっ!うそ、茶色じゃなくてオレンジでしょ」

  

ははははは、オレンジには勝ったような気がしました。
SP盤はさておいて、エマーシーのオリジナルは、茶色でしょ?????まさかオレンジ????
エマーシーのブルーもあったという話も聞いたことがあるし?????
マーキュリー・レーベルではどうだったのか??????
すいません、詳しくわかる方がいらしたら教えていただけますか。



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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんわ! (ウフフマン)
2007-02-27 23:20:21
円楽さん引退のブログにコメントありがとうございました。脳梗塞の後遺症とは言え、日常会話や動作はかなり回復されてますし、歳ということでしょうかねえ。さびしいかぎりですが。最後の口演が「芝浜」
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ありゃ~途中で・・・とほほ! (ウフフマン)
2007-02-27 23:28:55
まあ、「芝浜」で良かったですね。酒がらみの人情話でバブさん好みでもありますね。最後の落ちも最高ですなあ。ところで、今夜のブログ内容は密度が濃いですね。「前田憲男とプレイボーイズ」これは全然記憶にありません。円楽師匠がレコードを出したのは記憶に残っておりますが。さすが、バブさんですなあ。昭和30年2月、僕は何をしていたんだろうか?まで考えてしまいました。
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ウフフマンさん (バブ)
2007-02-28 14:53:12
「高座の上で死ぬ」というのも、それはそれで素敵だと思いますし、円楽師匠のように「ここが引き時」というのも美しいものです。

いずれは、私もその選択に迫られるのでしょうけど、その判断は難しいものでしょうね。

ともかく、ウフフマンさんも私もまだまだ現役、そこら中でウハウハ言わせましょうよ。(それが古って)
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Unknown (Bags)
2007-02-28 15:54:34
「円楽のプレイボーイ講座・・・」の珍しいアルバム拝見しました。この手のアルバムにありがちなピックアップメンバーで買い手を意識してネーミングしていましたね。例えば「ペレイングメイト」などの名前もついていたのもありました。本格的なジャズ盤ではないので一曲あたりの演奏時間が短いなど物足りないのは仕方ありません。老婆心ながらご指摘を伏見哲郎は哲夫が正しいです。
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Bagsさん (バブ)
2007-02-28 22:17:38
コメント、ご指摘ありがとうございます。
東北高校出身の伏見哲夫さんですよね。
「ALONE TOGETHER」を思い出しました。

当時の日本のジャズミュージシャンは、こういった小金稼ぎもやらなければならない状況だったのでしょうね。
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