ビール大手4社の今年の販売戦略が9日出そろった。キーワードは「高級」と「主力のてこ入れ」。ビールの税率を引き下げ、「第3のビール」などとの差を縮める酒税改正の機運も背景に、ビールそのものに力を入れる動きが強まりそうだ。

 サントリービールは高級路線をさらに進める。「ザ・プレミアム・モルツ」より高い「マスターズドリーム」を3月、コンビニと飲食店限定で売り出す。

 305ミリリットルの瓶入り。小ぶりだが、税込みの想定価格は通常のプレモルより2割ほど高い315円前後。欧州産の高級麦芽をより丁寧に煮沸し、コクを高めたという。水谷徹社長は「プレミアム市場に各社が参入するなかで、もう一歩先に出る」。開発には約10年かけたという。

 アサヒビールは「スーパードライ」の派生商品を出す。2月から3月まで販売する「煎りたてコクのプレミアム」は、350ミリリットル入りで、通常のドライより30円高い255円前後。焙煎(ばいせん)した麦芽を使い、香ばしくしたという。

 「辛口」のドライに対して「超辛口」をうたう「エクストラシャープ」も3月から5月まで販売する。アルコール度数は従来より0・5%高い5・5%。価格は通常のドライと同じ225円前後とする。

 サッポロビールは「薫り華やぐエビス」を刷新、2月から4月ごろまで売る。ドイツ産のホップを使い、通常のエビスより10円高い270円前後で売る。

 小さな設備で原料や製法にこだわってつくる高級な「クラフトビール」にも参入し、夏ごろに発売する。

 キリンビールは「一番搾り」の派生商品を出す。「小麦のうまみ」を3月から5月まで売る。たんぱく質が多いフランス産小麦の麦芽を使って、まろやかにしたという。価格は通常の一番搾りと同じ224円前後だ。

 期間を限って売り出すビールについても、各社は、売れ行きがよければ定番にすることを検討する。いわば「本物のビール」に力を入れる背景には、税制の見直し論議もありそうだ。

 現在、350ミリリットルあたりの酒税は、ビールが77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円。政府・与党は差を縮める方向で議論しており、そうなればビールの売れ行きを伸ばしやすくなる。キリンの磯崎功典社長は「(税率の)一本化を見越し、ビールカテゴリーに今後も注力していく」と話す。

 ビール系飲料の国内出荷量は2013年まで9年連続で減っている。業界では、まだ公表されていない14年も前年割れが確実視されている。