「日本家屋構造・中巻:製図篇」の紹介-19 :附録 (その4)「仕様書の一例」-1

2014-04-19 15:00:00 | 「日本家屋構造」の紹介


今回は、「附録」から、「二十九 普通住家建築仕様書の一例(一式請負の時)」の項の紹介です。

原文を編集、A4版6ページにまとめました(右上に便宜上ページ番号を付してあります)。
編集した原文をそのまま転載し、ページごとに現代語で読み下し、随時註記を付す形にします。
この「仕様書」は、すでに紹介の「普通住家」を例としています。

分量がかなり多くなりますので、数回に分け、今回は最初の1枚目を紹介することにします。

最初の頁にまとめたのは、「建物の概要」の部分です。
最初に規模、階数などを示し、「附而(つけて)」として、各所の建具の構成、雨戸の戸袋、床の間の仕様、そして霧除庇などの外部附属物について、その概要が示されます。
   註 「附而」の意は色々と辞典で調べましたが不明。書かれている内容から、「附記」「補足」あるいは「摘要」というような意ではないか、と思われます。


  なお、原文転載部分に、行間の不揃いや歪みがあります。文字もかすれて読みづらい箇所があります。ご容赦ください。


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[第三図と記していましたが、誤記でしたのでに訂正しました 20日 9.45]

「第二図」:平面図、立面図:及び第三図:矩計図(この「仕様」の矩計は第三図の甲に相当すると考えられます)を再掲します。[に訂正 20日 9.45]



現代文で読み下します。

二十九 普通住家建築仕様書の一例(一式請負の時)(第二図参照)
  延坪数 22坪7合5勺 木造平屋建 1棟
   内 主屋
         建坪19坪 
           桁行4間・梁間3間半 及び 桁行2間半・梁間2間
           軒高 布石上端~軒桁峠:11尺6寸
           軒出:1尺5寸、庇屋の部分:2尺4寸
     葺おろし 
         建坪 3坪7合5勺
           桁行7間半・幅3尺
     ただし 屋根方形造、5寸勾配桟瓦葺き
         外部下見張り、内部壁塗り・床畳敷および板張り。
         その他、図面の通り。

   註 「合坪」は「延坪」の意と解します。
      当時、現在の「建築面積」「床面積」の別はなく、建物の平面的大きさは、常識的に、現在の「床面積」表記で示されていたのです。
      現在でも、法令の規定する「建築面積」という〈概念〉は、常識的感覚には、つまり一般には分りにくいはずです。
        「建築面積」は、「建蔽率」という〈概念〉のためにつくられた、と考えてよいでしょう。
        そして、「建蔽率」という〈概念〉が、「軒(の出)を設けないつくり」を流行らせた元凶である、と言っても過言ではありません。
        なお、1坪=10合 1合=10勺 
      「葺おろし」は、平面図の「縁側」および「便所」(第三図・甲の部分に相当)と解します。[に訂正 20日 9.45]
      「方形造」は、立面図から、現在の用語の「寄棟造」の意と解します。
      「方形造」(以下は「日本建築辞彙」の解説より)
        ① 四方の隅棟、一箇所に集れる屋根にいう。
          隅棟の会する所には、露盤その他の飾あり。これを宝形造とも書く。屋根の伏図は正方形をなす。
        ② 大棟の両端に隅棟集まれる屋根にもいう。明治時代の建築家は、多くこの意味に、この語を用いたり。
          又一部の人は、この如き屋根を寄棟造と称し居れり。
          されば明治大正時代に於いて、方形造、寄棟造、宝形造の意義は人により異なりて、甚だ混乱の状況なりき

附而
   註 原文の表記を、平面図と照合の上、場所(室名など)、内容(名称など)、大きさ等、数量、備考(位置など)の順に編集し直しました。
   註 極力、表の上下の文字が揃うように努めましたが、不揃いが生じてしまいました。ご容赦!

  場所       内 容                  大きさ等              数 量       備 考
 玄関      格子戸並びに雨戸          明き6尺・高さ5尺7寸        1箇所   北面
 台所      腰付障子並びに雨戸         明き9尺・高さ5尺7寸        1箇所   土間西面出入り口
 西側3畳    水板腰障子並びに雨戸       明き9尺・高さ5尺7寸        1箇所   西面
 北8畳     表出格子付 障子並びに雨戸   明き2間半・高さ4尺2寸・出8寸  1箇所   北面
 台所         同  上               明き2間・高さ4尺2寸・出8寸   1箇所   北面
 南北8畳    板腰障子                 明き2間・高さ5尺7寸        3箇所   縁側境
 北8畳     同  上                  明き6尺・高さ5尺7寸        1箇所   玄関境
 南8畳、3畳  両面上張り襖2枚立          明き6尺・高さ5尺7寸        2箇所   8畳~中3畳~台所3畳境
 南8畳     両面上張り襖4枚立          明き6尺・高さ5尺7寸        1箇所   北面3畳境
 押入中棚付  片面上貼り襖2枚立          明き6尺・高さ5尺7寸        3箇所   各8畳と西3畳の押入
    註 箇所数の齟齬から、平面図の中3畳~北8畳境の「障子2枚立」は、「襖2枚立」の誤記と解します。
 台所      両面上張り襖1本引き         明き3尺・高さ5尺7寸        2箇所   台所~8畳、台所~西3畳
 押入中棚付  肘壷釣り片開き戸           同 上                   2箇所   玄関、台所
 便所      片開き戸                 同 上                  1箇所   便所入口
 便所      片開き戸                 明き2尺・高さ5尺7寸        1箇所   大便所入口
 便所      外格子付障子引違          柱間2枚立・高さ1尺5寸      2箇所   便所南面
 外まわり    戸袋                    幅3尺・高さ6尺            6箇所   縁側3、玄関,台所西,西3畳各1、妻板張り
           表戸袋                  幅3尺・高さ4尺2寸          2箇所   北8畳、台所出格子部分
 縁側      雨戸                    長さ7間半・幅3尺
 縁側欄間   障子                    明き6尺・高さ1尺5寸        6枚    北8畳南面、南8畳南・東面
 床の間     板床                    幅6尺・深さ3尺            2箇所   南北8畳各1
 北8畳     霧除庇                  長さ2間半・流れ2尺         1箇所   北側出格子上
 台所      同 上                  長さ2間・流れ2尺           1箇所    同 上
 玄関      同 上                  長さ9尺・流れ2尺5寸        1箇所   北側入り口上
 台所西     同 上                   同 上                  1箇所   西側入り口上
 西3畳     同 上                   長さ9尺・流れ1尺5寸        1箇所   西側開口

   以 上



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原文では、これに続き、仕様の詳細について具体的な記述が続きます。
内容は、現在普通に目にする いわゆる「(特記)仕様書」よりも、数等中味が濃い印象を受けました。

A4判に編集し直して5枚分ありますので、次回から順次紹介させていただきます。


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