「首里城の一角に先づ大ホテルを建てる。城塞は全部ホテルの庭として手を入れる。諸所に散在する尚侯爵家初め各王族の城跡別荘等を開放してドライヴ・ウエイを造り滞留客の散歩観光の目標にすること。既設の海水浴場を増大して設備を完全にし、適宜な場所に競馬場、競犬場、ゴルフ・リンクス等を造り辻近くにカジノを建設する。序に海洋博物館をこしらえるのも、まんざらモナコの真似とばかりは云えない。この太平洋に浮ぶ珊瑚礁には無数の珍魚奇貝も棲息してゐるのだから。飛行場は既に立派なのが出来てゐるし、航空路は既に開始されてゐるのだから、那覇港を開鑿してノルマンデイ級の豪華船を自由に停泊させるようにしたら、沖縄は忽ちにして、ワイキキやパーム・ビーチの繁栄を奪ってしまうこと必定である。」
これは昭和11年8月号雑誌『改造』に掲載された阿部金剛の「琉球記」の一部である。阿部金剛は70数年前にすでにリゾート開発の一環にカジノ事業を組み込んだアイデアを持っていたというのは先見的である。
つい先日、亀井静香金融相が「沖縄にはカジノ事業がいい。沖縄が総合レジャーの中心地になれば雇用の面、所得の面で大幅なアップが期待できる」と発言した。同じ国民新党の下地幹郎議員の入れ知恵かもしれない。
沖縄の仲井真知事はすでに県カジノ・エンターテイメント検討委員会をつくってカジノを含む沖縄統合リゾートを導入した場合の経済波及効果を発表している。下記は琉球新報の記事である。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-141648-storytopic-4.html
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カジノ効果9000億円 県検討委、施設3案も提示
2009年3月13日
県カジノ・エンターテイメント検討委員会(委員長・小濱哲横浜商科大教授)は12日の最終会合で、カジノを含む沖縄統合リゾートを導入した場合の経済波及効果(試算)を発表した。建設費などの直接効果は5302億円、周辺産業などへの波及を含めた効果は8974億円に上るとしている。施設での直接雇用は1万3000人、建設工事などを含めた雇用効果は7万7000人余と想定した。ビーチや会議施設などを併設した施設概要(3案)も提示した。
施設は敷地面積60ヘクタール、延べ床面積77ヘクタール。総事業費は3200億円で、民設民営を想定。カジノ以外にホテル(客室数5000)や会議施設(1万―1万7000人収容)、飲食を含む商業施設、ビーチやマリーナなどを併設する。伝統文化、海の魅力を打ち出す施設、タワー型の3案を示した。
経済効果は施設内のカジノに県民の入場を禁じる前提で試算。海外の事例や国内需要調査などを考慮した。
施設を導入した場合、導入時(2015年を想定)に県内入域観光客数が1010万人に達すると仮定。県民を含め670万人が施設を利用するとした。うち観光客は入域客観光客の45%に当たる460万人、県民が210万人。カジノ利用客は入域観光客の23%に当たる230万人。
年間売上高はカジノ機能だけで995億円。飲食や宿泊、商業施設などを含むと計2102億円。税収効果は764億円。
売上高の5%を国に収めると想定し、人件費などの経費を除いたカジノの営業利益は年539億円。利益は県と地元市町村に4分の1ずつ、施設を運営する民間事業者に2分の1を分配。事業者の施設全体の税引き後収益は188億円となる。
施設を導入しなかった場合、2015年の観光客数は導入した場合に比べ74万人少ない936万人になるとしている。現在の伸び率を保つと仮定して試算した。
会合で08年度の検討結果をまとめた報告書案も承認。県は09年度、検討結果を踏まえて県民対象の説明会を県内各地で開く。
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あとは賭博事業に関する法律の整備と沖縄県民のコンセンサス次第ではなかろうか。
ホリエモンも12月17日のブログ記事で珍しく亀井静香金融相の発言に賛同している。
http://ameblo.jp/takapon-jp/day-20091217.html
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たとえ、それが彼の新たな利権構造への関与だとしても、合法カジノは日本に作るべきである。
いまでも多くの日本人が韓国やマカオ、そしてラスベガスへと出かけている。どこのカジノもある程度の時間カジノで遊んでくれれば航空券やホテル代まで無料という特典をつけてでも観光客を誘致している。だから相当額のお金が海外流出しているはずである。
そして今の世界のカジノを盛り上げているのは間違いなく中国人である。私は去年モナコのカジノを訪れてその閑散としている現場に愕然とした。少しだけロシア人とかアラブ系の金持ち風が遊んでいたが、ほとんどガラガラの様相である。マカオやラスベガスが中国人で満ち溢れて活気があるのと比べると対照的である。彼らはそれほどギャンブルが好きな文化なのだろう。
台湾から程近い、もちろん中国南部からも近い沖縄は多くの中国人富裕層をひきつけることは間違いない。沖縄にはゴルフ場やマリンスポーツも充実している。雇用面でも良い影響があるに違いない。総合レジャー施設として大ヒットする可能性は高いだろう。
そして現在の米軍基地移設問題にも良い影響があると考える。基地の県外移転については防衛ラインの問題を懸念する向きもあるが、それ以外で反対勢力になっているのはやはり経済的な悪影響である。米軍人の引き起こす犯罪や騒音を理由に基地移転を唱えるものもいれば、基地経済で成り立っている町も産業もあるのだ。だから移転となれば反対する人も相当数いる。しかし、基地経済の代替手段としてカジノ特区は非常に筋が良い。つまり基地の県外移転に反対する勢力を相当数押さえ込め、問題の解決をはやめる可能性がある。
カジノ合法化で反対勢力が必ず唱えるのは、カジノ中毒者の発生と治安の悪化である。
しかし、ギャンブル中毒者は既に日本に多数存在する。パチンコを筆頭に、競馬・競輪・競艇・オートと合法ギャンブルから、闇スロや闇カジノなど非合法ギャンブルまで、消費者金融の多重債務者の多くはギャンブル狂である。カジノを合法化したところで大して数は変わらない。増えも減りもしないだろう。もう一つは治安の悪化懸念だろうが、パチンコ屋の周辺で治安が悪化下なんて話は聞かない。それこそ全国津々浦々にパチンコ屋は存在するだろう。
むしろ、現在実質的な非合法状態にあるパチンコが合法カジノに客を奪われ自然淘汰することにより、国全体では税収アップに寄与するはずだ。今の亀井氏ならこのカジノ立法という荒業に成功する可能性はゼロではあるまい。さすが、政治屋の面目躍如だ。抜け目ない。
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