一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

毎度の石原発言と中国の農民問題

2005-11-06 | 乱読日記

中国と戦争すれば米は負け…訪米中の都知事講演で断言
(2005年11月 4日 (金) 10:45 読売新聞)

 石原知事は「戦争は、しょせん生命の消耗戦だ。米国はイラクで米兵が2000人死ぬだけで大騒ぎするが、生命に対する価値観が全くない中国は憂いなしに戦争を始めることが出来る。戦渦が拡大すればするほど生命の価値にこだわる米国は勝てない」と述べた。

まあ、発言自体は例によって、という感じではありますが「生命に対する価値観が全くない」かどうかはさておき、ちょうど 『中国農民の反乱』 を読んだばかりの身としては、中国において都市住民と農民との経済格差が広がり、しかも農民の貧困化がますます進んでいるらしいことはちょっと気になります。

中国では現在でも農民と都市住民は戸籍で区別されていて、都市に出てきた農民がつける定職は限られており、子供の教育も提供されないそうです(特例措置で累積で日本円換算3000万円!以上の納税者には市民戸籍を与える、というのがあるようですが)。

一方で農村では、人民公社(それ自体も農民の自立を妨げた弊害があって廃止されたのですが)廃止後、地方行政をまかされた郷・鎮という地方団体(党組織なので自治体ではない)の幹部の専横が続いているようです。

特に、郷・鎮に対して県や中央からの財政援助がほとんどないために、それぞれで勝手に農民から教育費や道路整備費等の負担金を徴収し、農家の困窮を深めているとのことです。

中国駐在10年のベテラン記者(元中日新聞の北京支局長)の丁寧なレポートです。


それで、農村部の貧困、都市部との経済格差は国内の不安要因として中国政府も心配しているようですが、その受け皿としての軍隊・軍拡というのはよくある話ではあります。

旧日本軍も、農村の貧困と次男坊・三男坊の食い扶持を得られる志願兵制度がうまく利害が一致したわけですし、アメリカの志願兵募集も(NHKのドキュメンタリーで見たのですが)もっぱら貧困層の若者を狙って「大学卒業の資格を得られるぞ」などと採用活動をしているようです。

地方政府が機能せず、都市部への流入も止められないうえに都市部で差別的な扱いを受けている農民層の不満が鬱積しているという状況を考えると、中央政府が外貨を志願兵雇用の給料に当てて、都市の治安維持にまわすなどという展開も考えられそうですし、それが膨張すると確かに危ない方向に行くかもしれません。

そういえば、安保闘争時の日本もデモの現場では「地方からの高卒で警察学校などでしごかれている機動隊員vsヒッピー文化全盛時の大学生」という感情レベルでの対立の構図もあったそうですが、天安門事件なんかも現場兵士の感情的な部分が影響したのでしょうか。

日本はその後も経済成長が続いて、雇用を吸収できたのでよかったのですが、5億人以上の農民を抱える中国の問題はもっと根深いようです。

中国農民の反乱 ――隠された反日の温床

講談社

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