今週の日経ビジネス「敗軍の将、兵を語る」の 「ハイテク納骨堂、課税に異議」の記事。
赤坂にあるハイテク納骨堂(ICカードでお骨が搬送されてくるロッカー式の納骨堂)について、経営主体の宗教法人が固定資産税の非課税申請をしたものの、東京都から宗教活動とはみなされず、固定資産税が課税されることになったという案件。
この記事に東京都主税局の話として以下のコメントが載っている。
当該法人の固定資産税が非課税に当たるか当たらないかは地方税法348条第2項第3号の「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に該当するかどうかを1件1件確認して、判断した。「本来の用」とは「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること」と規定している。宗教法人が「本来の用に施設を使用していない場合」には、課税対象になる。
しかしそうはいっても実際に民間で募集している墓地は「境内地」というには無理があるし、「教義を広め、教化育成」などは全然していない(そもそも「宗派不問」というのが多い)ように思う。
やっているとしても読経・法事などの「儀式行事」だけで、そういう建前が「葬式仏教」化をすすめ、さらには改葬申請書への住職の同意などで既得権益化しまっているのだと思う。
(この点については『寺院消滅』でも宗教本来の姿に立ち戻ることを含めて指摘されている。)
だとすると逆に民間にも経営を認めたうえで固定資産税の非課税要件を厳格にした方が、少なくとも既得権益の排除にはつながるように思う。
しかし調べてみると、墓地経営・管理の指針等について(平成12年12月6日 厚生省生活衛生局長)という通達がある。
そこでは
〇 墓地経営主体は、市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られること。
墓地の永続性及び非営利性の確保の観点から、従前の厚生省の通知等により、営利企業を墓地経営主体として認めることは適当ではないとの考え方が示されている。この考え方を変更すべき国民意識の大きな変化は特段認められないことから、従来どおり「市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい場合であっても宗教法人、公益法人等に限る」との行政指針にのっとって行うことが適当であり、具体的な運用に当たっては、こうした要件を条例、規則等に定めておくことが望ましいと考えられる。
さらに
地方公共団体が行うのが望ましい理由は、墓地については、その公共性、公益性にかんがみ、住民に対する基礎的なサービスとして需要に応じて行政が計画的に供給することが望ましいと考えられること、将来にわたって安定的な(破綻の可能性がない)運営を行うことができ、住民がより安心して利用できることである。このため、例えば市町村が地域の実情を踏まえた墓地の設置等に関する計画を立てる仕組みの導入等も有効であると考えられる。宗教法人や公益法人も非営利性の面では墓地経営の主体としての適格性は認められるが、永続性の面では地方公共団体の方がより適格性が高いと考えられる。
とまで言っている。
これは①墓地使用権の販売によりあつまる一時的な収入目当てに経営しようとする者がいる。②低金利により、当初集めた財産の運用を運用した経営が難しくなっている。③少子化、核家族化が進むと同時に家意識も希薄化しており、無縁化などの長期経営リスクもあるので、墓地経営は経営破たんのリスクが高いという認識を背景にしている。
だとすれば、公共の墓地が増えれば一番いいのだが、そこには財政の制約があるので供給が進んでいないのだろう。
予算の使途としては優先順位は低いし、近隣住民の反対も多そうである。
また、地方議会レベルになると先祖の墓がある既存住民の方が投票率が高く、また昔からの有力者である寺院の政治力というのも無視できないのかもしれない。
そうなると八方ふさがりだが、通達の出た平成12年からは時代も変化し(なにしろ「厚生省」の通達)には少なかったであろう納骨堂形式の墓地(しかも最近はハイテクらしい)も増えてきたり、樹木葬なども人気になってくる以上、一定の経営監視を義務付けながら民営化する、というのも一つの方策ではないかと思う。
販売収入に依存する収益構造も、「永代供養料」という建前をなくせば年会費を原則にすることもできるし、一時金については老人ホーム同様に法規制をかければいい。
無縁化したり、年会費が払えなくなったらときのためには、自治体が共同埋葬所をどこかに用意しておけばいいし。
また、一定の年会費を安定的に徴収できるのであればPFI化して自治体の財政負担を軽減することも可能かもしれない(ここまでは相当ハードルが高いだろうが)。
一方、信仰に篤い人は、今まで通り寺院の檀家として境内地の墓地を選ぶだろうし、そのためにも寺院は、より本来の布教・強化活動に力を入れるという宗教法人本来の姿に近づくことになるのではないか。
宗教法人の非課税問題という以上に大きな問題を含んでいると思う。