一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

細かい点の整理 (構造計算書偽造問題 その9)

2005-12-02 | あきなひ

構造計算偽造問題について、細かい点について自分の頭の整理のためにまとめたものです。
法律の条文の引用が多く、しかもかなり長いエントリになってますので、細かいことに興味のない方は飛ばしてください。

1 検査機関の義務について

建築基準法第77条の24 「指定確認検査機関は、確認検査を行うときは、国土交通省令で定める方法に従い、確認検査員に確認検査を実施させなければならない。 」をうけて、建築基準法に基づく指定資格検定機関等に関する省令」では

(確認検査の方法)
第二十三条  法第七十七条の二十四第一項 の国土交通省令で定める方法は、次の各号に掲げる確認又は検査に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一  法第六条の二第一項 (法第八十七条第一項 において準用する場合を含む。)の規定による確認 次に定める方法
イ 建築基準法施行規則 (昭和二十五年建設省令第四十号。以下「施行規則」という。)別記第二号様式の第二面 から第五面 までに記載すべき事項のほか、次の(1)から(12)までに掲げる事項が記載された図書及び(13)に掲げる図書をもって行うこと。

構造計算については13号で建築基準法施行令にそれぞれ規定する構造計算をした際の計算書によることとされています。
そこで建築基準法施行令 を見ると、たとえば

(柱の小径)
第四十三条  構造耐力上主要な部分である柱の張り間方向及びけた行方向の小径は、それぞれの方向でその柱に接着する土台、足固め、胴差、はり、けたその他の構造耐力上主要な部分である横架材の相互間の垂直距離に対して、次の表に掲げる割合以上のものでなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

というように規定されています。
この「国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合はこの限りでない」というのが「認定ソフトによる計算に従ったことを確認できればよい」という主張の根拠のように思われます。
しかし、僕は行政法の規定の読み方には詳しくないのですが(じゃあ、他の法律には詳しいのか、というツッコミはこの際置いてください)「国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合」という規定は、

①国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によっていること
②その計算が適正に行われたこと

を確認する義務を課しているように思います。

したがって、検査機関が計算に偽造があったことを見抜けなかったことに注意義務違反があった場合はやはり法令違反になるように思います。
特に、「こんな図面通ったら大変」偽装通報者、1年半前に指摘 の記事にあるように

「姉歯建築士の図面は「はりや柱が細く、鉄筋の本数も少なかった。どれも常識では考えられない水準だった」

というレベルであったとすれば、計算結果だけを鵜呑みにして構造図も確認しないというケースは、建築基準法違反になるのではないでしょうか?

2 行政の責任

最近よく引用されている最高裁判決 は指定確認検査機関が行った建築確認も自治体の事務である、というものですが、そこでも引用されている建築基準法第6条の2を見ると

(国土交通大臣等の指定を受けた者による確認)
第六条の二  前条第一項各号に掲げる建築物の計画(建築士法第三条 から第三条の三 までの規定に違反するものを除く。)が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第七十七条の十八から第七十七条の二十一までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。
2  前項の規定による指定は、二以上の都道府県の区域において同項の規定による確認の業務を行おうとする者を指定する場合にあつては国土交通大臣が、一の都道府県の区域において同項の規定による確認の業務を行おうとする者を指定する場合にあつては都道府県知事がするものとする。
3  第一項の規定による指定を受けた者は、同項の確認済証の交付をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その交付に係る建築物の計画に関する国土交通省令で定める書類を添えて、その旨を特定行政庁に報告しなければならない。
4  特定行政庁は、前項の規定による報告を受けた場合において、第一項の確認済証の交付を受けた建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは、当該建築物の建築主及び当該確認済証を交付した同項の規定による指定を受けた者にその旨を通知しなければならない。この場合において、当該確認済証は、その効力を失う。
5  前項の場合において、特定行政庁は、必要に応じ、第九条第一項又は第十項の命令その他の措置を講ずるものとする。

 とあり、自治体にも「建築基準関係規定に適合するかどうか」の確認まで義務付けているように読めます。
したがって、この場合の自治体の義務がどのレベルのものかは議論の余地があるとは思いますが、上記のように偽造が明らかにもかかわらず看過した場合には自治体にも責任は生じうるのではないでしょうか。

3 国の責任

国公認の構造計算データ、市販ソフトで容易に改ざん
(2005年12月 2日 (金) 03:10 読売新聞)

ERIや国交省の調査で、この公認ソフトが出力するデータは、「ワード」などのワープロソフトに張り付けて編集できることが判明した。編集によりエラーの文字を消し、大臣認定番号を書き込むことができ

るそうです。
検査機関や行政が主張するように彼らの業務が構造計算の確認でなく「大臣認定ソフトによる計算をしたことの確認」であるとすればなおのこと、少なくとも認定ソフトによることは確実に確認できるような仕組みになっている必要があるはずです。

つまり、そもそもこの「認定ソフト」は本来果たすべき機能を満足できる性能を持っていなかったわけです。これは1で引用した「国土交通大臣が定める基準」自体が不適切だったわけで、これ自体国の過失になりうるのではないかとも思います。

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