ここ数日俄然注目を集めている指定検査機関の日本ERIですが、構造計算書偽造問題が発覚してからしばらく経つというのに、会社のコンプライアンス態勢・リスク管理の
ネットに記事が載ったベースですが時系列に並べると
ERI社長、イーホームズ社長の「1年前に隠蔽」を否定
(11月30日(水)8時30分 日刊工業新聞)
日本ERIの鈴木崇英社長は同日、国土交通省で会見し「大変驚いている。隠蔽の事実はない。直ちに弁護士と相談し告訴する準備をしている」と語り、藤田社長の発言を否定
他人に噛み付く前に自分のガードを固めるべきではないか、と思っていたら
「不正知りながら放置」不備通報の業者、ERIを批判
(12月1日(木)3:10 読売新聞)
社長らはERIを訪れ、「単なる計算ミスではなく、作為的なものだ。他の物件も調べた方がいい」と強く対策を求めたが、その後、ERI側からは何の連絡も来なかったという。ERIは「応対者が、上司に報告する必要がないと判断したようだ。結果として被害を拡大させ申し訳ない」としている。
日本ERI、姉歯事務所関連物件の状況を公表
(12月1日(木)11時1分 ラジオNIKKEI)
日本ERIは1日、姉歯設計事務所が関与した16物件について、これまでに判明した事実を公表した。構造計算書の改ざんが認められ、建築基準法に満たないことが判明したのは・・・の3件。構造計算書の改ざんが認められたものの、建築基準法を満たしていることが確認された物件が2件。構造計算書の改ざんが認められ、現在精査中の物件が6件。明確には構造計算書の改ざんが認められず、建築基準法を満たしている物件が4件。構造計算書の改ざんの有無を含めて現在精査中の物件が1件となっている。
「これまでに判明した事実」って、事件発覚時から調査を始めていたらなぜまだ全貌が把握できないのか、と素朴に思います(後の記事を見ると11/22に既に役所に報告していたみたいですが)。「立会い」で一歩遅れてしまった以上、残る1件まで含めて全体を一気に公表したほうがいいような・・・
「国交省認定ソフトに欠点」 日本ERI指摘 耐震偽装
(2005年12月 1日 (木) 13:22 朝日新聞)
だから、他人の批判をする前に、自分のガードを固めないと・・・
(ソフトの欠陥問題は別のエントリで書こうと思ってます)
川口市のマンションも倒壊の恐れ 耐震強度偽装
(2005年12月 1日 (木) 21:24 朝日新聞)
日本ERIは1日、姉歯建築設計事務所が構造計算した埼玉県川口市のマンション「グランドステージ川口」について、計算書が偽造され、建築基準法の強度を満たしていないと、市に報告した。11月22日には「改ざんはなかった」と報告していた。
・・・
残った1件でなく、報告済みの物件というところが致命傷ですね。
これで全物件「再調査の再調査」ということでしょうか。
あまり他人の批判ばかりしていても仕方ないので、自らへの戒めを含めての教訓
① 顧客や社会への説明責任を果たすために、事態の全貌の把握を第一にする
② 内部調査は内部での隠蔽も念頭において徹底的に行う
③ 責任問題に対する弁明、他人への責任追及は緊急性(免許停止等)がない限り後回しにする
④ 後で覆されたり、異なった事実が出てくるような不用意な発言は絶対にしない
とまあ、あたりまえの事なのですが、マスコミなどに追い立てられる中では冷静な判断は出来なくなってしまうのかもしれません。
それから、こういうときは経営トップにも、事態の展開に一喜一憂したり一刻も早く事態から逃れたいとしてジタバタしたりせずに「腹の据わり」が求められますね。
自社の社員も含めて関係者がどういう思惑で行動するのか、ということについてどこまで考えるかなんだと思います。
瀬戸際になると「性善説」や「不可知論」という判断停止に逃げ込みがちなんですよね・・・