一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

やすらぎ、調査報告

2009-04-22 | あきなひ

株式会社やすらぎ(名証セントレックス8919)ですが、ひどいことになっています。
(過去の経緯は、「やすらぎ」の騒動やすらぎ、その後をご参照)  

すったもんだの末に組織された調査委員会の報告書の要旨が公開されました。
調査委員会のメンバーからして大株主の社外取締役が入っていたりするので最初からあまり期待はできないと思っていたのですが、それにしても調査の結果判明した事実と、それに対する調査委員会の結論の両方ともひどすぎます。  

調査委員会の調査報告(概要)および当社の対応について
(平成21年4月17日)  
まずは「調査報告書(要旨)」から。  

1 役員・従業員に対して支給された報奨金の執行役員への還流 
(調査対象とした事実)
平成21年2月上旬、一部役員・従業員に対して報奨金が支払われ、かつその際に、課長へ支給された報奨金から源泉所得税及び住民税相当額を控除した残額(92万円)が、執行役員によって回収されたとする件。 

(1) 取締役に(合計600万円)支給された報奨金の「報酬等」の該当性 
(2) 取締役に支給した報奨金に関する決算修正の必要性 
(3) 課長に支給され、執行役員によって回収されたことの適正性  

(1)(2)は取締役会で追認しているからOK、(3)は課長に返したからOKということですが、そもそもなんでこんなことが起きたのかについての調査はしていないようです。

2 人事・労務関係上の問題点 
(1) 桐生労働基準監督署による是正勧告 
(2) 従業員に対する給与引下げの合意の強要 

(2)については事実が確認できなかったとのことですが、(1)や1(3)とあわせると従業員にとっては「やすらぎ」どころではない会社のようですね。  

3 子会社である株式会社バリューローンによる事業融資の件 
(調査対象とした事実) 
①平成18 年12 月27 日に、子会社である株式会社バリューローンが、第三者であるZ 社(債務超過会社)に対して、社内の正式な審査手続を経ずに、不動産を担保に取って貸付を実行した、②当該貸付金の約定返済が延滞となった際に、同社社長が社内手続を経ることなく貸付条件を変更した、③当社は子会社バリューローンがZ 社に対して貸倒引当金の引当計上していない、とする件。
(1) 債務超過会社への融資の事実の有無 
 融資先である第三者(会社)は、融資実行当時の決算書上は債務超過状態にあったものの、 実際には実在しない債務が決算書上に計上されており、バリューローンもその事実を確認したうえ融資の実行に及んでいることから、当該融資は債務超過会社に対して行われたも のとは評価できない。 
(2) 担保価値を評価せずに行った融資の事実の有無 
(3) 貸付条件変更の際の社内決裁手続の有無 
(4)当社における子会社貸付(平成21年1月27日現在残高132百万円)の貸倒引当金未計上に対する評価  

(2)~(4)はいずれも「問題ない」とされていますが、そもそも「実際には実在しない債務が決算書上に計上」されているのをどうやって知ったのでしょう?また、そういう会社が融資先として適切とはとても思えないのですが(脱税で摘発されたり、計画倒産されたりしやしないのでしょうか)。  

4 須田忠雄(当時)代表取締役社長による会社預金の私的流用の件
(調査対象とした事実) 
須田忠雄(当時)代表取締役社長が、平成16年11月から平成17年6月にかけて合計7回にわたり98万円~5億円を、当社普通預金口座から須田忠雄個人名義にて送金手続を行った。この送金に当たり、預金出納帳の記載がなく、また仮払金・短期貸付金等の経理処理も行われていない、とする件。
(1) 不正流用の該当性
個別具体的な取引の内容については、当時の会社の入出金取引履歴を示す資料が欠落しており、現時点では5億円の入出金の事実以外は未確認である。 なお、①当該出金後ごく短期間(数日)のうちに、会社口座には同額の金員の入金がなされ、②5 億円の送金分に対しては、期間金利が加算されて返済されていることからすると、会社への実損害の発生は認められず、また取締役と会社との利益相反取引についても、事後的に取締役会にて追認すれば有効とされる。以上の点を総合考慮した上で、会社においては、取締役会での追認の可否を含めて、然るべき社内処分を検討する必要がある。  

「資料が欠落」って確か税法上は会計帳簿は7年間(うろおぼえ)は保管しなければいけなかったのでは?それとも伝票なしで入出金できるのだとしたらそれがそもそも問題です。 
これについては同日付けの「調査委員会の調査報告(概要)および当社の対応について」(続報)で「追認しました」と帳尻だけは合わせてますが、「追認すれば会社法上大丈夫」というレベルでなく、J-Soxはどこいった、そもそも上場企業としてどうよ、という次元の問題だと思います。

従業員には苛酷でも、オーナー社長には「やすらぎ」なんでしょうか。

5 他社との不動産取引に関する件
(調査対象とした事実) 
会社は、平成17年10月20日及び平成18年1月20日に、所有不動産25物件を他社に売却することにより、会社にとって利益相反取引を行うとともに、この売却によって平成 18年1月期において過大な売上高と営業利益を計上したとする件。  
(1) 他社との利益相反取引の該当性 
 ・・・当該取引時点で、他社の代表者は、会社の取締役ではないので、利益相反取引には該当しない。 
(2) 他社との不動産取引の概要
 ・・・会社の簿価を十分に上回る価額であるとともに、・・・不動産鑑定評価額を上回る価額にて売却が行われている。また、当該不動産に関しては、翌事業年度以降に会社が買戻しを行った事実はなく・・・「意見書」においては、この一連の売却は、当該他社に対する利益供与の可能性があるとしているが、かかる事実は認められない。 
(3) 前橋地方検察庁に対する告発事実との関連性 
 ところで今般、会社が平成18 年1 月の不動産取引を通じて、平成18 年1 月期決算における売上高と営業利益を過大計上したとして、旧証券取引法違反の嫌疑で当時の会社役員らを前橋地方検察庁に告発し、これが同庁に受理されたとの報道がなされた。この告発対象事実は、その内容から推察して、当調査委員会が調査の対象とした不動産取引と同一の事実を指すものと思料されることから、当調査委員会でも、本件の調査には慎重を期することとし、その法的評価についても、現段階においては結論を留保して、事実関係のみの指摘に留めることとした。当調査委員会としては、今後の検察庁の捜査動向も見極めながら、調査を継続して、然るべき判断を行うこととする。  

ここは形式論で逃げています。さすがに調査委員の中の公認会計士と弁護士は心中したくないのでしょうね。 

4月8日のリリース一部報道について では、「現在確認出来ている事実はありません。」と言っていたんですけどね・・・  

Ⅲ 再発防止に向けて  
今回、監査役から取締役会宛に意見書が提出され、これを端緒に当調査委員会が発足され調査開始に至ったのも、会社における「内部統制システム」が有効に機能していないことに由来するものと当調査委員会は考え、今後、外部専門家への委嘱を含めて「内部統制システム」の一層の整備・向上を図る必要があることを、取締役会に勧告するものである。  

あれ、調査の結果問題ないんじゃなかったのでしょうか?こう言うとしたら、改善すべき部分の指摘までするのが第三者委員会の役目なのでは?  

このような調査報告を受けての会社の対応「再発防止にかかわる改善措置について」はもっとずっこけます。  

①社内処分について
 調査報告の対象となった事項に関する管理職及びその関係者の責任について、当社は懲罰委員会を設置しました。メンバーは当社社外役員で構成されております。委員会は代表取締役に意見をし、代表取締役社長須田力が最終的な処分内容を決定することとしました。

前の社長で現社長とおそらく親戚(親子?)の須田忠雄氏が関係者の本丸なのに現社長に一任してしまっていいのでしょうか。  

②内部統制の強化
 調査委員会の調査報告(要旨)のとおり、今回監査役からの意見に基づき調査委員会による調査が開始されたのも、当社における「内部統制システム」が有効に機能していないことが主な原因であります。当社は、今後「内部統制システム」の一層の整備・向上を図る必要があることを認識し、早急に外部専門家への委嘱を含めて内部統制システムの整備を行っていくことを決定いたしました。

上場会社なんだから、今頃「内部統制システムの整備を行っていくことを決定」している場合ではないんですけど。

③コンプライアンス委員会の強化
 これまで、コンプライアンス委員会は3ヶ月に一度の頻度で開催しておりましたが、これを毎月1 回の開催に改め、緊急を要する場合には迅速に対応できる体制を整えました。また委員の構成についても、透明性を高め、社外の有識者の意見が適切に会社経営に反映できるようにいたしました。  

結局あまり変わらない、ということなのでしょう。 
今回の内部統制報告書はどう書くつもりなんでしょうか?  

以下に指摘されているような第三者委員会の悪い見本の典型例として、歴史に名を残すかもしれませんね。  

不祥事を起こした企業が、著名な有識者を揃えた第三者委員会の設置をアナウンスしたものの調査結果を公表せず、あるいはおざなりの調査結果に基づくありきたりの再発防止策を発表するに止まるような対応は、第三者委員会の名を利用したその場しのぎの「先送り」にすぎず、本来の危機管理の名に値しないと評価せざるを得ない。 
國廣正「「第三者委員会」についての実務的検討(上)」NBL No.903(2009.4.15)


「やすらぎ」どころかいいかげん「往生」させた方がいいのではないかと。


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