ガラスの御伽噺

ガラスの仮面、シティ-ハンタ-(RK)、AHの小説、BF
時代考証はゼロ
原作等とは一切関係ございません

YOU CAN‘T HURRY LOVE ~12~ ミッション・イン、、、インポッシブル

2017-07-19 10:14:09 | シティーハンター

 獠が焦りながらクーパーを走らせている頃、十条の工場の表と、工場裏の駐車場では、ほぼ同時発進で二台の自動車が都内に戻ろうとしていた。

一台は香のフィアットパンダ。助手席には岸本岬が乗車し、運転席に香。急発進させている。

そして、工場裏手の駐車場では若いチンピラが二人。相当古い改造されたシーマを急発進させていた。太すぎるマフラーからは爆音が聞こえてくる。

香は十条の研究室(といっても、ぼろい工場の二階の一室だが。)に潜んでいるであろう、ひょとしたら戦い慣れた連中かもしれない敵から岬を守る事を最優先し、チンピラはチンピラでやった事もないスパイ業がばれそうになり浮足立ってあたふたしている。

『ごめん、岬さん、いったん新宿に戻るわ!』

香は、必死な形相で車のハンドルを裁きながら岬に説明する。近くから妙に大きなエンジン音が聞こえてくるので、今はほとんど運転に集中しながらの逃避行とアクセルを踏みつける。

が・・・。

香のフィアットパンダが工場の敷地を左折しようと出かかった所で、猛スピードの改造シーマと接触しそうになった。

『ッキャア!!』

---キキキキキッ---

香のフィアットパンダの急ブレーキ音と岬の悲鳴が重なる。

--ブッシュッ・・。--

同時に改造シーマの助手席のチンピラがフィアットパンダのドアにトカレフで銃弾を一発打ち込んできた。

『く、くるんじゃねええー!!!』

完全に動揺しているチンピラは声も上ずりながら怒鳴ってくるが、初めて発砲したのか銃を持つ両手両腕はガタガタ震えていた。香たちを振り切って逃げようと咄嗟に発砲したようで、運転手も青い顔で前のめりになってハンドルを握っている。どうみても二人とも童顔で、下手したら成人もしていない少年のようにも見えた。

その様子で香は、十条の研究室に潜伏していた連中はずぶの素人である事に気が付くが・・・。

前を猛スピードで走って逃げていく改造シーマを追いながら、香は全く別な心配ごとがもたげる。こんな時でも、香の心配性は健在で。盗聴器でハラハラしながら様子を伺っている獠の事など全く眼中にない。

『香さ~ん、なんかピストル?あの人たちピストル持ってる~?!』

岬はこの状況に流石に驚いているが、思いのほか落ち着いている。隣でハンドルを握る香が凛とした態度を崩さないので必要以上に不安になっていないというのもあるが、元々の性格か。岬もなかなかの度胸の持ち主のようだ。

『あの、ドチンピラ!安全装置もついていない銃持ち歩いて!暴発したらどうすんのよ!しかも、あんな連中に銃持たせたまま放置できないじゃない!!』

香は中々縮まらない改造シーマとの距離にやきもきしながら、後部座席からしなびたゴルフバックを手繰り寄せた。

『これ、あけて!岬さん!』

『はい!』

先行して走る改造シーマの先はT字路になっている。都内に戻るなら右折しなければならない。まっすぐ走れば、解体途中の廃工場の敷地に突っ込む。

香はこの怪しい改造シーマの暴走は何としても止めないといけないと思っている。

『香さん、なんですか?これ??・・・もしかして?』

バズーカだが岬は当然見たこともない。でも、子供の頃から十条隆の傍をウロウロしていたので少年雑誌の戦場特集記事の写真で見たこともあり、それが銃器である事に気が付いた。

『岬さん、アクセルとギアチェンお願いできる?ハンドルはあたしが操作するわ!』

岬は香の行動を読み、反対の席から両足を運転席の下にもぐりこませ、斜めの体制の体のまま、シフトーレバーを握った。オンボロフォークリフトの運転で鍛えた変速テクニックの見せ所である。

同時に香は、片足をハンドルにひっかけると、もう片方の足でシートに体を固定させる。そして、半身を思い切り窓から乗り出した。

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『お、おい、香のヤツ何する気だ!』

『カオリがおとなしくしているはずないもんなあ・・・。』

猛スピードのクーパーの中では、獠とミックが盗聴器から聞こえる状況に冷や汗をかきながら音を拾っている。

すると・・・。

『『岬さん、大丈夫?』』

『『こっちは任せて!香さん!』』

女二人、二人羽織の運転は、即興と思えないほど息がぴったりあっている。

『香のヤツ、素人の女の子に何させてんだよ・・。』苦虫をつぶしたような獠の表情は、同時に諦めと薄ら笑いすら浮かんでいる。

『アハハ・・・、カオリはすごいなあ。』いつも100%香の味方のミックもさしがに呆れ気味で。両手を頭の後ろに組んだままリラックスポーズをとっているが。にや笑いを浮かべた顔のこめかみから、脂汗が一筋こぼれ流れた。

クーパーの運転手と助手席の男たちは、香に無謀な事をさせないよう止めたいがどうしようもない。ただハラハラして盗聴器の音を拾っている。

その頃、体を窓枠に固定させた香は岬からバズーカを受け取り発射体制に入った。改造シーマの行く手に打って、被弾を避けようとした改造シーマを廃工場の敷地に無理やり誘導する作戦である。

公道に穴があけば、冴子から苦情がくるし、そもそも香のこの手の作戦が思い通りに遂行された事も無いのだが・・・。

『『香さん、構えるコツあるんですか?』』

逼迫した状況の中ではあるが、機械好きの岬の興味深々の好奇心は膨れるばかりで。

『『え?(コツ??そんなの考えた事ないわ!)、え、えーと、鼓をもつように?』』

岬の真っ白い脳というキャンパスに、バーズーカ砲は能や歌舞伎の鼓の持ち方ですべきと記された。

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『OH・・・リョウがちゃん扱い方を教えないから・・・。』ミックは姿勢は保ったまま、シートから腰がずり落ちそうになっている。

『うっせえ!ミック!』表の世界に香を返すなら必要はないと、獠は香にろくに重火器の扱い方をレクチャーしてこなかった。しかし、さすがに今日は中途半端すぎた己の行いを反省する。

盗聴器からカチャカチャと機械音が聞こえた。香は安全装置の解除に手まどっているようである。

『『大丈夫ですか?香さん!』』 気になった岬が香に声をかけている。

『『へ、平気!行くわよ!』』

香はバズーカのトリガーを思いっきり引いた。

 

                         «続»

 

 

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