ガラスの御伽噺

ガラスの仮面、シティ-ハンタ-(RK)、AHの小説、BF
時代考証はゼロ
原作等とは一切関係ございません

懐かしくて その後 ~4~

2009-01-24 21:41:56 | ガラスの仮面

 金曜日の朝、水城は最悪だった。
遅刻ではないものの、二日酔いで始業時間ぎりぎりの出社の上、通勤ラッシュに巻き込まれボロボロになっている。

 「おはようございます」 

水城の声に室内の者たちは一世に振り向いた。
朝目覚めた時点でいつもより出社が遅れる事を秘書室に連絡していたものの、いつも誰よりも早く出社する水城が最後に出てくるとあって同僚の興味が集中する。
 おまけに、ただでさえ怠い水城に痛烈な言葉がとんできた。“新人でかなりの美人だが世慣れせず怖いものなし”と定評(?)のある有梨香が皆が聞きたくても言えない一言をあっさりかましたのだ。

 「水城せんぱーい、どうしたんですか〜?」

 完璧なメークに緩く巻かれた髪が若若しく輝き、今朝の水城には刺激が強い。能天気な有梨香の笑顔に、普段のようにさらりと切り返せなかった。同性は意外と苦手な水城である。

 「驚くの?私、結構あるのよ、こういうの。」

 口元をキリリとさせつつ口角を上げ、クールに微笑むと背中に同僚の好奇の視線を浴びながら社長室へ向かっていった。

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速水は出張で不在のため、社長室が広く感じる。今朝一番の飛行機でNYへ向かっていた。
帰社するのは
明後日である。

 主のいない机だというのに、届きものは普段通り続々と入ってくる。
社長業と会長職を兼務している為にやたらとが多いが、水城は苦もなく整理していった。 
 速水英介の秘書だった頃から既に社長職を任されても困らないほどに会社の事は熟知している。それに、自分以上にこの業務を遂行できる人間はいない。と、自惚れ抜きに自身を客観的に観る目も備わっていた。

 ・・・・もし、プロポーズを受け入れて彼のいる香港に行くのなら、は後任どうなるのだろう・・・・

 仕事人間の水城らしからず、退職のプランを考えると気が楽になる感じがした。

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新刊

2009-01-15 09:47:43 | ガラスの仮面

お誕生日おめでとうございます❤

  誰の事って・・・そりゃあ・・・
 ついでに47巻でもご活躍をお祈り申し上げます!!!


            2010年11月3日   GLASS
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懐かしくて その後 ~5~

2009-01-14 20:59:22 | ガラスの仮面

  「水城さん!」

 背後からかけられた軽やかな声に、思わず笑みがこぼれる。

  「こんにちは、マヤちゃん。どうしたの?」

 そう笑いかけながらマヤのそばに近づくと、そっとマヤの耳元に近づき周囲4に聞こえてならない言葉を
発する。

  “社長は出張よ❤” 

  小さな大女優はみるみる顔を赤くした。

  「もうっ、水城さん速水さんみたいですよ!!」

 小声で反抗する姿は可愛すぎる。マヤにしては最高レベルの抵抗だったようだが、全ての事情を知る水城に
は、厳しい道のりの末にたどり着いた故にある、オアシスのように見えた。

  
  平日の新大都ビル。社内外の人間が水城とマヤを横切り際に会釈していく。社長の敏腕秘書・大都の看板女優として。だが、誰も自分の社長と少女のような女優が恋人である事を知らない。知っているのは、本人達、マヤの同居人・水城・黒沼、・・・そして鷹宮家だけであった。


 社内はいつも通りで、なんのいざこざも感じられない。大きな業務提携反故の気配すらなかった。

  しかし・・・。
マヤの手前、“事”はあっさり進んだように見せかけていたが、“当事者”の間には息のつまるような時間が
消しようもない事実として横たわっていた。

                                  NEXT
 


    

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懐かしくて その後 ~6~

2009-01-13 13:59:57 | ガラスの仮面

  マヤと水城は久々の対面を喜ぶのもそこそこに応接室で手筈を確認すると、5階行のエレベーターに乗り込んだ。

  5階は主に数部屋のミーティングルームが備えられ、エレベーターを降りたそばには全面窓から光が優しく入る無料のコーヒーカウンターが設置されている。スタッフや打ち合わせで出入りする者たちはセルフでコーヒーやコールドドリンク、簡単な菓子類をつまむ事ができた。

  いつものマヤなら喜んで菓子をつまむ所だが、今日は勝手がちがう。

  紅天女で大喝采をあびて大都に所属したとはいえ、高校生の頃に迷惑をかけたスタッフはマヤの再契約を半信半疑でみている者もいるに違いなかった。自分が所属する事務所だというのに敵地にでも赴くような心持ちであった。
  

  ミーティングルームに入ると既に10名ほどのスタッフが着席してる。
 マヤは事前打ち合わせ通り、水城の後に続いて入室した。

  すると、途端に、中のスタッフの緊張感ある視線がマヤに注がれた。
 無理もない。

  大都の速水社長は断固とした決断でタレントを切り捨て、その後は何があっても拾い上げるようなマネはしない、というのが業界の一致した意見である。揺らいだ事はなかった。ましてマヤのように大スキャンダルで芸能界を追われた者には容赦なかったはずなのだ。

  スキャンダル女優を再び大都に招きいれるという前代未聞な事をさせた小さな女優を一同は不安さえ心に抱えて臨席している。紅天女は特別であり、また、絶対という社長の無言のメッセージのように見えるのだから致し方ない。
  ピリピリした圧力がスタッフの心を支配しているようだった。
  
  しかし、そんな空気を意に介さずといった感じで水城は挨拶を始める。こんな空気が流れる事は前もって十分予見できていた事だ。

  そもそも本来、第一社長秘書がこの場にいるのすら特別だ。
社長に監視されているのでは…、そんな危惧を抱くスタッフさえおり空気はさえない。

  紅天女は大きな反響を巻き起こし、社会現象といえるような和装ブームまで引き出して大都に多大な利益は与えたが、
マヤ自身のスキャンダルで傷ついたイメージは大都の中で伝説ようにくすぶっていたのである。

 『今日は忙しい中、お集まりいただいてありがとうございます。
  これから撮影が始まる大河ドラマ“戦国の女武将 弓姫”ですが、御周知のとおりTV局やスポンサーも命運をかけた壮大なスペクタルなものになる予定です。
  先日、みなさんには企画に携わっていただく為、配置転換の内示があったかと存じますが、これからこの北島と共に主にドラマ制作を通じて企画を盛り立てて参りたいと存じます。』

 ここまで一揆に挨拶すると、水城は緊張して立ったままのマヤに視線を向ける。

 『かつて、この北島は高校生の時に問題をお越し大都を離れた経緯もあり、スタッフの皆さんの中には不安を感じていらっしゃるかと社長ともども重々承知しております。』

 “社長ともども”という水城の言葉でスタッフは社長も同じ気持ちを持っていたという連帯感と、ここまで成功を収めながら少女時代の失敗を突き付けられるマヤに同情した。

 『これからも北島は芝居を通し名誉回復に努める所存でございます。どうぞ、みなさんのご協力の元、社を上げて突き進んでいきたいので宜しくお願い致します。』

  第一秘書の水城が“社を上げて”と言うなら、社長の速水の言葉も同然である。TV局・スポンサーのみならず大都も社命をかけての企画になる事は確実だった。

  最初、不安にかられていたスタッフも、プライドがくすぐられ、心に闘志の火が灯る。

  『さあ、マヤちゃん。』

 水城はマヤに挨拶を促した。打ち合わせ通りとはいえ、苦い過去に言及されマヤの顔は青ざめている。
だが、それが今後への最初の一歩だという事は誰よりも強く分かっていた。

  『初めまして。北島マヤです。今は絶対にこの芝居をやり遂げたいという気持ちでいっぱいです。でも、一人では何もできません。みなさんの期待や遣り甲斐は裏切らないと約束しますから、どうぞ力を貸してください。お願いいたします。』

  まっすぐに自分の言葉でスタッフに向き合い挨拶をすると、マヤは深く頭を下げた。
隣でマヤの挨拶を見ていた水城はさすがに切なくて唇をかんだが、頭を上げたマヤの表情は前だけを向いていた。

  “真澄様に今のこの子を見せたい”

  水城はまぶしげにマヤを見直す。

  スタッフの大きな拍手と声援の元、ここに‘チーム北島’は発足した。



    --------------------------------------------------

  日本でそんな事があった頃、速水は南フランスの避暑地を訪れていた。
 ここは欧米のセレブがあつまる有名な海沿いの避暑地で、湾に面してたくさんの洒落た別荘が立ち並んでいる。

   海沿いはヨットハーバーに造成され、ヨットの主を待つ物売りや雇われ操縦士たちがくつろいだ様子で
談話しており、一枚の絵画のような情景を醸し出していた。しかし・・・。

  速水はパリでの商談の帰りに訪れていたのだが、とてもこの場に沿うとは思えない格好で歩いている。

 グレーの三つボタンベスト付スーツに黒い革靴。彩り美しいこの街に、いかにもビジネスで来たと言わんばかのり格好だで、周囲の風景からは切り離されているように見える。
  とはいえ、長身で目を引く容姿は東西問わず健在だ。散策するマダム達は視線を一身に浴びせかけていた。

  そんな周囲の自分に対する興味も意に介さず、速水はヨットハーバーから北側を見上げると、小高い場所に赤い屋根と白壁の別荘を見た。

    周囲の建物と比較しても目を引くそれは、鷹宮家の別荘で紫織の滞在先だった。

  



























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