感染症内科への道標

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STIのレビュー

2022-02-03 | 臓器別感染症:泌尿器・産婦人科系・STD
論文名:Diagnosis and Treatment of Sexually Transmitted Infections: A Review
雑誌:JAMA. 2022 Jan 11;327(2):161-172.
著者名:Susan Tuddenham, et al.

淋菌
  • 女性における尿路性器感染の86.4%から92.6%は無症状の可能性
  • 男性における無症状の泌尿器感染症の割合は不明だが同等の可能性
  • 男女とも性器外感染症の53%~100%は無症状
  • 播種性淋菌感染症は、化膿性関節炎(81%)または腱鞘炎、皮膚炎、多関節炎(19%) を起こすことがある
  • NAATは淋菌の検出において,性器もしくは性器外部位で90%以上の感度と98%以上の特異度
  • 男性では初尿(1時間以上の禁尿後に採取した初尿の20〜30mL)が望ましいが、女性も初尿でもよい
  • 培養の感度は50%~85%であり、 適した性器検体は子宮頸管検体と尿道検体で、性器外部位や無症状では感度が低くなる
  • 症状のある男性ではグラム染色は安価で診断に99%の特異度と95%以上の感度と有用
  • 抗菌薬耐性遺伝子決定基を検出する検査は開発中
  • シプロフロキサシンに35.4%、アジスロマイシンに5.1%、セファロスポリンまたはゲンタマイシンに0.5%未満が耐性
  • 第一選択はセフトリアキソン500mgの筋注、 セファロスポリンが使用できない患者には、ゲンタマイシン5mg/kgの筋注とアジスロマイシン2gの経口投与を併用
  • 咽頭感染では、治療終了後1~2週間以内に培養またはNAATのいずれかで治癒を確認する 

クラミジア
  • 米国で最も一般的な届出制のSTI
  • 女性の割合は男性の約2倍だが、スクリーニングの推奨が女性に集中していることが一因
  • 女性の尿路性器感染の70%以上、男性の尿路性器感染の80%以上、直腸および咽頭感染の90%以上が無症状
  • 鼠経リンパ肉芽腫(LGV): L1〜L3血清型(抗原型)によって起こる。①感染部位に小さく無痛の一過性の潰瘍が出現。②2〜6週間後に大きく圧痛のある鼠径リンパ節が出現。リンパ節の約30%は自然穿孔。直腸炎は組織学的所見は炎症性腸疾患と区別がつかないことがある。③感染が未治療の場合に慢性リンパ節炎による瘢痕化→リンパ浮腫や象皮症
  • 感染の可能性があるすべての部位でNAATが選択される(LGVと関連する血清型の区別は困難でほとんどが臨床診断)
  • 第一選択:ドキシサイクリン100mgを1日2回、7日間経口。代替:1gのアジスロマイシンまたは500mgのレボフロキサシンを1日1回、7日間
  • 直腸クラミジアの有症状者は21日間、軽症もしくは無症状では7日間のドキシサイクリン

梅毒
  • 米国でも罹患率上昇 
  • 有病率はHIV感染者で高い
  • 二期梅毒では脱毛、腹痛、関節腫脹がみられることがある
  • 感染後約6週間以内に、患者の25%から60%が中枢神経系への播種を認めるが、症状が出るのは5%
  • 眼梅毒および耳梅毒も、感染のどの段階でも起こりうる
  • 直接検出法には暗視野顕微鏡検査、PCRや組織学検査があるが一般的ではない
  • 早期梅毒では12ヵ月後、後期梅毒では24ヵ月後に、治療が成功したことを示すために、抗生物質治療後に力価が少なくとも4倍低下することが必要
  • 神経梅毒を確定する単一検査はなく、CSF-VDRL、白血球数、タンパク質を解釈
  • ペニシリン製剤筋注が梅毒のすべての病期に対する第一選択: 早期梅毒には長時間作用型ベンザチンペニシリンGとして240万単位の単回筋注、 後期潜伏梅毒には240万単位を毎週連続3週間。代替:ドキシサイクリン100mgを1日2回、14~28日間。妊婦: ペニシリンが唯一の推奨薬。 神経梅毒、眼梅毒、耳梅毒:1800万-2400万単位の水溶性ペニシリンGを10日から14日間、毎日静注(セフトリアキソンの有用性データは限られる)
  • ドキシサイクリンによる梅毒予防は現時点では推奨されていない

マイコプラズマ・ジェニタリウム
  • 女性の7.9%、無症状男性の8.8%が尿路性器から検出されうる
  • 持続性尿道炎および再発性尿道炎を有する男性の30%から40%の可能性
  • 症候性直腸炎や咽頭炎の原因となるかは不明
  • 持続性非淋菌性尿道炎の男性、持続性子宮頸管炎の女性にNAATを推奨
  • ドキシサイクリン100mgを1日2回7日間経口投与した後、モキシフロキサシン400mgを1日1回7日間経口投与(ドキシサイクリンによる初期治療がその後の抗菌薬治療の効果を高める可能性がある)

性器ヘルペス
  • HSV-2は主に肛門性器に発症するが、HSV-1は口腔病変も引き起こす
  • HSV-1/2の既往はそれぞれHSV-2/1の新規感染に対する防御となる可能性 
  • 4~7日の潜伏期間、病変は平均16.5日から19.7日残存
  • 髄膜炎:HSV-1の16%、HSV-2の26%で起こりうる
  • 脳炎(HSV-1)髄膜炎(HSV-2)は初感染以降いつでも起こりうる
  • 病変部 NAATの感度は96.7%~100%
  • グリコプロテインGを抗原としたIgGが初感染後2週間から3ヶ月で検出(HSV-2では値が低い場合は特異度低い可能性)
  • IgM抗体は再活性化でも存在する可能性があり推奨されない
  • アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルは症状の治療と再発の抑制を目的として使用
  • 初感染では、病変が持続する場合、最初の10日間の抗ウイルス薬治療を1週間延長 
  • 症候性再発の既往がある妊婦では、妊娠36週からアシクロビルによる抗ウイルス抑制療法を検討

トリコモナス
  • 米国で最も流行している非ウイルス性STI
  • 40歳以上の女性でも有病率が同等か高い可能性があり、男性と性交渉を持つ男性やトランスジェンダー女性では感染が稀 
  • 女性の約85%、男性の約77%が無症状 
  • 女性の膣、子宮頸管、または尿サンプルに対してNAATを実施 
  • 膣検体の顕微鏡検査(ウェットマウント)の感度は51%~65%、 パパニコロウ塗抹標本の感度は61% 
  • 膣スワブを用いた迅速抗原検査の感度は約82%~90% 
  • 男性ではメトロニダゾール2gを単回経口投与、女性ではメトロニダゾール500mgを1日2回、7日間経口投与 
  • 持続感染では、メトロニダゾールまたはチニダゾールを1日2g、7日間投与を考慮
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