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地上破壊工作(ウルトラマン第22話)

2009-04-06 02:13:58 | 特撮:ウルトラマン
●「地上破壊工作」昭和41年12月11日放映 地底怪獣テレスドン登場
 制作第23話 放映第22話 脚本:佐々木守 監督:実相寺昭雄

 『ウルトラマン』で6本を担当した実相寺監督ですが、中でもこれは実相寺演出の特異性が最も顕著なエピソードです。そして6本中最もハードなストーリーで、音響設計でも緊迫感を盛り上げています。それもそのはずで、脚本に佐々木守氏の名前がクレジットされていますが、実際には実相寺監督自らが書いた脚本だそうです。
 前半は科特隊員を上半分、下半分はデスクの影という収まりの悪い構図で、モヤモヤと不安な気持ちにさせられます。構図だけで心理的に不安定にさせる「技」は見事です。加えて、本部の照明は真っ暗な中に科特隊員だけがライトアップされていて、ミステリアスなムードが満天です。

 パリ本部の要請でパリへ出向する命を受けたが、日本を離れたがらず「しかし、キャップ‥‥。」と言って困っているハヤタ。彼が日本を離れてしまったら、ウルトラマンが日本にいなくなってしまいますから‥‥。やはり怪獣は日本に多く現れていたのでしょうか。
 並んで立つ科特隊員の奥で、脚を組んで腰掛けているアンヌ・モハイム隊員。OPの『ウルトラQ』の文字の完成で流れる音が効果音として使われていますが、これも素晴らしい選択です。このエピソードでは、事態が悪化していく要所にこの音が流れ、緊張感が高まっていきます。

 ハヤタを見送り、ジェットビートルの発着場らしき場所で手を振る科特隊員。このロケ地はどこなのでしょう? ミニチュアの科特隊本部(このエピソードでは「パリ『本部』の名称が登場するため、「極東『支部』」と呼ばれています。)ビルの雰囲気にピッタリです。
 このエピソードでは、このシーンまで一切劇伴が流れません。しかも、ここで選曲されるのが、『ウルトラQ』からの流用の、たんぽぽ団の子どもたちの描写に使われたのどかな曲で、『ウルトラマン』でも子どもたちの描写に欠かせない「虹の卵-5」です。このほのぼのとした音楽の後だけに、事態が急速に悪化していく衝撃が増します。

 「黒い虹」というビジュアルのインパクトが秀逸です。これは脚本にあったものでしょうか。それとも実相寺監督独自のイメージ? 非常にSFマインド溢れるシーンです。
 「東京テレビセンター」「インターナショナル・テレフォン・サービス」という未来的イメージの架空の名称が良い味を出しています。

 東京テレビセンターの職員として丸山謙一郎さんがご出演されています。そして第19話「悪魔はふたたび」に続いて福山博士として福田善之さんも登場しますが、丸山さんは第19話「悪魔はふたたび」でも福山研究所の職員として福田さんと共演されています。
 ところで、福山博士って専門は何? 岩本博士も一の谷博士も、昔の特撮番組の博士って何にでも詳しいですネ^^;
 福山博士の東京テレビセンターでのシーンは、シーンが切り替わる時にカメラがパンします。このカメラがピタッと止まる技術と構図がカッコいいですネ。新しい映像表現を試みようとしている、才能豊かな若きスタッフの結晶が当時の円谷プロの魅力です。

 宇宙へハヤタの捜索へ向かうジェットビートル。再びここまで劇伴はありません
 その帰路、高空からアンヌ隊員を目撃するイデ‥‥。ちょっと無理があります‥‥^^;

 マルス133を手に、ハヤタの捜索をするイデ。アルトサックスの劇伴が流れますが、他のエピソードでは流れない曲(今のところナンバーは不明(^^ゞ)です。ここまでほとんど劇伴が使われず、緊張感が持続していたのに、この選曲には違和感を覚えます。
 イデはそこでアンヌ隊員に遭遇しますが、地底人の「退化した目」の表現はいかにも目の上に何かを貼り付けたのがバレバレです。現在の技術ならもっと良くなるのでしょう。しかしこの程度の特殊メイクだからこそ、小さな子どもも安心して見ていられたのも事実です。

 そしていよいよテレスドンの出現! ここでも全く劇伴が流されず、当時の「静かな深夜」に登場した雰囲気がよく感じられます
 このミニチュアステージでの撮影では、当時の放送コードぎりぎりまで照明が落とされたそうです。ギラギラと光るテレスドンの目、ジェットビートルのジェット噴射のアフターバーナーが引き立ちます。そして爆発の炎が効果的な照明となっていて、都市破壊の迫力が増しています。そういえば、ここまで派手な都市破壊のシーンは、『ウルトラマン』全話を通しても珍しいです。
 当時の受像機は現在ほど解像度が良くなかったので、このテレスドンのシーンはほとんど真っ暗に見えていたかもしれません。
 ミニチュアでは首都高速道、建設途中のビルの鉄骨など、特撮舞台の新しいシチュエーションの試みが意欲的になされています。

 ハヤタが拉致されている地下4万mの場所は世田谷体育館でのロケです。このシーンはセピア調のモノクロ映像になっていますが、当時はまだカラー受像機が普及していなかったので、この表現の効果はあまり無かったかもしれません。

 「『光の国』のスーパーマン」というナレーションに違和感を感じます。ここで「スーパーマン」という言葉を使って欲しくなかった‥‥。
 ウルトラマン登場では、飛行シーンでお馴染みの劇伴A-2が流れます。いよいよヒーロー登場!という盛り上がりですが、着地と同時にフェイドアウトします。その後のテレスドンとの戦闘シーンには再び劇伴は流れません
 それにしても、テレスドンは投げ技だけで倒されてしまうなんて‥‥。しかもカラータイマーは青いまま‥‥^^;

 EDには再び「虹の卵-5」が流れ、ほのぼのとした雰囲気で幕を閉じます。


  ●テレスドン

 「地下」を表すフランス語の「テレス」から命名されました。怪獣の命名法はなかなか奥が深いことがわかります。
 地下を掘り進むのに適していそうな鋭利で扁平な顔と太い腕、ナパームが効かないことで「スゴイやつだ」とキャップが驚愕の表情を見せるほどの強固な皮膚、不思議な形の背びれなど、形態に魅力が溢れています。また、体色が茶色一色なのもシンプルさを際立たせています。
 怪獣には珍しく、青い瞳もチャーミングです。
 鳴き声は「ギャンゴ」と同じ素材でしょうか。
 口から火炎を吐きます。この火炎はほとんどは合成で処理されていますが、背中越しのカットでは実際に火炎放射器が使われています。

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6 コメント

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Unknown (tirusonia)
2009-04-11 10:15:53
テレスドンは闇夜で光る鋭い目が魅力的。合成処理の火炎ですが迫力がありました。目玉が青いのは、地底怪獣という事もあり日光が苦手な外人の目を連想させます。再生テレスドンが科学特捜隊のスーパーガンで倒されてるけど、昼間で活動が鈍くなってたのが影響したのかも。
闇に光る眼 (自由人大佐)
2009-04-11 19:10:18
 あれ? 『ウルトラセブン』のサブタイトルになってしまいました(汗)。
 私は夜の街を破壊する怪獣が大好きです。爆発や燃え上がる炎、そして闇に光る怪獣の眼。これらが強調されて迫力が増すからです。「ギャオス」「機龍」などの映画怪獣も好きですネェ~。

 元のデザイン画では、「テレスドン」は身体から顔までは真っ直ぐなんですよネ。いかにも地中を掘り進むのに適していそうです。着ぐるみでも後頭部は自然な曲線になっていますが、「再生テレスドン」では不自然に折れ曲がっていて‥‥。同一固体の復活とは思えません(苦笑)。
元祖アンヌ隊員 (こーじ)
2009-04-13 23:15:29
 元祖のアンヌ隊員が登場するのですよね。
 サングラスを取ったら目の部分に貼り付けた
メイクは、奇面組でもネタとして使われてましたね。
 ただ大人になって見たときに地底人たちのアップを撮るのはいいのですが、ヤニなどで汚れた歯の地底人がいたのには‘こんな所アップするなよ’と思いました。

 ケリチウム磁力光波やゲルマタント鉱石などのマニアックな単語が多く出てきたのも印象深いです。

 テレスドンはゴモラと並んで好きな怪獣ですが、意外に投げ技だけでやられるのを見てガッカリした覚えがあります。
 確かウルトラマンとの戦いは赤坂でしたけど、場所が特定されているケースって珍しいですよね。
チョコロールパンに似てる (tanbada)
2009-04-14 08:38:33
テレスドンを見るといつもあのパンを思い出します

特に 尻尾部分

佐々木調が無い話ですが 実相寺6本のうち

ちゃんと怪獣が大暴れする話が有って良かった良かった!!


着ぐるみも新ウルトラマンでちゃんと成仏してるし・・・

Unknown (自由人大佐)
2009-04-15 00:04:53
>こーじさん

 キレイではない口のアップはやめて欲しいですネ(苦笑)。
 投げ技だけで倒されるテレスドンが不憫です‥‥。まぁ、初代レッドキングもそうなのですが、強そうに見えなくなってしまいます。


>tanbadaさん

 私はチョココルネを見ると「モスラ(幼虫)」を連想します。
 実相寺監督の担当したエピソードでは、怪獣は眠ってばかりの場合が多いですからネ‥‥。市街地で大暴れするテレスドンはカッコいいです。
重過ぎるのも弱点 (HN)
2018-08-02 22:18:19
テレスドンは重過ぎる体重が仇になったようですね。
打撃技よりもウルトラマンが投げ技を多用したのは
テレスドンの重い体重ゆえに
投げ飛ばされた際に自重でもダメージが倍増すること
を見抜いての戦い方だったと思いますね。

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