人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

県民性の本4.県民性なるほど雑学事典

2013年02月28日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
「県民性」なるほど雑学事典―出身県でわかる人柄から、食、方言、おもしろデータまで (PHP文庫) 「県民性」なるほど雑学事典―出身県でわかる人柄から、食、方言、おもしろデータまで (PHP文庫)
価格:¥ 500(税込)
発売日:1998-06

 この本は、日本博学倶楽部編で、県民性について書かれたものです。1998年に、PHP文庫としてPHP研究所から出版されました。なお、本書は、書き下ろしだそうです。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 正統派から個性派まで、なんでもお国自慢
  2. データが語る県民性
  3. 食文化に現れた県民性
  4. 地理・地名からみたユニーク風土記
  5. 方言から探る県民性
  6. 風習・行事に現れたお国柄
  7. 地方発おもしろトピックス

Hakugaku1998


県民性の本3.県民性の不思議

2013年02月27日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
「県民性」の不思議どこまでホント?―大阪人はデパートでも値切るって本当にホント? (KAWADE夢文庫) 「県民性」の不思議どこまでホント?―大阪人はデパートでも値切るって本当にホント? (KAWADE夢文庫)
価格:¥ 490(税込)
発売日:1996-12

 この本は、博学こだわり倶楽部編により、県民性について書かれたものです。1997年に、KAWADE夢文庫として、河出書房新社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 大阪人はデパートのバーゲンでも値切るってホントなの?
  2. 「マック」と「マクド」が物語る関東人と関西人の違いは?
  3. 広島県人がとことんソースにこだわる根拠とは?
  4. 図書館の数、日本一を誇る名古屋人は本当に読書好き?
  5. えっ、女の子の節句を鯉のぼりで祝う県がある?
  6. 「東京人は冷たい」なんていったい誰が言い始めた?
  7. 近ごろマルチメディアで世界進出をもくろむ県とは?

Hakugaku1997  


県民性の本2.出身県でわかる人柄の本

2013年02月26日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Sofue1993

出身県でわかる人柄の本―日本人の常識 (快楽脳叢書)
価格:¥ 1,325(税込)
発売日:1993-07

 本書は、元国立民族学博物館の文化人類学者・祖父江孝男[1926-2012]さんが、県民性について書いたものです。1993年に、同文書院から出版されました。

 なお、この本をベースとして大幅に加筆修正された『県民性の人間学』が、2000年に新潮OH!文庫として、新潮社から出版されています。

県民性の人間学―出身県でわかる人柄の本 (新潮OH!文庫) 県民性の人間学―出身県でわかる人柄の本 (新潮OH!文庫)
価格:¥ 610(税込)
発売日:2000-12

Sofue2000

 本書の内容は、以下のように、地域毎に書かれています。

  • プロローグ.県民性はたしかに実在する!
  • 北海道・東北地方の人柄診断
  • 関東地方の人柄診断
  • 北陸地方の人柄診断
  • 中部地方の人柄診断
  • 近畿地方の人柄診断
  • 中国地方の人柄診断
  • 四国地方の人柄診断
  • 九州地方の人柄診断
  • あとがき

 本書は、1971年に『県民性』(中公新書)を出版した祖父江孝男さんによる県民性のアップデート版という位置づけになります。


県民性の本1.県民性

2013年02月25日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
県民性―文化人類学的考察 (中公新書 (265)) 県民性―文化人類学的考察 (中公新書 (265))
価格:¥ 693(税込)
発売日:1971-10

 この本は、元国立民族学博物館の文化人類学者・祖父江孝男[1926-2012]さんが県民性について書いたものです。副題には、「文化人類学的考察」とあります。1971年に、中公新書265として、中央公論社より出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全3部全16章からなります。

Ⅰ.現代日本に生きる県民性

  1. 県民性をどう考えるか
  2. 県人会にみられる県民性の特色
  3. ノイローゼの発生率にみられる県民性
  4. 文章完成法テストの結果に現れた県民性
  5. 意外な面に現れた県民性

Ⅱ.県民性はどう作られるか

  1. 県民性・国民性などを形成する因子
  2. 社会構造の地域差

Ⅲ.県民性を診断する

  1. みちのくの性格
  2. 東国の人びと
  3. 北陸四県を考える
  4. 中部日本の分析
  5. 歴史で磨かれた近畿地方
  6. 変動の歴史をくぐった中国地方
  7. 四国四県を比較する
  8. 九州人
  9. 新しい革袋のなかの日本人

 本書は、恐らく、最初に『県民性』とタイトルが付けられた本だと思います。

Sofue1971


世界の人類学者45.アイダン・コックバーン(Aidan T. COCKBURN)[1912-1981]

2013年02月24日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Tacockburn

アイダン・コックバーン(Aidan T. COCKBURN)[1912-1981][スミソニアン国立自然史博物館のアーカイヴより引用]

 アイダン・コックバーンは、1912年5月30日に、イギリスのノーザンバーランドで生まれました。やがて、ダーラム大学医学部に進学し、1935年に医学士号と理学士号の2つを取得します。また、1937年には医学博士号を取得しました。さらに、1940年には王立衛生公衆研究所で公衆衛生のコースも修了しています。

 しかし、コックバーンに試練が訪れました。第二次世界大戦勃発により、1941年から1946年にかけて王立陸軍医療部隊に軍医として西アフリカ・エジプト・パレスチナで軍医として従軍したのです。1945年6月25日には、後に夫唱婦随でミイラの研究を行うことになる、イヴ・ジリアン・フェアハースト(Eve Gillian FAIRHURST)[1924-2003]と結婚しました。

 妻のイヴ・ジリアン・フェアハースト・コックバーンは、1924年3月3日にイギリスのアストレーで生まれました。1945年、にオックスフォード大学を現代語専攻で卒業しています。

 コックバーンは、復員後、1946年から1947年にかけてロンドン動物学協会で働きます。その後は、1947年にカナダ、1948年にアメリカを経て、1956年から1957年にかけて世界保健機関に所属し、セイロン(現・スリランカ)政府のアドヴァイザーとして勤務し、1958年から1960年にかけては東パキスタン(現・バングラデシュ)政府のアドヴァイザーとして勤務しました。ここでは、天然痘やコレラの撲滅に貢献したと言われています。

 1960年から1961年にかけては、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の客員研究員も務めています。1961年に、シンシナティとデトロイトで公衆衛生のポストを得て、1981年まで勤務しました。

 このように、世界中を旅したコックバーンですが、その経験は無駄になりませんでした。アフリカや中近東での従軍経験は、後にミイラを研究する際に役立ちます。また、セイロンや東パキスタンで、天然痘やコレラの撲滅に努力したことは、古病理学の研究に役立ちました。

 コックバーンは、1959年頃から、病気の起源や古病理学についての論文を書いています。1971年には、スミソニアン国立自然史博物館の客員研究員に就任し、ミイラの解剖を行い、その組織学的研究も行いました。1973年には、古病理学協会を中心メンバーとして発足させ、古病理学を学際的に研究する組織も作り上げています。

1980年に、コックバーン夫妻による編集で、ミイラに関する本『Mummies, Disease & Ancient Cultures』(ミイラ、病気と古代文化)が出版されました。

Cockburn1998

Cockburn & Cockburn(1980)『Mummies, Disease & Ancient Cultures』

 しかし、1981年9月18日、アイダン・コックバーンは、69歳で死去しました。死後一週間後には、前出のミイラの本が、1980年の医学書部門の最優秀賞を受賞しています。生涯に、約100の論文を残しました。妻のイヴ・ジリアン・フェアハースト・コックバーンは、一緒に創設した古病理学協会のニュースレターの編集を行い、夫のアイダン・コックバーンを助けました。2003年12月9日、妻のイブは、79歳で死去しています。まさしく、夫唱婦随で古病理学の発展に貢献した人生だと言えるでしょう。

*アイダン・コックバーンに関する資料として、以下の文献を参考にしました。

  • George J. Armelagos(1997)'Cockburn, T. Aidan (1912-1981)',"History of Physical Anthropology: An Encyclopedia"(Frank Spencer ed.), Garland Publishing, p.289

世界の人類学者44.テウク・ヤコブ(Teuku JACOB)[1929-2007]

2013年02月23日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

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テウク・ヤコブ(Teuku JACOB)[1929-2007][1990年に楢崎修一郎が撮影。Photograph taken by Shuichiro NARASAKI in 1990.]

 テウク・ヤコブは、1929年12月6日にインドネシアのスマトラ島アチェ州で生まれました。ヤコブが生まれた当時は、オランダ領東インドだった場所です。

 ヤコブは1950年にジャワ島のガジャマダ大学医学部に入学し、1956年に卒業しました。やがて、ヤコブに大きな転機が訪れま。1957年から1960年にかけて、アメリカに留学したのです。1957年から1958年にかけて、アメリカのアリゾナ大学で、また、1958年から1960年にかけてアメリカのハワード大学に留学し人類学を学びます。このハワード大学医学部解剖学教室には、著名な人類学者のウィリアム・モンタギュー・コッブ(William Montague COBB)[1904-1990]が在籍していました。コッブは、アフリカ系アメリカ人で、後に第15代アメリカ自然人類学会会長にも就任しています。アフリカ系で初めて会長でした。このコッブの影響で、ヤコブは人類学を生涯の研究テーマとすることにしたと言われています。

 1962年5月、ヤコブは、サンギラン遺跡の調査を行います。当時のインドネシアでは、ジャワ島のトリニール遺跡・ガンドン遺跡が有名でした。しかし、財政事情からガジャマダ大学があるヨクジャカルタから近いサンギラン遺跡を選んだと言われています。このサンギラン遺跡は、戦前、グスタフ・ハインリッヒ・ラルフ・フォン・ケーニヒスワルト(Gustav Heinrich Ralph von KOENIGSWALD)[1902-1982]が調査して、多くの化石人類を発見していた場所でした。

 その後、ヤコブはオランダのユトレヒト大学に留学し、グスタフ・ハインリッヒ・ラルフ・フォン・ケーニヒスワルトの指導を受けました。ケーニヒスワルトは、戦前、インドネシアに滞在して多くの人類化石を発見しており、戦後の1948年から1968年にかけてユトレヒト大学の古生物学教授として在籍していたのです。ヤコブは、ケーニヒスワルトの指導の元、1967年に古人類学の分野で博士号を取得しました。

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左からテウク・ヤコブ(Teuku Jacob)、フォン・ケーニヒスワルト(von Koenigswald)、ピーター・マークス(Peter Marks)、サルトノ(Sastromidjojo Sartono)[Semah・Semah・Djubiantono(1990)"100"のp.22より引用。]

 ヤコブは、サンギラン遺跡やサンブンマチャン遺跡で人類化石を発見しました。ヤコブが発見した主な人類化石は、以下の通りです。

サンギラン遺跡

  • 1963年:サンギラン10号(頭蓋冠・左頬骨)
  • 1963年:サンギラン11号(遊離歯)
  • 1964年:サンギラン13a号(頭蓋骨片)
  • 1965年:サンギラン13b(頭蓋骨片)
  • 1966年:サンギラン14(頭蓋骨片)
  • 1969年:サンギラン15b(上顎骨片)
  • 1969年~1970年:サンギラン16(遊離歯)
  • 1970年:サンギラン18a(頭蓋骨片)・18b(頭蓋骨片)・19(後頭骨)・20(頭蓋骨片)
  • 1975年:サンギラン23(脳の鋳型)
  • 1978年:サンギラン26(頭蓋骨片)と27(頭蓋骨片)

サンブンマチャン遺跡

  • 1973年:頭蓋骨

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ガジャマダ大学の化石人類収蔵庫にて[左:ファクロエル・アジズ(Fachroel AZIZ)・右:テウク・ヤコブ(Teuku JACOB)][1990年に楢崎修一郎が撮影。Photograph taken by Shuichiro NARASAKI in 1990.]

 国際的に、インドネシアの人類化石研究で著名だったテウク・ヤコブは、その後、インドネシアのフローレス島で2004年に発見されたホモ・フロレシエンシスを巡る国際的論争で、さらに有名になりました。この化石人骨を新種だとする研究者に対し、テウク・ヤコブは、小頭症という古病理だとする論文を発表したのです。また、この化石人骨を手元に置いて研究を行いましたが、レプリカを製作する際にオリジナルの人骨が破損したとして批判も受けました。しかし、その批判に対して、インドネシア人研究者をないがしろにし、外国人研究者だけで調査を行うという行為はインドネシア独立前の植民地時代と同じ状況だとして断固として闘います。2007年8月に、ヤコブはガジャマダ大学でホモ・フロレシエンシスに関する国際シンポジウムを開催しました。

 しかし、その国際シンポジウム開催後の2007年10月17日、ヤコブは77歳で死去しました。1980年代から煩っていた肝臓の病気が死因でした。この病気のために、ヤコブは日本のある大学病院で手術を受けており、何度か治療のために来日しています。ヤコブは、若い頃、インドネシアの独立運動や旧日本軍に対する戦闘も経験しました。前出のように、その後、ハワード大学医学部に留学した際には、ウィリアム・モンタギュー・コッブの指導を受けています。このコッブは、黒人で初めてアメリカ自然人類学会会長に就任した研究者で、様々な差別と闘っていた研究者でした。ヤコブは、その生き方も師匠のコッブをなぞったのかもしれません。

 私は、テウク・ヤコブ先生とは、1990年に初めてインドネシアを調査した時にお目にかかり、その後、2000年までほぼ毎年お会いしていました。その後も来日された際にお会いする機会がありました。非常におとないしい先生だという印象を持っていますが、内には、はかりしれない情熱をひめていたのでしょう。


言語人類学の本15.増補版・日本語とアイヌ語

2013年02月22日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Katayama1993

日本語とアイヌ語
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2004-07

 この本は、ジャーナリストの片山龍峯[1942-2004]さんが、日本語とアイヌ語との共通点について書いたものです。1993年に初版が出版され、1997年に増補版がすずさわ書店から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全28章からなります。

  1. アイヌ語との出会い
  2. アイヌとシサムの言葉
  3. 日本語にいちばん近い言語
  4. 日本語最大の謎
  5. 語源分析法
  6. 沖縄の言葉とアイヌ語
  7. 抜ける魂
  8. シンポジウム「日本語の祖語を探る」
  9. 「グリムの法則」と音韻対応
  10. 謎の言葉「タマス」を追って
  11. 「タマス」の意味を解く
  12. 「縄文語」の音」:祖形再建の試み
  13. 時間の経過と言葉のずれ
  14. 「縄文語」と「弥生語」
  15. 語根の音韻対応
  16. 「る」と「す」の起源
  17. 日本語に複数形はないか
  18. 動詞の構造を解明する
  19. 音韻対応の発見
  20. 日本語動詞活用形の起源
  21. 形容詞と名詞の起源
  22. 反対語の一致
  23. 不思議な言葉「あを(青)」
  24. 縄文紋様の謎
  25. アイヌ語を介して「道」「港」「通り」の関係を探る
  26. 「は」と「が」の起源
  27. 沖縄の地名とアイヌ語地名
  28. まとめ:「からだ」という言葉をめぐって

 なお、巻末には、「増補・縄文の謎に挑む」が掲載されています。 

 著者の片山龍峯さんは、1942年に東京で生まれました。その後、東京外国語大学ポルトガル・ブラジル語学科を卒業します。ジャーナリストや映像ディレクターとして活躍する一方で、片山言語文化研究所を主催しアイヌ語の研究を行いました。しかし、2004年に病気で死去しています。


言語人類学の本14.縄文語の発見

2013年02月21日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Koizumi1998

縄文語の発見
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:1998-05

 この本は、元関西外国語大学の言語学者・小泉 保[1926-2009]さんが、言語学から縄文語を探ったものです。1998年に、青土社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. 縄文文化:考古学の立場から
  2. 縄文人:人類学の立場から
  3. 日本語系統論
  4. 縄文語の復元
  5. 弥生語の成立
  6. 縄文語の形成

 本書は、言語学のみならず、考古学や人類学の成果も含めて日本語の起源を検討しており、大変、参考になります。

 著者の小泉 保さんは、1926年2月20日に静岡県で生まれました。東京大学文学部を卒業ご、1971年に静岡女子大学教授・1980年に大阪外国語大学教授・1990年に関西外国語大学教授と歴任しています。その後、2005年に関西外国語大学を退職しました。しかし、2009年12月18日に死去しています。


言語人類学の本13.日本人と日本語の起源

2013年02月20日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Yasumoto1991

日本人と日本語の起源
価格:¥ 1,427(税込)
発売日:1991-09

 この本は、元産業能率大学の言語学者・安本美典さんが、言語学から日本人と日本語の起源について探ったものです。1991年に、毎日新聞社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  • プロローグ.私の「新説」の内容と特徴
  • Ⅰ.縄文時代に、北から来た人々がいた
  • Ⅱ.縄文時代に、南から来た人々もいた
  • Ⅲ.「北方人基層説」からうけつぐべきもの
  • Ⅳ.新「北方人基層説」
  • Ⅴ.「南方人基層説」の検討
  • エピローグ.日本人の起源をめぐる討論

 本書は、言語学のみならず、人類学・考古学・人口学等、様々な分野を総合して書かれており、大変、参考になります。


言語人類学の本12.原始日本語と民族文化

2013年02月19日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Murayamakokubu1979

原始日本語と民族文化 (1979年)
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:1979-02

 この本は、元九州大学の言語学者・村山七郎[1908-1995]さんと元熊本大学の考古学者・国分直一[1908-2005]さんが、言語学と考古学から日本語の起源を探ったものです。1979年に、三一書房から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. 日本語系統と東シナ海文化の研究史
  2. 日本民族と日本語の原郷をたずねて
  3. 朝鮮半島における稲作文化と言語
  4. 原始日本語の成立:「倭の言語Ⅰ」・「倭の言語Ⅱ」
  5. 原始日本語の形成と琉球語
  6. オーストロネシア語族と日本の文化と言語

 なお、巻末には、村山七郎さんによる「稲荷山金石文について」が掲載されています。

 著者の村山七郎さんは、1908年に茨城県で生まれました。1942年から1945年にかけて、ベルリン大学で言語学を学びます。帰国後は、順天堂大学教授・九州大学文学部教授・京都産業大学外国語学部教授を歴任しました。しかし、1995年に死去しました。

 著者の国分直一さんは、1908年に東京で生まれました。京都大学史学科国史学を卒業します。その後、台湾大学副教授・水産大学校・東京教育大学・熊本大学教授・梅光女学院大学教授を歴任しました。しかし、2005年に死去しました。


言語人類学の本11.日本語の起源

2013年02月18日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
日本語の起源 (1973年) 日本語の起源 (1973年)
価格:¥ 819(税込)
発売日:1973

 この本は、元九州大学の言語学者・村山七郎[1908-1995]さんと元東京大学の民族学者・大林太良[1929-2001]さんが、言語学と民族学から日本語の起源について探ったものです。1973年に、弘文堂から出版されました。

 本書の内容

  1. 日本語系統研究の原則
  2. 日本語の問題
  3. 日本語と他の言語との比較
  4. 日本語比較研究の歩み
  5. 日本語の形成
  6. 総まとめ

 本書では、アルタイ語とオーストロネシア語に日本語の起源を求めています。

 著者の村山七郎さんは、1908年に茨城県で生まれました。1942年から1945年にかけて、ベルリン大学で言語学を学びます。帰国後は、順天堂大学教授・九州大学文学部教授・京都産業大学外国語学部教授を歴任しました。しかし、1995年に死去しました。

 著者の大林太良さんは、1929年に東京で生まれました。1952年に東京大学経済学部を卒業し、その後、フランクフルト大学・ウィーン大学・ハーヴァード大学で民族学を学び、東京大学教養学部教授・東京女子大学教授を歴任しました。しかし、2001年に死去しました。

Murayamaobayashi1973


世界の人類学者43.ジョセフ・シドニー・ワイナー(Joseph Sidney WEINER)[1915-1982]

2013年02月17日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Jsweiner

ジョセフ・シドニー・ワイナー(Joseph Sidney WEINER)[1915-1982][Walsh(1996)より引用]

 ジョセフ・ワイナーは、1915年に南アフリカのプレトリアで生まれました。やがて、南アフリカのウィットウォータースランド大学に入学し、人類学や解剖学を専攻して、1934年に理学士号を、1936年に理学修士号を取得します。当時のウィットウォータースランド大学医学部には、著名な人類学者兼解剖学者のレイモンド・ダート(Raymond DART)[1893-1988]が、1923年から勤務していました。ワイナーは、このダートの指導を受けて人類学を志し、1937年にイギリスへ渡英しました。

 ワイナーは、1940年にロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院に職を得ます。1942年には英国医学研究審議会に移籍しました。1946年、ワイナーはロンドン大学から博士号を取得します。後になりますが、1971年にはオックスフォード大学から理学博士号も取得しました。

 1946年、ワイナーに大きな転機が訪れました。オックスフォード大学の人類学者兼解剖学者のウィルフリッド・ エドワード・ル・グロ・クラーク(Wilfrid Edward Le Gros Clark)[1895-1971]により、オックスフォード大学の自然人類学担当の準教授に就任したのです。ワイナーは、骨だけを研究する環境を改め、人類生物学的手法を導入しました。しかし、クラークの退職と時を同じくして、1962年にワイナーはロンドン大学で環境生理学部門を統括し、1965年には環境生理学の教授に就任します。

 ワイナーの最も有名な研究は、1953年に発表したピルトダウン人を偽物と鑑定した研究です。この論文は、前出のクラークと年代学者のケネス・オークリー(Kenneth P. OAKLEY)[1911-1981]との連名になっていますが、当初から研究を主導したのは、ワイナーでした。実際、ワイナーは、1955年に『The Piltdown Forgery』を出版しています。

Weiner1955

Weiner(1955)『The Piltdown Forgery』

 ワイナーは、イギリスにおいて人類生物学を主導し、1958年には人類生物学会を、1967年には国際人類生物学会を創設しています。この動きは、1976年にオックスフォード大学に生物人類学部の創設ももたらしました。

 ワイナーは、1982年に死去しました。生涯で、約300の論文を残しています。

*ジョセフ・ワイナーに関する資料として、以下の文献を参考にしました。


人類進化の洋書・古典55.人類の自然史

2013年02月16日 | E7.人類進化の洋書:古典[Human Evolut

Weiner1971

Man's Natural History
価格:¥ 821(税込)
発売日:1971-04-01

 この本は、元オックスフォード大学の人類学者、ジョセフ・ワイナー(Joseph WEINER)[1915-1982]さんが、人類進化について書いたものです。原題は『The Natural History of Man』で、直訳すると「人類の自然史」となります。1971年に、Universe Booksから出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. Perspective
  2. Anthropogenesis
  3. The Establishment of the Genus Homo
  4. Adaptation and Variation: The Ecology of the Hunter-Gatherer Life
  5. The Last Hunters and the First Agriculturalists from Palaeolithic to Neolithic
  6. Towards a World Ecology

 著者のワイナーさんは、ピルトダウン人を偽物と証明した中心的役割を担った人類学者です。また、専門は古人類学のみならず、適応の研究も行っていたため、本書は通常の人類進化の本とは少し内容が異なります。


言語人類学の本10.日本語の源流

2013年02月15日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Kawamoto1980

日本語の源流 (講談社現代新書)
価格:¥ 561(税込)
発売日:1980-10

 この本は、元上越教育大学の言語学者・川本崇雄さんが、日本語の起源について南島語との関連を指摘したものです。1980年に、講談社現代新書594として、講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全5章からなります。

  • 第1章.比較言語学入門
  • 第2章.語彙と音韻
  • 第3章.文法の比較
  • 第4章.弥生文化と南島語
  • 終章.残された問題

 本書は、出版されてから時間が経っていますが、日本語の起源を南島語に求めている点で、人類学の成果と符号する点が多々あります。

 著者の川本崇雄さんは、1925年に群馬県で生まれました。その後、東京文理科大学を卒業後、上越教育大学教授として勤務した言語学者です。


言語人類学の本9.日本語の成立

2013年02月14日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
日本語の成立 (1978年) (講談社現代新書) 日本語の成立 (1978年) (講談社現代新書)
価格:¥ 410(税込)
発売日:1978-05

 この本は、元産業能率大学の言語学者・安本美典さんが、計量比較言語学の手法で日本語の起源を探ったものです。1978年に、講談社現代新書506として、講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全5章からなります。

  • 序章:問題はなぜとけないか
  • 1.ポピュラーな説への疑問
  • 2.音韻と文法とを比較する
  • 3.基礎語彙を比較する
  • 終章.探究のためのターミノロジー

 本書では、日本語の起源に4つの層があると指摘してます。第1の層は「古極東アジア語」・第2の層は「インドネシア語・カンボジア語」・第3の層は「ビルマ系江南語」・第4の層は「中国語」とされており、人類学の成果と同様に単純ではなく複雑であることが示唆されており、大変、参考になります。

 安本美典さんは、1934年2月13日に生まれました。京都大学文学部を卒業後、京都大学大学院文学研究科で心理学を専攻して修了しています。その後、旧労働省(現・厚生労働省)に勤務し、産業能率大学教授として2004年3月に定年退職するまで教鞭をとりました。

Yasumoto1978