人類学のススメ

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古病理学の洋書・古典1.病気の古さ

2010年05月28日 | J3.古病理学の洋書:古典[Palaeopathol
The Antiquity of Disease The Antiquity of Disease
価格:¥ 1,972(税込)
発売日:2010-01

 この本は、ロイ・ムーディー(Roy L. MOODIE)[1884-1934]が、古病理学について書いたものです。ムーディーは、アメリカにおける最初の古病理学者だと言われています。オリジナル版は、1923年に、シカゴ大学出版から出版されました。私は、古本屋で購入しましたが、最近、リプリント版が出版されたようです。

 このロイ・ムーディーは、イリノイ大学解剖学教授や南カリフォルニア大学歯学部解剖学教授等を歴任しています。シカゴ大学でサミュエル・ウェンデル・ウィリストン(Samuel Wendell WILLISTON)[1851-1918]の元で古生物学を学んでおり、この本も、ウィリストンに捧げられています。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 古病理学
  2. 古代のバクテリアと病気の始まり
  3. 骨の古さの古生物学的証拠
  4. 化石の古病理の確かな事例
  5. 化石人類の病気と受傷と外科の始まり
  6. 原始的な外科手術
  7. 原始的人類の古病理

 著者のムーディーは、人類の古病理よりも、古生物の古病理を多く記載したことで有名です。実際、南カリフォルニア大学に移籍してからは、カリフォルニア州ロサンゼルスのラ・ブレア遺跡出土哺乳類化石の古病理を多く記載しています。この、ラ・ブレア遺跡は、タール・ピットで、水を求めて来た動物・肉食獣に追われた草食獣・草食獣を襲った肉食獣・人類の骨が多く発見されていることで有名です。本書の第2・3・4章も、古生物の古病理について書かれています。

 残念ながら、ムーディーは50歳という若さで他界しています。もう少し長生きすれば、アメリカの古病理学も違った展開を見せたかもしれません。

Antiquity_of_disease

『The Antiquity of Disease』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)