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日本の人骨発見史18.根古屋遺跡(弥生時代):東日本最大級の弥生時代再葬墓

2014年02月22日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

 根古屋遺跡は、福島県伊達市(調査時は伊達郡霊山町)根古屋に所在します。この遺跡は、弥生時代の再葬墓で、霊山町教育委員会を主体とする発掘調査が、1982年10月から同年11月まで実施されました。報告書は、1986年に霊山根古屋遺跡調査団により、『霊山根古屋遺跡の研究』として出版されています。

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写真1.根古屋遺跡の発掘調査風景[霊山根古屋調査団(1986)『霊山根古屋遺跡の研究』より改変して引用]

 この遺跡では、25基の土坑から124個体以上の土器が出土し、100個体から200個体にものぼる焼人骨が出土しています。出土人骨の報告は、獨協医科大学(当時)の馬場悠男(現・国立科学博物館名誉研究員)・茂原信生(現・京都大学名誉教授)・阿部修二(現・獨協医科大学)・江藤盛治[1926-1999]等により行われました。

 馬場悠男等によると、人骨は900度以上の温度で焼かれており、収縮・変形・亀裂が著しい事から、白骨化した状態のものではなく、遺体の状態で焼かれたと推定されています。縄文時代から弥生時代にかけて、東日本では再葬墓が多く発見されています。多くは、遺体を一旦埋葬してしばらく経ってから掘り出して、白骨化したものをそのまま土器に再埋葬したり、あるいは白骨化したものを焼いて土器に再埋葬する場合が多いのですが、その点で、この根古屋遺跡出土人骨は遺体をそのまま焼いたという点が異なります。

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写真2.根古屋遺跡出土歯[馬場悠男等(1986)「第一編.根古屋遺跡出土の人骨・動物骨」『霊山根古屋遺跡の研究』より改変して引用]

 報告書の写真を見ると、歯の歯冠部が残存しています。もし、白骨化させたものを焼いた場合、エナメル質の歯冠部は熱で飛散してしまいます。この事から、遺体をそのまま焼いたために口腔内にある歯は十分な熱が伝わらずに残存したと推定されます。

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写真3.根古屋遺跡出土四肢骨[馬場悠男等(1986)「第一編.根古屋遺跡出土の人骨・動物骨」『霊山根古屋遺跡の研究』より改変して引用]

 また、出土した四肢骨は、捻れ・歪み・亀裂等が認められ、この事からも白骨化したものを焼いたのではなく、遺体をそのまま焼いた事が推定されます。

 なお、この根古屋遺跡では、指の骨や歯に穿孔した事例も知られています。

*根古屋遺跡出土人骨について、以下の文献を参考にしました。

  • 霊山根古屋遺跡調査団編(1986)『霊山根古屋遺跡の研究』
  • 馬場悠男・茂原信生・阿部修二・江藤盛治(1986)「第一編.根古屋遺跡出土の人骨・動物骨」『霊山根古屋遺跡の研究』(霊山根古屋遺跡調査団編)、pp.93-113

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