自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆バーチャルは悪の温床か

2008年03月15日 | ⇒トピック往来

  「かかってくる電話はセールスかオレオレ詐欺。電話は取りたくない」。こんな話を最近よく聞く。個人宅にかかってくる電話はまるで悪の温床のような言われ方だ。こんな状態が続けば早晩、個人が加入するNTTの固定電話はなくなる。そんな予感がする。

  15日の新聞各紙にこんな事件が報じられた。石川社会保険事務局は14日、野々市町の男性が約43万円の還付金詐欺の被害にあったと発表した。同事務局によると、12日午後1時半ごろ、男性方に「タナカ」と名乗る男から「過去5年間の医療費の返還金があり、昨年10月に案内のはがきを送った」と電話があった。男性がはがきを見ていないと答えると「返還金の期日が過ぎているのでATM(現金自動出入機)から振り込む」と言われたため、近くのATMに行った。そこで男から操作を指示され、口座から43万3097円を振り込んだという。手の込んだ、計算し尽された詐欺である。

  野々市町だけではない。全国で還付金をネタにした電話による詐欺が横行している。その被害はおそらく数億円に上っているだろう。こうなると「電話詐欺」は一つの産業である。誰でも簡単に参入できて、ビジネスモデルをつくればよい。交通事故の示談、還付金、痴漢の示談、架空請求詐欺、融資保証など。こんな素敵な商売はないと詐欺師たちはほくそ笑んでいることだろう。しかも、逮捕例をみると多くが20代や30代の若者である。

  もう固定電話は詐欺の温床なのである。固定電話は止めて、携帯電話にした方がまだましである。汗を流さず徒党を組んで悪知恵を働かせる社会。なんともいたたまれない思いだ。自然環境がCO2などで悪化しただけではない。社会環境も悪化していると実感する。電話だけでない。インターネットによる詐欺行為も目に余る。メールに何度も身に覚えのない料金請求をしてくる。そして、「裁判に訴える」と語気を強めて、数万円を振り込ませる。私の身の回りに驚くことに数人が振り込んだ経験者がいた。ということは日本全体でとてつもない金額だと想像する。

 もちろん日本だけではないだろうが、文明の利器といわれるモノに我々は自家中毒症状を起している。そして、風潮が「だまされるヤツが悪い」となっている。これはおかしい。これが人間が進化した発想だろうか、と思う。この延長線は、突き詰めれば「殺されたヤツが悪い」である。

  「こんな浅はかな文明やめよう」と異議を唱える人たちも出始めている。作家の柳田邦夫氏は「(テレビゲームは)手先の反射的動作ばかりが速くなり、前頭葉の中の、じっくり考えて判断したり、感情をコントロールしたりする部分がまるで発達しない」(著書「壊れる日本人」から)と訴えている。

 ⇒15日(土)夜・金沢の天気  はれ


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