自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★2013備忘録‐3

2013年12月30日 | ⇒ドキュメント回廊
  ことし1年はある意味で能登が注目された1年だった。3月31に能登有料道路が「のと里山海道」=写真=として無料化した。全長83㌔は信号機もなく、料金所という停止のバリアもなくなり、時速80㌔での走りは爽快である。ただこの無料化に関しては経緯がある。1982年の全線開通以降、1990年から石川県道路公社が道路を管理。総事業費625億円のうち、県から同公社への貸付金のうち未償還分の135億円を県が債権放棄するかたちで、無料化が実現した。つまり、116万県民が1人当たり1万1600円ほど負担したのである。

       「里山海道」から「和食」まで能登の豊富な資源

  5月には国連食糧農業機関が主催する世界農業遺産(GIAHS)国際会議が七尾市で開催された。20ヵ国600人が参加する会議では新たに日本から、静岡「茶草場農法」、熊本「阿蘇の草原と持続的農業」、大分「国東半島宇佐の農林漁業循環システム」が認定を受け、能登と佐渡に加えて国内5地域(サイト)となった。会議では「能登コミュニケ」が採択され、先進国と途上国のサイトが交流するという勧告が盛り込まれた。その流れをつかんで、金沢大学ではJICA草の根技術協力事業として、フィリピン・ルソン島のイフガオ棚田に、能登で実施している人材養成プログラムを移出することになった。「能登は一周遅れのトップランナー」と想いながら、毎週のように通っている。

  9月、能登から幕内力士が誕生した。穴水町出身の遠藤だ。秋場所の番付で昭和期以降で「最速」と注目を集めた、何しろ、春場所でデビューして、3場所でのスピード出世なのだから無理もない。同じ能登出身の力士に第6代横綱・阿武松緑之助(おうのまつ・みどりのすけ、1791‐1852)がいる。良く言えば慎重、立合いで「待った」が多く、江戸の庶民はじれったいことをすると、「待った、待ったと、阿武松でもあるめぇし…」と相手をなじった、という。遠藤には、こうした郷土の先輩のようにひと癖もふた癖もある関取になってほしい。

  12月、ユネスコの無形文化遺産に「和食文化」が登録された。世界の食文化では「フランスの美食術」「地中海料理」「メキシコの伝統料理」「トルコのケシケキ(麦かゆ食)の伝統」がすでに登録されている。和食文化の登録のポイントは、日本人の「自然を尊重する」という精神が和食を形づくったとのコンセプトを挙げている。大きく4つ。1つに多様で豊かな食材を新鮮なまま持ち味を活かす調理技術や道具があること、2つ目に主食のご飯を中心に汁ものを添えて魚や肉、豆腐、野菜を組みあわせた栄養バランスに優れたメニュー構成、3つ目に食器に紅葉の葉などのつまものを添えて季節感や自然の美しさを表現している、4つ目が年中行事とのかかわりで、正月のおせち料理や秋の収穫の祭り料理など家族や地域の人の絆(きずな)を強める食文化だ。手短に、ここで言うことのころ「和食」とは高級料亭のメニューではなく、家庭の、あるいは地域の郷土料理、能登で言うゴッツオ(ごちそう)なのである。そのポイントを能登の人たちはもってPRしてもよいのではないか。

⇒30日(月)午後・金沢の天気   くもり


  
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☆2013備忘録‐2

2013年12月29日 | ⇒ドキュメント回廊
  新しく世界農業遺産(GIAHS)サイトとして認定されたのは、「静岡の茶草場農法」(静岡県掛川市など)、「阿蘇の草原と持続的農業」(熊本県)、「国東(くにさき)半島宇佐の農林漁業循環システム」(大分県)、「会稽山の古代中国のトレヤ(カヤの木)」(中国・浙江省紹興市)、「宣化のブドウ栽培の都市農業遺産」(中国・河北省張家口市)、「海抜以下でのクッタナド農業システム」(インド・ケララ州)の6つだった。国連食糧農業機関(FAO、本部ローマ)、日本の農林水産省などが主催した「世界農業遺産国際会議」がことし5月、能登半島・七尾市で開催された=写真=。

        世界農業遺産を次世代につなぐプラットフォームとして

  国際会議には、FAOトップのグラジアーノ・ダ・シルバ事務局長をはじめ、農林水産省の副大臣など国内外の関係者600人(20ヵ国)が参加した。2年に一度の国際会議では冒頭の新たなサイトの認定だけでなく、「能登コミュニケ(共同声明)」が採択され、「先進国と開発途上国の間の認定地域の結びつきを促進する」ことなどの勧告が出された。

  このコミュニケを今後の能登にどう活かせばよいのか。「能登の里山里海」のGIAHSサイト認定(2011年6月)は、いわば、能登の暮らしそのものが国際的に高く評価されたということであり、能登地域の住民や自治体にとって大きな自信となっている。今回の世界農業遺産国際会議の成功は、その自信をさらに深めることとなり、その結果、能登地域では、世界農業遺産に対する地域住民や自治体の関心や、認定を活用した地域づくりへの機運や意欲が高まりを見せている。このチャンスを活かし、もう一歩踏み込んで、「能登の里山里海」を世界に発信できないか、金沢大学里山里海プロジェクトの代表、中村浩二教授と思案をめぐらしていた。

  アイデアがもたらされたのはことし5月上旬だった。JICA国際協力機構の北陸支部からの「草の根技術協力事業(地域経済活性化特別枠)」の案件だった。この事業は、地方自治体やNGO、大学、公益法人などの団体による、開発途上国の地域住民を対象とした技術協力を、JICAが政府開発援助(ODA)の一環として実施している。ここでいう「技術協力」とは、人を介した協力を通じて、知識・技術や経験・制度などを移転することを指している。これが我々の腑に落ちた。

  金沢大学の里山里海プロジェクトが能登で実施している「能登里山里海マイスター」育成プログラムは人材養成、つまり社会人教育プログラムなのだ。これを7年続け、これまで84人が巣立っている。次なる目標を、国際的な視点を持ちながら地域の直面する課題解決に取り組むグローカル(グローバル+ローカル)な人材の育成に置いている。

  このノウハウ移出を同じ世界農業遺産であり、世界文化遺産(ユネスコ登録)でもあるフィリピン・ルソン島のイフガオ棚田で実施できないか。実は、これはフィリピン大学の教授たちから請われていたことでもある。1月に同大の教授2人を能登に招き、里山マイスターの修了生たちと意見交換してもらった。自然と共生(生物多様性)の視点、地域におけるビジネスを実践している彼らの話に熱心に耳を傾けていた。この後、「この人材養成プログラムをぜひイフガオでやってもらえないだろうか」とオファーがあった。若者の農業離れが進むイフガオで、世界遺産の国際価値を活かして未来につなげる若者の人材教育が必要だと痛感した、という。

  能登とイフガオで人材養成プログラムを実施することの意味は、相互交流や技術協力、学術交流などさまざまにリンクする。世界農業遺産を次世代につなぐプラットフォームにできないか、ついそこまで期待を膨らませてしまった。5月30日、世界農業遺産国際会議の現地視察で同席させていただいた農林水産省の審議官にこの「夢」をこぼした。すると、同省の海外技術協力官の方を紹介いただき、アドバイスもいただいた。その後、6月25日に提案者が石川県、実施者が金沢大学という協力の枠組みで、「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」の申請にこぎつけた。9月上旬に内定の知らせがあった。

  いくつかの意味付けがあると考えている。大きくは国際会議のコミュニケの履行だろう。さらに、地域のグローバル人材の育成も含んでいる。国際的なネットワークづくりの端緒をつかんで、能登地域の活性化をはかることにもなる。「能登の里山里海」の豊かな価値を地域住民自身が評価し、夢ある未来を描き、地域の課題に取り組むマインドの醸成につなげ、世界につながる魅力ある地域の創造により、若者の都市部への流出を防ぎ、都市部からの移住の促進につなげていく。また将来、本事業が育成する人材が中心となり、自然と共生し、持続可能な社会モデルを実現し、世界へ発信する「国際協力交流センター」の機能が能登に生み出されることを期待したい。夢はさらに膨らむ。

⇒29日(日)午前・金沢の天気    はれ
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★2013備忘録‐1

2013年12月28日 | ⇒ドキュメント回廊
  寒波が来て、28日は金沢の自宅周辺でも5㌢ほどの積雪となった。その晴れ間には雪を頂いた松の木が青空に映えて晴れ晴れとした気分にさせてくれる=写真=。2013年を振り返れば、自身のこと、家族のこと、地域のこと、政治のこと、経済のこと、外交のこと、実にいろいろな展開があった。忘れないうちに書き留めておきたい。「2013備忘録」をシリーズで。

   あるアメリカ人女性の志(こころざし)

  ことし1月、知り合いのアメリカ人女性から「推薦状を書いてほしい」という相談の電話を受けた。聞けば、彼女はコロンビア大学の大学院に入りたいので推薦文が必要なのだという。私が彼女と初めて面識を持ったのは2010年だった。金沢大学が能登半島で運営している「能登里山マイスター」養成プログラム(Noto Satoyama Meister Training Program)に聴講生として彼女は入ってきた。このプログラムは、能登で生計を立てたいと願う若者たちの人材養成(Capacity building of Young Leaders)を行う。2年間のカリキュラムで、ここでは、環境に配慮した農林漁業や、山や海の自然資源を活用したビジネスを学ぶ。受講の可否を決める面接で印象的だったのは、彼女は能登を世界に向けて情報発信するいろいろなビジョンを持っていたことだった。

  彼女は2007年、中等教育のALT(外国語指導助手)として能登に赴任した。2009年からは、能登半島の先端に位置する珠洲市にある株式会社塩田村で雇用され、伝統的な産業である「塩づくり」を学ぶチャンスを得た。彼女はさっそく世界に向けた情報発信に取り掛かる。奥能登の揚げ浜式の製塩法は日本の重要無形民俗文化財に指定されている。しかし、英語での解説が不足していた。彼女は、同社のホームページでその資料や道具を英語で解説するコーナーをつくった。日本人ですら理解できないような道具の名前や機能について、作業に当たる高齢者から丹念に取材して、分かりやすく英語で解説した。さらに、プロモートビデオ『Agehama Shiki Introductory Video』を、自らナレーションを担当して英語版を完成させた。また、塩田をテーマにしたドキュメンタリー映画の制作に積極的に参加し、自らも出演した。

  私は、そうした彼女の意欲的な活動を評価し、2012年1月に金沢大学で教材として使うビデオ『GIAHS能登の里山里海』の英語版の作成協力を依頼した。この映像は、10分の解説映像だが、彼女は能登での体験をフルに生かして完成させた。英語を学ぶ学生たちにGIAHSを解説する際にこの英語版を活用、また、能登のGIAHSを調査に訪れる海外からの研究者にこのビデオを視聴してもらっている。その評判はとてもよい。ナレーションに能登を愛する気持ちがこもっているからである。 それは彼女の表現力でもある、

  2012年5月、彼女はナビゲーターとして、NHKワールドTVに出演。能登の伝統文化や貴重な民俗を世界に英語放送として発信した。彼女の夢は、地域の活性化のため、企業活動を改善できるような仕事に就くことである。 私は、彼女には、一次産品に二次(加工)、三次(サービス)の付加価値をつけ、景観や文化資源を環境ブランドとして展開していく事業センスが必要と考える。世界の事例からそれらを学び、その知見を広め、地域と世界をつなぐ橋渡し役として成長してもらいたいと考えている。そして、彼女はそのための努力は決して惜しまないだろう。現在コロンビア大学大学院で地域ビジネス論を学んでいる。

⇒28日(土)夜・金沢の天気   ゆき 
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☆時代のウインク

2013年12月14日 | ⇒トピック往来
  冬の仙台市をライトで彩る「光のページェント」を初めて見た。14日夜、訪れた。定禅寺通の660メートルのケヤキ160本に、60万球の発光ダイオード(LED)が一斉に点灯して浮かび上がる。ことしのテーマは、「あたたかな光が創り出す『よろこびと感動のステージ!』」。今月6日に点灯し、31日まで。

  この日の仙台市内は冬型の気圧配置に見舞われ、雪だった。市内は数センチの積雪だが、光と雪の競演ともいえる風情だ。点灯時間は17時30分から23時まで。じっと見ていると、18時ごろに一瞬ライトが消えた。周囲は消えてないので、照明機器の故障かと思った。すると1分くらいして点灯した。ウオーと歓声が上がった。光のページェントを見に誘ってくれた友人によると、これは「スターライト・ウインク」という一つの演出なのだそうだ。18時から20時の1時間おきに、1分間消灯した後に再点灯する。

  人は光が消えると一瞬不安になる。そこで再点灯すると感動に包まれる。言葉を付け足すと、暗闇という緊張と不安を感じるところに行き、そこで光を見るとなんともいえない安心感を覚えるという人間の心理を巧みに生かした演出だ。これを大がかりに都市の復興の仕掛けにしたのが、阪神淡路大震災犠牲者の鎮魂の意を込めると共に、都市の復興への希望を託し、1995年に始まった神戸ルミナリエだろう。

  近隣外交を含めて、不安定な時代に一瞬に光を与え、人々に勇気と感動を与えてくれる「時代のウインク」とは何か、仙台の夜のページェントを見て、雪道を歩きながらふとそんなことを考えた。

⇒14日(土)夜・仙台の天気   ゆき
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★イフガオ再訪-追記

2013年12月09日 | ⇒トピック往来
  イフガオの棚田には青年海外協力隊員2人が派遣されており、金沢大学の説明会があると聞いて訪ねてきてくれた。渡辺樹里さんは、棚田で食材として利用されるドジョウの養殖を、中島千裕さんは日本企業のCSRで設置された小水力発電を活かした地域開発に取り組んでいる。

        イフガオの地域開発に携わる2人の青年海外協力隊員

  28日20時過ぎにイフガオ州立大学のゲストハウスに到着した。渡辺樹里さんがまっていてくれた。たまたま、マヨヤオ町長あてに出した手紙の封筒に「金沢大学」の名があり、金沢大学のイフガオ入りを知った。渡辺さんは東京都まれ。水産高校と大学で7年間水産学を学んだ。2012年10月から青年海外協力隊員(任期2015年8月)としてイフガオ州マヨヤオ町の町役場の農業事務所に赴任した。同地では、稲作農家に対して「水田養殖の普及活動」に取り組んでいる。ドジョウ養殖の普及活動。これは、棚田における単一稲作農業が、農家の現金収入にならないことと、それに伴い、肉体労働を敬遠する若者が都市へ流出してしまう…という後継者問題の対応策として始めたプロジェクトだ。

  現在、イフガオ州では渡辺さんと中島さんの2人が活動している。協力隊の特徴は、現地の人たちと二人三脚で草の根レベルで活動していける、という点にある。今後、金沢大学のJICA草の根技術協力(地域経済活性化特別枠)「世界農業遺産(GIAHS)「イフガオの棚田」の持続的発展のための人材養成」に、協力隊員である渡辺さんたちが何らかの形で加わってもらうことで、プログラムがより現地に根差したものになる、そのような可能性を見出している。

  渡辺さんは学生時代から「途上国における環境保全型養殖」をテーマに取り組んでいる。「ドジョウ養殖」は、新たな産業の導入を自然と人の調和を壊さずに実践していくかという課題の解決のヒントになる。ドジョウ養殖はこれまで、フォンデュアン町のOTOP(One Town One Product)に指定され、州をあげて力を入れた開発プロジェクトだったが、技術が定着することなくお蔵入りとなっていた。しかし、ドジョウはイフガオ州の気候条件に適しており、フィリピンの他の土地では生産できない、いわばイフガオの特産品となりうるもの。北ルソンでは好んで食べられている。配合飼料を与えずに育てられるため、環境に悪影響を与えず、棚田の景観を崩さない。イフガオ州での生息数が激減していることから、販売されている魚の中で最も高値がついており、1㌔600ペソもする。目指すところは、「人々のライフスタイルと環境に適合・調和する養殖の導入」ではある。

  しかし、ドジョウ養殖が根付き、年月が過ぎたときに生産効率を上げることに注力し、人々が養殖池をつくって高密度養殖を始めてしまう可能性もある。これを未然に防ぐためにも、今から「SATOYAMA」という考え方を地域の人たちに地道に伝えていく必要がある。そこに金沢大学の人材養成プログラムの意義があると、渡辺さんは期待している。

※写真は、イフガオのドパップ相撲。日本の相撲と違うのは、片足で競い、両足を先に着いたら負け。

⇒9日(月)夜・金沢の天気
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☆イフガオ再訪-6

2013年12月04日 | ⇒トピック往来
  11月28日夜にイフガオ州に入った。マニラからチャーターしたバンで8時間余り。29日にはイフガオ州立大学長のセラフィン・ンゴハヨン(Serafin L. Ngohayon)氏を訪問。ンゴハヨン氏は、「金沢大学とのパートナーシップを確立したい」と述べた。同大学では地域の人々にエクステンションプログラム(生涯学習)を実施していて、今回のプロジェクト用にオフィスと研修室を提供したい旨の提案があった。

      フィリピン大学長「インターナショナルなプラットフォームに」

  イフガオ州政府とバナウエ、ホンデュワン、マユヤオの3町の行政の代表が参加して、プロジェクトの説明会を開いた。質問として「15人の受講生を選ぶクライテリア(基準)」、「プロジェクトの出口として、何をもって成功するのか。それは経済効果などの指標か」、「受講生に対するアローアンス(手当)はあるのか」、「受講が修了時にはどのようなスキル(技能)」、「3年のプロジェクト終了後の見通し」など。要望として、「15人の受講生は3町それぞれ5人ずつにしてほしい」との声が上がった。

  行政などの紹介でイフガオの住民15人が集まり、説明会を行った=写真・上=。プロジェクト代表の中村浩二教授が世界農業遺産(GIAHS)の概要、金沢大学が取り組む「能登里山里海マイスター」育成プログラムの内容をスライドを使って説明した。質問・意見の中で、「日本からの援助は期間が切れると人もいなくなる。継続性をもって実施してほしい」、「コミュニティーに溶け込んだ人をトレーニングしないと成果が還元されない」、「受講した若者はコースを修了することが経済的な利益につながるのか」、「小さな耕運機でよいので棚田に機械が導入したい」など。住民説明会で飛び交う言語はタガログ語ではなく英語だった。

  JICA草の根技術協力事業「世界農業遺産(GIAHS)『イフガオの棚田』の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」を実施するにあたっての、JICA、金沢大学、フィリピン大学オープン・ユニバーシティ、イフガオ州政府、イフガオ州立大学は一連の協議を行い、プロジェクトを実施することで同意が成った。29日にイフガオ州知事、イフガオ州立大学長の署名を=写真・下=、30日にはフィリピン大学オープン・ユニバーシティ学長の署名を得た。30日にフィリピン大学オープン・ユニバーシティ学長のグレイス・アルフォンソ(Grace.Alfonso)学長を訪問。アルフォンソ学長は、金沢大学の人材養成プログラムが、イフガオで実施されることで「インターナショナルなプラットフォームなる」と期待した。

⇒4日(水)夜・金沢の天気    くもり  


 
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★イフガオ再訪-5

2013年12月02日 | ⇒トピック往来
  イフガオに出発する前の11月27日と28日の両日、マニラにある政府機関・国際機関を訪問した。マカティ市にあるFAOフィリピン事務所長補のアリステオ・ポルツガル(Aristeo A.Portugal) 氏=写真・中央=を訪ねた。中村浩二教授が今回のJICA草の根技術協力の経緯を説明。ことし5月に能登半島で開催されたFAO主催のGIAHS国際フォーラム(閣僚級会議)の「能登コミュニケ」に盛り込まれた、先進国と途上国のGIAHSサイト間の交流促進に基づき前向きに取り組んでいると述べた。ポルツガル氏は、GIAHSでは農業における生物多様性や景観の維持、伝統文化の継承などが柱となっているので、ぜひ金沢大学とフィリピン大学、イフガオ州立大学が協力してイフガオの若者たちの人材育成に取り組んでほしい、と期待を込めた。

   政府機関・国連機関からアドバスを受ける

  JICAフィリピン事務所では、小豆沢英豪次長、佐々木まさき企画調査員、氏家陽子NGOコーディネーター、松田博幸、吉田徹の各氏らアドバイスを得た。事業に関して、人材養成の対象者の選定や、現地の教育実施に関するコスト分担などについて意見交換した。とくに、能登半島で実施している人材養成の教育プログラムをそのまま移転するのかとの質問があり、ステークホルダーミーティング(関係者協議)を積み上げ、フェイス・ツ・フェイスで現地のニーズに応じた育成プログラムを組み立てると実施側から説明した。フィリピン政府は、世界遺産や世界農業遺産の観光活用に注目しており、同政府の観光部局を訪問してはどうかとのアドバイスがあった。

  先住民族問題対策国家委員会(NCIP)統括局長マルレア・ムネツ(MarleaP. Munez)氏と懇談した。先住民族であるイフガオ族の権利と保護の観点からも、JICA草の根技術協力で人材養成プログラムが現地で実施されることは、生物多様性や地域資源を活用したビジネス、世代間の文化コミュニケーションを学ぶよい機会だ、と高評価。来年実施されるキックオフ・ワークショップへの協力の内諾を得た。外国団体が先住民族地区で教育・研究、企業活動などを行う際には、NCIPへの申請許可が必要となる。ムネツ氏は、先住民族地区でのABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)の重要性を強調した。

  環境天然資源省海外援助特別事業事務所(DENR-FASPO) を訪問(28日)。副所長のロメル・アベサミス(Rommel.Abesamis)氏は、「イフガオの今後の発展は人的資源の育成にかかっている。新たなJICAの草の根技術協力で人材養成が始まることを歓迎する」と述べた。今回のプログラムの遂行のために「必要ならば、FASPOのバギオ事務所を使ってほしい」との提案を受けた。

⇒2日(月)朝・金沢の天気   くもり

  
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