自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆「生前退位」という人間味

2016年07月18日 | ⇒トピック往来
   今月13日夜のNHKニュースを視聴していて、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を天皇が示しているとアナウンスがあった。このとき初めて聞いた生前退位という言葉に戸惑ったものの、天皇陛下のなんとも人間らしい言葉かと感動したものだ。

  天皇陛下は82歳、皇后さまは81歳で、両陛下は実に多忙だ。報道によると、去年皇居で要人や海外の来客と面会したのは270件、全国植樹祭など地方訪問も75回あった。天皇の公務に関しては、憲法の第六条と七条に列記されている。「第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。「第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。二 国会を召集すること。三 衆議院を解散すること。四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。七 栄典を授与すること。八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。九 外国の大使及び公使を接受すること。十 儀式を行ふこと」と。

   このほかにも、公務として新年一般参賀、講書始の儀、歌会始の儀、天皇誕生日祝賀、園遊会、国賓として来日した外国の元首や王族との会見、外国の首相、大使らに対するご引見(謁見)、拝謁、宮中晩餐、宮中午餐、全国戦没者追悼式、日本学士院授賞式、日本芸術院授賞式、日本国際賞授賞式、国際生物学賞授賞式、全国植樹祭、国民体育大会秋季大会、全国豊かな海づくり大会、宮中でも神嘗祭、鎮魂祭、招魂祭、新嘗祭(大嘗祭)など。こうした公務や宮中の儀式はテレビでも放送される。昨年5月、石川県小松市で開催された全国植樹祭で、お手植えの行事に臨まれた両陛下の丁寧なしぐさをテレビでみて、感動したものだ。皇后さまは地べたに膝を着かれて、苗木を植えられたのだ。

   今回の生前退位は、こうした国事行為や公務を先々務めが果たせなくなることを見据えての天皇陛下のご意向だ、と。責任感から出てくる、人間味あふれるお気持ちだと考える。

   現在の公務の負担を軽減する手立てとして「摂政(せっしょう)」は今すぐにでも可能だ。憲法第五条では「皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ」とある。天皇がご病気など理由に皇太子が摂政として天皇に代わり公務を執り行う(政を摂る)ことができる。

   天皇が生前退位にこだわるのであれば、皇室典範を改正して上皇(じょうこう)になることは可能だ。上皇は天皇を退き、死するまでの地位をいう。そうなれば、現天皇は「平成上皇」と称されることになるかもしれない。そのとき、果たして、上皇が皇位継承権を有するのかどうか、次なる難問が待っている。

⇒18日(祝)夜・金沢の天気  くもり
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★続・東京一極集中を問う都知事選が面白い

2016年07月12日 | ⇒トピック往来
   14日の東京都知事選の告示に向け、自民党都連の推薦を得た増田寛也氏(元総務大臣、元岩手県知事)には『東京消滅~介護破綻と地方移住~』(中央公論新社)という著書がある。若者が集まる首都東京だが、そのバックヤードでは大変なことが起きている。団塊の世代が75歳以上となってくる2025年度には、東京圏では75歳以上の高齢者が175万人増加し、医療・介護施設が元々不足している東京圏では将来、介護施設を奪いあうことになりかねない、というのだ。このとき、地方の介護人材(ホームヘルパーや介護福祉士など)が東京圏に集中すれば、まさに「地方消滅」に拍車がかかる。東京発のこの日本の危機を脱するために、地方への移住を含めた抜本的な解決策が必要というのが著書の内容だ。まさに、東京オリンピック後にやってくる「不都合な事態」なのだ。

  報道によると、増田氏は昨日(11日)都庁で記者会見を開き、正式に立候補を表明した。増田氏は「この4年間で都知事3人が代わり、都政は停滞、混乱している。東京都に必要なことは積み重なった課題を早く解決することだ」と意欲を述べている。その取り組む政策として、「三つの不安の解消」と「三つの成長プラン」を提示した。

  解決すべき不安として、①子育て②超高齢化社会③首都直下地震などの災害をあげた。待機児童を解消するための緊急プログラムも策定すると述べた、という。三つの成長プランは①東京オリンピック・パラリンピックの成功②観光の一大産業化③2020年の後の東京発展の道筋、を示した。冒頭で述べた、東京発のこの日本の危機を脱するための方策は確実にやってくる。その心の準備と政策の備えができるのは増田氏以外の立候補予定者では無理だろう。


  増田氏はこれまで、著書や講演で東京への一極集中の弊害について論陣を張ってきた。今回会見では、総務大臣時代に、東京など大都市に集中した法人事業税を地方に再配分する税制改正を手がけたことなどが記者から問われたようだ。これに対して「一極集中は東京にマイナス面がある。東京や地方が抱える問題を先頭に立って解決したい」と述べている。法人事業税は本社がある東京だけに使うべきではない、支店や工場がある地方にも再配分するべきというのは道理である。しかし、東京にいると地方の実情は見えないだろう。それを税制改正を通じて見るようにしたのは増田氏の功績である。

  これまで東京一極集中を批判的に論じてきたことについて増田氏は「東京が日本全体をけん引することで、地方と共に繁栄する真の共生社会を実現する」と述べた。これまでの東京都のリーダーにはなかった地方目線ではないだろうか。いまの東京都知事に必要なのは、近未来を見据えた東京圏と地方の共存の道筋を模索する発想だと思う。

⇒12日(火)朝・金沢の天気    はれ
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☆東京一極集中を問う都知事選が面白い

2016年07月08日 | ⇒トピック往来
   参院選も最終版、きょうは「最後のお願い」の日だ。ところが、ここにきて、東京都知事選(14日告示、31日投開票)の動きが俄然面白くなってきた。

  昨日8日午後には、俳優の石田純一氏が記者会見した。「普通の市民と政治がかけ離れている。野党統一候補なら、思いを力に変換できる」と野党各党に統一候補になることを条件に出馬表明した。タレントだけに、すでに出演しているテレビCMのスポンサーとの調整も進めているという。その会見の様子を民放テレビが中継していたが、面白かったは靴だった。上下黒のスーツにネクタイ、しかし素足に革靴という異例の足回り。条件付き出馬表明も突厥なら、そのいでたちもバランスを欠く。今の言葉でいえば、エッジが効いたいでたちなのだが。

  自民党では小池百合子氏は党の推薦が得られなくて出馬するという。昨日8日の日本外国特派員協会の記者会見でも「有権者に選んでいただくのは、自民党のアベノミクス一丁目一番地は女性の活躍なので、自信を持って手を挙げた」と。小池氏は英語が堪能らしい。そこで、2020年のオリンピックでは適材と一部で評価する向きもあるが、それでよいのか。東京都が抱える問題は、待機児童問題一つをとっても多難で根が深い。東京の問題点を分析して政策としてまとめて、都民に問うというスタンスならばそれでよいが、そのスタンスがまったく読めない。

  このままでは、政策論議よりも、人気度や知名度が勝敗を左右する「劇場型選挙」になるのではないかと想像していた。ところが、冒頭で「がぜん面白くなってきた」と述べたのは、元岩手県知事、元総務大臣の増田寛也氏が都議会自民党などの要請で、出馬が濃厚になってきたからだ。

  きょう9日付の新聞各紙は増田氏が選挙明けの11日に正式に出馬表明するという。増田氏といえば、「このままでは896の自治体が消滅しかねない。若者が子育て環境の悪い東京圏へ移動し続け、人口減少社会に突入する」(『地方消滅~東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)と言い続ける東京一極集中の是正論者でもある。実際の政策では、増田氏が総務大臣だった2007年、東京都の法人事業税の一部を国税に回し、地方に再配分できるように税制を改定。それ以降、都の予算が地方に回され、その額はこの9年間で1兆5千億円とする試算もある。

  こうした東京一極集中の是正論者を東京都民はどう評価を下すのか、あるいは増田氏はどのような新たな政策を打ち出して地方と東京がともに反映するバランス論を展開するのか、これが見ものだ。地域問題に取り組む地方の人たちにとってもなじみの深い人物だけあって、増田氏が出馬する今回の都知事には関心を寄せる人も多いことだろう。興味深い展開になってきた。

⇒9日(土)朝・金沢の天気   あめ
  



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★庭での出来事

2016年06月30日 | ⇒ドキュメント回廊
  庭に無数の穴を開け、ハチがブンブンと音をたてている=写真=。調べてみると、地面に穴を掘るハチのうち、黒くて細長い体つきをしているのがジガバチやアナバチの仲間。地下に巣を作るスズメバチは、少しズングリとした体型とある。やっかいなスズメバチかと思い、観察してみると体系はスリムなので、ジガバチやアナバチではないだろうか。

   この仲間は比較的大人しい種類が多いとされ、直接手でつかんだりしない限り刺される心配はない。現に飛び回る現場に分け入っても刺されなかった。たとえ刺されたとしても、ジガバチやアナバチの毒は攻撃用ではなく、幼虫のエサとなる虫を動けなくする麻酔薬程度なので、毒性は比較的弱いらしい。とはいえ、何かの拍子に刺されれば痛そうなので、ハチ駆除用のスプレーを購入して、プシュー、プシューと吹き付けた。

   数日してその場に行くと、ハチが数十匹固まりになって死んでいた。まるで団子にようなカタチをしていて、異様だった。ここからは推測だが、スプレーの駆除剤で死んだハチを仲間が食べに来た。すると、その死骸を食べたハチが死に、さらにそれを食べたハチが、というように何度か繰り返されたのではないか。駆除剤の効き目には驚いたが、その「死の連鎖」からポピュリズム(populism)という言葉を連想した。

   ポピュリズムを大衆迎合主義と解釈する向きもあるが、むしろ、民衆主義が当てはまるのではないだろうか。プロの政治家(政治エリート)や権力者が政策を立案して、国民を率いていくエリート主義と違って、民衆(有権者)の情緒的な支持を煽って、カリスマが民族主義的な政策を推し進める政治運動とも言える。

   ポピュリズムのシンボル的な事例として旧・ナチス政権がよく引用される。民衆に直接政策を問い、国民投票を何度も繰り返す。その結果として、とんでもない国家主義が醸成される。今回のイギリスのEU離脱もなんとなく、そんな匂いがする。テレビのインタビューで離脱支持者たちの「大英帝国の誇りが取り戻せる」「すべてを支配したがるEUにはうんざりだ」などの声が紹介されていて、ハッとした。こんな民衆の声はヨーロッパでは決して少数派ではないことが、今回イギリスが証明してくれたのではないか。次はひょっとしてアメリカなのか、などと。

   ところで団子のようになったハチの死骸からポピュリズムを連想した理由。ナチス政権がそうであったようにポピュリズムの末路は、民衆同士の憎しみによる死の連鎖だった。駆除剤をまいた本人が言うのも何か矛盾に満ちているが…。

⇒30日(木)午前・金沢の天気    くもり
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☆EU離脱ショックと参院選

2016年06月25日 | ⇒トピック往来

   イギリス発で世界に激震が走った。数字的には日本の東証株価は1286円(7.9%)下げ、アメリカ・ニューヨークのダウ工業株価も610㌦(3.4%)下げた。日本は時差と週末だったということもあり、国際情勢が株価に敏感に反応した。それほど、イギリスのEU離脱はショッキンだった。一方で、参院選に突入した日本、このイギリスのEU離脱が参院選にどのような影響を与えるのか考察してみる。

      昨日(24日)午前11時30分、スマホでニュース速報が入った。「イギリス172ヵ所の開票所の集計終了、離脱支持が51.2%でリ-ド」と。さらに15分後の速報で「円相場が2年77ヵ月ぶり1㌦=99円台」と。そして正午ごろからはアジア外国為替市場でイギリス通貨ポンドが急落、東証株価が1000円下げなど次々と。このとき、「日本は参院選どころではなくなった」との思いが脳裏をかすめた。と同時に、伊勢志摩サミットでリーマンショックの再来を「予言」し、消費税増税を再延期を打ち出した安倍総理の先読みはある意味で正解だったのかもしれない、と。このニュース速報を見た多くの有権者は「先行き不透明な、混沌とした世界情勢に政治も経済も外交も突入していく。ならば、現政権で踏ん張ってもうらしかないのでは」との思いを共有したのではないか。

    さらに、EU離脱ショックと参院選との関わりを具体的に読み解いてみる。25日付の新聞各紙の参院選関連の扱いは一面も社会面もほとんどない。テレビ各局もほとんどイギリスのEU離脱が占めている。午後4時20分すぎ、イギリスのキャメロン首相の辞意が伝わり、EU離脱に関するニュースの時間どりがさらに増えた。週明けもさらにEU離脱ショックの記事が新聞やテレビ、インターネットを覆うことになる。つまり、メディアのニュースや情報番組で参院選はローカル扱いになってしまうのだろう。

    参院選の焦点の一つとなっているアベノミクス、正確に言えば安倍政権の経済政策に関する評価に関しては、円高、それにともなう株価下落が示すように前途多難であろうことは想像に難くない。ただ、大きな動きがあった。午後9時15分すぎに、G7(先進7ヵ国)の財務相・中央銀行総裁会談による緊急の共同声明を発表し、「国際市場の流動性供給のための手段を用いる用意がある」と強調した。つまり、為替市場を含む金融市場の安定に向けての財政出動など共同歩調を確認したのだ。

    これは、伊勢志摩サミットで議長だった安倍総理が、2008年のリーマン・ショック並みの危機(クライシス)が再発してもおかしくないほど世界経済が脆弱化する前兆があると説明し、G7各国に財政出動などの実施を共同声明に盛り込んだことがベースとなっている。G7が足並みをそろえて経済混乱に素早く対応できる態勢と整えることができたのも、安倍総理の功績として評価されよう。

    私は5月27日付のブログで、「リーマン・ショック並みの危機」を持ち出した安倍総理の行動を「☆救世主かほら吹きか」とのタイトルで皮肉った。今となっては正解だったと率直に認めたい。今後アベノミクスがこの経済危機にどのように対応していくの見極めたい。ちなみに、サミットのとき、「いわゆるクライシスとまで言うのはいかが」と発言したのはキャメロン首相だったとされる。これは歴史の皮肉かもしれない。

    最後に結論を。イギリスのEU離脱が日本の参院選に与える影響、それは自民に有利に働くということ。その理由は世界の大幅な経済減速が懸念される中、危機管理として現政権に政権運営を託するしかないとの思いが有権者の共有されたものと判断する、からだ。

⇒25日(土)朝・金沢の天気   くもり

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★アップグレードの強引さに違和感

2016年06月12日 | ⇒トピック往来
  最近うんざりしているのが、PCを立ち上げると出てくるマイクロソフトが最新の基本ソフト「Windows10のアップグレード」通知画面だ。親しい友人から「Windows7が使い勝手がいいので、どうすればよいか」と最近相談を受けたこともある。身近な問題であり、世間でも問題になっている。

  苦情でよく耳にするのは、「Windows10へのアップグレードの通知画面が執拗に出る」「Windows10へのアップグレードの通知画面でバツ(×)を押したのにアップデートされてしまった」「勝手にアップデートされてしまい、それまで使用していたフリーソフトが使えなくなった」など。

  私のPCはWindows8なので、10をダウンロードしてもそれほど操作感に違和感はないかもしれないが、それでもアップグレードを見送っている。そもそも、いくら無料だからといって、アップグレード開始日時を自動的に決めて勝手にアップグレードが始まる。それで気に入らなければ1ヵ月未満であれば元のOSに戻すことは可能という姿勢が「強制的」だ。この問題は国会でも取り上げられたようだ。

  メディアによると、マイクロソフトは今月10日に、Windows10に関する記者説明会を開いた。マイクロソフト側の発表はWindows10の優れた点を紹介し、アップデートの通知の操作を説明するものだったようだ。これに対し、記者からは、「強制」問題に集中した。マイクロソフト側は「強制ではない。キャンセルする手順があり、アップデートしても1か月間は元に戻す手段を提供している」「通知のしくみは全世界統一で、日本だけ変更するのは難しい状況。日本語の表記がわかりにくいことは社内でも把握しており、改善の検討は行っている」

  ユーザーが腹を立ているのは、アップグレード通知画面でバツ(×)を押してもキャンセルにはならず、アップデートが実行されることだ。ほとんどのユーザーは、ウィンドーの右上にある「×」をクリックすれば、実行されずにキャンセルされるものだと考えている。しかし、マイクロソフト側では、バツ(×)は、その画面を閉じるというだけの操作で、キャンセルではないと主張していることだ。ここにユーザー側との決定的な認識の違い、ある種の「作為」を感じる。

  Windows10は優れた製品なのかもしれない。ただ、それを「無料だ。ありがたく思えよ」と言わんばかりに、強引にアップグレードさせることに違和感を感じるのだ。

⇒12日(日)朝・金沢の天気   はれ
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☆ヤエドクダミの可憐な花

2016年06月11日 | ⇒ドキュメント回廊
   昨日(6月10日)金沢地方気象台がアジサイの開花宣言を出したとテレビニュースで報じられていた。我が家でいま咲き誇っているのはドクダミの花、それもヤエドクダミだ=写真=。

   ドクダミの花は普通、一重で十字の白い花のイメージだが、ヤエドクダミは八重の花が咲く。3年前にわざわざ植えたものだ。日陰が繁殖によいされ、塀に接する影の部分をその場所に選んだ。葉のカタチも独特な臭いも、一重のどくだみと同じ。ただ、ドクダミの一重の花は、真ん中の黄色い部分(これが本当の花)が目立つが、八重は全体が真っ白に見えてなんとも可憐な印象だ。

   じつは、八重咲きの白い花びらのように見えるのは「総苞片(そうほうべん)」と言って、花びらではない。総苞片というのは、花を抱く葉なのだ。苞葉とも言われている。我が家の庭には一重のドクダミも咲いているが、このところ毎日、このヤエドクダミを眺めては悦に入っている。

   ドクダミ、ネット検索で調べると「毒痛み」と漢字で書いてるものもある。その生命力と繁殖力には驚かされる。地下茎を伸ばし、地上に芽を出して群生する。裏庭にスギゴケを繁殖させよと草むしりをしているが、一重のドクダミが顔を出して、抜いても抜いても根気よく生えてくる。この生命力を見ていると、人はドクダミには勝てないなと思ってしまう。葉はハートのカタチをしていて、かわいくもあるが、独特の臭気がある。

   においのもとになっているのがデカノイル‐アセトアルデヒドという精油成分。これがペニシリンをしのぐといわれるほど強力な殺菌作用があるらしい。黄色ブドウ球菌や肺炎球菌、白癬菌などの細菌や、ある種のウイルスの活動を抑える力があり、傷口の止血や再生にも効果があるとされる。小さいころ、「擦り傷にはドクダミの葉をこすればよい」と言われた覚えがある。古くから民間治療薬として用いられてきた。最近では、抗カビや抗菌作用に、さらに独特の臭いは白アリなどにも予防剤としても使われているようだ。

   そういえば、金沢市内の居酒屋でドクダミの天ぷらを食べたことがある。マスターに「においが全然しないね」と問うと、一度高温でゆがくとにおいが抜けると話していたこと思い出した。

   花言葉を調べると、「白い追憶」「野生」とある。その生命力から「野生」、そして、ツンとくるにおいが忘れられないから「白い追憶」なのだろうか。

⇒11日(土)朝・金沢の天気   はれ
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★大統領か役者か

2016年05月28日 | ⇒メディア時評
   ブログの開設から4000日余り、これほど一つの事柄に集中してアップロードしたことはない。それほど、今回のオバマ大統領の広島訪問は私自身にもインパクトがあった。単にアメリカの現職大統領が広島を訪問したという事実ではなく、その背後に脈々と流れる歴史の連続性というダイナミックなドラマを目の当たりにした実感が感動として伝わってきた。新たな歴史の証言者になったような、ちょっと浮ついた高揚感もあった。以下、自宅でテレビ中継を視聴した印象である。

  17時37分、オバマ氏が広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ、献花に臨んだ。安倍総理と並んで献花するのかと思っていたが、そうではなく、まずオバマ氏が献花し、その後に安倍氏が続いた。オマバ氏は頭を献花の後に頭を下げずに黙祷を、安倍氏は献花の後に頭を下げて黙祷をささげた。頭を下げての黙祷は日本では当たり前なのだが、アメリカではこれが原爆死没者に対する「謝罪」と映るのだろう。もし、安倍氏とオバマ氏が2人同時に献花し黙祷をささげたら、片や頭を下げる姿、片や下げない姿がくっきりと対比される。すると、映像的な印象度として、オバマ氏の姿は日本では良くないものになる。献花にあたっては、日本とアメリカで随分と打ち合わせ、計算されし尽くされたのだと中継映像を視聴しながら感心した。

  17時41分から始まったオバマ大統領の所感は実に17分間に及んだ。同時通訳では所感という表現だったが、これはもう堂々とした演説だった。注目したのはこの下りだ。

  Among those nations like my own that hold nuclear stockpiles, we must have the courage to escape the logic of fear and pursue a world without them. We may not realize this goal in my lifetime, but persistent effort can roll back the possibility of catastrophe.(わが国のように核を保有する国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない。私たちが生きている間にこの目標は達成できないかもしれないが、たゆまぬ努力が大惨事の可能性を小さくする。)

  オバマ氏が2009年4月にチェコ・プラハのフラッチャニ広場で行った核兵器の軍縮に関する演説より、内容がさらに深化しているとの印象だ。プラハでは核兵器廃絶へ行動するmoral responsibility(道義的な責任)があるとの表現だった。それを、今回はcourage(勇気)と強調している。道徳的な責任から、行動する勇気へとより前向き姿勢に転じてるのではないかと。

  18時06分、オバマ氏は同席した被爆者と挨拶を交わした。オバマ氏が肩を抱き寄せた人がいた=写真=。あの人は誰だろうと思った。中継番組のキャスターの解説から、被爆者であり歴史研究家の森重昭という方だった。79歳の森氏は、被爆死したアメリカ兵の捕虜について調査を続けてきた民間の研究者で、原爆の犠牲者に国籍は関係ないとの思いから、被爆死した12人のアメリカ兵の家族を捜し出して存在を特定し、原爆による死没者として広島市の名簿登録に動いた人だった。オバマ氏の演説の中で、the man who sought out families of Americans killed here because he believed their loss was equal to his own.(ある男性は、ここ(広島)で死亡したアメリカ人の家族を捜し出した。その家族の失ったものは、自分自身が失ったものと同じだと気付いたからだ。)の下りがある。「ある男性」とはアメリカ兵の原爆死没者慰霊碑の名簿登録に奔走した森氏のことだ。

  大統領は自らの演説の中で語ったエピソードのまさにその人物と会えた。幼いころに被爆し、アメリカを恨むのではなく、被爆者として人道的な活動にいそしんだ人がそこにいる。感極まったのだろう、そしてそっと肩を抱き寄せた。プラハではカッコイイ大統領の姿だった。ヒロシマでは深い人間愛をもった大統領の姿がそこに見えた。これも裏方が仕込んだ巧妙な演出と言えば、それまでかもしれない。それでも、その演技をさりげなくこなすのがオバマ大統領なのだろう。

  この後、原爆ドームの外観を見て大統領専用車に乗り込んだ。歴史的な訪問、平和記念公園に滞在した時間はおよそ48分間だった。


⇒28日(土)朝・金沢の天気   はれ   
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☆救世主かほら吹きか

2016年05月27日 | ⇒メディア時評
  26日開幕した伊勢志摩サミット(G7首脳会議)で気になったことがある。それは、安倍総理が、2008年のリーマン・ショック並みの危機が再発してもおかしくないほど世界経済が脆弱と説明し、G7各国に財政出動などの実施を促したことだ。この尋常ではない発言の意義を考えた。

 報道によると、安倍総理は討議に参考データを提出し、現在、世界経済がリーマン危機前に酷似していると指摘。その理由として、最近のエネルギーや食料など商品価格がリーマン・ショック前後と同じく55%下落。さらに、新興国の投資や経済成長も同じ落ち込みを示し、新興国から資金の流出が再び起きている。主要国の成長率見通しの下方修正が繰り返されるのも当時と同様だと説明し、「かなり世界経済のリスクが高い」と発言した。

  その上で安倍総理は、G7各国に財政出動を含む強力な政策の実施を促した。これに対し、ある首脳から「いわゆるクライシスとまで言うのはいかが」との意見も出された。ただ、「新興国の経済が厳しい」という基本的な認識は全員一致したという。財政出動をするという国は複数あったが、財政出動に言及しなかった国もあった。ただ、財政出動を否定した国はなかった。

  ここで気になるいくつの点がある。リーマン・ショックの震源地はアメリカだったが、今回の震源地はどこなのかという点である。それは中国なのか、と読者・視聴者は勘ぐってしまうが、その解説記事は見当たらない。

  もう一つ気になる点。常識で考えれば、財政出動は各国がそれぞれの判断で実行するもので、それをあえてサミットの場で合意を取り付けるというのは、まさに一歩踏み込んだ、あるいは一線を超えているではないだろうか。あえてこの話をG7で持ち出した理由として、リーマン・ショックは洞爺湖サミットが開催されて数か月後に起き、危機は予見されていたにもかかわらず防ぐことができなかった。議長国として同じ轍を踏みたくないと説明したという。

  一方で、安倍総理が伊勢志摩サミットであえてリーマン・ショックを持ち出した本当の理由は国内向けで、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げを再延期する理由としているのではないかとのうがった見方をしている記事もある。ただ、消費税増税を延期するための正当性を得るのにわざわざセミットの場を使うだろうか。

  議長国として同じ轍を踏みたくないとするほどに、間近に世界的な経済危機が迫っているということならば穏やかではない。クライシスが的中すれば「世界経済の救世主」、外れれば「世界のほら吹き」となる。「財政出動、アベ提案」の真価はあと数か月で定まるのではないか。

⇒27日(金)朝・金沢の天気   あめ
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★ギリギリの共同会見

2016年05月26日 | ⇒メディア時評

  伊勢志摩サミット(G7首脳会議)を前に、アメリカのオバマ大統領と安倍総理による首脳会談が始まったのが昨夜9時40分。そして両氏が共同記者会見に臨んだのは10時43分だった。会見が終了したのは11時32分だった。日をまたぐ直前まで記者会見を実施したのは、沖縄のアメリカ軍属の男による女性の遺体遺棄事件について、首脳として何とかサミットが始まる前にけじめをつけておきたかったのだろう。ある意味でギリギリ間に合ったと、政府関係者は胸をなでおろしているかもしれない。以下、共同記者会見の様子を=写真・「NHKニュース」=をテレビで見ていてのメモだ。

【沖縄のアメリカ軍属による遺体遺棄事件について】
  冒頭で安倍総理がこの事件でオバマ大統領に断固抗議した、と述べた。「身勝手で卑劣極まりない犯行に非常に強い憤りを覚える。沖縄だけでなく日本全体に影響を与え、日本国民の感情をしっかり受け止めてもらいたい」とオバマ氏に言い、実効的な再発防止策の徹底など厳正な対応を求めた。さらに、日本とアメリカで協力して沖縄の基地負担軽減に全力を尽くすことで一致したことを述べた。オバマ氏は、沖縄で起きた悲惨な事件について(安倍総理と)話し合い、心からのお悔やみと深い遺憾の意を表明した。アメリカは、日本の司法制度のもとで正義が下されるよう、引き続き全面的に捜査に協力すると述べた。

【日米地位協定について】
  安倍総理は、一つ一つの問題について目に見える改善を具体化し、結果を積み上げてゆく。日米の双方が努力を重ね、協定のあるべき姿を不断に追求したい、と述べた。さらに、犯罪を抑止し、県民の安全安心を確保する対策を検討するよう官房長官に指示したことにも言及した。

【サミットについて】
  安倍総理は、世界経済の持続的かつ力強い成長をG7で牽引しなければならないとの認識で一致した、述べた。オバマ大統領は、世界経済の力強い成長と、TPP環(太平洋パートナーシップ協定)を前進させる必要性について話し合った、と述べた。

【被爆地・広島訪問について】
  オバマ大統領は、広島訪問は第二次大戦で亡くなったすべての人を追悼し、核兵器のない世界という共通のビジョンを再確認し、アメリカと日本の同盟を強化する機会となるだろうと、述べた。また、安倍総理は、オバマ氏による広島訪問の決断を心から歓迎していると述べた。核兵器使用国(アメリカ)のリーダーが戦争被爆国で犠牲となった市民に哀悼の誠をささげるのは、核兵器のない世界へ大きな力となると述べた。記者の質問で、シカゴ・トリビューンの記者からハワイのパールハーバー訪問の可能性を問われ、安倍氏は「現在私がハワイを訪問する計画はない」と言い切った。

⇒26日(木)朝・金沢の天気   はれ時々くもり

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☆ヒロシマで

2016年05月17日 | ⇒メディア時評
  これまでブログで、アメリカのオバマ大統領による被爆地・広島訪問について触れてきた。それはオバマ氏が2009年4月にチェコ・プラハのフラッチャニ広場で行った核兵器の軍縮に関する演説を、ぜひ実行してほしいと願うからだ。プラハでの演説で感銘を受けた下りはこのフレーズだった。

 Just as we stood for freedom in the 20th century, we must stand together for the right of people everywhere to live free from fear in the 21st century.And as nuclear power -- as a nuclear power, as the only nuclear power to have used a nuclear weapon, the United States has a moral responsibility to act. We cannot succeed in this endeavor alone, but we can lead it, we can start it.

 So today, I state clearly and with conviction America's commitment to seek the peace and security of a world without nuclear weapons.
  (20世紀に自由のために立ち上がったように、21世紀にすべての人が恐怖から自由に生きられる権利のために一緒に立たなければいけません。核保有国として、核兵器を使用したことがあるただ一つの核保有国として、アメリカ合衆国は行動する道義的な責任を持っている。私たちは一カ国ではこの努力を成功させることはできないが、リードすることはでき、始めることはできる。  今日、私は信念として、アメリカが核兵器のない平和で安全な世界を追求すると約束する。)

  この演説の中で、「moral responsibility」という言葉が重いと感じている。「道義的な責任」との訳だ。核兵器を使用した国としての、二度と使わないために人類は何をすればよいか、それは明確だ。しかし、現実には核兵器廃絶の道は遠い。核弾頭は、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国のほか、インド、パキスタン、北朝鮮が保有を表明している。イスラエルは公式な保有宣言はしていないものの、核保有国とみなされている。一番多いロシアが7500発分とされる(時事通信社ホームページ)。

  さらに、アメリカはいまだに核兵器禁止に向けての法的措置については消極的であり、現在ジュネーブで行われている国連作業部会にも出席していない。さらに、核軍縮に逆行するような「核兵器近代化計画」を膨大な予算を使って継続中である(長崎大学核兵器廃絶研究センターのホームページ)。そこで、懸念されるのが、被爆地訪問だけに終わって、核廃絶の動きに向かうパワーにはなりえないのではないかということだ。

  逆転の発想で、現職のアメリカ大統領によるヒロシマ訪問は未来可能性を秘めているとも言える。第一に、現職のアメリカの統領が被爆地を訪れることにより、ほかの核保有国のリーダーにとって、被爆地訪問の敷居が低くなる。伊勢志摩サミットに出席するイギリス、フランスの首相、大統領をぜひ誘ってヒロシマを訪問していほしい。第二に、ぜひ「ヒロシマ演説」だ。演説という形態になるかは別として、その内容によっては、膠着状態に陥っている核廃絶への動きに突破口が開かれるかもしれない。核兵器のない世界へ、実現可能性の未来が拓かれることを願っている。

⇒17日(火)朝・金沢の天気  くもり
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★伊勢志摩からヒロシマへ

2016年05月11日 | ⇒メディア時評
  アメリカのオバマ大統領が被爆地、広島を訪れることが決まったと昨夜、テレビのニュース速報が流れた。5月27日の伊勢志摩サミット終了後に、安倍総理とともに広島を訪問する。任期の最終年で今回を逃せば、現職のアメリカ大統領の広島訪問の実現は難しいと、日本とアメリカの両政府は水面下で相当調整を進めてきたようだ。2009年4月、プラハでの演説でオバマ氏は「核兵器なき世界」を提唱し、ノーベル平和賞を受賞した。唯一の戦争被爆地の訪問は7年の歳月を経てようやく実現することになる。

  その予感はあった。GWに伊勢志摩を旅行した折、ガイドしてくれたタクシー運転手が「6機分のヘリポートがすでに設置されている」とサミット会場(志摩観光ホテル)の周囲の様子を話した。そのとき、「なぜ6機分もいるのか」と思ったが、今回のニュースでピンときた。ひょっとしてオバマ大統領だけでなく、他の首脳も同行するのではないか、と。G7なので本来7機分だが、ヘリポートは平場があれば仮設で増やせる。一斉にヒロシマに向けて飛びつ立つヘリの姿は「絵になる」かもしれない。

  それにしても、オバマ氏の決断は急だったのだろう。安倍総理が昨夜(10日)総理官邸で報道各社のインタビューに応じたのは午後9時4分、その直後にニュース速報が一斉に流れた。それまで総理は6時31分から東京・赤坂の料理屋で会食をしていた。8時30分に官邸に戻ってきた。その30分後にインタビューに応じた。

  急だったというのは安倍総理がインタビューしている様子がニュースで流れていたが、総理に向けられたテレビ局のマイクは2本しか映っていなかった。テレビ各社の中でこの慌ただしい動きを察知して総理インタビューに間に合ったのは2社だけだった。その後、ホワイトハウスでアーネスト報道官が記者会見で大統領の広島訪問を発表したのは日本時間で午後9時30分ごろだった。ということは、ホワイトハウス側が日本側にオバマ氏の決断を正式に知らせたのはアメリカ側の会見のわずか30分余り前だったことになる。

⇒11日(水)朝・金沢の天気   風雨

  
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☆伊勢志摩の肝(きも)-続

2016年05月06日 | ⇒ドキュメント回廊
 伊勢志摩に来て、海女たちの存在感がとてつもなく大きいと初めて知った。海女は全国でおよそ2000人、そのうち志摩760人、鳥羽250人と半数を占める。それだけの数のプロが存在するということは生業(なりわい)として成立しているからだ。ちなみに能登半島・輪島の海女は200人だ。

   ジェンダーを超えるプロ意識、海女文化をユネスコ無形文化遺産に

  かつて鳥羽では真珠養殖にとって、海女はなくてはならない存在だった。海底に潜ってアコヤ貝を採取し、核入れした貝を再び海底に戻す作業が仕事だった。赤潮の襲来や台風の時には、貝を安全な場所に移す作業に従事した。海女の潜水技術がなければ御木本幸吉の養殖真珠の成功はありえなかった。現在は養殖技術が発達し、海女の作業の必要性はなくなったが、ミキモト真珠島では伝統的な海女の潜水作業が1時間ごとに実演されている=写真=。単なるショーではなく、「真珠養殖の功労者」を記念するイベントとして紹介している。

 海女とアワビの関係も重要だ。海女がとったアワビは、伊勢神宮の御料鮑調整所(鳥羽市国崎)で熨斗あわびにとして調整され、神宮の祭礼に献上される。連綿と二千年の歴史を刻む。アワビが食材の最高級ブランドとして日本人の間で定着しているのも、食感もさることながら、この神饌としての歴史的価値が背景にあるのは言うまでもない。志摩観光ホテルの英虞湾を望むレストランで、フランス料理のメインデッシュとして「志摩産黒飽ステーキ」が堂々とテーブルに置かれる。

  数千年にわたってアワビを守り育て、生業(なりわい)の糧としてきた、海女たちのたゆまぬ営みが、国際的にも注目されている。海女文化を、ユネスコの無形文化遺産として登録を目指す動きだ。評価すべき点はこれまで述べたように「素潜り潜水という技術を身に着けた自立した女性の職業として後継者がいること」「女性の職業として数千年の歴史を刻み、日本の食文化と風習、神事に影響を与え、いまも寄与していること」「同じ海域で漁でありながら数千年も魚介を絶やさない資源管理の知恵」「自然と共生する海女たちが漁村というコミュニティの中心になっている」ことだろう。

  訪れた相差海女文化資料館、その近くの願掛け社「石神さん」で見かけた海女たちは声が大きく、笑い声が絶えず、体の動きが活き活きしていた。当地の海女言葉、「夫(とうと)ひとりを養えんで一人前の海女とは言えん」にジェンダーを超えて、人間としてのプロ意識や生きる力強さを感じる。海女の生業が数千年の歴史を刻む人類の職業モデルとして、ユネスコ無形文化遺産に登録され、国際的に顕彰されることを切に願う。

⇒6日(金)夜・金沢の天気    くもり
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★伊勢志摩の肝(きも)-下

2016年05月05日 | ⇒ドキュメント回廊

      今月26、27日に開催される伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)まであと21日。歓迎ムードは盛り上がっている。近鉄鳥羽駅前の広場では、「歓迎G7」の看板とともに、ベゴニアやマリーゴールドなど使って、赤や青、黄色など花の色分けでサミット参加国の国旗をあしらった花壇が設置されている。随分と工夫を重ねたディスプレイだと感心する。花でサミットの成功を祈念する地域の人たちの意気込みが伝わってくる。

 「歓迎G7」の心意気、この地はすでに国際的な観光地

  読売新聞社会面(5日付)によると、三重県の行政や企業やつくる「伊勢志摩サミット県民会議」が300人のボランティアを伊勢市で設置された国際メディアセンター(IMC)などに配置すると伝えている。各国から取材に訪れる新聞やテレビ、通信社の記者やカメラマンを道案内すると同時に、地域の観光や食文化など魅力も紹介する役目も担っている。300人のボランティアは1000人の応募から選ばれ、最高齢は82歳の元大学教授。この記事からは、伊勢志摩の魅力も併せて世界に情報発信したいと、地域ぐるみの意欲的な取り組みが感じられるのだ。

  首脳会合と各国首脳の宿泊場所は賢島にある志摩観光ホテル(クラシック、ベイスイート)が予定されているが、そのほかにもサミット議長の記者会見場、各国首脳の記者会見場、サミット事務局、各国事務局、各国随行員の宿泊場所、サブ・メディア・センター(記者の待機所など)などは志摩観光ホテル近くの別のホテルで分散して設けられる。

   主舞台の志摩観光ホテルからはおよそ20㌔離れた、伊勢市の県営サンアリーナに国際メディアセンターがある。野次馬根性で会場を見学してみたいと現地を訪れたが、入口で丁重に断わられた。確かにまだ工事中なので関係者以外の立ち入りは難しい。本館メインアリーナでは、テレビなど映像メディア向けのブースが120も準備される。サブアリーナでは記者の共用作業スペースとして800席の設ける準備が進んでいる。サンアリーナ南側では仮設の別館が設けられ、新聞や雑誌など国内メディアの記者たちの作業場となる。別館ではビュッフェ形式のダイニングスペースが設けられる。ざっと5000人のメディア関係者の参加が予想されている。伊勢志摩からどのようなニュースが世界に発信されるのか楽しみが増えた。

   2泊3日の伊勢志摩ツアーの最終日、近鉄鳥羽駅近くの「ミキモト真珠島」を訪ねた。橋で渡るこの島は、1893年に御木本幸吉が世界で初めて真珠の養殖に成功した島との説明があり、真珠博物館海や女の潜水作業の実演、ショッピンも楽しめる真珠のテーマパークになっている。パールショップでは、外国人観光客がショッピングを楽しんでいる光景があちこちに。施設や広場の看板を見渡すと、すべてが日本語と英語の表記、ガイドでもショッピングでも店員スタッフが英語で対応している。様子を見る限り、スタッフの対応は下から目線でも上から目線でもない。客と正面から向きあって、丁寧に商品説明をしている。

  ここで、はたと気づいた。冒頭のガイドボランティア300人の行動のお手本がここなのではないか、と。伊勢志摩の歴史と伝統、そして技術に育まれた名所や食文化を面と向かって丁寧に説明することが日本を理解してもらう「正道」で、海外の観光客に喜ばれるポイントだと地域の人たちは気付いている。その意味で、伊勢志摩、そして鳥羽を含めたこの一帯はすでに国際的な観光地なのだ。

   御木本幸吉記念館でこんなエピソードが紹介されている。1905年、それまで半円真珠の養殖だったが、真円真珠の養殖に成功。1919年、ロンドンの支店で真円真珠の販売を始めた。天然真珠より25%安い価格設定だったので、天然真珠の価値が下がることを恐れたヨーロッパの宝石商たちは養殖真珠は偽物だと訴訟を起こした。しかし、イギリスとフランスの研究者たちが天然と養殖ものに本質的な違いはないと証明する。これをきっかけに「ミキモトパール」が逆に信頼を得ることになり、その後ニューヨーク、パリと事業展開、養殖真珠が輝く日本の文化として世界に認知されるきっかけとなった。

 ⇒5日(木)午後・鳥羽の天気   はれ

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☆伊勢志摩の肝(きも)-中

2016年05月04日 | ⇒ドキュメント回廊
 2日目は伊勢神宮の内宮(ないくう)=写真・上=と外宮(げくう)を訪れた。いにしえより「お伊勢さん参り」は日本人の心をつかんで離さなかった聖地巡礼の場だ。おそらく我が家の遠い先祖たちも参拝しただろうと想像すると緊張感も湧いてくる。

   伊勢神宮の常若(とこわか)の精神とは何か

  チャーターしたタクシーの運転手がガイドを買って出てくれた。外宮、内宮の順で回った。外宮の境内にある「風宮(かぜのみや)」。神職が落ち葉がきをしていた=写真・下=。白木の社と白装束が相まってなんとも凛とした光景だった。風宮は別宮(わけみや)という格式で正宮に次ぐ序列だとか。もともとは末社だったが、1281年の元寇(蒙古襲来)の時に神風を起こし日本を守ったとして「昇格」したとのこと。神様にも論功行賞があって面白い。

  有名なスポットでありながら、何も知識がなかったことに愕然としたことが多々あった。その一つが「式年遷宮」だ。実際に見ての第一印象がどの社殿も「新築物件」ということ。茅葺の屋根、ヒノキの柱などがみずみずしい。125の社殿がすべて建て替えられた。テレビなどのメディアで流される式年遷宮のイメージでは、皇大神宮(内宮)や豊受大神宮(外宮)の主だった社殿だけかと勘違いしていた。パンフによると、宮社だけでなく714種1576点におよぶ神様の衣装や服飾品、さらに太刀や鏡など調度品もすべてリニューアルしているのだ。

  伊勢神宮は20年ごと定期的に。飛鳥時代の持統天皇が第1回目の式年遷宮(690年)を実行し、平成25年(2013)10月の式年遷宮は実に62回目だった。1300年余りの歴史がある。ちなみに、出雲大社の遷宮は概ね60年に一度。これは伊勢神宮のように式年(定められた年)ではなく、社殿に損傷が進んだ時に行う、流動的なもので60年目安ということらしい。

  それにしても、総建て替えで要するヒノキだけで1万5千本。式年遷宮全体の費用は建築、衣服、宝物の製作を含め約550億円(330億円が伊勢神宮の自己資金、220億円が寄付)とされる。「なぜ20年なのか」とガイドの運転手に尋ねると、「ここでは常若(とこわか)の精神と言うんです」と。「常若」、初めて聞いた言葉だ。さらにこう説明してくれた。「建物がいまだ使えても、いずれ老朽化します。老朽化は神道では穢(けが)れでなんです。式年遷宮によって、建物を新しくすることにより神様の生命力を活性化させる。これが常若なんです」

  確かに昔は人生50年と言われ、建築の技術を次世代に伝えるには20年というサイクルが適当だったのかもしれない。また、全国の神社の総元締的な存在の伊勢神宮である。古材で使用可能なものは、たとえばヒノキの柱などは鳥居として末社に下げ払いされる。リサイクルとして全国に波及する効果は大きい。

  ふと思った。おそらく参拝したであろう先祖たちはこの伊勢神宮に来て、何を思っただろうか。式年遷宮=常若の意味を自ら考え、家督を早く息子に譲ろうと考えたかもしれない。あるいは、自宅を建て替えようと考えたかもしれない。私は、今の日本に必要なのは、この常若の精神ではないかと考えた。若者たちに活躍するチャンスを与える。起業やベンチャー、なんでもいい、税制や資金面で支援を受けて、若者が総活躍する社会だ。伊勢神宮はいろいろなことを考えさせてくれる。

⇒4日(水)伊勢志摩の天気   はれ

  
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