自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「使い切る」意識

2016年09月20日 | ⇒ニュース走査
このところ連日、富山県議会、富山市議会で政務活動費の不正が発覚している。とくに、辞職、辞職願の提出、辞意表明をした市議会議員は自民・民進の2会派で9人にも上る。富山県議会でも2人が不正受給を認めて辞職、辞職願を出している。本来ならローカルニュースなのに全国紙などは社会面や一面で取り上げ、まさに政治スキャンダルと化している。

  富山市議会の政務活動費は議員が調査研究などに使える経費として、市議1人当たり月額15万円が認められている。これは議員報酬とは別で、余った分は市に返還することになっている。地元新聞によると、平成15年度の富山市議会の政務活動費の消化率は100%だったという。前年度の14年度は99%だったと報じられている。

  不正受給を認めた市議9人に共通する不正のポイントはただ一つ、領収書の偽造工作だ。白紙の束を親しい業者にもらい、小切手のように使う。パソコンで領収書を偽造して市政報告会の資料印刷代や茶菓子代などを受給していた。なんとしてでも政務活動費を「使い切る」ことに心血を注いでいたようだ。

  それではチェック体制はどうなっていたのか、ということが気になる。本来議会事務局がチェックするが、難しいのは各会派を通じて所属議員に支給されること。領収書の宛名がたとえば「富山市議会自由民主党」となっていると、第三者からはどの議員が使ったのか分からない。さらに複雑なのは、政務活動費は同じ会派内の議員の間で融通が認められていて、月によってはA議員が20万円、B議員が15万円ということもありうる。さらに、チェックする側の議会事務局は領収書の細かな内容にまで踏み込む立場ではない。たとえば、。「不正ではないか」と気づいても、どんな茶菓子をいくつ買って、誰が食べたかといったことまでチェックできない。あくまでも、領収書に受領印、日付の記載など、体裁が整っているかをチェックするだけなのだ。

  それにしても、そこまでして「使い切る」意識はどこから湧いてくるのだろうか。私個人の推測だが、意外と勤勉・真面目な富山の県民性に由来しているのかもしれないと思っている。政務活動費を余らすのはもったいない、きっちり使うといった生真面目さを感じる。その代わり、不正が指摘されれば、言い訳せずに潔く辞める。「行き過ぎた真面目さ」ではないのか。

⇒20日(火)夜・金沢の天気  あめ 
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☆「ごちゃ混ぜ」の論理

2016年09月11日 | ⇒トレンド探査
  最近のニュースから気になったことをいくつか。「ジェンダーバランス」あるいは「ジェンダーフリー」はすでに定着した感がある。ところが、ここまでやるかというのニュースを見つけた。以下、9月6日付のAFPニュースを引用する。

  ノルウェーでは女性に徴兵を義務付けただけでなく、戦友の男性たちとともに、つまり同じ男女混合部屋で寝泊まりしているようだ。同国軍の男女のバランスはまだ完全に均等ではないが、19歳で徴兵された兵士の3分の1が女性という。歩兵だけでなく、ヘリコプターやジェット戦闘機パイロット、潜水艦の操縦士など陸海空である。徴兵は19歳から44歳まで、2015年からの男女が対象となった。期間は12ヵ月から15ヵ月。これまでも志願兵で女性の割合は高かった。

  同国では現在までの5代の国防相のうち4人が女性で、NATO加盟国で初めて男女両方の徴兵を開始した。男女両方を徴兵しているのは世界でもイスラエルなど少数の国という。その背景もある。ノルウェーで19歳の新兵は毎年1万人ほど、この数字は対象者の6分の1だ。同国では兵役に就くのは「やる気のある人」という評価になり、退役後は労働市場で高く評価される経歴とみなされるらしい。

  男女間のトラブルが起きないのかと考えるがそうではないらしい。男女共用部屋はジェンダーを希薄化させるためにセクハラ対策が有効とされる。つまり、生活エリアを共有することで、男女双方が自分たちの行動に気を付けるようになり、「きょうだい」であるかのような仲間意識を育むことができるというのだ。

  なるほどと思う。確かに19歳という若さでは男女で「きょうだい」感覚があり、生活エリアが共有され、女性が男性を叱咤するシーンもあるだろう。そうすると規律やモチベーション(意欲)も高まるという効果があるのかもしれない。徴兵制とうい中で男女ごちゃ混ぜの論理はうまく働くのかもしれない。

  日本で徴兵制はないが、志願する女性自衛官はいる。このノルウェーの「ジェンダーフリー」「ごちゃ混ぜ」をどう考えるのか。現在、日本の防衛大臣が女性であり、その点インタビューしてみたいと思った。

⇒11日(日)午後・金沢の天気  はれ
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★環日本海を日露の外交モデルに

2016年09月04日 | ⇒トピック往来

   日本海側に住む我々にとって、「環日本海」という言葉はとても響きがいい。大陸との経済的な交易をはじめ、相互に発展する余地がありながらも、まだまだ手が付けられていないという状況だ。それに少し明光が差してきた。今月2日と3日にウラジオストクにある極東連邦大学で開催された東方経済フォーラム(Eastern Economic Forum)で繰り広げられた日本とロシアの首脳による外交だ。

   東方経済フォーラムはロシア極東地域の経済やアジア太平洋地域の国際協力の拡大を目的として、2015年5月にプーチン大統領令で発足した年次開催の会議で、ことしが第2回となる。主な議題は、ロシア極東地域の投資とビジネスの現状を高めることだ。この経済フォーラムを安倍総理はうまく外交の場として活用した。

   3日のフォーラムで安倍総理は「私たちの世代が勇気を持って責任を果たそう。70年続いた異常な事態に終止符を打ち、次の70年の日本とロシアの新たな時代をともに切り拓こう」とスピーチしたこれは双方にまたがる領土問題の解決の糸口を開き、平和条約を締結することを強くにじませたものだろう。2日の首脳会談でも個別にプーチン大統領と話し合ったと報じられている。

  環日本海時代の幕開けを予感させた言葉が、安倍総理の演説にあった、年次開催される東方経済フォーラムを活用して、日本とロシアの首脳会談も年1回、定期的にウラジオストクで開くことをプーチン大統領に呼びかけたことだ。この定期的な会談は8項目の経済協力の進み具合を確認するためだ。その8項目の中で目を引くのが、「ロシアの健康寿命の伸長策では日本式の最先端病院を設立する」「都市づくりは人口100万人以上の中核都市で木造住宅建設や交通インフラの更新」「極東開発支援は農林水産業の輸送インフラ整備を通じロシア国内外への供給力を高める」など。

  安倍総理は演説の中でこうも述べている。「多くの国々が日本のカイゼンの手法に習熟するなか、ロシアはまだ日本企業と深く付き合うことで起きる生産思想の革新を経験していない。プーチン氏が目指す製造業大国へ至る道には近道がある。日本企業と組むことだ」と。

  こうした具合的な8項目の経済協力の提案について、プーチン大統領は「唯一の正しい道だと考えている」と高く評価した、と報じられた。経済協力とパッケージにした北方領土問題の解決案だ。これを「外交」と言うのだろう。日本は法的、歴史的観点から北方4島は固有の領土だとして一括返還を要求し、ロシアは第2次大戦の結果として4島統治の正統性を主張しきた。「返せ」「返さない」では外交交渉に進展はない。日本とロシアによる外交モデルとしての「環日本海」に期待したい。

⇒4日(日)朝・金沢の天気   くもり
 

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