25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

大雨の中で

2019年05月21日 | 映画
 夜の九時頃になって大粒の雨が速い調子で音を立てて降ってきた。ぼくは「炎立つ」に夢中でDVD2枚を見るつもりだった。DVD2枚には大河ドラマの4回分が一枚に収録されている。朝廷から俘囚という差別用語で呼ばれていた蝦夷の安倍一族は同じ蝦夷の清原一族と源頼義国司の連合軍によって滅ぼされる。この時の国司の副長官であった藤原経清(つねきよ)は源頼義の武士にあるまじき振る舞い、欲望に嫌気がさし、安倍側につくのである。そして源頼義と息子義家を殺す機会があったのである。この時「武士の情け」で殺すことはなかった。生涯これでよかったのかと思うことになる。そしてとうとうそれが自分の身に災いする。経清が捕らえられたとき、源氏側は経清を部下にしようとするが、激しく源氏のあり様をののしる経清に堪忍袋の緒が切れて、鋸刑で首を切るのである。これが一部前九年の役の終わりである。

 二部は藤原経清の子清衡が主人公である。清原一族によって育てられている。母は戦いの折り、略奪されたのであるが、一族の長男にめとられ正室となっている。母は家衡という子供も産んでいる。この母は経清の復讐を胸に誓っている。すでに母を演ずる古手川祐子は四十代後半かもしくは五十代であり、妹の鈴木京香はやや年下であるが、そのメークアップ技術に感心する。古手川祐子は復讐と家衡可愛さで時とともに、判断する力も失っていく。このあたりのこころの内をあらわす脚本はとてもよくできている。

 清原の長男が死ぬと、その嫡子、家衡、清衡が次の後継者であるが、清衡は父親が違うため、かやの外である。嫡子である萩原流行が清原真衡を心憎いほど上手く演じている。彼には子ができないため、平氏と源氏の血をひく夫婦を養子とするのである。彼は「俘囚」である。彼の血が続く限り「俘囚」なのである。これを子がないことで、自分の時代に断ち切ってしまいたいのである。自分が死に、養子夫婦の時代となり、子ができて繋いでいけば清原一族は「俘囚」ではなくなる。
 ストーリーをツラツラ書いてもしかたがないのだが、雨がザーザーと屋根をたたく中でじっと画面に集中して見ていると、入り込んでしまうのである。NHKは渡辺謙に続き、村上弘明という俳優をよくも選んだものだ。素晴らしい。のちの「柳生十兵衛」もよかったが、この頃の衣装や鎧兜の方がよく似合う。5時間見続けたのだった。