内館牧子が卒業した武蔵野美術大、つながり。
この本を借りたのは、代表作「限りなく透明に近いブルー」を
読もうと思ったから。
ところが
タイトルに抱いた自分の勝手なイメージとは
180度違った衝撃に耐えきれず、
冒頭からどこまでも、気持ちが悪く、我慢比べのような
読書になりつつあったのでやめた。
生理的に合わない、ってやつだろう。
で、おそるおそる「69」を読み始めたら・・・
これが楽しくて読みながら何度吹いたことか。
ちりばめられたオヤツを拾い歩くような読書。
その中でも、ちょっとしみじみ味わった異色の
おいしいところをメモ。
P064 「すなわち、不幸は自分が知らない間に、知らない場所で、
勝手に育っていって、ある日突然、目の前に現れる、という重要な事実に、
である。幸福は、逆だ。幸福は、ベランダにある小さなかわいらしい花の苗だ。」
本当にそうだなーと思う。
幸せはサプライズでも歓迎だけど、
覚悟できずに訪れた不幸は、
その場で対処する必要があるものね。
P079 「まだ、ヤザキなんかに、こんなことを言ってもわからんだろうが、」
これは担任マツナガ先生の言葉。
このあとに続くのは、病気と付き合いながら、こわいという感覚に慣れ、
ただ季節の花を見られるだけで満足する自分がいる、というような内容。
教育者として押し付けるのでなく
彼らのとの間に1本線を引きながらも、
淡々と職をまっとうする姿。
先生の目立たない地味な底力、を感じ取れるようになった
ヤザキたちが、大人に近付く部分。